8話 いきぬき
10月8日。朝、柚木と060号の部屋。
2人は苺島から説明を受けていた。
「昨日は停電が起きた。その理由はブレーカーの故障らしい。今、詳しく調べている。そのため、今日は仕事と懺悔はなしで、この部屋にずっと…」
「へい!焼き芋パーティーはっじっめっるっよ~っ☆」
いきなり桃谷が部屋に入ってくる。
「なんだいきなり」
「そうだ、俺達の部屋が汚れるだろ」
「だろー」
「ちぇいやっ!」
桃谷は持っていた袋に入っていた、大量の落ち葉を部屋の中にばらまいた。
「おい…まさかここで着火するつもりなのか?」
「俺達の部屋を燃やすなよ」
「なよー」
「ふっふっふ…もう焼いたのがここにありま~す!」
服の下に隠していた焼き芋を、自慢げに取り出す桃谷。
「だったらこの落ち葉はなんだ!」
「ミャン!」
苺島は、桃谷のは背中を思いっきり蹴る。
「ちゃんと掃除しろ」
「ノウっ!」
060号は、その辺にあった雑誌を丸め、桃谷の頭をそっと叩いた。
「……てい!」
「痛いっ!」
柚木は、積み木を桃谷に投げつける。
数分後、桃谷は体調不良で監視室に戻り、残る3人は仕方なく落ち葉を片付けた。
「……やっと終わった。060号、手伝わせてすまないな」
「いや…気にするな。柚木も落ち葉の上で遊んだりして、楽しかっただろうし…」
「いも!」
「ん?食べたいのか?」
「かなとといっしょに」
「……いいのか?」
060号は苺島を見る。
「まぁ…桃谷が迷惑かけてしまったからな。食ってもいいぞ」
「わかった。食ってもいいって」
「いも!」
「はいはい。あっ、なんか大量にいもあるから、苺島も食えよ」
「お、おお…」
桃谷が大量に置いていったいもを、3人は食べていく。
「柚木、口に付いてるぞ」
「ん~?どこ?とって~」
「仕方ないな…」
060号は、柚木の口の周りに付いたいものカスを取る。その姿はまるで…。
「…親子みたいだな」
「…………親子に見えるのか?」
「あっ、すまない。その…気にするな」
「……そうか…」
『親子』と言われて、060号は顔をしかめる。
(……この前見た夢、私は060号と柚木と…暮らしていた?
あれは……現実、予知夢なんだろうか…?
もしもそうだとして、私、は…結局は女性として、生きたいのだろうか…)
悩む苺谷に気づくことなく、また、彼も同じく悩んでいた事を、まだ誰も知らない…。