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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第8章・トラック野郎と新車と新入社員』
84/273

84・トラック野郎、新車購入

 ウツクシー王国からゼニモウケに帰還して丸一日。

 会社の掃除とトラックの洗車が終わり、俺たちはようやく一息入れる。

 事務所の待合室にあるソファに座り、ミレイナが淹れたお茶を飲んで休憩する。

「いやー······疲れたな」

「はい。でも会社はピカピカです」

「あー······お腹減ったわ。ミレイナ、お昼ごはん」

「駄目ですよシャイニー。ミレイナも疲れているんですから、今日のお昼は外で食べましょう」

「ちょっと待った」

 キリエの意見は素敵だが、俺はすかさず止める。

 三人の視線が集まったところで、ポイントで購入したある物を取り出した。

「今日のお昼はこれにしよう」

「·········なにこれ?」

「ええと······変な入れ物ですね」

「おや? これは蓋ですか?」

「ふっふっふ。これは美味い安い早いを体現した究極のお手軽ご飯······カップラーメンだ‼」

 そう、【ドライブイン】のメニューが充実し、カップラーメンだけではなく、おにぎりやサラダなんかも取り扱うようになったのだ。

 おにぎりやサラダはここでも作れるが、カップラーメンだけは作れない。なので項目にカップラーメンがあった時は驚いたぜ。

「ミレイナ、お湯を沸かしてくれ」

「は、はい」

 サイズは全てビッグサイズ、味はしょうゆにシーフード、カレーにチリトマトの四種類だ。

 俺の中ではシーフードが至高の一品となっている。なので申し訳ないが俺はシーフードを選ばせてもらうぜ。

「くんくん······なんかしょっぱい匂いね、それに硬そう」

「······ふむ、これはカレーの匂いですか?」

 シャイニーはしょうゆ、キリエはカレーを手に取る。

「コウタさん、お湯が湧きました」

「さんきゅ、ミレイナはチリトマトでいいか?」

「ええと、よくわからないのでお任せします」

 ポットを持ったミレイナに残りのチリトマトを渡し、俺はそれぞれのカップラーメンにお湯を入れる。

「よし、あとは三分待つ」

 今更だが、この世界には時計がない。

 朝・昼・夜は大雑把に区分されてるが、俺はトラックに標準装備されてる時計を見て判断してる。今回は口で一八〇秒数えて計る事にした。

「ねぇまだぁ?」

「七二···まだ···七三···」

 やっぱりシャイニーはせっかちだ。もう少し心にゆとりを持たないと駄目だぞ?

 カウントが過ぎる度にカップラーメンからいい匂いが漂い始める。やべぇ美味そう過ぎる。

「お、おいしそうなニオイが······」

「ふわぁ······」

「く······お腹が空きました」

 カウントはもう間もなく終了する。

「よし‼ いただきます‼」

「「「いただきます」」」

 声を合わせていただきます。蓋を開けて箸で麺をかき混ぜる。

 懐かしい香りに震えながら、俺は麺を豪快に啜った。

「·········ふまい」

 シーフードのしょっぱさに麺が絡み合う。そしてインスタントならではの麺の食感、全てが懐かしくて美味い。

 胸の奥から何かが込み上げ、それは涙となって零れ落ちる。

「お、美味しいです‼」

「ふんまっ‼」

「これはいいですね。早くてお手軽、お湯を入れるだけでいいなら、忙しい仕事の合間にピッタリの食事です」

 ミレイナ達にも好評みたいだ。

 でも食べ過ぎは身体に悪いから毎日は駄目だ。俺としては週一くらいで食べるのがいいと思う。

 俺たちは、夢中になってカップラーメンを食べた。




 カップラーメンを完食してお昼休み。

「仕事の再開は明後日からかな。今日は新しい車を買って、それぞれに運転して貰おう」

 幸い、この敷地は公園だ。

 それにほぼ無人に近い公園だし、教習所としてはバッチリだ。

 車で走っていけないなんて看板もないし(当たり前だが)公園の敷地内で練習させて貰おう。

「ついに来たわね。ふふん、アタシの実力を見せてあげるわ」

「あの、私やキリエは事務員ですので、運転は必要ないんじゃ······」

「いや、万が一の為にな」

「確かに。それに私は少し興味があります」

 お昼休みが終わり、俺はトラックへ。

「タマ、【従車販売】を開いてくれ」

『畏まりました』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【従車販売】

 ○軽トラック[80万] ○軽冷凍車[90万] ○軽ワンボックス[100万]

 ○ハイエース[200万] ○軽自動車[120万] ○フォークリフト[170万]

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「おーし」

『購入希望車を選択して下さい』

「ふーむ。ポイントに余裕を持たせつつ、需要のある車······」

 ウツクシーに帰るルートは行きと同じスナダラケ砂漠を通って帰った。おかけでモンスターに襲われたけど、ポイントはかなり稼いだ。

 まず、軽トラはあり得ない。

 幌付きならまだしも、画面に表示される軽トラを見る限り幌は付いてない、雨でも降ったらアウトだ。

 冷凍車は欲しいけど······とりあえず保留。

 軽ワンボックスは、俺の中で順位が高い。第一候補だな。

 ハイエースは高い。というか買えない。

 軽自動車は駄目だ。積載量が少ない。

 フォークリフト。論外。

「······よし、軽ワンボックスで」

『畏まりました』

 軽ワンボックスならいろいろな問題がクリア出来る。

 後部座席を倒せば積載スペースは広がるし、近場に出向くなら後部座席を起こして四人で買い物に行ける。

『軽ワンボックスを購入しました。新項目【従車カスタム】が開放されました。項目の説明を聞きますか?』

「頼む」

『畏まりました。【従車カスタム】はポイントを消費して従車をカスタムします。主な項目は内装とボディカラー変更、オプション設備の購入です』

「オプション設備?」

『カーナビやオーディオ、シートカバーやハンドルカバーなどの小物関係です』

「なるほど、カーナビは必要かな」

『従車は本登録されたドライバー以外は全ての機能を扱う事が出来ません。仮登録ドライバーで運転は可能ですが、【デコトラウェポン】の力を扱う事は不可能です』

「あぁ、デコトラカイザーの武器に変形するんだっけ」

『はい。従車は【カイザーカスタム】項目で確認が可能です』

「うーん、別にいいや。とりあえず軽ワンボックスを出してくれ」

『畏まりました。軽ワンボックスを召喚します』

『うぴゃあっ⁉』

 あ、外からシャイニーの声が聞こえてきた。

 俺はトラックから降りてガレージから外へ出る。するとそこにあったのは、一台の軽ワンボックスだった。形はスズキ・エブリイに似ている。

 懐かしさに浸っていると、尻餅を付いたシャイニーが立ち上がる。

「ちょっとコウタ‼ いきなり危ないでしょ‼」

「え?」

「これが空から落ちて来て潰されそうになったのよ‼」

 ああ、さっきの叫び声はそういう事かよ。

「悪い悪い。それより、まずは新しい仲間を喜ぼうぜ」

 ミレイナとキリエはすでにエブリイに夢中だ。

「なんだか丸っこくて可愛いですね」

「見て下さい、このシートは収納式みたいですね」

「座ってみろよ。ほら、ここをスライドさせて」

「おお、開きました」

「ちょっと‼ アタシも乗せなさいよ‼」

 シャイニーは助手席に、ミレイナとキリエは後部座席に。俺は運転席に座って気が付いた。

『登録完了。皆様を仮ドライバーに登録しました』

「タマ⁉ お前、こっちでも喋れるのか⁉」

『はい。私はカスタマイズサポートですので』

 理屈としては間違ってない······のか?

『これからは社長の承認でドライバー登録を行います。仮登録可能人数は五人までです』

「わかった。ええと、キーは?」

『仮登録ドライバーが座ると同時に鍵穴に現れます』

「あ、ホントだ。よーし」

 俺はエンジンを掛ける。

 トラックとはまた違うエンジン音に心が踊る。

「よし、少し町を走ってみるか。ついでにニナにお土産を渡しに行こう」

「いいですね、なんだかワクワクします」

「走るのはいいけど、ニーラマーナはいいでしょ別に」

「いえ。ニナ様にはお世話になってますので、きちんと礼を尽くさねば」

 クラッチを踏み、ギアをセカンドに入れてゆっくりとクラッチを離してアクセルと繋ぐ。

 エブリイはゆっくり前進を始め、俺のテンションも上がる。

「よし、ゼニモウケをドライブだ」

 門を抜けて、俺たちは町に繰り出した。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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