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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第8章・トラック野郎と新車と新入社員』
88/273

88・トラック野郎、送迎を頼まれる

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

《正社員募集》

 ○仕事内容・配送、運転、事務、その他

 ○勤務時間・朝〜夕方

 ○休日・週休一日(長期休暇あり)

 ○給与・固定150000コイン+その他手当

 ○採用条件・女性に限る

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 とまぁこんな感じで広告を待合いスペースに貼り出す。

 大雑把だが悪くない。給料は高くもなく低くもない、この世界で一ヶ月生活するなら娯楽も貯金も出来るくらいの値段に設定した。

 商人の収入はバラつきがあるが、宿屋や道具屋の従業員の月収はこれより低いか少し高いくらい。固定給ならかなり良心的な値段だと思う。

 キリエが手書きで作った求人広告を待合いスペースに貼り、俺たちはそれを眺めた。

「さて、どんな人が来るかね?」

「怖い人じゃないといいですけど······」

「ふん、そのときはアタシがブチのめしてあげるから」

「ケンカは駄目ですよ、シャイニー」

 ま、女性限定だし変な奴は来ないだろう。

 仮に来てもシャイニーが居るし問題ない。シャイニーの強さはウツクシーで確認したから尚更だ。

「でも、女性限定ねぇ······コウタ、変な噂でもされるんじゃない?」

「なな、なんでだよ⁉」

「アタシやミレイナ、キリエを雇ってる時点で女好きの社長って思われてるのよ? 女性限定なんて広告出したら、それを認めてるようなモンでしょ?」

「うぐ······」

「シャイニー、社長の考えは違います。社長は私達の為に女性限定という広告を出したのです」

「私もそう思います」

「はぁ? なんでよ?」

「シャイニーは配達だから気付かないと思いますが、私やミレイナだけの事務所ではよく男性客が訪れ、食事やデートに誘いに来るのが日常です。ニーラマーナギルド長のおかけで大事には至りませんでしたが、危ない時もありました」

 おい、初耳だぞ。

 ミレイナとキリエが男性客に言い寄られてる?

「もし求人広告に女性限定と入れなければ、ミレイナ狙いの男性が押し寄せる可能性も否定できません。一緒に働くとなると、万が一の事も考えられます。ですので、人を雇うのならば女性限定の方が好ましいかと」

「ふーん······なるほどね」

 好意的な解釈だ。

 単純に男を入れるのが嫌なだけですけどね。

「あの、私だけじゃなくて、キリエ狙いの男性も多いですよ?」

「·········ふむ。物好きな方もいらっしゃるのですね」

 いや、キリエは美人だぞ。スタイルも抜群だし。

 うーむ、俺の知らない場所で二人が言い寄られていたとは。

「新しい従業員、女性限定だけじゃなくて戦闘経験有りの項目も追加するか」

「何でよ······」

「いや、ミレイナとキリエの護衛としてだな」

 ニナに任せっきりというのも悪いしな。

 ミレイナとキリエに何かあれば、俺は迷いなく拳銃をぶっ放すかも知れん。今度トラックの非常用武器項目を確認しておこう。レベルも上がったし、拳銃以外の武器も増えてるだろう。

 とにかく、暫く仕事をして待ってみるか。




 求人広告を出して一週間、誰も来なかった。

 広告は結構なサイズの紙なので見落とされてるワケじゃない。フツーに誰も来なかった。

 今日は休日。朝食を終えた俺たちは個々の予定を確認した。

「ミレイナ、今日の予定は?」

「私は家の掃除をして過ごしたいと思います」

「俺も手伝おうか?」

「いえ、私に任せて下さい。家事は得意なので、時間をかけてじっくり楽しみ······いえ、掃除したいんです」

「そ、そうか」

 ミレイナの趣味・買い物と掃除。

 なんか家政婦みたいだけど、邪魔しない方が良さそうだ。

「キリエは?」

「私は教会へ。施設の子供達に勉強を教える予定があるので」

「へぇ、いつの間にそんな事を」

「ゼニモウケに来た日から、暇な時に依頼を受けて教えています。子供達はみんな可愛いので」

「キリエらしいな」

 キリエが教師か。なんか似合うな。

「シャイニーは?」

「アタシはゴンズの武器屋に行くわ。双剣と鎧の修理が終わったから、取りに行くのよ」

「ああ、アインディーネとの戦いの時のか」

「ええ。だいぶ無理させたしね」

 なるほどね。シャイニーは武器屋と。

 これで全員の予定はわかった。なら俺はゼニモウケにある大人の店にでも行こうかね。ウツクシーじゃ結局行けなかったしな。

「ねぇコウタ、暇なら一緒に来なさいよ」

「え」

「何よ、予定でもあんの?」

「あー·········いや」

「じゃあ決定。エブリーでゴンズの武器屋に送ってよ。キリエも教会まで乗せてもらったら?」

「確かにそれは楽ですね。お願い出来ますか、社長?」

「······いいよ、任せろ」

 さて、今日の予定は大人の店······ではなく、シャイニーの付き添いだ。




 結局、エブリーは俺しか運転してない。

 ミレイナとキリエは運転を諦め、シャイニーは練習するけど全く乗れない。ぶっちゃけ素質ゼロといっても過言ではない。

「えーと、教会か」

「はい。その前に雑貨屋に寄ってもいいでしょうか」

「雑貨屋?」

「はい。子供達におやつを買っていこうかと」

「······わかった」

 キリエは後部座席に座る。  

 肩掛けカバンには教科書が入ってるらしいな。それにおやつとは気が利くじゃないか。

 俺は財布から五〇〇〇コイン札を取り出しキリエに渡す。

「俺から子供達に差し入れだ。クッキーやチョコでも買ってくれ」

「社長······ありがとうございます」

 キリエはにっこり笑い、札を受け取った。

 すると着替えを済ませたシャイニーがバタバタやって来た。

「ごめんごめん、行きましょ」

「よし。じゃあ行くか」

 エブリーを発進させ道路へ出る。

 教会は別地区だから結構な距離だ。こんな時に運転出来れば楽なんだが、キリエは運転を諦めたから仕方ない。

 俺が送ってやればそれでいいか。事故でも起こされたらたまんねーしな。

 ゼニモウケ都市内は、相変わらず人でいっぱいだ。

 そんな光景を見たからなのか、シャイニーがボヤく。

「······こんなに人がいっぱい居るのに、なんでウチには来ないのかしら」

「あー······」

 求人広告の件か。

 確かに、貼り紙をして一週間経つが誰も来ない。

 仕事の依頼は来るんだけど人は来ないんだよなぁ。

「やっぱり採用基準が難しいんじゃないの?」

「うーん······」

「ですが、まだ慌てる段階ではありません。仕事に影響がある訳でもないですし」

 そのとおり。

 エブリーを遊ばせるのが勿体無いからの求人だ。それに仕事が楽になるだけなので、どうしても人材が必要という事ではない。

「ま、気楽に行くさ」

 こうして会話は終わり、教会へ到着した。

 ゼニモウケ内でも大きな、白く美しい建物だ。

「それでは行ってきます」

「帰りは?」

「馬車を使うので平気です。ありがとうございました」

 キリエは一礼して教会へ。

 その後ろ姿を見送り、俺はエブリーを発進させる。

「次はゴンズ武具店よ」

「はいよ」

 武具店は違う地区だ。

 エブリーにはカーナビが搭載されてない。なのでシャイニーの案内で進んでいく。

 見覚えのある道に入ると、一軒の武具屋に到着した。

「······なーんか懐かしいな」

「そういえば、アンタとミレイナにはここで初めて会ったんだっけ」

「ああ。お前がすれ違いざまにズッコケて······」

「それ以上言ったら斬るわよ」

「すんません」

 ヤバい目がマジだ。いつの間にか剣を装備してる。

 すれ違いざまにズッコケてパンツ丸見えとは言えなかった。

「行くわよ」

 シャイニーと一緒に店内へ。

 受付には毛糸の帽子を被った丸眼鏡のおっさんが座っている。

「おおシャイニーブルー、それにいつぞやの兄ちゃんじゃないか」

「お久しぶりです」

「ゴンズ、直ってるかしら?」

「もちろんじゃ。ホレ」

 ゴンズ爺さんが出したのは布に包まれた二本の双剣。

 蒼く美しい輝きの透き通るような双剣だ。名前は『シュテルン&エトワール』というシャイニーの愛剣。

 シャイニーは剣を持ちジッと睨む。

「······相変わらず完璧ね。さすがゼニモウケ最高の鍛冶職人ね」

「お世辞はいらんわ。わしより腕のいい職人なぞいくらでもいるわい」

 え、この爺さん鍛冶職人なのか?

 どう見ても競馬場にいるおっさんにしか見えないのに。

「とにかく、ありがとう。これを下取りして、差額分を払うわ」

「はいよ。それにしてもシャイニーブルー、どんな相手と殺りあったんだ?」

「つまんない雑魚よ」

 シャイニーが冗談混じりで肩をすくめると、後ろから声が聞こえてきた。

「『青藍刀剣せいらんとうけんアインディーネ』が雑魚とはな。まさかお前がアインディーネを降すとは思わなかったぞ、シャイニーブルー」

 俺とシャイニーが振り返ると、シャイニーは露骨にイヤそうな顔をした。

「やぁコウタ社長、シャイニーブルー。奇遇だな」

 そこには、美人巨乳ギルド長ニーラマーナが居た。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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