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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第8章・トラック野郎と新車と新入社員』
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85・トラック野郎、教習所教官

 町中を走ると、久しぶりに注目された。

 トラックを見慣れたところでこの軽ワンボックスだ。大きさも馬車より小さいし、驚くのも無理はない。 すると助手席のシャイニーが、俺の事をジロジロ見てるのに気が付いた。

「ふむふむ······」

「何だよシャイニー」

「うぅん、見てると簡単に操作出来そうね。これならアタシにも運転出来るわ‼」

「くっくっく······」

 甘い、甘すぎる。

 マニュアル操作の難しさをわかっていない。まぁ会社に帰ったら実際に運転してもらうが、その時にわかるだろう。

「帰ったら練習してみるか」

「当然よ‼ ふふふ、楽しみね」

「わ、私もですよね?」

「ふむ。私は興味があります」


 シャイニーとキリエは楽しそうだが、ミレイナはいまいちってところか。

「大丈夫だってミレイナ。最初はムズいけど慣れれば簡単だからさ」

 実際、その通りだと思う。

 何事も慣れが肝心。俺だって最初はエンストしまくった。

「早くニーラマーナに渡すモン渡して、さっさと会社に戻りましょ‼」

「はいはい······」

 カーナビが必要ないくらいは道を覚えたので、冒険者ギルドへ迷わず到着した。

 シャイニーは行かないみたいなので、俺とミレイナとキリエでギルド内へ。

「こんにちはー······っと、ちょうど良かった」

「ん? ああ、コウタ社長。帰って来たのか」

「ああ。昨日帰って来たばかりでな、挨拶に来たんだ」

 ニナはちょうど受付にいた。

 青い髪をなびかせ、胸元の開いた大胆な服を身に着けてる。今日もいい谷間をゴチになります。

「ミレイナ、キリエも久しぶりだな」

「お久しぶりです、ニナさん」

「留守中の見回り、ありがとうございました」

「え、何だよそれ?」

「気にするな。不埒な輩が会社に侵入しないように、定期的な見回りをしただけだ。依頼でも何でもない、友人の頼みを聞いただけだからな」

 なんとまぁ実に男前だ。

「そうだったのか······ありがとう、ニナ」

「ふ、気にするな。ところでシャイニーブルーは?」

 俺は親指をクイクイと入口のドアへ。するとニナは察したのか、小さく息を吐いて微笑んだ。

「ニナさん、これお土産です」

「お土産? ふふ、ありがたく頂こう」

 ニナに渡したのは、ウツクシー国で作られた乾物に、甘味処で売られてたゼリーなどの詰め合わせだ。ゼリーはトラックの冷蔵庫に入れておいたから問題ない。しかも出したばかりだから冷えている。

 ニナは受付にゼリーの袋を受付嬢さんに渡すと、受付嬢さんは嬉しそうにバックヤードへ引っ込んだ。

『みんな、ウツクシー国のゼリーだって‼』

『ホント⁉ やったぁっ‼』

『なんとこれ、ニナさんの彼氏からのお土産だってさ‼』

『ウッソ⁉ 勝手に食べたらヤバくない⁉』

 なんか聞こえてくる。

 ニナはニッコリ笑うと一言呟いた。

「すぐ戻る」

 ニナがバックヤードに入ると、騒ぎ声はピタリと止んだ。

 戻って来たニナは、いつも通りのニナだった。

「えーと······」

「心遣い感謝する。仕事は明日から再開するのか?」

 どうやら話題を切り替えるようだ。

「いや、明後日から始める。新しい車を買ったから、今日明日は練習に当てようと思ってな」

「新しい車? そうか、またスゲーダロの新型か」

 やべ、そういえばニナには異世界云々の事を話してない。

 でもまぁ、上手い具合に勘違いしてるし別にいいや。

「そ、そうなんだ。シャイニーが乗りたがってな」

「ふふ、あいつらしいな」

「社長。そろそろ戻らないと、シャイニーが怒りますよ?」

 キリエが絶妙なトスを入れる。

 俺はここでアタックを仕掛ける事にする。

「そういうわけだ。悪いなニナ、また遊びに来てくれ」

「そうだな、寄らせて貰おう。ミレイナ、キリエ、また今度」

「はい、ニナさん」

「それでは失礼します、ギルド長」

 ニナに挨拶を終えてギルドを出て、シャイニーの待つエブリイワゴンに戻って来た。

「遅い‼」

「悪い悪い」

 適当に謝りエンジンを掛ける。

「さて、会社に戻ってみんなに運転してもらうか」




 会社に戻った俺たちは、さっそく始める。

「えー、まず最初に運転するのは」

「アタシでしょっ‼」

「だと思ったよ」

 こいつが一番運転したがってたしな。

「さーて、やり方を教えなさい‼」

「お前それがモノを教わる態度かよ······まぁいいや」

 まずは初歩的な確認から。

 これはシャイニーだけじゃなく、みんなに言う。

「いいか、車体の点検は必要ないから、まずは安全確認からだ。車の周りをグルッと一周回って、車の下や後ろに人や動物がいないか確認する」

 最初が肝心だ。

 多分、全国どこの教習所でも最初はコレだ。

 俺たちは四人並んでエブリイワゴンをグルッと回る。

「あのさ、コウタはいつもこんな事やってないわよね?」

「·········」

 申し訳ありません、やってません。

「つ、次はいよいよ運転席だ。ミレイナとキリエは危ないから乗るな、離れて見てろ」

「え? ダメなんですか?」

「ああ」

 俺は助手席に、シャイニーは運転席に座る。

「まずはシートの位置を合わせて、バックミラーを調整、シートベルトを締めて」

「面倒ね」

「いいからやれっての」

 シャイニーは渋々とだが言われたとおりにする。

 シートを直したところで気が付いたが、身長は俺より低いのに、足の長さは殆ど変わらない。地味にショックだ。

「で、次は?」

「ん、ああ、次はギアを入れるんだ。このレバーをニュートラルに入れて」

「ニュートラル?」

「ああ、ギアを入れる前の状態だ。ほら、プラプラするだろ?」

 レバーを揺らすとプラプラ動く。

 つまり、どのギアにも入っていない証拠だ。

「この状態でクラッチとブレーキを踏む。クラッチは一番左のペダルで、ブレーキは真ん中のペダルだ」

「これ?」

「ああ。それがクラッチ、真ん中がブレーキ、右がアクセルだ。クラッチはギアの切り替え時に踏むペダルで、ブレーキはスピードを落として停車する時、アクセルはスピードを上げる時に踏むペダルだ」

「なーる。踏めばいいのね」

 シャイニーがクラッチとブレーキを踏んでるのを確認する。

 ブレーキは踏まなくても良かった気がするが、俺は踏むようにしてる。

「よし、そこでエンジンを。キーを回して」

「行くわよ‼」

 エブリイワゴンのエンジンが点火し、トラックとはまた違うエンジン音が鳴り響く。

「やったぁっ‼」

「おい、クラッチとブレーキは離すなよ。次はギアをセカンドに入れるんだ」

「セカンド······」

「ほら、レバーの取手をよく見ろ、ロー、セカンド、サード、トップ、ハイトップ、そんでバックギアだ」

「セカンド······これ?」

「そうだ」

「······ちょ、入らないわよ‼」

「場所が違う、よく見ろよ」

 最初は位置を掴みにくいんだよな。俺も経験あるからわかるぜ。

 シャイニーは何とかギアをセカンドに入れた。

「よし、真ん中のブレーキはもういい。クラッチはそのままだ」

「······」

 さて、いよいよ発車だ。

 俺もシートベルトを締め、衝撃に備えた。

「いいか、安全確認をしてゆっくりクラッチを戻す。そしてサイドブレーキを解除すれば前進する。まずはアクセルをゆっくり踏んで、ゆっっっくりクラッチを戻して······」

「えい」

 次の瞬間、車体は激しいノッキングに襲われた。

 この野郎、クラッチをいきなり離しやがった。

「うぴゃぁぁぁっ⁉」

「ちょ、ゆっくりって言っただろ⁉ クラッチ踏めクラッチ‼」

「こここここれっ⁉」

「それはアクセルっ‼ 一番左だーーっ‼」

 ガッコンガッコンと車体は揺れ、最終的にエンストして止まった。

「な、何よこれ‼ 壊れてんじゃないの⁉」

「んなわけあるか‼ クラッチはゆっくり離すんだっての‼」

「あーもう‼ ゴチャゴチャしてわかりにくいっ‼」

「最初はそうなんだよ‼ 文句言うなっての‼」

 ああ、前途多難だ。

 こりゃマジで時間が掛かりそうな気がするぜ。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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なぜローで発進しないのか?
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