82・トラック野郎、後日談を語る
後日談。
プルシアン王女は全ての罪を自白し投獄された。実行犯であるアインディーネは冒険者の資格を剥奪され、プルシアン共々仲良く牢獄へ。裁判に掛けられた後は恐らく強制労働が待っているそうだ。
プルシアンはすっかり老け込み、アインディーネはそんなプルシアンに何故か付き添っている。アインディーネのヤツは結局何がしたかったのか最後までわからなかった。
ま、これでシャイニーの復讐は終わったと考えていいだろう。
王様は悲しんでいたが、プルシアンが罪を償って反省するのをいつまでも待つらしい。どんな悪人でも自分の子供、それが親ってもんらしい。
まぁ、全ての原因がプルシアンにある事を都合良く忘れてるような気がするが、そこまで深くツッコミは入れないことにした。
ウツクシー王国が王政を廃止した事により国の名前も変わる。候補はいくつかあるが、『リゾート都市ウツクシー』という名前が俺は気に入ってる。海産物と蒼く美しい海、そして高級ホテルやアラモアナショッピングセンター……は違うな。
アガツマ運送会社の社員旅行はここにしよう。アルルにも会えるし、ミレイナやキリエに水着を着せてビーチで遊びたい。あ、シャイニーもいちおうね。
アルルは母親と一緒に暮らし始め、マスターのことも新しい父親として懐いてる。
王様は出て行った愛人達をムリに呼び戻そうとせず、新しい人生を踏み出した愛人達を応援するらしい。何でも、出て行った愛人達に匿名で破格の慰謝料を支払ったとか。
アルルはこのウツクシーにある学校に通うそうだ。ゼニモウケの学校には退学届を出さないとな。
それと、アルルは別れ際に手紙をくれた。学校の友達に渡して欲しいという。その手紙をシャイニーは受け取り、必ず渡すと約束した。
そしてシャイニーは父親と完全に別離した。
どんな事情があるにせよ、シャイニーが国外追放になったのは事実だし、この五年という歳月は故郷を忘れるには十分な時間だとシャイニーは言った。王様は悲しそうな顔をしていたが、シャイニーは適当に、つまらなそうに王様に言った一言が忘れられない。
「ま、遊びには来るわ。ここは綺麗だし、ご飯は美味しいしね」
「え……」
「だから、この都市をもっと発展させなさいね。何度でも来たくなるような、そんな都市に」
「シャルル………」
「アタシはシャイニーブルーよ。アンタの娘じゃないわ……」
「……ああ、約束するよシャイニーブルー。君がまた来てくれるように」
「………うん」
そう言って、シャイニーはケジメを付けた。
なんだかんだ言っても故郷は忘れられない。シャイニーもそう思ってるだろう。
そして勇者パーティーでは、一つの事件があった。
*****《勇者タイヨウ視点・ウツクシー城》*****
オレたち勇者パーティーは、オレサンジョウへ帰還する。その前に世話になった王様に挨拶に来た。まぁもう王様じゃないけどな。
ちなみに王城は観光施設に改修するらしく、騎士団や兵士はそのまま都市の護衛を続けるそうだ。
謁見の間に来たオレたちは跪くことなく王様に向かい合う。
王様の後ろには、青い全身鎧を着た騎士が立っていた。なんだろう?
「勇者パーティーには世話になった。特に、タイヨウくんには本当に驚いたよ」
「へへ、まぁな」
「あんた、わかってなかったクセに」
「う、うるせぇな」
「うふふ」
「えへへ、さっすがタイヨウだね。かっこいい!!」
オレの癒しはクリスだけだぜ。
すると王様は話を続ける。
「改めて、このウツクシーの一部を勇者パーティー専用のプライベートビーチとして解放しよう。場所は元王族のプライベートビーチだが、構わないか?」
「うおしゃぁっ!! 全くモーマンタイだぜ!!」
「わかった。いつでも来てくれ」
こうしてオレたち勇者パーティーはリゾート都市に別荘を手に入れた。
そういえば、甘いひとときを凄そうと考えてたのに、真面目な話が続いたおかげで何にもない。思い出にあるとしたら、月詠と煌星の美おっぱいだけだ。
「それと………これは個人的な頼みなのだが」
「ん?」
「勇者パーティーに、是非とも加入して貰いたい戦士がいる」
「は?」
「あ、あたしたちに……ですか?」
「ああ。このウツクシー騎士団で鍛えられた戦士だ。若いが実力は騎士団トップ、槍の扱いならこの国で最強との呼び声もある。それに魔術の腕も上級レベルだ」
「……何故、そのような御方を?」
煌星の意見は当然だ。
ぶっちゃけオレは戦力より、このパーティーに男が入る事がまずイヤだ。
こればかりはいくら王様といえども許可出来ない。
「まず一つは本人の希望だ。二つめは勇者パーティーはこれから先、強敵やモンスターとの戦いが多いはず……だからこそ戦力の補強としての加入だな。三つめは……勇者パーティーとの繋がりが欲しいという、ボク個人のワガママかな」
「なーるほどなぁ……そんなことしなくても、オレは王様の友達だぜ?」
「ははは、ありがとう。だが、どうかお願いする」
「うーん………」
オレが悩んでると、王様の後ろに控えていた鎧騎士が一歩前に出る。
全身を青い鎧で覆い、肌の露出は一切ない。
「こちらの御方ですか?」
「ああ。さぁ、自己紹介を」
『はい』
兜からくぐもった声が聞こえる。なんか息しにくそうだな。
王様には悪いが断ろうと思いつつ、兜を脱ぐ騎士を見つめていた。
「え」
「うそ」
「まぁ」
「わーお」
脱いだ兜から蒼い髪がサラリと流れる。
「初めまして。私はウツクシー騎士団所属槍士、ウィンクブルーと申します」
現れたのは、とんでもない美少女だった。
「採用」
オレは無意識に呟いた。
「見ての通り、その……彼女はボクの娘のウィンクブルーだ。とある事情で身柄を隠していてね、幼い頃から男装させて騎士団で修行させていたんだ」
ショートヘアとロングヘアの中間くらいの蒼い髪と瞳。顔は小顔でモデルみたいな美しさ。年齢はオレたちと同じくらいだろうか。
そうだ。王様とオレは同族だ。オレのパーティーを知ってる王様なら、ここにむさ苦しい男をぶっ込んでくるなんてありえない。してやられた……ちくしょう。
「……どこかで」
「あの、もしかして」
月詠と煌星はウィンクブルーを見て首を傾げてる。
すると王様が言いにくそうに話してくれた。
「ウィンクブルーは……シャルル、いやシャイニーブルーの実の妹なんだ」
「は!? マジで!?」
「ああ。シャイニーブルーが三歳の時に生まれ、とある事情で存在を隠したんだ」
「とある事情?」
「そう、後継者問題でな……今となってはもうどうでもいい。問題なのは、ウィンクブルーがシャイニーブルーの妹であり、シャイニーブルーがそのことを知らないという事だ」
するとウィンクブルーは、何の興味もなしに言う。
「父上、彼女は国を捨て故郷を捨てた身。今更私という妹が居るなど話しても、何の興味も持たれないのでは?」
「うむ、しかし……血の繋がった姉妹だというのに」
「私は構いません。興味があるとすれば、彼女の強さくらいです」
お堅い女騎士か。こりゃいいな、オレらのパーティーにいない部類だ。
オレは一歩前に出て、ウィンクブルーに言う。
「よし、お前をオレたち勇者パーティーに歓迎するぜ」
「おお、ありがとうございます」
「ちょ、こら太陽!! 勝手に決めんなっての!!」
「んだよ、反対なのか?」
「そうじゃない!! あんた、女の子だからって決めたでしょ!?」
「おう」
「うわぁ……タイヨウってば、すっごい素直」
「そこがいいところでもあるんですけどねぇ……」
悪いな、もうオレは隠さないぜ。
王様を見習って、オレも三〇人越えのハーレムを作る。
その為には、自分の欲望を隠さないことにした。
「勇者殿。加入を認めてくれるのはありがたいのですが、試験などは行わないのですか?」
「試験?」
「はい。勇者パーティーといえば、危険種や超危険種などの戦いが多いと聞きます。私の実力を確認しなくてもよろしいので?」
「ふ、お前の強さなら感じてるさ……肌でな」
「お、おおぉ……流石です勇者殿。戦うまでもなく実力を測れるとは」
「ま、オレくらいになればな。これからお前もオレが鍛えてやるよ」
「はい!! お世話になります!!」
ウィンクブルーはガバッと頭を下げる。
「そうだな……ウィンクブルーって長いから、今日からウィンクって呼ぶから」
「ウィンクですか。わかりました」
こうして、オレたち勇者パーティーに槍士ウィンクが加入した。
月詠は最後まで渋ってたけど、煌星やクリスがあっさり受け入れたおかげか、最後に大きなため息を吐いて加入に同意してくれた。
オレたちはオレサンジョウに帰還し、魔王四天王が放った残り五匹の眷属の情報を集める。
きっと大きな戦いになるだろうが、オレたちは絶対に負けない。だって勇者が負けるわけないしな。
さぁて、みんなとイチャイチャしながら帰りますかね。