【プロローグ】【7月5日】恋人の正体を知った日
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──7月5日
初夏の風に乗って、獣の臭いが漂っていた。檻に展示されている動物達は、いつもと違う光景に違和感を覚えたのか、不安気な様子で忙しなく檻の中を歩き回っている。
動物園内ではカップルや家族連れ、園内で働く従業員など、大勢の人間がいた。だがしかし──誰も微動だにしていない。檻の前にいる子供達も、売店で買い物をしているカップルも、道を清掃している従業員でさえ、まるで時間を止められたかのように停止している。
広い園内はマネキンのように停止している人間達と、その様子に戸惑う動物達で溢れていた。
この異様な状況下において、唯一人、鈴木理子だけが停止する事なく、困惑した面持ちで周囲を見渡していた。
すると突然、誰かが背後から、そっと彼女の肩を掴む。
驚いた理子は思わず「ひっ」と声をあげた。心臓が跳ね上がり、不安と緊張が一気に加速する。
「理子、以前俺がした質問を覚える?」
肩を掴んだ主はそう尋ねた。理子は恐る恐る振り返る。
背の高い白金髪の青年だった。彼は、少し困ったように微笑んだ。
「……質問て?」
理子が聞き返す。彼女の脳裏に浮かんだのは、以前この青年からされた質問だった。
【もし俺が、おとぎ話に出てくる怪物やったら、どうする? 陰に隠れて大勢の人間を食っとったら、どうする? そんな俺でも理子は愛せる?】
ある日のデートでそう質問された。その時は何かの例え話だと思った。恋人が人喰いの怪物など、有り得ない話だ。
だが、マネキンのように停止している来園客らを目の当たりにして、その有り得ない話を否定出来なくなっていた。
理子の首を嫌な汗が伝う。
困惑する彼女に青年は告げた。
「俺は人間ちゃう。不老不死の【怪物】や」
この日初めて、理子は恋人の秘密を知った。
【作中解説】
towhead
金髪の一種で、ほとんど白に近い金髪の事を指す。
天然のものは子供にしか見られないが、極稀に北欧出身の成人にも現れる。
金髪の髪色持つ人間は、地球上で2%にも満たない。
成人のトウヘッドは更に希少な存在である。
日本ではトウヘッドの事をプラチナブロンドと言うが、一般的にプラチナブロンドとは脱色などで人工的に作られた髪色を指す。
太陽の光に両者のを当てると、その違い判別出来る。
天然のトウヘッドは日の光を反射しないが、人工のプラチナブロンドは日の光を反射する。
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