タウン七不思議。ポストの怪人
このタウンには七不思議がある。この七不思議は、何故だか暖かい。
私の家は、住宅地の奥にある。
タウン開発当初の予定では、山を切り崩し大きな道を作りグルリと円を書くように町は完成する予定だったのだか、軒並み経済は傾き、半円を描いたのみで開発は終了した。むやみに広い道路は、唐突に金網に阻まれる感じておわっている。
終点のバス停から10分ほど坂道を登った所に私の家はあった。キチンと整列した家並に、人は住み生活している。朝は、バス停に並ぶサラリーマン。送迎の自家用車がかっとんでいる。しかしその喧騒はあっという間に終わり、息を殺したような昼間がやってくる。蝉の声がワーンと耳に届いているのに、太陽がジリジリという音を立てているのが聞こえる。テカテカと赤く四角いそれは、バス停の5メートル手前で立ち尽くしているように見えた。
私は手紙を握りしめて、ため息か息切れかわからない呼吸をしながらのそのそとそれを目指していた。
唐突に私の横をすり抜ける気配を感じ、身を縮こませて立ち止まる。自転車か?異様なスピードの滑らかさに鳥肌が立った。それはピタリとポストの前に止まっている。白く人型を靄のようなもので形作っており、腕の先には鉈をかたどっている。大きくそれを振り上げ、振り下ろす。ポストは真っ二つに切れて中に入っていただろう手紙の類が、ハラハラと地面に落ちた。地面の支えを失ったポストの半分は、パッカリと大きな口を開けるようにゴロンと転がっている。靄の人型は振り返ったように思えたが、道を横断してそのまま消えた。
「ああ」と思わず声が出て、握りつぶしてしまった白い封筒を見る。何日も悩んで、昨日やっと出席に丸を付けたのに。母の再婚相手の連れ子として友也兄さんはやって来た。暗くて寂しい食卓は、あっという間に笑い声溢れる場所となった。私は何より家族の団欒が好きだった。だから兄を愛してしまった私は、怖くて遠くに逃げたのだ。
結婚式には妹として出席するべきなのだと思った。
「嫌だな」声に出して言ってみる。
ポストをブッタ切ったモノが消えた方向を見つめる。
無理やり妹の顔をするのはやめよう。
いつか「おめでとう」と笑って言う私の顔が見えたきがするから。
歩いて近づく、勿論ポストはテラテラと光りながらそこにあった。
タウンの都市伝説、この辺の高校生は「ポストの怪人」と呼ぶらしい。ポストを切る意味は誰も知らない。
ただ、怪人を見た人がポストに手紙を入れる事は無い。
二つ目を考え中です。