13話〜エレナ、決意する〜
大変長らくお待たせしました!
書き上がりましたので投稿します
今回はエレナのお話前編になります。
これはオルディと別れた後のエレナのお話。
エレナ両親は自分の娘が勇者の名を授かった事に歓喜し、直ぐにそれを町長に伝えると今度は町長が街全体の住人にそれを知らせ、町全体が歓喜の渦に飲み込まれる。
それから僅か数時間後、エレナ宅では壮大なパーティが開かれたのだった。
豪邸の庭には大量のテーブルと椅子が置かれ、エレナ宅のサービスで料理もたくさん用意されており、住人達が飲み食いしながら町長が呼んだ演奏者と共に音楽に合わせ歌ったり踊ったり大騒ぎだ。
豪邸に入りきらなかった人々はそれぞれの場所で楽しんでおり、最早それは町全体がパーティ会場の様だった。
そしてエレナはと言うと、家の一番大きな部屋を急遽改造し辺りがキラキラの飾り物で覆われたパーティ部屋で、真紅のドレスを着て頭には煌びやかな王冠を付けた状態で立派な椅子に座っていた。更に彼女の上には「エレナは勇者!」とでっかく文字で書かれたモノが。
「さあさあ皆さん!我が家自慢の娘であり勇者エレナと握手出来るのは今日しか無いですよ!!」
「どうぞ、娘の顔をしっかり覚えて下さいね!」
そんなエレナの左右には両親が居て二人ともバッチリとしたパーティ用の服を着ており、両手に何かしらの箱を持ちながらニッコリと満面の笑みを絶やさずに大声を出した。
何故なら娘の前には非常に長い行列が出来ているからだった。
エレナの事が知れ渡った後、突如勇者になった彼女と握手を求める人々が現れ出した。
けれど流石に全員するには時間もかかるしエレナも迷惑になるだろうから、条件として娘と会いたかったらそれなりのお金を渡す様皆に伝えた。
「銀貨を1枚払えば、握手が出来ますからねー!」
因みに銀貨1枚の価値は銅貨100枚分であり、それで二週間分の食事代か王都の良い宿で一泊出来る程の値段がする。それでも決して安くない金額を払って彼女に会う人々を見ると、今のエレナはまさにアイドルの様な存在だろう。
「未来の勇者と握手出来るなんて光栄です!カミはあなたこそが勇者に相応しいと初めから知っていたんですね!まさにその通りだと私は思ってます!!」
「ふふっ、ありがとうございます」
感激の表情と共に凄く早口な人に対し、エレナは優雅に笑みを浮かべながら接していた。
おそらく親の教育だろう、今の彼女はオルディと一緒に居る時のワガママぶりは無く、まるで名家のお嬢様の様な雰囲気を漂わせていた。
だが
「(オルディィィィィィィ・・・!よくも、よくもこのアタシを泣かせたわねえええええ!!)」
それは表面であり、内心ではオルディに対する地獄の業火の様な怒りが微塵も絶えずに燃え盛っていた。
あの時に己のプライドを傷つけられたのだ。それは自分が満足するまでオルディを徹底的に叩きのめさない限り収まる事は無い。
本当なら今すぐにでも殴り込みに行きたい位だが、自分が主役のパーティを抜け出す訳にはいかないし、何より今自分が着てるドレスは一番のお気に入りなので絶対に汚したくない。
明日だ。
「(明日の朝にオルディに殴り込みに行く。そして二度とアタシに逆らえない様にギッタギタに教育してやる!!)」
そう物騒な事を考えながらエレナは優雅に微笑み、握手会を続けたのであった。
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楽しいパーティが終わり夜も深みを増した頃、先程の騒々しさは無くなり家の中はいつも通り家族3人だけとなった。
「今日はとても素敵な一日だったわ。エレナのお陰で我が家の名も更に知れ渡るでしょうねぇ」
「そうだな。先程も町長からエレナの名を是非とも町の為に広めさせて欲しいと交渉があった。ここの品物を勇者が生まれ育った町から作り出されたモノと王都に教えれば、更に売り上げが上がるのではないかと!当然それに合った金額を家に入れる様に言ったがね。町長もそこはしっかり分かってくれて何よりだよハッハッハ!!」
二人はそう言いながら互いに大笑いした。
「それもこれも、全てエレナのお陰よ♪」
「ふふん!アタシは特別なんだから、これくらい当然よ!ママ、パパ!!」
とママがエレナを片手で抱き寄せた。言っている内容はよく分からないが、どうやら自身のお陰という理由で両親の機嫌はかなり良い。
どんな事も褒めてくれるパパとママはアタシの大好きな人。二人の為なら何だって出来るんだから!
だから、だから・・・アタシは今日、覚悟を決めなければならないんだ。
「あ・・・あのね?ママ。」
「なあに、エレナ。」
深呼吸を何度か繰り返した後、目を真っ直ぐママに向け自分の言いたい事を口に出す。
「き、今日からは・・・お風呂も寝る時も一人でするわ!」
「・・・・・・ぇ?」
それを聞いた途端ママは笑顔のまま固まった。
パパは目を見開き、口は開いたままで衝撃を受けた様な表情をしている。
二人共まるで時が止まったかのように動かなくなり、それが数十秒程続いた。すると今度はママがフルフルと震え出し始め・・・
「エレナ!!」
ガシッ
「ヒャアアッ!?!?」
突如ママが自分の肩を両手で掴みだした。それに凄くビックリしてつい変な声が出てしまう。
「い、一体、どうしたの!?そんな事を言い出すなんて・・・アナタに何があったの!?!?」
そう言いながら自身の娘の肩を前後に揺さぶり出した。普段は優しい母親なのだが、今の発言で性格が豹変する程衝撃を受けてしまった様だ。
「マ、ママ!ママ!お願いだから落ち着いて!!」
「落ち着けるわけないじゃない!あんなにママ、ママと私を求めていたエレナが、急にそんな事を言うなんて!!」
必死になって宥めようと努力するが、肝心のママは剣幕の様な表情を一切止めず自分をグワングワンと揺さぶっている。
このままでは埒があかない・・・なら!
「ゆ、勇者になったからには!いつまでも甘えるわけにはいかないからよ!!」
途端に思いついた言葉をママに伝えた。
「・・・えっ?」
どうやら効果はあったようで、それを聞いた途端ママはピタリと止まった。
この調子で更に言葉を重ねる。
「アタシは勇者に選ばれたのは事実。でも皆が憧れる勇者はどんな時も一人の力で何とかしなきゃいけないの。だから欠点はあってはダメ!・・・それがアタシが望む勇者だと思ってる。」
「エレナ・・・」
とは言うが、本当はオルディにバレた自分の何もできない欠点を克服するのが理由だ。だが本音を言うわけにはいかないので、何とか通じる嘘をママに伝える。
すると
「アナタは本当に偉い子ね・・・自分から親離れを望むなんて。お母さんは今までそんな事を考えてなかったわ」
そう言いながらママは、アタシをそっと抱きしめた。
「たしかに・・・父さんも、エレナはこれからもずっと私達を頼ってくると思っていたよ。もちろんそこに不満などは無い。三人でこれからも幸せに暮らせれるのならどんなエレナでも私は愛するつもりだったさ。けど自ら独り立ちを望み、辛く険しい道を進む事を決意するとは・・・やはりエレナは自慢の娘だ!」
と言いながらパパは涙を拭った。自分のせいで何か勘違いをさせてしまっているが、二人を分からせる事ができたのでまあ・・・これでいいや。
それにパパは辛くて険しいだとか言ってるけど、一人でするくらいなら問題ないわよ!全く、大袈裟なんだから。
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