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宅急便

作者: 睡眠羊子


宅急便が届いた。

宛先はまた連絡が途絶えていた兄からだった。

箱を開けると中身は空で。

夜中に庭から子供の笑う声がして目が覚めた。

兄に電話をした。

「またなんか押しつけたでしょう?」


兄が電話越しで苦笑いしてるのが分かる。

「ごめん、ごめん、途中まで何とか祓えそうだったんだけど

やっぱ難しくなっちゃった。」


うちは霊感一家でそれで金儲けしようとしているのが

兄だが、兄は霊感はあれど祓えるほどの力は無く

手に追えなくなると家に送ってくる。

「亡くなったお子さんが自縛霊になりかけていて

成仏させてほしいって話でさ、その子の日記帳見つけたから

一枚剥がして食べてみたらその子の気配が薄くなったからこれでいける!と思って10枚食べたら吐いちゃった。」

そして熱を出して今は近くの病院に入院しているそうだ。

馬鹿な兄だ。

「子供だし、まだ亡くなって日が浅いからさ。

何とかなると思ったんだけど無理だった!任せる!

あと終わったら着替え持ってきて欲しい。

あと、財布無くしたみたいで入院費頼む。」

あっけらかんとした声。

どうしてこいつが兄なんだろう。

電話を切り、

星空は綺麗だけど真っ暗で寒い。

コートをはおり、庭に出た。

子供の声が近くで聞こえる。

小さく屈んで、名前を呼んだ。

「○○ちゃん、はじめまして。

私は犬飼アサです。

○○ちゃんは私の兄がここに呼びました。

お家に帰りたいんだね。

光が見える?あの光に向かえば帰れるよ。」

そう言うと子供の気配は消えた。

無事に光に入れただろうか。

次はもっと強く長生きできる生き物に生まれ変われたら良いね。


兄に電話をした。

「終わった」

「早っ!確かにもう気配無いね。

やっぱすごいねー!」

「そうゆうのいいから、いくらもらったわけ?」

「え?あー。だから財布落としちゃったからさぁ。」

「嘘だよね。

私ひまじゃないからもう送らないで。」


「じつは、また他の話があってさ。もうお金受け取っちゃったから

頼みたいんだけど」

「もう送ってきてもすぐ返すから。

自分で何とかして。」


その数日後、兄が亡くなったと病院から電話があった。

私と電話で話していた前の日だった。

インターフォンが鳴る。

玄関を開けると元気なお兄さんが宅急便です。

と言い小さな箱を見せる。

「それ、間違いなんです。

申し訳ないですが受け取れません。」

宅急便のお兄さんは荷物を持ったまま車に戻り

暗闇の中に溶けて見えなくなった。

もう、荷物が届くことはないだろう。


そもそも私には兄なんていないのだから。

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