表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第1章・トラック野郎と少女の出会い』
6/273

6・トラック野郎、ゴブリンを蹂躙する


 ゴブリンの巣まであと1キロと迫ったところで、俺はミレイナに確認した。


 「目的は『シンフォニアの花』だよな。確か依頼だっけ?」

 「……はい。私の、最後の依頼です」 

 「最後?」

 「はい。実は……冒険者を、廃業しようと思いまして」


 ミレイナが悲しそうに微笑んで俯いた。

 不謹慎だけど、そんな顔も似合うな。どこか憂いを帯びた、窓際で雨を眺めながら淋しそうにしてるような………俺は何を考えているんだ?


 「何でまた。っていうか、冒険者って何だ?」

 『冒険者とは、この世界に無数に存在するダンジョンを探索し財宝を手に入れたり、町や国に存在するギルドを介して依頼を請け負う人々の総称です。ミレイナ様は駆け出しのF級冒険者です』

 「そ、そうです」


 ミレイナは胸元から2枚のドッグタグを取り出した。色は茶色で、俺には読めない文字が彫ってある。


 「冒険者になって1ヶ月ですけど……私には向いてないことがわかりました。モンスターとの戦いでは身体が竦んじゃって動けなかったし、簡単な薬草採取の依頼で集めた薬草をモンスターに食べられちゃったり……あはは」

 「そ、そうか……」


 コメントしづらい。ここは笑うべきなのか?


 「だから、最後にこの『シンフォニアの花』の依頼だけでも成功させたくて。この依頼は、ゼニモウケ王国に住む6歳の女の子からの依頼なんです。何でも、お母さんの誕生日祝いに花を贈りたいそうで」

 「そうなのか……泣かせるねぇ」

 「はい。報酬も500コインと安く、だれも手を付けなかった依頼です。だから最後に、この依頼だけでも成功させたくて」

 「……そっか」


 いい話だ。子供のために花を取りに行くなんてな。

 気になる話もあったけど、取りあえず今はスルーしておこう。


 『この世界の通貨単位は「コイン」です。物価や通貨も日本と変わりありません。1・5・10・50・100・500コインまでが硬貨で、千・五千・万が札となっています』

 「………気の利いた解説ありがとう」


 

 タマのヤツ、少しは空気を読めっての。



 **********************



 「それで、冒険者を廃業したらどうするんだ?」

 「……まだわかりません。実家はここからかなり遠いし、家出同然に出てきたので」

 「ふ~ん。じゃあさ、ゼニモウケ王国の案内を頼んでもいいか?」

 「え?……あの、コウタさんは運び屋ですよね? 商業王国であるゼニモウケを知らないんですか?」

 「あ、いや。う~ん……」


 どうすっかな。まさか異世界から来たなんて信じて貰えるかな。

 さっきは適当に誤魔化したけど、知らないコトが多すぎる異世界で1人はキツい。それにさっきのドッグタグを見る限り、文字も読めないし。

 ここでちゃんとした説明をすれば、仲間になってくれるだろうか。それにこの世界で生きて行くには金もいるし、ちゃんと働かないと生きていけない。

 俺にあるのはこのトラックだけ。しかもチートスキルのおかげで多分死んだりはしない。だったら、コイツを使って運送会社を始めるのも悪くない。


 ブラックではない俺の運送会社。

 出勤時間は朝9時、休憩は1時間、退社時間は5時、週休2日制度。考えただけでもワクワクする。この世界で一旗揚げるのも悪くない。

 そのために、まずは従業員と事務所が欲しいところだ。そのための第一歩として、この可愛らしいおっぱいのミレイナを是非とも雇いたい………よし、決めた。


 「ミレイナ、実は……」



 俺は、これまでの経緯を説明した。



 **********************

 


 「い、異世界……? し、死んだって、つまり……?」

 「まぁそういうこと。俺はこの世界の人間じゃない。だから知らないコトだらけで右も左もわからないんだ」

 「……ええと」


 まぁ、いきなり信じてくれるとも思っていない。俺だって日本に居るときに「異世界から来た冒険者なんです!!」とかいうヤツが現れたらすぐに警察を呼ぶだろう。


 「……よくわかりませんが、コウタさんは悪い人じゃありません。私を助けてくれましたし、こうやって私を手伝ってくれる。それに何より、この乗り物が私の知らない技術ということもわかります」

 

 ミレイナは俺を見てニッコリ微笑んでくれる。ええ子や。

 

 「わかりました。私に出来る事なら、お手伝いさせて頂きます」

 「やった!! ありがとなミレイナ、助かるぜ」

 「お役に立てるかわかりませんが、計算と料理は得意です。子供の頃は勉強ばかりしてたので……」

 「おぉ、じゃあ経理関係は任せられるな。いや~、これで会社を始められるぜ」

 『マスター、会社を始めるのは問題ありませんが、そろそろゴブリンの巣に到着します。『シンフォニアの花』は、ゴブリンの巣がある洞窟の頂上です。まずは洞窟に向かいますので、30メートル先を左折して下さい』


 タマの言う通り左折、しばらく走ると洞窟が見えてきた。


 『到着です。洞窟の頂上に生えているのが『シンフォニアの花』です。オススメの採取方法は、[フックショット]を射出し、ワイヤーを伝って頂上まで登るのがベストです』

 

 洞窟の周りは開けているが、なんとなく不気味な空気が漂っている。

 

 「あ、あそこがゴブリンの巣か……じゃあ、さっさと終わらせようぜ」

 「……はい。コウタさん」

 「よし、タマ、フックショットを射出だ」

 『了解。[フックショット]展開』


 ボンネットが開き、そこから銛のような先端のワイヤーが射出され、洞窟の頂上を越えてどこかに引っかかった。これであとは人力で登るのか。


 「……よし、俺が」

 「私が行きます」

 「え」

 「これは私の依頼です。私が……やらなくちゃダメなんです」


 強い決意の瞳だ。こんな美少女の決意をどうして踏みにじれるというのか。確かに、最後くらいはかっこつけて終わりたいだろうな。


 「わかった。じゃあ気を付けて行ってこい」

 「はい!!」


 俺は車内に置いてあった軍手を渡すと、ミレイナはワイヤーを伝い手足を搦めてゆっくり登り始めた。

 まぁ、ここはゴブリンの巣だ。イヤな予感はずっとしてたワケよ。


 『警告。洞窟入口から複数のゴブリン感知。15秒後に接触』

 「やっぱ来たか……よーし武装展開!! [機銃]で蜂の巣にしてやれ!!」

 『了解。[機銃]展開。オートモードで掃射します』

 「へっへっへ、俺もコイツの試し打ちだぜ」


 なんか慣れてくるとテンション上がる。せっかくだしデザートイーグルの試し打ちをしてやろう。

 すると、トラックを見た10体ほどのゴブリンが騒ぎ出し、何体か中へ引き返していった。間違いなく仲間を呼びに戻ったんだ。

 

 「ミレイナ!! 下は気にしないでとにかく登れ!!」

 「え?……えぇっ!?」


 下を見ちゃったミレイナは慌ててる。というかスカートだからパンツ丸見えだね。眼福です。

 ミレイナは置いといて、とにかくゴブリンをやっつけよう!!


 「タマ、よろしく」

 『了解。機銃掃射します』


 バラララララッ!! と映画でしか聞けない機銃音が響き、あっという間にゴブリンは全滅。俺も銃を撃つ機会がなかった。

 すると援軍が到着し、再び機銃の餌食に。中には俺が見たことのないゴブリンが何体もいたが、機銃の前には無力だった。


 『グリーンゴブリン・ファイターゴブリン・ビッグゴブリン・ゴブリンオーガなどの上位種です。しかし、現代兵器である機銃の前では無力ですね』

 「あ、はい」

 

 入口から湧き出すたびに蜂の巣になるゴブリン。

 俺は拳銃を持ったままその光景を眺めて吐きそうになった。だってゴブリンの肉片やモツが周囲に散らばって悲惨な光景になってるんだぜ? いくらモンスターといえどこれじゃタダの虐殺だ。


 『この辺りのゴブリンは旅人や冒険者を襲い、洞窟に引きずり込んで暴行、そして飽きたら殺害していたようですね。洞窟内に無数の人骨反応アリ。どうやら金属反応は捕まった人間の装備と思われます』

 「よし撃ち殺せ」


 同情心が一気に醒めた。この世は弱肉強食、強い者が生きて弱い物が死ぬのさ。

 

 『危険モンスターの反応アリ。ゴブリン・ザ・デモンです』

 「なんだよそのザ・悪役みたいな名前は……」

 『この辺りのゴブリンを統括してる最上種です。全てのゴブリンの種で最強レベルの力を持っています』

 「………ヤバいの?」

 

 俺はちょっとだけ不安になり、恐る恐る聞く。

 ミレイナは未だにクライミング中だし、ここから動くことは出来ない。もしヤバいならミサイルを使うしかないと思ったが。



 『問題ありません』



 黒いローブを纏った強面ゴブリンは、機銃でバラバラの肉片と化した。



 **********************

 


 「コウタさーんっ!! 見つけましたーーっ!!」

 「おーう、こっちも終わったぜーー」

 『パンパカパーン。レベルが上がりました』

 「あ、ちょっと待った。説明は後で聞く」


 黒いローブのゴブリン・ザ・デモンはあっさり死んだ。つーか機銃最強。俺のデザートイーグルが火を噴くことはなかった……ちょっと残念。


 「い、行きまーすっ!! えーーいっ!!」

 「み、ミレイナっ!?」


 なんとミレイナは剣を支えにし、ジップラインの要領で滑ってきた。ちくしょう、なんか楽しそうだなんて思っちまった。

 俺はトラックから素早く降りてボンネットの前に出る。そして降りてきたミレイナを抱きしめるようにキャッチした。


 「あ……ありがとう、ございます」

 「い、いや……」


 う~んマンダム。いい香り。これが現役JKの香りか。

 しかもおっぱいがふにゅんと胸板で潰れ、とても気持ちいいです。


 「おっと、それが『シンフォニアの花』か?」

 「はい。キレイでしょ?」


 『シンフォニアの花』はキレイな純白で、見た目は百合の花みたいに見える。ミレイナは荷物の中から小さな植木鉢を出し、土と一緒に植え替えて水をあげた。


 「ほら、聞いて下さい」

 「お……」


 ミレイナが植木鉢を揺らすと、鈴のような音がした。


 「『シンフォニアの花』は、別名ベルフラワーと言いまして、風が吹くと花が揺れて音楽のような鈴の音が流れるんです」

 「へぇ……キレイだな」

 

 花を抱えて嬉しそうに微笑むミレイナが、なんて言えないわ。

 風が吹くとリィィィンと奏でる鈴の音は、ゴブリンの肉片が飛び散る光景を一瞬だけ忘れさせてくれた。


 「さーて、じゃあ行くか」

 「はい。ゼニモウケ王国へ行きましょう」


 俺とミレイナはトラックに乗り込む。


 「あ、ゴブリンってあのままでいいのか?」

 『はい。周辺モンスターのエサになると思われます。それと、洞窟内から貴金属反応アリ。ゴブリンが集めた財宝が残っていると思われます。もし運送会社を設立するなら、開業資金として入手することをおすすめします』

 「……確かに、先立つもの必要だよな。いいか、ミレイナ?」

 「もちろんです」

 「タマ、洞窟内をトラックで進めるか?」

 『可能です』

 「よし、じゃあ行くか。その前に、レベルアップした装備の確認と、アップグレードを済ませるか」



 へへへ、大量に倒したし、これで念願の部屋ゲットだぜ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ