8話〜お前も経験してみろ、屈辱と言うものを〜
書き上がりましたので投稿します。
今回はエレナに反撃します。
「オルディ!さっきからニヤニヤと気持ち悪く笑ってんじゃないわよ!!それにアタシを放ったらかしにして何二人でコソコソと話してんのよ!言いたい事あるならさっさと言いなさいよ!!」
神官から必要な事を聞きだした後の束の間、痺れを切らしたエレナが怒りながら叫んできた。
前までなら何時もの様にうんざりしてしまう自分だったが、今は違う。寧ろコイツをもっと怒らせたくなってしまう程、俺は今この状況を楽しんでいる。そうすれば後の展開がもっと面白くなる筈だ。
ただやり過ぎると物理的に攻撃して来る可能性もあるので、心惜しいがそろそろ次に移るとしよう。
「エレナ。キミに言いたい事があるんだけどその為に一つだけ、説明しなくてはならない事があってな?それは『生存力』について、だ。」
「・・・まあ、特別に聞いてあげるわ」
素っ気ない態度だが拒否ってわけじゃない様だ。コイツも気にはしてたんだろうし、このまま続けよう。
「これは分かりやすく言うと『自力で生活が出来て、生き続ける事ができる為の能力値』って事さ。で、ここからが本題だ」
俺は不機嫌な顔をしているエレナを真っ直ぐ見つめ言ってやった。
「エレナ。キミの『生存力』は、余りにも低いという事が分かったのさ」
「・・・は??」
言ってる事が分からないって顔してんな。丁寧に分かりやすく教えてやったのに、まあそんなに信じられないなら実際に見てもらおうか。
「アンタ・・・嘘付いて「エレナ、これを見てくれ」
コイツが喋りきる前に光の板の前に呼び寄せた。機嫌の悪い顔が更に悪化したが、そんな顔できるのも今の内だ。
「自分に書かれていた文字の部分をよく見てほしい。」
俺は見るべき部分を指しエレナ自ら読ませる様指示を出した。相変わらず気にくわない顔をしていたが
「はぁ〜、全く!これ見ればいいんでしょこれを!」
ブツブツと文句を言いながらも、一応見てはくれるようだ。
そして、そこに書かれていたものはと言うと
『E』:一人で生活するには絶望的。誰かに世話して貰わないと生きていく事が出来ず、最早それは赤ん坊である。
「一体それがどう・・・し・・・・・・」
その文章に目を通したエレナだったが、段々と喋らなくなりやがて止まってしまった。ついでに思考も止まっている様だが、壊れたのだろうか?
「こ・・・こ・・・こんな、の」
暫く様子見ていると再び活動を再開した。そして何か呟き出すと
「こんなの嘘に決まってんでしょうが!!!!!!」
急に大声で叫び出しながら否定した。おいおい、ここは神聖な場所だぞ。そんな馬鹿デカい声出したらダメだろ?
「違うとは言ってもエレナに記されたのはこの『E』だったじゃないか」
「ちがぁぁう!違う違う違う違う違う違う違う違う!!あれは間違い!間違いよ!!アタシが『E』な訳無い!!絶対にあり得ない!!!」
エレナは地団太を踏みながら俺の言葉を否定した。
はぁ・・・こっちがため息でるわ。まさかここまでだったとはな、自分が正しいと認められるまで意地を張り否定するのか。
だがこれは想定済みだ。
「なあ神官さん。エレナはこう言ってるけど、この水晶から示した言葉って間違う事あるの?」
今度はエレナにも聞こえる音量で、再び俺は神官に話しかけた。
「いえ、そのような事はまずあり得ません。何故ならその言葉は全て偉大なるカミが表したもの、それを信じないと言う事はカミを否定すると言っても過言ではありません。」
「ッ!?う・・・ぐ・・・ぅ」
神官は先程よりも真剣に言葉を返してきた。そらそうだ、神を裏切るという行為は特にこの神殿の者たちが許すわけがない。
神官の言葉によって、先程まで喚いていたエレナは黙り込んでしまう。流石に相手が神だと反論なんてできないわな。
「という訳だエレナ。神が示した言葉に間違いはなく、お前は紛れもない『E』なんだよ。ちなみに俺はと言うとな?」
俺は光の板に触れ最初の表示に戻した後、分かりやすく指してエレナに見せてやった。
「なんと『B』だったよ!まさかエレナよりも優れていたなんて思ってもみなかったよハハハハ!!」
「!!!そ・・・そん・・な・・・、アタ・・・シ・・・が・・オルディ、より・・・」
笑う俺を前に、エレナは敗北と共に屈辱とも言える表情を向けてきた。良い気分だ、エレナに仕返しできる日が来るなんて思ってもみなかった。だが俺はこんなもので満足はしない、もっと屈辱を味わえ!
「そもそもさエレナ?俺が何も知らないと思ってるんだろうけど、お前本当は『お母さんに手伝ってもらわないと何もできない女の子』なんだろ??」
「!?!?!?!?」
そう言ってやった途端エレナの顔が一気に驚愕の表情へと変わった。
『信じられない』『どうしてそれを』『何故オルディが』とか思ってそうな顔してるな。余りの衝撃に口がパクパクと動いているが、このままではつまらないので俺は丁寧に教えてやることにした。
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これは俺が14歳の時、何時ものようにエレナに振り回されようやく解放された後の事だった。
普段なら俺はヘトヘトの状態で家に帰るのだが、その日はどうしてもアイツの面を見返してやりたいと思いコッソリと後を付いていった。
エレナは身体能力も高く五感も優れているため、こういう事は無謀とも言える筈だったのだが途中からエレナの母親が現れ、喋りながら一緒に帰っている故か気付かれずに済んだ。
やがて見えたエレナの家は非常に豪華で、この町では他に何処にもない門が付いた二階建ての屋敷だった。
幸いにも門に鍵をかけていなかったため俺は二人が家に入ったと同時に、門を潜り侵入したが流石に家の中までは入れなかったので、食卓が見える窓の下でひっそりと隠れていた。
すると複数の足音が食卓に集まってきて、その後食事を始める音が聞こえだした。
間も無くしてエレナの声が聞こえたのだが、その言葉に衝撃が走った。
「ママ、ママ!ご飯食べさせて!」
「はいはい」
言ってる意味が分からなかった。食べさせて?ゴハンを??14にもなって母親にねだってる!?俺は確かめる為にゆっくり頭を上げ窓の向こうを見た。するとそこには
「はい。あ~ん」
「あ~・・・むっ、!ママ!美味しい!」
小さい子供に付ける様な前掛けをしたエレナと、ニコニコしながら口にゴハンを持っていき食べさせている母親がそこにいた。あの獰猛な幼馴染からは想像もできない状況に、俺は食べ終わるまでその光景を見続けていた。だが、エレナの行動はここでは終わらない。
「ママ!ママ!一緒にお風呂に入ろ!それでママにエレナを洗ってほしいの!その後はね?夜は暗くて怖いから、ベッドまで手を繋いで一緒に付いてきて欲しいの!それでエレナが眠るまで頭を撫でながら子守唄を歌ってほしい!」
何と更に、それも凄さまじい勢いでエレナは母親におねだりをしたのだった。
「はいはい。エレナは本当に『お母さんが居ないと何もできない女の子』ね?」
「ママ・・・だめ?」
目をウルウルとさせながら上目遣いで母親を見つめた。それに母親はしょうがない子ね、と言いながらエレナの頭を優しく撫でると顔をパァッと明るくさせ抱きついた。
ま、まさか・・・こんな秘密があったなんて。余りの出来事に戦慄していると、エレナの顔が急に曇り出した。するとお尻を抑えモジモジとしながら母親に
「ママぁ・・・エレナ、う〇ちしたい。」
「あらあら、それじゃあおまるを持ってくるから少し待ってなさい」
俺は全速力でそこから逃げた。最後の最後でヤバい言葉が聞こえたような気がしたが俺は知らない何も聞こえていない。兎に角エレナの弱みを知ったのはいいんだが、これをバラすのは今じゃ危険すぎる。だから今は待つことにしよう、アイツにこの事を言える日が来るまでは。
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「・・・とまあ、こうした理由があってエレナの秘密を知る事ができたのさ。どのタイミングで言ってやろうかと思ってたけど、まさか今日言える日が来るなんてなぁアッハッハッハッハ」
「ぁ・・・ぇ・・・っ・・・・」
もはやまともに言葉すら話せれないようで、特に顔色なんかが蒼白になっている。周りの神官達は唖然とした顔で俺とエレナを見ていた。あれからどうなったかは知らないけど、未だに生存力『E』って事は今でもお母さんのお世話になってるんだろうなぁ・・・
さて、エレナもいい具合だし次の話で終わらせてやろう。
「そうそう笑える話で思い出したよエレナ、確かこれは互いに12歳の時だ・・・」
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その時俺はエレナに山の近くまで連れてこられてたんだ。そしてある場所でエレナが立ち止まって俺に言ってきた。
「オルディ!『紅狼』であるアタシになるとね?これ程の岩だってラックラクに持ち上げることだってできるのよ!!」
エレナが指差して見せたのは、見上げるほどの巨大な岩だった。当然ながらそれは人間が一人で持ち上げられるような岩ではないことは確かだ。それをエレナは一人でできると豪語してきたのだ。まさかそれを見せるためだけにここまで俺を連れてきたというのかコイツは。
「だから見ていなさい!このアタシがこの岩を持ち上げる瞬間を!!」
俺を自身の隣に誘導させた後、エレナは中腰の状態で岩を両手で支えながら力み始めた。だが肝心の岩はピクリとも動かない。
「な、なあエレナ・・・さすがに無理があるんじゃ」
「んなわけ・・・ンギギ!ない、わよ!!グギギギ!!!アタシに!出来ない事なんて!!ある訳無い!!!」
歯を食いしばりながらもエレナは諦めようとはしなかった。というか一体何がコイツにここまでさせるのかが理解できなかった。
「ふぅ・・・ふぅ・・・次で、持ち上げるわよ」
「お、おう」
一旦呼吸を整えるために姿勢を戻し、暫くして再び持ち上げる体制になった。
「ふんんんんんんんんんん!!!!!!!」
先程よりも大きな声を上げながら力んだエレナだったが
ぶううううぅぅぅぅぅぅぅううううううっ!!!
「・・・えっ?」
「_______ッ!?!?!?」
い、今聞こえたのって・・・
明らかにエレナのお尻から聞こえた大きな音、それが何であったかは言わなくてもわかる。どうやら力み過ぎて臭い風を起こしてしまったようだ。
エレナは時が止まったかのように動かなくなった。だが顔は耳まで髪色と同じぐらいまで染まり、目はグルグルと渦を巻いている。
「あの・・・エレナ?」
するとエレナは俺の声には問いかけずに、クルリと半回転した後無言で早歩きしはじめた。
「エ、エレ「今日は帰る!!!」
それだけ言うとエレナは全速力で家まで走り去っていった。その日以来、アイツがあの岩に近づく事は二度となかった。
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「いやぁー、あの時は驚きが強すぎて何も言えず終いだったけど、今思うとこんなに笑える話はさっきの話と合わせてそうそう無いな!まさかエレナが俺の隣であんなでっかい「ぐすっ・・・」ん?」
何か泣く声が聞こえた気がしてエレナを見ると、俺は目を見張った。何とエレナが目に涙を溜め、鼻水をすすりながら俺を見ていた。あの威張る事と怒る事しかしないエレナが、俺を前に涙目になっているのだ。
エレナに話しかけようと思った束の間
「うええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええんんん!!!!!!!」
「!?」
エ、エレナが泣き出した!?軽く握った手を目の下に当て目からは涙がボロボロと流れ落ち、鼻水も凄いことになっている!
「オルディがア゛タ゛シ゛をいじめるうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああんんんん!!!!!!!」
「え?え、え、ええええ!?俺のせいかよ!?!?」
その後神官達がエレナを宥めていたが一向に収まる気配はなく、終始が付かなくなった為親を呼んだ事でようやく泣き止んだ。その時エレナが無茶苦茶な事を言い出しそのせいで向こうの親から色々責められたが、俺はむしろ被害者だし元々お前が元凶だろうが!と心で叫びながら適当に謝って事無きを得た。
こうして俺のプチ仕返しが終了した。
自分の作品を見ていただいてる皆様方、
ブックマークや評価を入れていただきありがとうございます!
これからもこの調子で書き続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
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