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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第9章・トラック野郎と新しい生活』
98/273

98・トラック野郎、新体制

 夕飯の買い出しをして会社に戻ると、驚きの光景が広がっていた。

「ち、ちくしょう………」

「わたしの勝ち」

 膝を突くボロボロのシャイニーと、汚れてはいるがほぼ無傷のコハク。

 どうやら勝負はコハクが勝ったみたいだ。だがコハクは汗びっしょりで肩で息をしている。コハクにとって勝負はギリギリだったみたいだな。

「社長、これは一体?」

「ああ、コハクに新しい武器をプレゼントした。そしたら二人が模擬戦をするって言ってな」

「なるほど」

 しろ丸を抱っこしたキリエはすぐに事態を飲み込んだようだ。

 キリエは優しくしろ丸を撫でている。

「あ、ご主人様。おかえり」

「ただいま。勝負はコハクの勝ちか?」

「うん。でも危なかった、シャイニーは強い」

「······お世辞はいいわ。アタシの攻撃は殆ど避けられたし、アタシはあんたの動きが殆ど見えなかった。今のアタシじゃどう足掻いても勝てないわ」

 シャイニーは自分がコハクより弱いことをあっさり認めた。

 自分の弱さを認めることが出来るのは、強さの証だと思う。

「確かに、今はわたしが強い。でも、シャイニーは気付いていない」

「え?」

「シャイニー、わたしの最後の三撃、躱せなかったけど対応してた。今日初めてわたしと戦ったのに、僅かな攻防でわたしの動きに対応した······本当に、驚いた」

「·········」

「シャイニー、まだまだ強くなる。わたし、追いつかれるかも······だから、追いつかれないように頑張る」

「コハク······」

「シャイニー、これからも模擬戦に付き合って」

「ふん。今に見てなさい」

「負けない」

 コハクはシャイニーに手を差し出すと、シャイニーはその手をガッチリ握る。

 なんかあれだな、不良同士がケンカして意気投合するような、そんな感じがする。

「あー、なんかオナカ減ったわね」

「うん。ご主人様、ごはん」

「はいはい。頼むぜ、ミレイナ」

「はい。任せてください」

「私も手伝います。ミレイナ」

『······うなぅ』

 あ、しろ丸が起きた。

 ご飯の単語に釣られたのか、キリエの腕の中で甘えるように身体を擦りつけている。

「はいはい。ご飯にしましょうね」

『なぉーん』

 キリエがしろ丸を撫でると、ミレイナ達も代わりばんこに撫でまくる。

 さてさて、しろ丸のためにもご飯にしますかね。




 食事が終わり、女性陣達は各々の時間を過ごしてる。

 コハクはしろ丸を連れて風呂、ミレイナは読書、シャイニーは武具の手入れ、キリエは自室に設置してある簡易祭壇に祈りを捧げていた。

 俺はと言うと、トラックの運転席へ座っていた。

「タマ、明日からコハクも働くけど、運転に問題はないんだな?」

『はい。現時点での運転技術は社長を遙かに上回ります』

「そ、そうか」

 なんだろう、この気持ち。

 友人に勧めて貸したゲームが、自分より遥かにやりこんでるデータを見てショックを受けたような。

「えーと、そういえばエブリーも強化出来るんだよな?」

『はい。新項目【従車強化】から強化可能です。項目を表示しますか?』

「頼む」

 いくら運転技術があるとはいえ不安は解消すべきだ。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【従車強化】

 [車内設備購入][車体強度][車体カラー変更]

 [車体装飾][トラックウェポン強化][ドライバー変更]

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「なるほど、トラックウェポン強化ってのは?」

『従車は全てデコトラカイザー専用武器に変形します。現在の所有車は軽ワゴンのみ。[トラックウェポン]は《エブリストライカー》のみ使用可能です』

「エブリー、ストライカー」

 なんかカッコいいな。

 試して見たい気持ちもある。

「いや、今は強化が先だ。まずは強度を上げるか」

『畏まりました』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

[車体強度] 必要ポイント500

 ○車体強度 LV1 

 ○エンジン出力 LV1

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「これだけか。トラックと比べて少ないな」

 まぁいいや。とりあえずレベル一〇まで上げておこう。

「タマ、レベル一〇まで上げてくれ」

『畏まりました』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

[車体強度] 必要ポイント500

 ○車体強度 LV10 

 ○エンジン出力 LV10

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「よし。次は車内設備だ」

『畏まりました。車内設備を表示します』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

[車内設備] 

 ○カーナビ[20000] ○オーディオ[10000] ○香水[300]

 ○クッション[1000] ○ドリンクホルダー[500] 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「なんか普通だな……」

『あくまで従車ですので。レベルが上がると項目も増えます』

「うーん……じゃあ、とりあえずカーナビでいいか」

『畏まりました』

 ポイントに余裕はあるし、ちょっとお高いけど仕方ない。

 シャイニーはともかくコハクは周囲の地理に疎いし、必要経費だ。

「とりあえずこんなもんか」

『お疲れ様です』

「明日から暫くは俺と二人で配達だ。よろしく頼むぜ、タマ」

『こちらこそよろしくお願いします。ですが一つ訂正を。私は人間ではありませんので、二人という表現方法は間違っています』

「バカ言うな。一緒に働く同僚なんだ、それにお前は姿形こそトラックだけど、心は立派な人間だと思うぞ」

『回答不可』

 俺は忘れてない。

 初めてデコトラカイザーに変形した時、あの時のタマはサポートではなく自分の意思で俺に救いの手をさしのべてくれた。

 玄武王を倒せたのもタマのおかげだし、俺の中ではタマは最高の相棒で友人だ。

「なんか照れくさいな······とにかく、明日から頼む」

『·········』

 タマからの反応は無かった。

 もしかして照れてるのか? なーんて思ってしまった。




 翌日。俺たちは全員制服に着替え、事務所で始業の挨拶をしていた。

 新しくコハクの机も入れたので、事務所の模様替えもした。

 ミレイナとキリエ、シャイニーとコハクを隣り合わせにして机を合わせ、四人が向かい合わせになるように位置を変える。俺はその四つ合わせの机の前に社長用デスクを置き、四人の顔が見れるような位置に来た。

 ちなみにしろ丸はカウンター上の座布団。

 何故かカウンター上を気に入ったので、とりあえず邪魔にならないようにカウンターの隅に置く。

 俺はみんなの顔を見ながら、今日の予定を話す。

「えー、今日からコハクも一緒に働く。コハクはシャイニーと一緒に、エブリーに乗って周辺集落を回ってくれ」

「はい。ご主人様」

「それと、安全運転で頼むぞ。緊急時以外スピードを出しすぎない事、集落内は最高時速三〇キロまで落とすように」

「はい。ご主人様」

「シャイニー先輩の言うことをちゃんと聞くこと」

「はい。ご主人様」

「よし。じゃあ細かい仕事はシャイニーから教わってくれ」

「はい。ご主人様。よろしくシャイニー」

「むふふ、先輩に任せなさい!!」

 ちょっと不安だが大丈夫だろう。

 するとキリエが挙手をした。

「社長。社長は一人ですが……平気なのですか?」

「そーよ、アタシがいなくて一人で配達出来るの?」

「ふ、甘いな。こう見えても運送歴はお前より長いぜ。それに……一人じゃない」

「ふふ、タマさんが居ますもんね」

「ああ。頼りになるパートナーだ」

 キリエとシャイニーは失言と感じたのか、それ以上は言わなかった。

「さて、今日も一日よろしく頼む」

『うなーお』

 俺の挨拶と同時にしろ丸が鳴き、俺たち五人は笑いに包まれた。

 こうして、アガツマ運送会社はコハクを加えた新体制で仕事を始める。

 配達が早く終われば、その分事務仕事に時間を当てられるし、週休二日も夢じゃない。まずはコハクに仕事を覚えさせて慣れて貰う。

 やることはたくさんある。一歩ずつ進んで行こう。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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