表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1#スタートライン

第1章・一歩を確かに。



 「好き」って言ったのは誰?貴方だったはずでしょう?

 なのに、どうして?

 もう俺、疲れちゃったよ…。







「―――――」


 誰かの声が聞こえる。聞き慣れた、優しく心地良い声。


「――ちゃん…、奏ちゃん」


 肌寒さに身動ぎながら、目を開ける。

 最初に目に入ったのは、整った兄の顔だった。


「あ、起きた」


「何、起こす為に呼んでたんじゃないの?」


 むっくりと起き上がる。それと同時に大きな欠伸を零した。


「いや、起こす為というか、魘されてたみたいだったから心配になって…」


 困ったように眉を下げる彼は、とても今年22には見えない。その辺の高校に通っていそうな好青年。

 そんな兄を持つ寝起きの少年は、首を傾げた。


「俺、そんなに魘されてた?」


「うん。かなり」


 おかしいな。夢を見た記憶はないのだけれど。


「それより奏ちゃん。ご飯出来てるけど…」


「え、本当?」


「うん。食べるよね」


 兄の問いに「もちろん」と答えて、少年はベッドから下りた。





 少年の名前は日向奏。

 成績優秀。運動と容姿は中の上、もしくは中の中。

 明日晴れて高校生となる、学力以外は至って普通の15歳である。

 対して、兄の日向司はというと。成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群の、申し分ない完璧人間だ。

 幼い頃はそんな兄弟の差に劣等感を抱いたりもしたが、今ではそんな事など気にしない。

 自分の事が嫌いだった奏を、教師を目指す司が叱責したのだ。人と比べる暇があるのなら、もっと個性を磨きなさい、と。

 両親がいない奏にとって、六つ上の司はあまりにも大きくて、支えだった。

 だから今回、奏が全寮制の高校に入る事になって、奏本人も兄の司も、不安で仕方ないのだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ