71・勇者のお話⑥
*****《勇者タイヨウ視点・水上王国ウツクシー》*****
夏と言えば海。海と言えば可愛い女の子とビーチバレー。
オレこと勇者タイヨウは、照り付ける日差しの中でビーチバレーを楽しんでいた。メンツはオレと煌星とクリス。波打ち際で楽しんでるぜ‼
「いっくぞーっ‼ そりゃっ‼」
「はいっ、クリスちゃんっ‼」
「任せてキラボシっ‼ えーいっ‼」
「はっはっはっ‼ くらえ煌星っ‼」
「きゃあっ」
何とも素晴らしい光景だ。クリスはともかく、ボールを打ち上げる度に煌星のおっぱいがぷるぷる揺れる。しかもオレのために際どいビキニを付けてるから少しの事故で零れ落ちてしまいそうだ。
なのでビーチバレーで事故を狙う。クリスはワンピースだから零れ······いや、仮にビキニでも零れないな。じゃなくて、煌星を重点的に狙い、その素晴らしいおっぱいを凝視する。
オレの打ち上げたビーチボールが煌星の真上に、すると両手を高く上げた煌星がジャンプする。
煌星も勇者として鍛えられてるからジャンプ力は一般的な高さより上。つまり揺れも半端ない。
「行きますクリスちゃんっ‼」
「よーしこいっ‼」
「おおぉぉっ‼」
揺れる揺れる、ぷるぷる揺れる。
男のロマンが詰まった二つの膨らみは、これでもかってくらい大暴れだ。そしてついに来たぜ‼
「よっしゃ来たぁぁぁっ‼」
「え······きゃあっ⁉」
煌星のビキニはその膨らみの重量に負けたのか、オレの目の前で盛大に零れ落ちた。煌星はオレの視線に気が付き、空中で胸を隠してしまう。
見えた見えた、ついに見えた。大きな膨らみに桃色の突起が。月詠に続き煌星のおっぱいも見てしまった。後はクリスとエカテリーナ姫のおっぱいでコンプリートだ‼
「も、もう太陽くんってば······エッチ」
「いやいや、悪い悪い」
「むむむっ、ツクヨに続いてキラボシまで······私も見せた方がいいのかな?」
煌星はビキニを直しながらビーチボールを拾う。ゆるふわウェーブが潮風に揺れて何とも可愛らしい。あぁ、やっぱ夏の海は素晴らしいぜ。
すると、ビーチチェアに座りパラソルの下で本を読んでいた月詠が、本を閉じて立ち上がる。
「あのね、遊ぶのもいいけど、これからの事を考えないと」
「あ、ツクヨ」
「まぁそうだけどよ、焦ってもしょうがねーだろ? 今は王様の言う通り、海を満喫しようぜ」
「そうですね。ほら、月詠ちゃんも遊びましょ?」
「わわ、ちょ、煌星······」
煌星は月詠の背後に周り、両肩に手を添えてグイグイ押す。そんな煌星に負けたのか、月詠は煌星からビーチボールを受け取った。
「ま、そうね。海に出るアテが出来た以上、焦っても仕方ないか」
「そーいう事だ」
オレたちは、王族専用のビーチでバカンスを満喫していた。
王様はオレたちに、この王族専用ビーチを使う許可をくれた。
しかも王族専用コテージが水上にありロケーションも最高。更になんと大きなベッドまで完備されている。
どうやら王様が愛人達と過ごすために作った専用のコテージで、ベッドが大きいのはみんなでチョメチョメを出来るようにとの事だ。ふざけやがってちくしょう、マジでありがとうございました‼
オレたちの本来の目的である災害級危険種に関しても殆ど解決だ。王様がギルドに手を回し、勇者専用の船を出すように命令をしてくれた。なのでギルドの所有する船を使わせてくれるそうだ。権力ってすげーよ、オレたちが言っても無理の一言だったのに、王様の一言であっさり許可が出るとは。
だが、念には念を入れて船を強化するらしい。なので船が完成するまでこうしてバカンスを楽しんでるってワケだ。
ビーチバレーを一休みし、オレたちはパラソルの下で冷たいジュースを飲みながら休憩する。
「なぁ、王様は何をするんだ? 後継者問題は解決したのか?」
「そうね。焦らなくても平気よ、それにもうあたし達に出来る事はないわ」
「はい。ふふふ、太陽くんのおかげですね」
「そこがわかんねーんだよ。オレが何をしたんだ?」
「私も寝てたからわかんないー」
「ま、ウツクシー王国の歴史が変わるって事よ。問題はあるだろうけど、時間を掛ければ解決できるわ」
「ふーん······」
よくわからん。まぁ、オレたちは表立って動けないとか言ってたし、後は王様に任せればいいのか。
「それより、問題は災害級危険種ね。海に出る問題はクリア出来たけど、討伐に関してプランは白紙のままね」
「そうですね。水中とは厄介です······」
そうなんだよな。海に出る事ばかり考えてたけど、問題はそこなんだよ。
「水中じゃ『鎧身』は使えねーし······」
「前にツクヨが言ってた誘き寄せ作戦は?」
「それもアリだけど、モンスターに関して情報が少な過ぎるわ。危険だけど一度海に出て対峙してみないと」
「ちくしょう、陸の上なら刺身にしてやるのに」
オレはトロピカルジュースを飲みながら愚痴る。玄武王の戦いは殆ど覚えてないし、あれから更に強くなったオレの強さを見せ付けるチャンスなのに。面倒くさいなちくしょう。
とにかく海に出てみないとな。対峙して情報を得るとかじゃなくて、その場で細切れにしてやる。
そして数日後。オレたちは海の上に居た。
ギルドが強化した船は、船体が鉄板のような物で覆われ、まるで戦艦みたいな風貌の頑丈そうな船だった。
「うーみーはーひろいーなー大きーなー」
「タイヨウ、なにそれ?」
「オレの故郷の歌」
オレとクリスは船の柵にもたれ掛かりながら海を眺めていた。
船を出して数時間。陸は見えなくなり周囲は青い海だけ、潮風は気持ちいいけどやっぱり退屈だ。
「海、気持ちいいね」
「だな。クリスは海が好きなのか?」
「うん。キリエ姉の読んでた本に海の事が書いてあったの。キリエ姉が言ってたのは、海は青くて水はしょっぱい、魚や貝がたくさん採れる場所だって」
「全部正解だな」
「うん。しょっぱいし青い、とってもキレイな場所だね。私······海が大好き」
「そっか。じゃあまたみんなで来るか? 今度はエカテリーナ姫も連れてさ」
「うん。エカテリーナはお姫様だし、海なんて見た事ないかも」
「ああ、だったらお前が教えてやれよ。きっと喜ぶぞ?」
「うん‼」
にっこり笑うクリスはすっげぇ可愛らしい。
この数日、コテージで共に生活したが、そういう行為はしていない。やると決めたけどどうしても一歩進めないんだよなぁ。
「タイヨウ? どうしたの?」
「······いや、なんでもな」
オレの言葉は最後まで続かなかった。
何故なら次の瞬間、恐ろしい振動が船を襲ったからだ。
「おっわぁぁぁっ!?」
「きゃぁぁっ!?」
オレはクリスを抱きしめ周囲の確認をする。抱きしめたクリスがオレの胸に顔を埋めてグリグリ顔を押しつけてるが気にしてる場合じゃない。
すると、甲板のどこかに居た月詠と煌星がオレの元へ。
「太陽!!」
「ああ、どうやらお出ましだぜ!!」
「太陽くん、この感じ……」
「おう、デカいぞ、そんで……強い」
オレたち四人は戦闘に意識を切り替える。
玄武王との戦いでオレたちは成長したと思う。オレも相手がどんなヤツでも油断しない、今までは勇者というブランドとその魔力でどんなヤツにも負けなかった。だから相手を嘗めて掛かる事もあったと思う。だけどもう違う。オレはどんな相手でも油断しない。
すると、船の乗組員達が騒いでる声が聞こえてきた。
「海上を見ろ!!」
「船の真下だ!!」
「で、デカい……デカすぎるぞ!?」
オレたちは視線を合わせて船の柵から海上を見る。するとそこには……とんでもなくデカく、長いヘビのような影が見えた。
「な、なんじゃこりゃ……」
「こ、これほどとはね……」
「ヘビ……いえ、竜でしょうか……?」
「キモいよぉーっ!!」
各々の感想だが、事態はヤバい方向に進んでいた。