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お友達


 僕はルーカス・ハミルチェ。ハミルチェ辺境伯家の嫡男だ。

つい先日、貴族や上級階級の平民が通う、フルリア王立学園に入学した。


 そんな僕の学園での目標は、友人をたくさんつくること!

………………なんだけど、僕の容姿に問題があって、目はありふれた蒼色だから大丈夫だが、あまり良い印象を持たれない黒い髪をしているからか、人が近寄りがたくなってしまうようで、友人が全然できない。

 不幸中の幸いだと思えことは父上や弟たちのように筋肉がモリモリじゃないこと。だって、それだと余計に人が近寄りがたくなってしまって、友人ができなくなってしまうから。


 ……っと、少し話がずれかけたけど、要するに僕はぼっちなのだ。……うん、自分で言ってて悲しくなってきた。


 今日も友人をつくるという切実な願いと決意を胸に、一人寂しく教室まで向かっているところだった。この少女に謎の宣言をされたのは。


 今、目の前の美少女、いや、美女とも言えるこの少女は自分のことをヴァルトーシュと言った。

ヴァルトーシュといえばこの国の数少ない公爵家の一つ。


 そんな名門中の名門のご令嬢が僕に話しかけている。ちなみに言っていることは意味がわからない。


 ……ちょっと待て、普通に考えてこんな家柄も容姿も優れたご令嬢が僕なんかに話しかけるか?


 (……ありえないよなぁ)


 やっぱり人違いの可能性が高い。

僕はさっき一瞬でも運命、だなんて思ってしまった自分を脳内で殺しながら、人違いを指摘しようと口を開く。


「……あの……」

「ーーはっ!そういえばまだ自己紹介をしていませんでした!!」


 いや、名前はもう聞いたし、そういうことじゃなくて………………


(わたくし)はヴァルトーシュ公爵家の娘、リーリエ・ヴァルトーシュと申しますわ。ルーカス君と同じこの学園の一年生ですの」

「あ……ええと、僕はハミルチェ辺境伯家の嫡男、ルーカス・ハミルチェと申します」


 とりあえず自己紹介をされたから、僕も自己紹介をし返す。

 僕は学園に入学する前からぼっちで、こんなふうに話す(?)人が家族や使用人以外にいなかったので少し緊張してしまった。


 人違いのことについては言葉にすることは出来なかったけど、これで気がつくだろうか。


 だけど、


 (……あれ?人違い……じゃない………………??)


 いつまでたっても何も言わないリーリエ様に僕は内心首を捻る。


 「!!?」


 (なぜかリーリエ様がプルプルしている!!僕が何か粗相を………………!?)


「あの、どうかされたのでしょうか」


 僕が気付いてないだけで何か失礼なことをしてしまったのかもしれなーー


「ーーっ!!あああああああああああああっっっ!!!!」

「!?!?」


 (リーリエ様!?!?えっ、えっ、どっどうしよう…………………!!)


「ああああっ!!ルーカス君が可愛いすぎますわっっっ!!!!」

「へっ…………………………??」

「身長は高くて大きいのに弱腰でしかも敬語とは可愛すぎませんこと!?!?!?」

「えっと………………?」

「緊張しながらも頑張って挨拶をするルーカス君も最高ですっっっ!!!!

ああもう本当に()()()()()()()ですわ!!!!………………あ、この場合は()()()()()()()()()()()、でしょうか!!」

「え、っと……あの…」

「とりあえず今はそんなことより目の前のルーカス君を目に焼き付けるにですっっっ!!ああっ、そうです。どうしましょう!(わたくし)ごときがルーカス君の視界に入ってなどいいはずがないのです!!どこかにいかなければ!!!!」

「あの!」


 いきなりすごい勢いで喋り出したリーリエ様に戸惑いながらも声をかける。


 すると、一瞬動き固まったリーリエ様だったけど、すぐに優雅な動きを取り戻して僕に話しかける。


「………………………こほん、いきなり話しかけて申し訳ないですわ」


 (無かったことにした………)


「本日、ルーカス君に話しかけたのは、お友達になりたかったからですの」

「……………おともだ………ち……?」

「……はい。(わたくし)このきつい容姿もそうですが、公爵令嬢の身分もあってお友達がおりませんの。なので、そういったお友達が欲しいな……と、それにルーカス君とは以前からお会いしたいと思っておりましたので

あの、無理にとは言いませんし、強要するつもりもありません。良かったら、ですが、(わたくし)とこれからお友達として仲良させていただきたいのです」

「ーー喜んで!」


 まさか今までぼっちだった僕にそんなことを言ってくれる人がいたとは。このチャンスは絶対に逃してはいけない。


 思わず僕はリーリエ様の手を両手で握り、即答した。


「わぁっ!」

「あの!実は僕もお友達がいなくて…………!リーリエ様が僕の友人になってくださるのならばそれはそれはもう喜んでなります!!」

「本当ですか…………!?」

「はい!もちろんです!!」


 それから、リーリエ様と僕は手を取り合ってきゃっきゃっとはしゃいでしまった。


 そして、


「あの人たち何してるの……?」


 と言う周りの人たちの訝しむような声で僕たちは我に返った。


『っは!!』


「わぁっ!もももも申し訳ございません!!リーリエ様のお手を握ってしまって……!!」

「いっいえ!(わたくし)こそはしたないことを………………!!」


 そこからなんか妙にソワソワした空気になってしまって、僕はもちろんリーリエ様も黙り込んでしまう。


 (大丈夫かな……?嫌われてしまってないだろうか…………)


 そこから一泊置いて、リーリエ様が僕に言った。


「あ、そ、その、ルーカス君。(わたくし)のことはどうかリーリエと呼び捨てでお呼びください」

「そんな!リーリエ様を呼び捨てだなんてーー」

「お願いします」


 リーリエ様という美少女に上目遣いをされて、思わず息を呑む。


「で、では、リーリエ嬢と……」

「堅いです」

「うっ、じゃあリーリエさん…………?というのは……」

「むむ……仕方がないです。そこで妥協してあげます」


 本来、貴族の間では「さん」というの言い方はしない。基本的に使うのは平民だ。

知識としては知っていたが、他に良い言い方が思いつかなくてつい言ってしまった。


 リーリエさ…………んがそれで妥協してくれて、ほっと息を吐く。


「ではルーカス君、これからよろしくお願いしますね」

「うん。リーリエさ…………ん、こちらこそよろしくお願いします」


 これからこの学園の生活はきっと素晴らしいものになる。

そんな確信にも近い予感を僕は感じていた。


 そんなこんなで、リーリエさんが最初に言っていた「攻略」という言葉について聞くことを思い出したのは、リーリエさんと別れてからそれなりに時間が経ったときだった。


 



すみません。不定期更新です

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