第1章『赤ずきんは恋を知らない』
白色のカッターシャツに灰色のカーディガン、赤色と黒色のチェックのスカートを履いている私は胸元にある黒色の無地のネクタイを整えながら目的の場所に向かい歩いているとき肩を叩かれた。
誰が私の肩を叩いたのだろうと不思議に思いながら振り返ると、耳には無数にピアスをつけ、手の甲には蝶のタトゥーを入れている見知らぬ男性が下心ありげな笑顔を浮かべ立っていた。
「ねぇ、俺と遊ばない?」
男性の言葉を無視して歩く。
あからさまに拒否の態度を取っているのに男性は私を誘う言葉を投げるのをやめることはなく私が逃げないようにするためか右手を強く掴んだ。
今日は大切な日だから誰かに構っている時間なんてないのにと心の中で愚痴をこぼしつつ、どうやって撒こうかと考える。
「すいません。急いでいるので」
「その割には歩いているよね。ホントは急いでないんじゃないの、急いでるんだったら普通は走るよね」
たしかに急いでいるのなら走ったり、自転車を漕いだりなど少しでも早く移動できる手段を使うと思うけれどその手段が使えない場合もある。
「申し訳ございません。本当に急いでいるので手を離してもらえないでしょうか」
「素直に手を離すと思うか」
「いいえ、全く思っておりません。なので、こうさせていただきます」
体の中にある空気を吐き出せるあたり吐き出して、鼻から新しい空気だけで体が満たされるくらい吸い込んだら口を大きく開けて
「助けてくださいッ」
そう叫ぶと男性は驚き、掴んでる手の力を緩める。その隙に手を振り払い走り出したとき、何かが胸を貫いたのか血が流れ、服が血で染まっていった。不思議なことに痛みはないためポケットからハンカチを取り出し、血をこれ以上流さないように抑えようとしたそのとき、ほんの少しだけ青色を下地とした銀髪のショートヘア、暗めの赤色の目、赤色のコスモスがプリントされた白色のローブを身につけた十二歳くらいの少年が突如現れ私の目の前に立った。
「やっと見つけたよ、僕の新しい契約者さん」
少年は曇りひとつない笑顔だそう言った。言葉の意味は気になるけれど私は一秒でも早く目的の場所に行かないと行けないから少年の横を通り過ぎたとき、先程まではなかった眠気に襲われたため視界がボヤけ、身体の力が抜けていった。
「無理に動いたらダメだよ。君はもう死んだんだからさ」