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4話 ×み合う

10月4日 早朝 監視室。

「おはようございます」

梨東が入ってきた。

「あれ?茄子宮さんだけですか?」

「苺島さんは、「色々考えたいから今日は休ませてくれ」と。朝子は「生理痛が重いから休むって言って。あと、痛み止め買って来て」と。桃谷さんは「うわぁ、デカ乳ババアが来るから逃げないとー」と言って、慌ててどこかに行きました」

(茄子宮さん、全部が棒読みだ…)

「じゃあ、今日は僕達2人だけですか?」

「いえ、もう1人プロジェクト新メンバーが来ると…」

バンっ!と勢いよく扉が開き、女性が入ってきた。

「……他のメンバーは?」

「それが…色々あって……」

「あなた、誰ですか?」

「私はホオズキ、桃谷と苺島の知り合いで、桃谷と同い年。職業は医者。060号の健康面を管理することになったのよ。よろしくねぇ~ん♡」

ボョヨンと、ホオズキの大きな胸が揺れる。

(やばい…鼻血が出そう…。お年寄じゃないけど、おっぱい大きいし、桃谷さんの言ってたデカ乳ババアってこの人なのかな?)

「あら?あなた…女の子みたいで可愛い~!」

「うわっ!」

梨東はホオズキにハグされる。

「たしかに僕は、身長158cmのチビですが、女の子扱いしないでください!」

「ん~、男の娘にしたいけど、声は完全に男の子で女装は無理ね…」

「分かったなら放してください!」

「……これ、どうしたの?」

「えっ?」

ホオズキが指を指したのは、包帯が巻かれた梨東のノド元だった。

「これは古傷です。いつもはマフラー巻いたり、襟えりが大きい服などで隠してて、今日も服で隠してたんですけど…分かっちゃいました?」

「医者だし、チラッと見えたからね。まぁ、私にも色々あるから詳しくは聞かないわ。でも、これだけは答えて。…痛くない?」

「……心配してくださってありがとうございます。この傷なら大丈夫です。もう痛くありません」

「そう、それならいいのよ。でも、痛くなったら痛みを(やわ)らげてあげるから、いつでもいいなさい」

「…分かりました」

(ホオズキさん、ちょっと変わっているけど、結構いい人だな…)

「あの…そろそろ離れてください」

「え~、もう少しハグしたい~」

「……2人とも、早く仕事してください。また機材などが壊れますよ…」

(茄子宮さん、静かに怒っている…。前みたいに、茄子宮さんがブチ切れて機材壊す前に離れないと)

「ホオズキさん、そろそろ…」

「……」

ホオズキは自分から梨東を放し、茄子宮に近づく。

「あなた…身長いくつ?」

「175㎝ですが何か?」

「私よりも4cm低いのね。身長が低い男は好きだけど…あなたは嫌い」

「僕も嫌いです。僕は貧乳の方が好きですから。それより早く仕事してください」

「ふふっ…挨拶はこれぐらいにして、060号の様子見て来るわ」

(……ホオズキさんは出て行った。なんか、嵐が去った感じだ)

ガゴン!ガゴン!ガゴン!ガゴン!

「ん?何のお……あっ!茄子宮さん、無言で桃谷さんの机を蹴り続けないでください!顔が怖いですし、桃谷さんに怒られますし、その机、金属製で硬いですから足怪我しますよ!」

ガゴン!ガゴン!ガガゴン!ガッガッガゴゴン!

「茄子宮さーん!」





同日 某時刻 刑務所職員専用廊下。

「あら、桃谷見っけ♡」

「んげっ!ホーちゃん…」

「ちょっと!その呼び方やめろって言ったでしょ!」

「じゃあデカ胸ババア」

「ババアは余計よ!」

2人の間に険悪な雰囲気が流れる。

「あなたは本当によく逃げるわね。あの可愛い助手を傷つけた時も、姐さんを傷つけた時も、あなたは逃げたわね」

「……」

桃谷の表情は、変わらず冷静だ。

「変態准教授さん、ちゃんと警察から心理分析の仕事もらってる?」

「君こそちゃんと胸にシリコン入れ続けてる?」

「豊胸手術なんかしてないわよ!」

「あはっ、(みにく)いね~」

「私のどこが(みにく)いっていうのよ!」

「心だよ」

「っ!」

「ふふ、ボクお得意の微表情分析をしなくても、『怒り』と『軽蔑』が表に出てる~。君は分かりや」

「うるさい!さっさと060号の居場所教えなさい!」

「あ~、もしかして君迷子…」

「早く!」

「……部屋にいるよ」

「…………ありがと、変態殺人鬼さん♡」

ホオズキは桃谷を睨みつけ、柚木と060号の部屋に向かった。

「…本当は、ツルツルくんに呼び出されて部屋にはいないんだけどね~♡」




同日 同時刻 囚人専用懺悔部屋


「おい、起きろ060号」

「……なんだ、もう終わりなのか?ヒマだったぜ」

「気絶していたくせに…」

「気絶じゃない。ヒマだから寝ていただけだ。俺はそのぐらいの痛み、悲鳴をあげずに耐えられる。お前は満足してないだろ?だって、お前の妻はこの俺、インビジブルが殺したんだからな」

「黙れ!このクソ殺人鬼!」

「うぁ…ぐ………」

男は電流が流れているムチで、060号を何度も打つ。060号は、悲鳴をあげずに耐え続ける。

「さぁ!お前が!殺した者に!懺悔しろ!自分の!罪を!償え!」

「………っ…!」

「拷問長様」

2人しかいなかった部屋に、いきなり男が入ってきた。

「時間です。それ以上やると、警察庁長官様に怒られます」

「……ちっ。分かった。後始末を頼む」

「はい」

数分後、懺悔室前の廊下。

「かなと、ここいいたんだ」

「……ガキか」

「かおいろわるいね」

「…気にすんな」

「へぇ、その子供が例のプロジェクトか…」

いきなり、060号を打っていた男が表れた。

「だれ?」

大豆 錐(おおまめ きり)。この刑務所の拷問長だ」

「まめ…だからあたまハゲてるの?」

「ハゲではない!剃っているのだ!」

「…ハーゲ」

「むぐっ!……060号!明日の懺悔、楽しみに待っていろ!」

大豆は、不機嫌そうに去って行った。

「……帰るか?」

「うん」

「ヤッホ~☆」

部屋に帰る途中、桃谷に話し掛けられた。

「…何か用か、変態野郎」

「へんたいやろー」

「リサちゃん、それ覚えちゃったら性的なお仕置きしちゃ」

げしっ!

「ミャ!痛いな~。060号、蹴らないでよ~」

「アホはほっといて行くぞ」

「うん」

「ちょっと~、ボクは060号に大事な用があるんだよ~」

「…」

桃谷の言葉で、060号の足が止まる。

「うんうん、素直なのはいいことだ」

「早く言わないとメガネ割るぞ」

「わるぞー」

「じゃあ早く言うね。060号、僕についてきてくれない?」

「…どこに」

「ひ!み!つ~~~~♡」

「……帰るか」

「うん」

060号は、再び歩き出す。

「君に拒否権はない。緊急用スイッチがあるのを忘れたのかい?」

「……」

(…忘れてたな。あのスイッチの事)

「すいっちってなに?」

「君には関係ないことだよ☆」

「……どこに行けばいいんだ?」

「僕についてくれば分かる」

(仕方ないな…)

060号は握っていた柚木の手を放し、桃谷の元へ行く。

「ガキはどうするんだ?」

「ちゃんと部屋に戻して…」

「かなと!」

「…今の、お前か?」

「…うん」

(初めて聞いたな。こいつの大声)

「なんの用だ」

「……はやく、かえってきてね。それだけだから」

「ん、わかった。またな」



同日 某時刻 特別刑務所、『死刑囚特別プロジェクト』専用実験室。

明らかに重そうな扉の鍵を開け、次の扉を網膜認証(もうまくにんしょう)で開け、さらに奥の扉をパスワードと指紋認証で開けると、実験室らしき所についた。

「ここは…」

「表向きは安心安全なお薬作っている研究所☆本当は…死刑囚をイジメるとこ♡君も知っているでしょ?自分が今やっているプロジェクトが、1番優しい物だって。君には…いろんなことを見てほしいんだ♡」

「……」

「さぁ、こっちにおいで…☆」

「……」

(んフフフフフ~♡いい顔してるな~。『怯え』と『戸惑い』が混ざったいい表情だ…♡まぁ、この感情は君が持ってはいけない物だけどね…)

「さぁ、ついたよ。060号~、この部屋どう思う?」

「…大きい窓ガラスがあるだけで、それ以外は普通だ」

「この窓ガラス…マジックミラーになっているんだ☆だから、あっちにボクたちの姿は見えない」

「…」

「おっ、来た来た♡」

「?」

マジックミラー越しの部屋にやってきたのは、拘束された囚人だった。

「ほら、よく見てて。面白いことが始まるから☆」

そして始まったのは…研究と言う名の拷問。ミラーの越しの囚人が、どんどん人ではなくなっていき、まるで獣のような悲痛な叫び声が、辺り一面響き渡る。

「『死刑囚特別プロジェクト』にはいろいろあってね。これは痛覚刺激だね。人はどこが痛むのか調べて、護身術に応用したり、手術に応用したりするの。もちろん、切った所はもったいないから何かに再利用し…」

「う…うぇっ…あ…うぅ…」

060号は、目の前の光景に耐え切れず吐いてしまう。

「あっれれー?なんで吐くの?」

「だっ…て…こ……んなの…人間がする事じゃない…」

「…060号、君は、『インビジブル』なんだよ?」

「…っ!」

「お腹を切って取り出した腸で首を絞めて殺したり、男性の1番大事なチ××切って無理矢理食べさせたり、自分の眼球自分で取り出さなきゃ愛する人を殺すって言ったり、若い妊婦のお腹切ってまだ呼吸も自分で出来ない赤ちゃん取り出して傷つけたり…インビジブルはそんな殺し方をしてきた。だから、生きたまま切り刻まれる人間を見てもなんとも思わないはずだ。君が本物のインビジブルならね♡」

「…お前はインビジブルに興味があるのか?」

「ボクが興味あるのは…君だよ、要人君♡」

桃谷は、060号の頬ほほを(なま)めかしくなぞる。

「君の表情は面白い…こんな気持ちは久しぶりだ…。ボクは君を…切り刻んでいろんな表情が見たいんだ♡」

「この…ド変態が…」

「いい加減隠すのやめなよ~。全部話して楽になっちゃいなよ♡」

「……俺にはもう…守るべき者などいない。だから、話すだけ無駄だ」

「?君って…」

バンっ!

「お前!ここに囚人を連れてきたのか!なんて事を…」

扉を開けて入って来たのは、大豆だった。

「大丈夫、見せちゃいけない物は見せてないよ」

「囚人がここに入ること自体駄目なんだ!くそっ、職員の休憩時間を狙いやがって…。060号は私が連れて行く。お前は帰れ!」

「は~い☆」





同日 深夜 監視室。

「いろいろ遊んでたら遅くなったけど、ボクが来たよ~♡」

桃谷が監視室に入って最初に目にしたものは、茄子宮によってぼろぼろになった自分の机だった。

「なっすみやく~ん、これ、君がやったの?」

「……コーヒー飲みますか?」

「飲むけど!ボクの机!凄くゆがんで、斜めと言うか平らで薄くなってる!これ中に入っているAV絶対潰れてるんじゃないの!?」

「ロッカーに入れない方が悪いんですよ。コーヒーどうぞ」

桃谷は茄子宮からコーヒーを受け取る。

「ロッカーに入りきらないから入れてるの!…あっ、おいしーね。でも、これとそれは別!壊した分レンタル代払ってよ」

怒りながら、桃谷は1口コーヒーを飲む。

「レンタルだったんですか。それは失礼…」

ゴトッ!

「…桃谷さん?」

茄子宮は眠った桃谷に近づき、話し掛ける。

「…」

「桃谷さん?」

「…」

何度話し掛けても起きない。

「…………やっと寝ました。この睡眠薬、今度はちゃんと効いたみたいですね」

茄子宮は自分の机に座り、監視用パソコンに向かいキーボードを打つ。

「やっとみんながどこかに行ってくれたと思ったら桃谷さんが現れ、計画が台無しになるとこでしたよ…。でも、誰か起きて来るかもしれないので、早くやりますか」

何かを打ち込む茄子宮。睡眠薬で眠らされた桃谷には起きない。

数分後。

「……ふぅ、終わった」

茄子宮は携帯で、誰かに電話する。

「…例のデータは消しました。約束通り…僕達を拒絶しない世界を作ってください。そのためなら、どんな事でも協力しますよ。…インビジブル様」

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