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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第6章・トラック野郎と緑の都市』
62/273

62・トラック野郎、ロボットバトル

「…………あれ?」

 シャイニーの案内でムジン街道に到着したが、そこには誰も居なかった。

 街道を塞ぐように土砂が溢れ、作業の途中だったのか道具が散乱してる。置いてあるというよりは放り投げてあるって感じだ。まるで逃げ出したようにも見える。

「よっぽど作業が辛かったのかねぇ……」

「違う………これは」

「シャイニー?」

 シャイニーは周囲を見て何かに気が付いたようだ。それと同時にタマからのアナウンスが入る。

『警告。超危険種である《ドラゴンオーガ》接近中。デコトラカイザーへの変形を推奨します》

「え」

 それは、突然の事だった。

「やっぱり………見て、道具や荷物はあるのに馬車が一台もない。きっとモンスターが出て慌てて逃げ出したんだわ」

 シャイニーがそう言うと、ズズンと地面が揺れた。

 それは一定間隔で揺れ続き、得体の知れない圧力を感じさせた。そして土砂で塞がれた街道脇の藪をかきわけてモンスターが現れた。

「な…………なんだ、あれ」

「ど、ドラゴンオーガ………デカいわね」

 それは、二足歩行のドラゴンだった。

 ドラゴンの大きさは十メートルはある。筋肉ダルマと言って差し支えない肉体に強大な両翼を広げ、顔は厳ついドラゴンに全身緑の凶悪な姿をしていた。あまりの出来事に俺はフリーズしていた。

『社長。変形を推奨します』

「え、あ……ええと、叫ぶんだっけ」

『はい』

「よ、よし……行くぞ」

「変形? あ、あの巨人になるのね!!」

 シャイニーは何故かワクワクしてる。そう言えば変形するとシャイニーはどうなるんだ? コックピットは一人乗りだし、まさか外に放り出されるんじゃないだろうな。

『社長。シャイニーブルー様は変形と同時に居住ルームへ移動されます。心配はありません』

「あ、そうなのね」

 相変わらず心を読むのが上手いヤツだ。でもまぁ、心配ないなら久し振りにやるか。

 叫ぶのは恥ずかしいけど、シャイニーだし別にいいや。

「行くぞタマ。デコトラ・フュージョォォォーーーンッ!!」

『音声認証コード確認。デコトラカイザー変形シークエンス起動』

「うぴゃあっ!?」

 変形が始まったと同時に、助手席のシャイニーが後方にスライドして消えた。どうやら居住ルームに消えたのだろう。

「おぉぉっ!?」

 二回目だが慣れない。運転席が突然せり上がり視界が高くなる。ここからじゃ見えないけど、トラックのボディが変形して人型になってるんだろうな。特撮に出てくるロボットそのままだし。

『腕部変形。脚部変形。安全装置解除。最終確認完了』

 タマも何かブツブツ言ってる。俺は変形が終わるまでボケッと座ってるだけだ。はっきり言ってこのロボットは俺に相応しく無いと思う。

『最終確認コードを入力して下さい』

 どうやら変形が完了したようだ。あとは俺の最後のかけ声でデコトラカイザーは完成する。

「デコトラカイザー!! 配送開始!!」

 さて、久し振りのロボット操縦だ。




『ガォォォォォォォッ!!』

「ひぃぃぃっ!?」

『社長。コントローラーを』

「あああ、わわ、わかった」

 俺はドラゴンの雄叫びにビビりつつもコントローラーを掴む。確か操作は格闘ゲームと殆ど同じだったな。

「い、行くぞ」

 視界は百八十度保たれている。よく分からん計器もいくつかあるけど弄るのはコントローラーだけだ。とりあえず接近戦を仕掛けようと、俺はアナログスティックを前に倒して前進させる。

『グガァァァァァァッ!!』

「おぉぉぉっ!?」

 いちいち叫ぶドラゴンにビビる。思わずスティックから手を離してしまい、デコトラカイザーは動きを止める。するとその隙を突いたのか、ドラゴンオーガが一気に距離を詰めてきた。

「うぉわぁぁぁっ!?」

『機銃発射』

『ギャォォォォォッ!!』

 完全な二足歩行ダッシュで距離を詰めたドラゴンオーガに機銃の弾を浴びせるが全く意に介しない。むしろ機銃を無視して体当たりをしてきた。

「うおわぁぁぁぁぁっ!!」

 車体が揺れ地面に倒れる。思わず手からコントローラーが離れてしまった。

『社長。体勢を立て直して下さい。ドラゴンオーガはブレスを吐こうとしています』

「マジかよぉぉぉぉぉぉーーーッ!?」

 俺はコントローラーを拾い黄色ボタンを連打する。するとデコトラカイザーは立ち上がり後方へジャンプした。

「ど、どうしよう」

『表皮がかなり硬いので打撃は期待できません。ドライビングバスターの使用を推奨します』

「じゃあそれで!!」

『畏まりました。ドライビングバスター展開』

 すると上空からゴテゴテした大剣が現れる。それを掴むとデコトラカイザーは自動で構えを取る。打撃がダメなら斬撃ってか。

 改めて照準をデコトラカイザーに向け、ドラゴンオーガは緑のブレスを吐く。

『ブゥゥゥバァァァァァッッ!!』

「回避っ!!」

 俺はアナログスティックを左に倒しブレスを躱して前に進む。そして赤ボタンを連射しながらドラゴンオーガに近づいた。

「おりゃぁぁぁぁっ!!」

 かっこよさもクソもない。ドライビングバスターを振り回しながらドラゴンオーガに接近して切り刻む。

 ブレス攻撃で隙が出来ていたドラゴンオーガの表皮を切り刻むと、緑色の鮮血が飛び散った。

『ギュアァァァァッ!!』

「うぉぉっ!?」

 勢いが付きすぎてドラゴンオーガの腕を切り落としてしまった。あれ、もしかしてチャンス?

『社長。キャノンモードでトドメを刺しましょう。デコトラカイザーの位置を指定ポイントに移動させ、《ドライビングキャノン》を発射して下さい』

「わわ、わかった」

 指定ポイントの意味は分からないが、言われた通りにする。

 カメラ機能なのか、フロントガラス部分に赤いマークが表示される。そこにデコトラカイザーを移動させてドライビングバスターをキャノンモードに変形させ、腕を押さえて苦しむドラゴンオーガに標準を合わせる。

『フルチャージ』

「さて、お前の命……あの世に配達してやる」

『ドライビングキャノン。発射』

 砲身から発射された光線が、ドラゴンオーガを包み込んだ。




 光線の軌跡上には何も残らなかった。

「あ、そういうことか」

『はい。お役に立てたでしょうか』

「さっすがタマだ。ナイスアシストだぜ」

『お役に立てて光栄です』

 俺はタマに指示すると、デコトラカイザーはトラックに戻る。すると、助手席に座ったままのシャイニーも戻ってきた。

「あぁビックリした。それで……あ、終わったのね」

「ああ。ドラゴンオーガはやっつけたぜ。楽勝だったな」

 ホントはめっちゃビビったけどな。あの凶悪な顔つきは夢に出てきそうだ。

「超危険種のドラゴンオーガが楽勝ねぇ……」

「ま、跡形も無くなっちまったけどな。素材とかあれば高く売れたか?」

「もちろんよ。ドラゴンオーガの爪や牙や【龍核】なんて、冒険者からすれば金のなる木みたいなモンよ。武器や防具に加工すれば最高の物が出来上がるしね」

「ふーん。ちょっと勿体なかったかな」

「まぁ別にいいでしょ。それより、少し休んだら土砂の撤去作業……あれ!?」

「ふっふっふっふ。気が付いたか」

 そう、土砂の撤去作業は終わった。実は最後のドライビングキャノンで、ドラゴンオーガと一緒に土砂を吹き飛ばしたのだ。だからデコトラカイザーの位置を変更して射線上にドラゴンオーガと街道の土砂を合わせたんだ。

「くっくっく、これぞ一石二鳥。帰って報告して終わりだ」

「え、ええ……これもあの巨人の力なの?」

「ま、そんなところだ」

 俺はポイントでコーヒーとカフェオレ、ポッキーとせんべいを買う。それをシャイニーに渡すと、シャイニーは笑顔で言う。

「わぉ、気前いいじゃん」

「久し振りのバトルで疲れたし、少し休憩してから行くか」

「うん!!」

 俺はコーヒーのプルタブを開け一口含み、微糖の苦さに顔をしかめた。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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