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黒泡の殺人

作者: 宮田聡仁/モフきのこ

「うわー、すっげぇなコレ!エスクカリボーだっけ?1億、2億はくだらなかったんじゃない?」


僕は部屋の中心に飾られている珍しく金剛石で作られている腰辺りまである剣を見て息を漏らした。


「ふっ、その10倍はするよ。手に入れるの大変だったんだから」


館には宝剣エスクカリボーがあった。

それを所有しているのは我が友人カスタネット。若く事業を成功したいわゆる実業家だった。


「10倍!?えーっと······20億ぐらいしたの!!」


あまりの価値に頭が困惑する。


「オッサンには、他の剣との違いがよく分からないなぁ」


「いや、わかるだろ······。柄の部分とか全然違うし······。か、カスタネット?トイレってどこ······?」


「トイレは出てすぐ左にございます」


「うわっ!」


急に尿意を感じ、この家の主であるカスタネットに聞こうと思ったが、スーツ姿をした男性がすぐ後ろでそれを答えた。

思わず驚いてしまったのだが、それは失礼極まりないと思ったのはちょっと後になる。


「執事さん······?いつの間にいたんだ······?あ、ありがとうございます······」


冷や汗が少し流れ、から笑いも出たがなんとか感謝を言うと執事であろうその人物はペコリと静かに頷いた。


「あんまり色々触るなよ〜?防犯用の仕掛けとかたくさんあるんだから······!」


「ウッソ!こっわ」


「わかってるって······!トイレ行ったらすぐ戻ってくるよ」


(それにしても······カスタネット、金持ちになったなぁ。家、広すぎっしょ)


一抹の寂しさを感じ、部屋からでた廊下をキョロキョロと見回す。反対側の部屋まで多分10歩じゃ足りないだろう。


都心から離れたところにある黒泡邸は、今にも夜に溶けてしまいそうな程黒く、冷たく、不気味で、怪しげで——————いつか村までも飲み込んでしまいそうな感じがした。


玄関から入ったとき、「あぁ······僕はこの館に食べられてしまったのかもしれない」——————なんて錯覚したぐらいだ。


「ふぇ〜スッキリした〜」


今まで溜まっていたものがすっかり出し切ったようだった。


「いや〜それにしても······トイレも広すぎだろ······部屋だってこんなにいらねぇと思うんだよなぁ······!」


小便器も大便器も7個5個と数が多いし何より広い、そんなに必要ないだろ、と僕は思うが。それが金持ちのお金の使い方なのだろうと自らを納得させる。


すると目に入ったのは、


「書斎ねぇ······あいつどんな本読むんだろ?まぁちょっとだけ······?トイレの位置を間違えた、って言うことで······」


そう自分に言い聞かせて勝手に部屋に入る。見た目だけで大量の本があるのが分かる。はしご使う程高く積み上げているのだから。


直後巨大な振動が部屋中に響きわたる。


「うおおおおお!なに何何!?」


僕が急いでリビングに戻ると、同じく皆も驚いていたようだった。


「おいみんな、大丈夫!めっちゃ揺れなかった!?」


「地震!?」


「う〜ん、ラーバ(執事)。外の様子を見てきてもらえる?もしかしたらどこか地盤が悪いかもしれない」


「こうゆうのよくあるの?」


「ないよ!全然ない!!まぁ多少揺れたとしてもこの館にはビクともしないよ安心して。玄関のドアとかも、木の中に鉄入ってるから!」


「うわぁ······閉じ込められたらやばそうだな······」


リネーシャがビクビクしながら聞くと、カスタネットは笑って答え?。リョーマはそれに唖然した反応を見せた。


ワイワイガヤガヤと4人盛り上がる。しかし、その後執事ラーバは帰ってくることはなかった。


「その時の相手の顔ったらさ、凄かったよ」


「うはははは!やりますねぇ······!」


再び地震。


「あ〜!また揺れたよぉ!?」


「ねぇ、さすがに大丈夫?」


「あれから1時間くらいたってないかい?」


「そういえばそうだな······。さすがに遅すぎる······。俺も様子を、見てくるよ」


「いや、カスタネットが行かなくても······他に執事さんとかいないの?」


「ん〜料理してる人とかいるけど、さっき帰ったよ······。実はそばの村の住人なんだ······!こんな深夜に呼び出すのも悪いし······俺も運動不足だし······少し風に当たってくるよ」


彼いわく、住み込みで働いている執事は先程のラーバ1人だけらしかった。


「えぇ〜、本当に1人で行くの?」


「大丈夫かよ······僕も行こうか······?」


「大丈夫!すぐ戻るよ······!」


そしてそのままカスタネットも戻ってくることはなかった。


再度地震。


「うぇぇえ!?また揺れたよ······?」


「さすがにおかしいんじゃねぇか?ちょっと見てこようぜ」


「やっぱり我々もついていくべきだったか」


カスタネットもラーバも帰って来ず、地震も度々起こるので不安になった僕たちは玄関に向かう。


「あれ······開かないよ?」


「何やってんだよ······!」


僕はリネーシャをのかしてドアを引っ張る。


「あれ······マジだ······!ロックされてる!!」


ドアを引く度にガチャガチャと鍵かかっている音がする。


「あれ〜······?内側からロック外せないの?」


「そんなのどこにもないよぉ〜!」


「たしか······裏口もあったんじゃないか?」


かすかな記憶を蘇らせてルートを進む。だが——————


「ダメだ!ここも閉まってる······!ビクともしねぇ······!」


「どうしよう······!!カスタネットさんどこ行ったの······?」


「さぁ······?とにかく、今分かる事は」


「僕たちこの館から······出られなくなっちゃったって事だね」


この世界の連絡方法は手紙か、直接会いに行くしかない。

助けを呼ぶには、どうしても外に出なければならなかった。しかし、宝剣エスクカリボーを守る防犯システムのせいか、出口はロックされ、僕たちは黒泡邸に閉じ込められてしまった。


消えた当主と執事、そして地震。一体何が起こっているんだ······?


「ん〜ダメだ!ここも開かない······!!」


リョーマがベランダを周ってどんどんと叩くがどこも開かない。


「え〜!?もつ、どうしたらいいの!?」


「カスタネットが帰ってくるまで待つしかないか······」


「嫌だよ!散々待ったし!変な揺れも怖いし!!このまま出られなかったらどうするの!?」


「あ〜ほら······!夜だけ自動でロックされる防犯システムなのかもしれないし」


「え〜そうゆうこと······?じゃあ別に外に様子見に行く必要なんななくない?窓も強化ガラスって言ってたし。地震なんかで壊れる館とも思えないんだけど······」


確かに······カスタネットの行動の意図が読めない。


「そっか······強化ガラスか。じゃあ窓を割って外に出ることもできないな······」


防犯システムがある限り脱出不可能······と言う事か。


「うわああああ!余計な考察はしないで!もっと不安になった!!」


「ん〜カスタネットはんには悪いとは思うが、他の部屋も見てみないか?もしかしたらどこかに外に出られる場所があるかもしれないし」


僕たちは地下の大浴場も2階の客間もたくさん見て回ったけど、基本的にカギがかかっている部屋はない。

ただ、外に繋がってそうな扉は例外なくロックされていた。


「カギがかかってるなぁ〜」


「お〜い執事さん!いらっしゃいませんか〜?」


他は執事ラーバの部屋もロックされていたんだ。


「返事がない······」

「ただの屍のようだ······」

「うわああああ!!」


真剣に話したリネーシャの背後で妖しくRPGゲームさながらの言葉をボソッと言う。


「ええええ!?死んでるのぉ!?」


「思いつきで変なこと言うなって!」


そして僕たちはついに、カスタネットの部屋で見つける事となる。


「はぁ〜〜!ベッド広っ!!こんなところで寝てみてぇわ」


「お······?こんなところにスイッチがあるぞ······」


「え!?スイッチ!?どこどこどこ?」


「ここ!タンスの下!!」


「ああ!本当だ!!え······隠しスイッチ?」


「えぇ······言われてもわかんねぇんだけど」


カスタネットの部屋で小さく設置されたスイッチを見つけたんだ。


「押してみる?」


「押そう!」


「待て待て!押しても大丈夫なのか!?コレ!」


「えい!」

「ちょ!?」


僕の制止も聞かずリョーマはスイッチを押す。すると、ゴゴゴゴゴと地面が揺れる。


「おおぅ······地震だ」


「さっきの揺れ······もしかしたらこれなんじゃないか?」


どうやら地震の原因はこのスイッチらしい。


「誰かがこれ押したって事······?」


「押せるとしたら、執事さんしかいないんじゃないか······?俺たちやカスタネットは一緒に鋳ただろ······!」


「あのさ······今のスイッチって玄関が開くスイッチとかじゃない?」


「お······!確かに!一回見に行こうか!」


「スイッチ見つけたの······もうちょっと······褒めてほしいなって······」


置いてかれたリョーマが哀しく呟いた


              *****


「ダメだぁ〜閉まってる······」


防犯対策の解除ボタンでなかったらしく、ドアはピクリとも動かない。


「あぁ〜〜!もう、どうしたらいいの!」


「落ち着け落ち着け!スイッチを押して揺れたって事は、何かの仕掛けが作動したに違いない。変わったところがないか、もう一回観察していこう······!」


一度行った場所も念のため調べてみたが、変わったところは見当たらない。そう思っていた時だった。


「あ!本棚がない!!」


最初に僕が見た書斎の棚一つが無くなって。奥に階段が見つかった。


「地下に続いてる······!」


「すっげぇえ!!さっきなかったよね?」


「無かった······!この先にカスタネットさんがいるのかな?」


「それか······外に通じているかもしれないね」


「ドキドキしてきたぁ〜!!行こう!」


             *****


「結構降りたね······!」


「でも、大浴場と同じくらいじゃないかな。地理的に隣ぐらいだと思うけど」


「へぇ〜すごい!そんなのよくわかるね!」


「見てこれ。宝物庫だって!」


僕が興奮して指差したのは、きらびやかな装飾の扉で塞がれた部屋。扉の上には木彫りで宝物庫と書かれていた。


「ワクワクすんな」


「すげえええええええ!」


「あれ······?なにこのノリ······」


宝物庫と言う言葉に心踊った僕とリネーシャは早速部屋にお邪魔する。


「さて、どんなお宝があるんでしょうかね——————うわ!カスタネット!!」


宝物庫に入ったその矢先。僕の目に入ったのはちょうど1時間半前別れた当主カスタネットだった。それに彼は頭から血を流している。

僕が手を伸ばそうとすると。


「待て!頭から血が出ている!下手に動かすとだめだ!!」


「でも早く治療しないといけないだろ!」


『死んでる』——————リョーマは静かに言った。


「え······」


「うそだろ······?」


「事故······じゃないよね······?」


「そこの斧を見るんだ」


リョーマが指差したのは、綺麗に立て掛けられた斧だった。カスタネットはきれい好きだし、エスクカリボーも丁重に扱っていたところから、その保存方法も知っている。違うのはそこに——————


「血だ······血がついている······!!」


「自分よ頭を自分で殴って······丁寧に斧を立て掛け板に戻してここまで歩いたとは考えられないな」


「誰かが······殺した······?」


「け、け!警察呼ばないと!!」


「近くのあの村、警察はいないんだ。街からだと······1日はかかる。連絡するにしても、手紙でするしかないし」


「ここから出られたら······の話だな」


「殺人鬼がいるかも知れないのに······いつまでここに居なきゃいけないの?」


「本当に殺人鬼がいるならやばいって!ここで武装できるか?」


朝、他の執事が来ても出られる保証はないと言うことだ。ならば最低限自分は自分で守るしかないんだ。


「そもそも我々は3人いる······!はぐれない様にいておけば大丈夫さ」


いなくなった執事と殺された当主。凶気は見つかったものの、殺人鬼はこの館を知り尽くした執事の可能性が高く、油断はできない······!


なぜカスタネットは殺された?

どうしたら黒泡邸から出られる?

何もわからないまま、僕達は宝物庫を漁るしかなかった。


「私甲冑着る!」


「いや、リネーシャ······。一応カスタネットのだからな?身を守るのは良いと思うけど···」


「ハァ······ハァ······宝石がいっぱい!」


「あれは······多分違う理由だね······」


「フフッ······そうだね······」


             *****


「あ······!見てこれ!カギだ!!」


「え······?なんのカギ······?」


リネーシャが手をブンブン振って僕に早く来いと催促する。

彼女が手に持っているのは、とても形が複雑なカギだった。これは······見覚えがある、たしか——————


「これは盗賊のカギだ······!」


「盗賊のカギ······?」


「あぁ······!鍵穴に合わせて変化するカギだ!職人が手作りで作るから、結構レアな代物だけど」


「やったじゃんれこれで出られるって事でしょ!?」


「よし!それを持っていこう」


「カスタネットは······どうする······?」


「殺人鬼がいるかもしれないからな······今は仕方ない······後で運ぶことにしよう」


僕は【弓矢】リネーシャとリョーマは【剣】を持って宝物庫を出た。

しかし、玄関のドアは内側に鍵穴があるわけでもなく、盗賊のカギを使っても外に出る手段にはならなかった。

そこで唯一、カギがかかっていた執事の部屋を開けることにした。


「いいか、部屋にカギがかかってるって事は、鍵をかけたやつがいるって事だ。内側にいる可能性が非常に高い」


「武器の用意をしておこう」


3人が手に持つ武器を強く握る。

ガチャとカギが外れドアが開く。1歩ずつ進んで行くと、


「わぁ!?執事さんが······!閉じ込められてる!!」


「みなさん······!?」


執事のラーバが僕達の声に反応した。


「どうなってるんです!?」


「白々しいな······!カスタネットを殺したのはあんたか?」


「カスタネットさんが······?」


本物くさい感じの驚き方だな······。


「地下の宝物庫で、斧でバーンって!!」


「バッ!まだ言うなって!!」


「え······なんで······?」


「こうゆうのは、犯人しか知らないはずの情報を。ポロッて口から滑らせて言ってしまってバレるのが定石だからね」


「そーーなのぉぉおお!!え゛え゛······ごめぇん!でも執事さ?、返り血浴びてないじゃん!」


「着替える時間は十分あったでしょう」


「そっか······」


リネーシャがしゅんとうなだれる。


「1回目か2回目の地震で地下室を開けて、カスタネットがその様子を見に行ったところで殺害。3回目の地震で地下室を閉じて自室に引きこもって着替える······!出来ないことじゃない!」


「そんな······私はそんなことしません」


「でも······こっちからしたら状況がねぇ······」


「なんであんたはここに閉じ込められてる?説明してくれるか?」


「えぇ······実は、防犯システムかわ誤作動している模様なのです」


「やっぱり防犯システムなんだ······?」


「それはどうゆう時に作動するんだ?」


「エスクカリボーに何かがあった時です」


何かがあった······と言う事は、エスクカリボーが盗まれている可能性があると言うことか!?


「まさか······」


「でも俺たち、ずっとリビングに居たけど誰も触ろうとはしてねぇぞ」


「ですので、誤作動なのです」


「なるほど······?で、その防犯システムの誤作動と、あんたがほぼ檻のなかにいるのはどうゆう関係が······?」


「この部屋にはエクスカリボーの周りにある強化ガラスを動かすシステムがあります」


彼が言うには、この執事室でセキュリティーを解除できるらしい。


「つまり、エクスカリボーを盗む為にこの部屋で誰かがシステムを操作しようとしたら檻に閉じこめられる······という仕掛けなのか?」


「はい。正しくはパスワードを間違えると作動します」


「それで玄関のカギも閉まるわけ?」


「さようです」


「ねぇ、どうやって解除したらいいの?」


「普段は、エスクカリボーを元の場所に戻した時に解除されます。ただ、緊急時に解除できる様に地下の宝物庫にスイッチがあります」


「へぇ〜すごい素直に教えてくれるんだね?でもまたあの死体見に行くの?」


「そもそも信用出来るのか?」


「でもそれに、同時に執事さんも解放されるって事でしょ?」


「そうなります」


「それはまずかないかい······?執事は殺人犯かもしれない」


「それは同意」


防犯システムを解除する事で執事さんが解放され逃げてしまうかもしれない。


「どうする······?」


ならばと思って考えてみる。するとふと思いついたのは——————


「緊急解除スイッチを押す班と、執事さんを見張る班で別れよう。万が一、他の場所に武器があって武装されると困るし」


「え······?どうやって分けるの?ワタシはもう死体見たくない!」


「私が行こう······!緊急解除スイッチはどの辺だ?」


「入って正面。一番奥の額縁をはずして裏に隠れています」


「僕の武器は弓矢だし、見張りに向いてると思う。もし変な動きをしたら······撃つからね」


「ワタシは······?」


「死体見たくないんだったら見張りしかないけど」


「犯人かもしれない人と一緒にいるのも嫌!出てくるんでしょ!?解除したら!」


「じゃあ玄関のカギが開いたら確認してくれ。最悪そのまま逃げてもいい······!」


「逃げないよ······!いいよ!玄関で見てる」


結果3人バラバラで行動する事に決まった。


「1人1人、バラバラになっても大丈夫か?」


「もう安全な方法がどれなのかわからない······!でも、一番早く出られる方法はこれだと思う。俺たちは武装もしてるし······。リネーシャが大丈夫ならそれで行こう」


リョーマとリネーシャは部屋を出て、僕と執事が残された。

これでようやく黒泡邸から出られる。


そして部屋の牢は消え、リネーシャの声が聞こえた。


「ソーちゃ〜ん!開いたよ〜!」


「OK〜!ありがとう〜!」


玄関は無事に開いた。あとはこの執事をどうするか?

僕は念の為、リョーマを待つことにした。


「おまたせ〜!おぉ〜執事さん、縛りつけたのか」


「あぁ、警察に手紙を出しておくから、餓死する前に捕まるはずだ」


「玄関のカギは?」


「大丈夫!ちゃんと開いたってさ!」


そして黒泡邸の長い夜がやっと終わった。


夜が明け始めかすかに太陽の光が漏れていた。

僕はリョーマと黒泡邸から出、外の門で待っていたリネーシャと合流した。


「おお!リネーシャ!待っててくれたのか!」


「待ちくたびれたよぉ〜!」


「いつも間にか······朝だな」


「みんな自力で帰れる?」


「うん!ワタシはこっちだから!」


「OK!じゃあ今日は解散!警察には俺が届け出、出しておくから。落ち着いたらまた皆集まろう!」


「そうだな······!気をつけて······!」


              @@@@@


さぁ······あなたは黒幕が誰かわかりましたか?


実は······今の3人の中の1人が【黒幕なんです】。


              @@@@@


『さぁ〜て!2人をうまく撒けたので、今日来た本当の目的を果たさないとね』


意気揚々と黒泡邸に戻る1人の人物。


その人物が向かったのは()()()()()()()()()()()()()()

 

だが——————、


『あれ······いない······!」


縛り付けられていた執事は縄ごと消えていなくなっていた。


『おい()()()!ちゃんときつく縛っておけよ!あぁ〜厄介なことになったな······!パスワードを聞き出すつもりだったのに——————』


その人物の目的はエクスカリボーを手に入れる事だった。


『エクスカリボー!私の!エクスカリボー!!あぁ······そこだ!そこのエクスカリボー!······ない!?』


飾られていたはずのエクスカリボーは黒泡邸の主人の命とともに消え失せていた。


『ない!ない!ないないない!!』


エクスカリボーがあった空間をその人物は何度も触るが触れるのは空虚だけ、その人物の頭をよぎったのは——————


『さては執事あいつか······?勘付かれたな······?』


「えぇ······まさか本当にカスタネットさんを殺してしまうとは思いませんでした」


『ほう······そこに居たのか。エスクカリボーをよこせ。こっちには武器がある』


「ドッキリ企画のはずでしたよね()()()()()()


『ふふふふ!あぁそうさ。カスタネットのやつ、最期まで俺を信用してたよ。カスタネット殺害ドッキリ』


「えぇ······あなたがカスタネットさんを呼びに行くはずでした。まさか······本当に殺してしまうとは······」


『盗賊のカギがあったんでねぇ······。あんたを使って、2人をうまく別行動にしたかったんだ。本当は他の手を考えてあったがうまく行って良かったよ』


「素直に言って頂けて助かりました」


「なに!?」


執事は懐から弓と矢を取り出す。


「宝物庫は行けない様にしておいたハズだが······」


僅かな間で縄抜けと武装をしてきた執事だった。


『貴様、エスクカリボーを狙ってこの館の執事になったのか······?くそ······この大悪党め!』


「それはこちらのセリフです。大悪党さん」


そして執事は弓を引絞り——————。


              @@@@@


【ソーマの家】


ソーマは自分の家に投函されていた手紙を読む。


〔ソーちゃ〜ん!元気ぃ!?ねぇ見た······?都会の新聞でかすさんの家の記事のってたよ。殺人事件があったって。それにしてもびっくりしたんだけど、エスクカリボーが盗まれたって書いてあったよ?犯人はわからず······逃走中って······。でもそうだよね······カギ開けっぱで帰って来ちゃったし、村人の誰かが盗ったんだよきっと!でもおかしいよね······執事さん捕まらなかったんだ。どうやって逃げたんだろう······?カスタネットさん殺されて······無念だろうな。今度3人でお墓参り行こうね!それじゃ······ばいば〜い!〕


「はぁ······カスタネット、残念だ。まさか人を殺すような奴が紛れ込んでいるとはな」


そして彼は振り向く——————


「よく無事だったよ()()()」 


そこにはあの時と同じ執事服を着ていたラーバが立っていた。


「えぇ、ソーマ様から頂いた弓矢がありましたので」


「そう。ラーバから事前に聞いてたドッキリの流れじゃなかったからびっくりしたよ······。リネーシャも死体だと信じ込んでたし。宝物庫に行ったリョーマがカスタネットを呼びに行ったと思ったんだけど、そのまま帰る流れになったからもうびっくり。武器とか防具とか黙って持って帰るの嫌だったからラーバに預けただけだったんだけど——————本当に良かったよ」


「下見のはずでしたが時期が早まりましたね」


ソーマの手にはエクスカリボーがあった。


「そうだね!エクスカリボーを悪党に渡すわけにはいかなかったからね!予定変更して良かった!」


「はい。さすが怪盗ソーマ様ですね」


「いやいやいや!今回はラーバさんが居たからでしょ!計画と情報収集なら任せなさいって!」


ソーマはきらびやかに光るエクスカリボーをオーダーメイドの鞘に直す。

そしてニコッと笑い。


「じゃ!次行こうぜ!!」


【本来の計画とは違ったが、無事宝剣『エスクカリボー』を手に入れることが出来たソーマ。リョーマの死体はどこへ行ったのか?そんなことを考えながら、今日も相棒ラーバと一緒に新たなお宝を狙っている——————】

【アフターサービス】


元々4人は古くからの友人なのは事実。

しかしソーマの生業は【怪盗】であり、カスタネットのエクスカリボーを盗む計画を立て、ラーバを執事に仕立て潜入させた。

その際にソーマはカスタネットとリョーマとラーバで【カスタネット殺人ドッキリ】を知る。


1回目の地震はラーバが起こし、カスタネットがそれを見に行く。そしてラーバが閉じる。ソーマたちが来る間にカスタネットが死んだように偽装。そして3人が発見。ラーバ。見張っている間に本来呼び出しドッキリを報告するはずのリョーマがカスタネットを殺害。そしてリョーマは館から出て、もう一度戻る。そしてラーバと対峙した時にラーバがリョーマを殺害。そしてエクスカリボーを盗み、ソーマに渡した。


今回の伏線としては

① リョーマがタンスの下に小さくあったスイッチを真っ先に見つけた事(「何かあるかもしれないから探そう」なんて言っていないのに)。

② リョーマはカスタネットが死んでいる時「そもそもこちらは3人いる。はなれないようにしとけば大丈夫」と言っているか、執事が捕らえられている時ソーマが別行動すると言った際、リョーマは少し反対したが、リネーシャが「ワタシ死体見たくない」と言ったときそれを諦めた。

③ ②の時リョーマは「緊急解除スイッチはどこだ」と言った。確かに宝物庫にあるスイッチと言ったが、緊急解除スイッチなど一言も言っていない。

④ カスタネットが死んでいた時、リョーマは触れてもいないのに死んだと言っていた。

——————です。


この話の中でリネーシャだけドッキリを食らう事になった普通の友人でした。


配役的に言うと。

カスタネット——————被害者

リネーシャ——————友人

ソーマ——————友人(怪盗)

リョーマ——————友人(犯人)

ラーバ——————執事(ソーマの右腕)


と言う事になります。長々と読んで頂きありがとうございました。


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