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『君は怪物の最後の恋人』女子高生がクズな先生に恋したけど、彼の正体は人外でした。  作者: おぐら小町
【第一章】女子高生がクズな先生に恋したけど、彼の正体は人外でした。
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第63話 【7月9日】柏木の共犯者

このページをひらいてくれた貴方に、心から感謝しています。

ありがとうございます。

A big THANK YOU to you for visiting this page.



 内海が働く喫茶店の駐車場にて──

 車内でヴィヴィアンとの会話を終えてから、柏木は改めてスマホを確認する。

 昨日、学校を抜け出して以降、学校側に連絡を入れていない事が気掛かりだった。


(学校にうまい事言わなアカンな。いや……それより、いっその事……辞めてまおか)


 柏木は以前より、非常勤の仕事を辞めたい思っていた。顧問を勤めていた部活の部員に「辞めないで」と言われ──結局、退職する事無く勤めて来たが、辞めたい気持ちが無くなった訳ではない。それを改めて考える。


(車も1台査定に出して……家も売ろうか……貯金いくらあったっけ……保険の見直しもせなアカンし……)


 理子の事も、仕事の事も、これから先、何を選択するにしても今の生活を見直す必要があった。

 現実的な処理を考えながら、スマホに送られて来たメッセージに目を通す。

 大概が自身の安否を訊ねる内容だったが、その中の一つに異質な文章が紛れ込んでいた。

 柏木はそれに目を奪われ、顔色を変える。


(またか……)


 そう思い、急いでメッセージの送り主の元へ馳せ参じだ。


 着いたのは、オートロックの付いた広いエントランスのあるマンションだった。

 柏木は迷う事無く、オートロックのパスワードを入れ、中に入って行く。エレベーターで上階に上がり、一番奥の広い角部屋に着くと、呼び鈴を鳴らす事無く、所持している合鍵で扉を開けた。

 部屋の中は雑然としていた。この部屋の住人は、あまり掃除が得意ではない。

 柏木は廊下を進み、奥の寝室を入ると、床に倒れていた赤紫色の長い髪の女性を発見する。彼女は、血塗れの状態で意識が無い。

 柏木は直ぐ様、彼女を抱き起こす。


かなで? かなで?」


 懸命に呼びかけるも、奏と呼ばれた彼女は応じない。

 仕方無く、今度は切られた手首の傷を確認し、ベッド周辺に薬を服用した痕跡が無いかを探す。

 それが終わると、慣れた手つきで手首に包帯巻く。出血は止まっていたが、剥き出しのまま連れて行く事に抵抗を感じたのだ。


(薬は……今日は飲んでないのか……傷も浅い…切ったのが手首で良かった)


 柏木はそんな事を考えながら、気を失っている奏を抱え、車へと運んだ。後部座席に横たえると、直ぐに病院に向かう。


 幸いな事に、道中、奏は後部座席で意識を取り戻し、柏木は運転しながら声をかける。


「奏? 起きた? おはよう」


 奏は、ぼんやりと自分の手首に巻かれた包帯を見つめる。


「……何これ?」


「覚えてへんの?」


「全然」


「ホンマに?」


「うん」


「……昨夜ゆうべ、俺にラインしたん覚えてる?」


「覚えてない」


 その返答に柏木は、口元を固く閉じた。


「何よ?」


「別に……もうえぇ……何もない」


「……」


「……」


「柏木」


「何?」


「ありがとう」


「……うん」


「ごめん」


「……えぇよ」


「……うん」


 その後の会話は続かなかった。柏木は黙って運転し、奏はそんな彼の姿を後ろから見つめる。


 暫くして、救急外来を受付ている大きめの病院に着く。

 ここへ奏を搬送するのは、これが初めてではない。前回は──手首ではなく肘の内側を切ってしまい、危うく神経を切断する寸前だった。その時に比べたら、今日は随分マシな方だ。

 柏木は奏を再び抱き上げ受付に向かう。


(昔に比べたら体重も増えたな……)


 柏木は、ふと……彼女と出会った日の事を思い浮かべる。


 みぞれが降る中、依頼された記憶消却の仕事を終え帰路に着こうとした……その時……

 不意に声をかけて来た少女。

 上着は無く、足は裸足で突っ掛けのみ。血で汚れた衣服はどう見ても風俗店のコスチュームだった。

 柏木は助けを求める奏を連れ帰り──その後、激しく後悔させられる。


 柏木にとって彼女は、心底憎らしいのに、放っておけない存在だ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 日が落ちてから、理子は柏木に電話をかけた。

本当なら休息そっちのけで、もっと柏木と話がしたかったのだが、予想外の姉の登場で有耶無耶うやむやになってしまったからだ。

 2人がこれから話し合う内容はどれも重要なものばかり。出来れば直に話すのが望ましい。


【理子、愛してる……明日、絶対な?】


 柏木は昼間そう約束した。明日、今日の続きを話す事は決定事項だ。変更はあり得ない筈。それでも……理子は少しでも恋人の声が聞きたかった。


「理子?」


 柏木が電話に出る。


「渚。あのね、今いいかな?」


「……ええよ」


 柏木は良いと言ったが、その返答が口から発せられる迄に、数秒の間があった。理子はそれに気づく。


「あっごめん。ひょっとして取り込み中かな?」


「大丈夫やで。気にせんで」


「ありがとう。あのね……何だか……明日まで待てなくて、渚の声が聞きたかったの」


「俺も理子の声が聞きたかった……もっと理子と一緒にいたい。理子に触れたい……そう思ってる」


「いられるよ。必ず。これから先ずっと……明日、準備室で絶対話そう? ちゃんと、これからの事を話し合いたい」


「うん、話そう。今までの事も……全部な」


 その時、理子の背後から、彼女を呼ぶ声が聞こえた。理子は直ぐ様反応し、声の主に返答する。


「お父さん?」


「話があるから来なさい」


 理子の父親はそう彼女に告げた。


「……分かった、待ってて」


 理子は父親を訝しみつつ、柏木に訳を説明する。


「ごめん、お父さんが呼んでるから……」


「分かった。ほな明日」


「うん」


「理子、愛してる」


「私も愛してる」


 2人は惜しみながら電話を切る。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 柏木は理子との通話を終え、自室のベッドに腰を下ろす。

 ベッドには、手首に包帯を巻いた奏が寝てた。

 柏木は、寝ている奏の手を握り、彼女の寝顔を見つめながら呟く。


「ごめん……」


 すると今度は、柏木の背後から不意に男性の声がする。


「誰に対しての謝罪やねん」


 見ると、部屋の入り口に、いつの間にか1人の老人が立っていた。

 柏木より背は低いが筋肉質で逞しく、眼鏡をかけた髭面の老人。


「……いつ着いた?」


 柏木が訊くと、老人は言う。


「さっきや……それで? どないなってんねん? ハインリヒの件は片付いたんやろ? 直接話したい事ってなんなん?」


 男性はそう言うと、寝ている奏を真ん中に挟んで、柏木とは反対側のベッドに腰を下ろす

 柏木は言う。


「もっと厄介な問題が発覚した……」


「厄介って?」


「40年前と同じさ」


 それを聞いて老人は狼狽し、つい母国語で話し始める。


『っはぁ!? 馬鹿な!! ありえない!! もしそうなら、もっと早くに見つかってる筈だろ!?』


 彼に合わせて柏木も言語を変える。


『僕もそう思ったさ……でも事実だ』


 そう言って柏木はシャツのボタンを外し、老人に胸を見せる。

【それ】を見て老人は目を見開く。


『マジかよ……』


 柏木は頷くと老人を見つめて言った。


『リー……40年前と同様に、僕の共犯者になってくれないか?』


 柏木がそう言うと、ここで奏は目を開けた。彼女は起き上がり、柏木に尋ねる。


『その話……私が洗った靴の持ち主の事?』


『…………』


 柏木が黙り込むと、奏は続けて言った。


『隠さないで話してよ……あんたの共犯者はガーフィールドだけじゃないでしょ?』


 奏は、両手で柏木の手を握る。

 3人は目を合わせ、柏木は静かに秘密を打ち明けた。


ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

貴方の今日の残り時間を楽しんで下さい。


Thank you for reading so far.

Enjoy the rest of your day.

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