第5話 【4月25日】理子とコンビニでの再会
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昨晩、理子はよく眠れなかった。
理子の頭の中は、疑惑の講師柏木と、謎の青年ミヒャエルの事で一杯だった。
あの合コンに関わった全員に、ミヒャエルの事を聞こうかとも思ったが、何故か理子は行動に移せないでいた。
合コンに参加していた男性陣と同じく、理子には奇妙な行動制限がかけられていたのだ。姉に合コンの経緯を話す事さえ、理子は出来ないでいた。
(……もやもやする……今日はせっかくの休みなのに……)
理子は自室のベッドで寝そべりながらスマホを弄る。話題のニュースなどを大雑把にチェックした。
アメリカで起こっている連続殺人事件がトレンド入りしていたが、遠く離れた国の事件だからか、現実味を感じられない。
理子は朝から暇を持て余し、気分が滅入ってしまう。
「コンビニでも行くか……」
そう呟いくと、寝間着からラフな装いに着替えて外に出た。有難い事に今日は天気が良い。
自転車に乗らず、散歩がてら徒歩で向かう。この判断が、後に大きく影響する。
家から歩いておよそ3分。そこそこ広い駐車場を備えた、小さなコンビニに辿り着く。
この店の愛嬌のあるおばさん店員が好きで、理子はいつもここを利用していた。
「いらっしゃいませ」
明るい声で出迎えられて、理子は軽く頭を下げた。そのまま篭を素早く取り、足早に移動する。店内を見渡すと、理子の他にも数人の客がいた。特段変わった点はない。
飲料コーナーで期間限定のジュースを篭に入れ、次にお菓子コーナーに行く。新作のお菓子を選んでいると、何となく馴染みのある視線を感じた。ハッとして振り返ると約2メートル先に白金髪の青年がいた。ミヒャエルだ。
「やあ理子」
「──!? なっ!! 何で!?」
理子の変な声とともに、持っていた篭を落とす。何故ここにいるのかと、言いたいのに上手く言葉が出ない。
ミヒャエルは慌てる理子を尻目に、散乱した商品を拾いあげる。
「僕が何でここにいるか知りたい?」
満面の笑みを浮かべて尋ねた。
「当然!」
理子は顔を真っ赤にして即答する。
だが、ミヒャエルは理子の疑問に答えないまま、回収した商品をレジに持って行く。
「驚かせたお詫びに奢らせて?」
キラキラとした笑顔を見せるミヒャエルに対して、理子は何も言えない。結局、自棄とばかりに、レジ付近に陳列されたお菓子を掴んでは追加で篭に放り込み、全て彼に奢らせた。
会計を済ませて2人でコンビニを出てから、理子は出来るだけ動揺を押さえ、ミヒャエルに尋ねる。
「貴方……柏木先生なの?」
そう尋ねる理子は気づいていない。あの晩、約束させられた内容は詰まる所【ミヒャエルの存在を口外するな】と言う事だ。
要するに、柏木にミヒャエルの事を尋ねる制限はあっても、ミヒャエルに柏木の事を尋ねる制限が無かったからこそ、質問出来たのだ。
ミヒャエルは静かに口を開く。
「ドライブしない? そこでゆっくり話そう」
彼はそう言うと、駐車場に停めてあった1台の外車を指した。軽い電子音が鳴って、車のロックが解除される。あれに乗ろうと誘っているのだ。
理子は一瞬怯んだが、直ぐに気を取り直してミヒャエルを睨み付け「いいよ」と重い声で返事をした。
コンビニまで自転車に乗って来ていたら、断っていただろう。
「あんたが誰なのか、ハッキリ教えてくれるんでしょうね?」
理子の問い掛けに、ミヒャエルはまた満面の笑みを見せた。
「勿論」
「……いいわよ。じゃあ行きましょ」
疑惑の答えを求めて、向こう見ずな16歳の少女は車に乗り込んでしまった。
理子を乗せた車は、どこかに向かって走ります。
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