第13話 【4月7日】◆姉妹と白金髪の青年とカップル連続殺人事件◆
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チェスターの家のエントランスホールで、彼の両親を紹介されていた時……ふとメアリーは視線を感じた。見上げると、階段の上に人がいる。歳が20代半ばぐらいの、背の高い白金髪の青年。
メアリーの金髪よりも白に近い白金髪の髪から、彼のルーツが北欧であると推察される。例え北欧出身だとしても、成人の白金髪は珍しい。勿論、脱色していたら別だが……
白金髪の青年は、階段を降りて挨拶をした。
『やあ、はじめまして。酷いじゃないかチェスター、こんな素敵なお客様を独り占めにする気だったのか? 僕にもちゃんと紹介してくれよ』
チェスターは、一瞬、青年を睨み付けるが、すぐに気を取り直し、姉妹に青年を紹介した。
『あー……紹介する。俺の……イトコ、マイケルだ』
『よろしく』
そう言ってマイケルは微笑む。
『私はエミリー』
『メアリーよ、よろしく(あれ?)』
メアリーはこの青年に違和感を覚える。
(どこかであった気がする、どこで? こんな綺麗な人、会ったら忘れないのに……)
『エミリーとメアリーだね……良かったら、僕も一緒に屋敷を散策して良いかな?』
『ええ、勿論』
『チェスターってば、イトコが滞在してるなら、先に言ってよ』
エミリーがチェスターにそう言うと、彼は少し苦々しい顔をした。
『ああ……悪かったよ。俺も、まさか居るとは思わなくてな……』
((?))
チェスターの発言の意味が姉妹にはよく分からなかったが、特別気にはしなかった。
チェスターの家には、御抱え庭師が手掛けた自慢の薔薇園があった。丁度、薔薇の季節とあって、多くの花が咲いている。姉妹が薔薇を見たいと言うので、4人は庭に出て花を観賞した。
マイケルが姉妹に話しかける。
『2人は姉妹なんだね。どおりで、よく似てる』
『本当? メアリーは綺麗なブロンドなのに、私は赤毛よ。それにメアリーの方が美人だわ』
エミリーは自分の赤毛にコンプレックスがある。幼い頃に近所の男の子から、よくからかわれたのを、今でも少し気にしてるのだ。
『なんだよそれ? 赤毛の何が悪いんだ? 綺麗な色だろ。それにお前は美人だ。他と比べるなよ』
チェスターがさらりと言う。
『……そうね。ありがと』
エミリーは素直にお礼を言う。1ヶ月前に比べて、エミリーとチェスターは随分と仲良くなった。前までは考えられなかった事だ。
今度はメアリーがマイケルに尋ねた。
『貴方のご兄弟は?』
『実は僕、双子なんだ。弟は今、アジアを旅してるよ』
4人で他愛ない話をしてる所へ、若い家政婦が皆を呼びに来た。夕飯の支度が出来たようだ。家政婦に案内されて4人は室内へと戻る。
ダイニングルームには、目を引く大きなシャンデリアと作りの立派な暖炉があった。テーブルの真ん中に、美しく盛り付けされた料理が並べられている。
『さあ、お座り下さい』
家政婦に促され、皆で和やかに食卓を囲う。
チェスターの一家と、メアリーとエミリー、そしてマイケル。皆で色々な話をしていくうちに、時期が迫るプロムの話題になった。
『僕は両親の仕事の関係で、世界中あちこち行っていたから、実はプロムをよく知らないんだ』
と、マイケルが言う。
『そうなの? ご両親のお仕事は何?』
『海洋生物の研究だよ。それで……メアリーは誰とプロムに行くの?』
『……それが、まだ誰とも約束してないの。誰かさんのお陰でね……』
メアリーはチェスターを睨みつける。
メアリーの視線を追うようにして、マイケルもチェスターを見た。そして僅かに微笑みながら、チェスターに尋ねる。
『じゃあ……チェスターは誰とプロムに行くの?』
皆の動きが一斉に止まり、沈黙が流れる。チェスターに全員の視線が注がれた。そこでエミリーが言う。
『その事だけど……チェスター……メアリーをプロムに誘ってよ』
エミリーの予期せぬ発言に、全員が驚く。
『エミリー何を言ってるの? チェスターのガールフレンドは貴女でしょう?』
『メアリーの為よ。ここ1ヶ月、チェスターと過ごして分かったわ。粗暴な所もあるけど、根はいい人よ。チェスターとプロム行くべきだわ』
エミリーはチェスターを推薦する。彼女の目から見て、チェスターは合格点に達したと言う事だ。
現時点で、メアリーを誘う男子生徒は現れていない。この先、現れるかどうかも分からない誰かを待つより、素行を悔い改めたチェスターと行く方が良い……そう、エミリーは考えた。
だがメアリーは困惑していた。なにせ推薦された相手は、彼女が忌み嫌っていたチェスターだ。その上、彼は妹のボーイフレンドでもある。実際は違うのだが、少なくともメアリーはそう思っていた。そんな彼を推薦されも、素直に『そうね』とは言えない。
ここで、チェスターの父親が口を挟む。
『チェット、お前はどうしたいんだ?』
『……俺は』
チェスターがそう言いかけた所で、若い家政婦が足早に来た。
『失礼します。お話が……』
そう言って、チェスターの父親に耳打ちをする。父親の顔色が変わり、チェスターとマイケルの表情が険しくなった。
『どうやら、近くで殺人事件が起こった様だ。すぐに車を出すから、今日はもう帰りなさい』
『えっ!? また誰か殺されたの?』
『そんな……信じられないわ……』
動揺する姉妹。先月、チェスターと姉妹が通うハイスクールの11年生カップルが、デート中に殺害される事件が起こった。そして……今日また、別のカップルが殺されたのだ。
『……連続殺人?』
チェスターの母親が呟く。途端に場の空気が重くなる。姉妹は不安になり、手を重ねた。チェスターとマイケルは、冷静に目を合わす。
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