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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第6章・トラック野郎と緑の都市』
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68・トラック野郎、ブルデコトラカイザー①

「…………砂、砂、砂、砂だらけ」

『スナダラケ砂漠ですから』

 トラックもといブルドーザーは『スナダラケ砂漠』を走っていた。

 テレビで見たサハラ砂漠みたいな、アップダウンの激しい砂漠だが、ブルの馬力が普通とは違うのでスイスイ進む。それでもトラックよりは遅いし振動もあってちょっと気持ち悪い。

 愚痴の一つでもこぼしたくなる。だって砂ばっかで面白いモノは何にもない。しいて言えばサボテンみたいな植物が生えてるくらいだ。

「はぁ……なぁ、ウツクシー王国までどのくらいだ?」

『およそ七日ほどの距離です。正規ルートではないので多少の時間は掛かります』

「そうですか……」

 エアコンが効いてるから暑くはない。だが、ブルドーザーの狭さと何もない景色に嫌気がさしたのか、補助席には誰も座っていない。女性陣は居住ルームでのんびりしてるだろうな。

「ふぁ……」

 何にもないと眠くなってくる。それに、危険種や超危険種が生息してるってのに何も出てこない。この暑さでモンスターも参ってるんじゃないだろうか。

 本来のルートなら三日ほどでウツクシー王国に到着してるはずだが、この砂漠横断ルートを選んだのはモンスターを退治してポイントを稼ぐためだ。なのに肝心のモンスターが一向に現れない。

「タマ、ビー………いや、コーラくれ」

『畏まりました』

 うーん、エアコンが効いてるから暑いとは思わないが、こんな景色を見てると冷たいビールが欲しくなる。つまみは枝豆で、高校野球でも見ながら一杯やりたい。

 俺はコーラのタブを開けてシュワッと弾ける炭酸で喉を潤す。

「っかぁっ!! やっぱ美味いぜ!!」

 ビールとは違うが、たまに飲む炭酸ってどうしてこんなに美味いんだろう。慣れない飲み物を飲むと、慣れないつまみが欲しくなるよなぁ。

「タマ、ポテチくれ。江戸前しょうゆ味でな」

『畏まりました』

 我ながら渋いチョイスだ。でも、コーラと言ったらポテチだ。これは昔から法律で決まってる。それくらい当たり前な組み合わせだ。まぁ嘘だがな。

「うーん。やっぱポテチは江戸前しょうゆ味だねぇ」

『社長。モンスタ-反応です』

「ブッ!?」

 不意を突かれたのか、思わずコーラを噴き出してしまった。




 現れたのは、巨大なサソリの化物だった。砂地から……まるで待ち構えていたかのように現れたのだ。確かにサソリは地面に潜るらしいけど。

「な、なな、なんだこいつは……」

『危険種デザートスコーピオンです。普段は砂地に潜りますが、エサを感知した場合は素早い動きをします』

 デザートスコーピオンは、全身が漆黒でツルツルの外殻に覆われていた。そして何より驚いたのは尻尾で、なんと長い尻尾が四本もある。それにどう見ても毒を持ってそうな形状だ。

 メイン武器であるハサミも巨大で、まるでカニのように太くてギザギザしてる。あんなのに捕まったら人間なんて真っ二つ間違いなし、即死コースだ。

『ギシャァァァァァァッ!!』

「うひぃぃっ!?」

『社長。威嚇です。デザートスコーピオンはブルドーザーを敵と認識しました。そして周囲にデザートスコーピオンの反応が複数感知されました。どうやらこの地点に集まって来ています』

「ウッソ!? おいおいどうするよ、逃げるか!?」

 ポイントを稼ぐために来たと言う事を、俺はすっかり失念していた。

『逃走不可。ブルフォームのスピードではデザートスコーピオンの速度からは逃れられません。トラックフォームでは砂地にタイヤが取られ走行不可。戦闘を推奨します』

「せ、戦闘って」

『社長。ブルドーザーのバケットをお使い下さい』

「ば、バケット……よ、よーし」

 俺はレバーを操作してバケットを上下させる。ブルドーザーならではの威嚇だ。

『ギッシャァァァァッ!!』

「うほぉぉぉぉっ!!」

 デザートスコーピオンは怒ってる。俺も負けじとバケットを上下させて思い切りアクセルを踏んだ。

「くぅぉぉぉぉぉぉーーーッ!」

『ジャァァァァッ!!』

 バケットとデザートスコーピオンのハサミがぶつかる。

 こっちは土砂の撤去作業でも傷一つ付かなかった鋼鉄のバケットだ。いくら危険種モンスターとはいえ、そう簡単に打ち負けるはずがない。

『ギィィィィ……』

「う、う、うっそ……」

『社長。僅かですがパワー負けしています。このままではバケットが損傷します』

「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉーーーッ!?」

 バケットを操作するレバーが動かない。そしてハサミでガッチリつかまれたおかげでバックも出来ない。キャタピラが砂地の上で滑ってる状態だ。

 そして、もう一つの武器が俺を襲う。

「っひ、うぉぉぉぁぁぁぁっ!?」

 四本の尻尾がブルドーザーの車体を突きまくる。ガンガンと車体が軋み、イヤな音が聞こえ始めた。

『警告。車体ダメージ小』

「やばいやばい、どうしようっ!?」

『社長。提案があります』

「よしきた来いっ!!」

 待っていましたタマの提案。ホントにタマは頼りになる相棒だぜ。

『デコトラカイザーの【特殊変形】項目で、デコトラカイザーの新たな形態を獲得する事をお勧めします。推奨される形態は《ブルデコトラカイザー》です』

「ブル……デコトラカイザー、よしそれで!! ポイント使っていいから変形してくれ!!」

『畏まりました。パンパカパーン、新形態ブルデコトラカイザー習得。音声認識により変形が可能です」

 こんな事を言ってる間にも、ハサミでガッチリ掴まれてるし尻尾の突き攻撃で車体はガンガン突かれてる。尻尾の一本がフロントガラスにヒビを入れた所で、俺は全力で叫んだ。

「でで、デコトラ・フュージョン!! ブルフォームッ!!」

『音声認証コード承認。変形シークエンス起動します』

『シャガァァッ!?』

 するとブルドーザーから謎の衝撃波が放たれ、デザートスコーピオンのハサミが外れる。

 安心する間もなく変形が始まり、運転席はやっぱり上部へ。

「あれ、なんか低い?」

 変形中だが俺は思わず口に出していた。なんかデコトラカイザーより低い位置にコックピットがある。どうやらブルデコトラカイザーは全長が低いらしい。

『居住区安全確保のため異空間通路を閉鎖します。システムオールグリーン。ブルデコトラカイザー変形完了』

「おっし、ブルデコトラカイザー!! 作業開始!!」

 ハンドル部分からおなじみのコントローラーが現れ、俺はそれを掴む。

 フロントガラス部分にブルデコトラカイザーの全身図が表示されていた。

 やっぱり全長はデコトラカイザーより低い。だが重量はこっちのが重く、デコトラカイザーに比べるとゴテゴテとして太ってるイメージがある。そして何より驚いたのは右腕。

「メインウェポン……『バケットアーム』か」

『はい。接近専用の大型腕部です。ブルデコトラカイザーはパワーに優れた格闘タイプで、二脚での移動はもちろん、キャタピラモードの変形も可能です』

「キャタピラモード?」

『はい。上半身は変わらず、脚部がキャタピラに変形します』

「へぇ……って来たぁぁぁっっ!?」

『ジャァァァァッ!!』

 のんびり解説を聞いてる場合じゃなかった。変形が終わるまで待っててくれたようだが、素早い動きで容赦なく襲ってくる。俺は取りあえず避けようと、アナログスティックを横に倒すが……。

「重っ!? 遅っ!? っどわぁぁぁっ!?」

 動きが遅い。最初の一歩がかなり重い。パワータイプの宿命のような動きだ。

『社長。ブルデコトラカイザーの速度はデコトラカイザーより遥かに劣ります。ですが攻撃力・防御力はデコトラカイザーより遥かに高いので、被弾覚悟で攻撃を仕掛けることをお勧めします』

「マジ?」

 なんつー頭の悪い。だけど他に手がないならやるしかない。

 尻尾を振り上げて再度アタックを仕掛けるデザートスコーピオンに振り向き、バケットアームでの攻撃を仕掛ける。

『ジャァァァァッ!!』

「うぉぉぉぉっ!!」

 素早いゴキブリみたいな動きで突進するデザートスコーピオンに向けて、バケットアームを振り下ろす。

『ジャガッ!?』

「え」

 すると、デザートスコーピオンはブチュっと潰れた。

 振り下ろされたバケットアームが、デザートスコーピオンの外殻をあっさりと砕き、その中身に深刻なダメージを与えた。

 気持ちの悪い汁が飛び散りフロントガラスを汚し、デザートスコーピオンは絶命した。

「や………やった、のか?」

『生命反応消失。デザートスコーピオンは討伐されました』

 焦ったが、何とか倒すことが出来たようだ。

 俺はコントローラーを離して運転席に深く腰掛けた。

「はぁ……焦ったわ」

『社長。仲間と思われるデザートスコーピオンが周囲を包囲しています。そして超危険種ジャイアントデッドスコーピオンを確認しました。恐らくはデザートスコーピオン達のボスと思われます』

「…………」

 俺の安心は、一瞬で吹き飛んだ。

PSのアーマードコアってなんであんなに面白いんだろう。

中でもタンクはお気に入りでした。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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