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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第8章・トラック野郎と新車と新入社員』
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96・トラック野郎、コハクにプレゼント

 この一週間、コハクの運転はプロドライバー並に上達した。

 ぶっちゃけあり得ない。俺より上手いし。

 今日は休日で、明日からコハクは従業員として働く。なので今日は頼んでいた制服を取りに行ったり、コハクの部屋の道具を買いに町に出た。

「キリエは教会か。相変わらず大変だな」

「いいんじゃない? 本人が楽しんでるみたいだし」

「それに、しろ丸も一緒ですからね」

 今日はトラックで町に出てる。

 コハクの部屋には毛布しかないので、ベッドやら机やらを買ってトラックに載せるためだ。

「ご主人様、この車も運転してみたい」

「あー······悪いな、これは俺しか運転出来ないんだ」

「そうなの? ざんねん」

 トラックを見るコハクは残念そうに肩を落とす。

 そして、ミレイナとシャイニーは居住ルームへ、コハクを助手席に座らせ買い物へ出かけた。

 最初に寄るのは服屋で、頼んでおいたコハクの制服を受け取る。そしてスターダストで買い物をして、家具屋でベッドや机を買う予定だ。

 給料日までまだまだあるし、一つくらい好きな物を買ってやるか。

「コハク、何か欲しい物であるか?」

「え?」

「明日から仕事で頑張って欲しいからな。一つくらいなら好きな物を買ってやるよ」

「ホント⁉」

「ああ」

 目をキラキラさせて俺にすり寄ってきた。

 こらこら、運転中はじゃれつくなって。可愛いけどね。

「あのね、ご主人様、欲しい物あるの‼」

「お、おお。なんだ?」

 グイグイ来るな。

 なんか興奮してるし、どうしたんだ?

「わたし、武器が欲しい‼」

 そう答えたコハクは、とても輝いて見えた。




 まさかの武器ですか。

 意外っちゃ意外······でもない。

 コハクは格闘家みたいだし、素手でも強いけど武器があれば尚強い。

 買い物を一通り済ませ、俺たちはゴンズ爺さんの武器屋にやって来た。

 代わり映えしない武器屋のカウンターに、競馬場に居そうな爺さんが新聞紙を広げている。あまりにもベストマッチな光景に安心感すら覚えた。

「いらっしゃい······おお、兄ちゃんにシャイニーブルー、それとお嬢さんも。何だ何だ、今日はどうしたんだい?」

「こんにちはゴンズ爺さん、今日は武器を買いに」

「かっかっか、そりゃここは武器屋だしなぁ、武器を買いに来たのは当たり前だろうさ」

 そりゃそうだ。暇つぶしにお茶を飲むような仲でもないしな。

「ん? 見ない顔の嬢ちゃんだな。武器はその子かい?」

「はい。ええと······」

「武器、壊れない籠手をちょうだい」

「ほう、格闘家か······」

 ゴンズ爺さんはコハクをジロジロ見てニヤリと笑う。

 その視線はミレイナより立派な乳に注がれてる。このエロジジィめ、どこを見てやがる。

「ちよっと、そこのエロジジィ······しばくわよ」

「な、何も言っとらんじゃろうが。嫉妬は見苦しいぞシャイニーブルー」

「殺す」

「しゃ、シャイニー落ち着いて」

 殺気を漂わせ始めたシャイニーをミレイナに任せ、俺はジト目でゴンズ爺さんを見た。

「あのー······」

「かっかっか、すまんすまん。年寄りのささやかな楽しみ、見逃してくれぃ」

「?」

 コハクはわかっていない。

 可愛いらしく首を傾げてキョトンとしてる。

 ゴンズ爺さんは真面目な顔になると、コハクにいくつかの質問をする。

「嬢ちゃん、格闘歴はどのくらいだ?」

「十七年。生まれてすぐに訓練を始めた」

 どうやってだよ。

 ゴンズ爺さんも気にする事なく質問をする。

「今まで倒したモンスターの中で、一番強かったのは?」

SSダブルレートの『エレファントグリズリー』かな。わたしの打撃が効かなくて焦った。油断して飲み込まれたふりをして、体内をグチャグチャにして倒した」

 何こいつ怖い。

 ミレイナもシャイニーも唖然としてる。

「これまで、どんな武器を使った?」

「モンスターの骨や外殻を加工したグラブとレガース。でも何回か使うとすぐに壊れちゃった」

「なるほど······」

 ゴンズ爺さんは話を聞きながらパイプを吹かす。

 するとシャイニーがこっそり教えてくれた。

「ゴンズは初心者にいくつかの質問をして、その質問の結果から本人に合った武器や防具を勧めるのよ」

「そういえば、私のときもそうでした」

 ミレイナの時もそうだったのか。

 すると質問が終了したのか、ゴンズ爺さんはパイプの灰を灰皿にトントンと落とす。

「ふーむ······こりゃすごい。ニーラマーナやシャイニーブルーよりも光るセンスを感じる。嬢ちゃんなら預けてもいいかもな」

「ちょ、アタシよりもですって⁉」

「かっかっか、わしの目利きに狂いはない」

「ぐぬぬ······」

 ゴンズ爺さんは立ち上がり奥へ引っ込むと、古ぼけた大きな箱を抱えて戻ってきた。

「嬢ちゃんにこいつをやろう。少し古いが性能は保証する」

 そう言って箱を開けると、中には立派な籠手と靴と一体型の脛当て、グリーブが入っていた。

「うお、すげぇ」

「おぉー」

 色は鈍い銀色で、複雑な装飾が施された籠手とグリーブ。

 古いなんてとんでもない。どう見ても新品だった。

「こいつには魔術が掛けてあり、装備者に合うサイズに変化する機能が付いてる。付けてみろ」

「うん」

 コハクは肘まである籠手を両手に装備し、膝上まであるグリーブを履く。すると一瞬だけ淡く光り、コハクにフィットするサイズに変化した。

「こいつは『破龍拳グラムガイン』って呼ばれてる伝説の武器の一つだ。かつての勇者パーティーの一人が使った武具で、魔力を開放すると戦闘形態に変形するらしい」

「それって······太陽達の武具と同じ?」

「今の勇者パーティーの武具より数段劣るが、それでもこいつは破格の力を持つ。聖剣の技術はスゲーダロでも限られた技師しか使えない禁忌に近い技術だからな、こいつを作るのは普通の技術じゃ不可能だ」

「えーと、なんでそんなモンをゴンズ爺さんが?」

「ま、ちょっとしたツテでな。大昔に破壊された武具を譲って貰い、わしがチョチョイと修理したんじゃよ」

「で、でも、勇者パーティーの武具の技術は禁忌だって······」

「ふふふ、わしに直せない武具はない。それが禁忌でもな」

 とんでもない爺さんだ。

 競馬場に居そうな爺さんが、こんなすごい爺さんだったなんて。

「嬢ちゃん、軽く魔力を流して念じてみな」

「······えい」

 コハクが魔力を流すと、籠手から三本の爪が飛び出した。

 まるでウルヴァリンみたいだ。

「そいつが『龍虎爪』だ。他にもいくつかのギミックが仕込まれてるから試してみな。そいつなら嬢ちゃんの力にも耐えるはずだ」

 そりゃすごい。しかし気になる事が一つ。

「あの、おいくらでしょう?」

「やるよ。もともと売りモンじゃないし、わしが持っていても仕方ないからのぅ」

 つまり、タダ。

 ありがたいけど流石に申し訳ない。

 すると、新しい武具にウズウズしたのか、コハクはシャイニーに向き直り言う。

「シャイニー、手合わせして」

「奇遇ね、アタシも同じ事を考えてたわ」

 二人は既に戦闘モード。

 おいおい、ここで始めるつもりじゃないだろうな。

「こらこら、そういうのは家に帰ってからにしろ」

「わかってるわよ」

「うん。ご主人様」

 シャイニーは手を振ると、店の外へ出ていった。

「おじいちゃん、ありがとう」

「いいさ。壊れたり破損したら持ってきな」

「うん」

 コハクはペコリと頭を下げて店を出た。

「その、ホントにタダでいいんですか?」

「構わんよ。長く冒険者を見とったが、あんなに面白そうな嬢ちゃんは初めて見たわい。あれを使いこなすだけの実力はあるじゃろうな」

「ありがとうございます。このお礼は必ず」

 俺は頭を下げて店を出ようとして、ミレイナを呼ぶ。

「嬢ちゃん、たまには遊びに来てくれや。年寄りの目の保養としてな」

「は、はい」

 ミレイナ、そこは真面目に返事しなくてもいいぞ。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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