表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第5章・トラック野郎と蒼い世界』
52/273

52・トラック野郎、大変な予感

「すごーいっ‼」

「ほら、危ないぞアルル。気をつけてな」

「はい、おじさん」

 アルルを助手席に座らせてトラックはゼニモウケへ。アルルは初めてのトラックに興奮し、窓から身を乗り出そうとしてる。何度も注意してるけど我慢できないのは子供らしいな。というかおじさんは勘弁してくれ。

 ちなみにシャイニーは居住ルームにいる。アルルがトラックに乗りたがったので、自動的にシャイニーは居住ルームに居ることになった。二人乗りだから仕方ないよな。

「アルル、お菓子でも食べるか?」

「おかし? 食べたい‼」

「よーし」

 ここはシャイニーが好きなポッキーと、子供だしカフェオレじゃなくてフルーツジュースにしよう。

「タマ、ポッキーとフルーツジュースを購入。ポイントは俺に付けといて」

『畏まりました·········購入完了』

「わ、なんかしゃべった」

 おっと、タマの紹介をしてなかった。

『初めましてアルル様。私はタマと申します』

「タマ? かわいー名前だね」

『ありがとうございます。それではこちらをどうぞ』

「わわっ、なんか出た」

「それがお菓子だよ。ちょっと待ってろよ」

 俺はトラックを一時停止させ、ポッキーの箱とジュースの蓋を開けてやる。するとアルルはさっそくポッキーをこりこり齧り、ジュースをこくこく飲む。

「おいしい‼」

「はは、ゆっくり食べろよ」

「はい‼」

 暫しのお菓子タイム。ゼニモウケまではまだ掛かるし、アルルにいろいろ聞いておこう。




「ところで、アルルはいくつなんだ?」

「わたし? わたしは十歳です」

 やっぱり小学生か。まぁ見た感じそうだとは思ってたけど。蒼いツインテールを揺らしながらポッキーをこりこり齧る姿は可愛らしく、幼い頃のシャイニーもこんな感じだったのかなと思ってしまう。

「アルル、俺たちの家にはあと二人のお姉さんがいる。二人とも優しいから、困った事があれば何でも言えよ?」

「お姉ちゃんから聞いたよ。ミレイナちゃんとキリエちゃんだよね?」

 ちゃん付けとは、なんとも可愛らしい。いくつか質問をしてみたが、どれも子供らしい返答だ。母親の事は聞きにくいけど、聞かない訳にはいかないな。

「それと、母親の事だけど······」

「お母さん······」

「仕事の関係ですぐには行けないけど、時期が来たらウツクシーに行こう。お母さんはアルルを待ってると思うから、元気な姿を見せてやろう」

「······うん。ありがとう、おじさん」

 俺は左手を伸ばし、アルルの頭をなでてやる。

「えへへ······お父さんみたい」

「そ、そうか」

 何とも複雑だが、何故か悪い気はしなかった。




 ゼニモウケへの帰り道、疲れきった冒険者達とすれ違う事が多かった。足取りが重そうなグループや、汚れてボロボロの冒険者、街道の途中で爆睡してる冒険者グループなど、今まで見たことないような光景だった。

「おいおい、何だよこれ」

「うーん······危険種でも出たのかしら。でもそれにしては怪我人が少ないわね、怪我人っていうか疲れてボロボロになってるような······あ、もしかして」

 シャイニーが何かに気が付いたようだ。ちなみにアルルはお腹いっぱいになったのか寝てしまった。なので居住ルームのソファに寝かせ、助手席にはシャイニーが座ってる。

「たぶん、土砂崩れの復旧作業を終えた冒険者よ。手に包帯を巻いてる冒険者が多いのは、きっとスコップ片手に延々と土砂を掘り進んでたからね」

「手作業······こりゃ地獄だわ」

 規模が分からないから何とも言えないが、相当な労働だったのは間違いない。本来は重機を使って·········待てよ?

「なぁタマ、やるかどうかは別だけど」

『可能です。《ブルフォーム》を使えば土砂の撤去作業を行う事が出来ます』

「ブルフォームか·········確か、ダンプフォームかブルフォームかのどちらかを選べるんだよな?」

『肯定です』

「う〜ん·········」

 ここで積極的に「よしやろう‼」と言わないのが俺だ。

 ぶっちゃけ関係ないから面倒くさい。それに冒険者が賃金を貰って作業してるのに、冒険者ですらない俺が作業を手伝うのはおかしい。それに稼ぎを邪魔されたと冒険者達が怒る可能性もある。

「ねぇ、あれってニーラマーナじゃない?」

「え、あ、ホントだ」

 前方から、冒険者を引き連れたニナが馬に乗ってやって来た。

 ニナの後ろには数台の馬車が走り、それを引率するようにニナが前を走る。なんかカッコいいな。

 目立つから仕方ないよな。するとニナは片手を上げると馬車は止まる。つまり停止合図を出した。

「ふん、素通りしちゃいなさいよ」

「アホ」

 シャイニーを制してトラックを止める。ゼニモウケの冒険者達は見慣れたのか、トラックを見ても特に騒がなかった。

「やぁ社長。配達の終わりか?」

「まぁな。ニナはやっぱり土砂崩れの復旧作業か?」

「そうだ。知っていた······ん、シャイニーブルーか。良かったらお前も手を貸してくれ。復旧作業に人手が足りなくてな、暫くは冒険者交代で作業に当たらなくてはならないんだ」

「はっ、そんなのアタシには関係ないわ。もう冒険者じゃないし、アタシに命令しないでくれる?」

 確かにその通りだが言い方が悪い。まるでケンカを売るような挑戦的な物言いだが、ニナは特に気にしていなかった。

「確かにそうだな。すまなかった」

「······ふん」

「おいシャイニー、やめろよ」

「いいんだ社長。引き止めてすまなかった、気を付けて帰ってくれ」

「あ、ああ。そっちも頑張ってくれよ」

「·········」

 シャイニーは外を眺め、ニナと目を合わせる事はなかった。冒険者をクビになった原因が自分にあるとはいえ、他の冒険者達の前でクビを宣告されたからな。恨んでると言っても過言じゃない。

 ニナは馬車を引き連れ去って行く。俺もトラックを発進させゼニモウケへの帰路へ着く。

「お前なぁ、ニナが嫌いなのは仕方ないけど、もう少し普通に接しろよ。ニナには世話になってるし、あんまり険悪なのも困るんだよ」

「······何よアンタ、ニーラマーナが好きなの? ああいうのがタイプなの?」

「違うっての。確かに美人だけど俺のタイプは······ってそうじゃない‼ 全く」

「ふーんだ」

 こりゃ重症だな。放っておけば和解するなんてのは甘かったりするとタマが言う。

『社長。ここから十二キロ先の《ウスグレー参道》をスキャンしました。現在土砂崩れの復旧作業中です。その件について報告と提案があります』

「提案? なんだよ、言ってみろ」

『はい。現在、ゼニモウケギルド所属冒険者達による復旧作業が続いてますが、参道の復旧率は六パーセントです。このままのペースで作業をすると、参道の完全復旧は約七ヶ月後と予想されます』

「ええと、つまり?」

「あっ······しまった、土砂崩れはウスグレー参道······っ‼」

 シャイニーはハッとして顔を上げた。あれ、どうしたんだ?

『《ウスグレー参道》は商業都市ゼニモウケと森林都市モリバッカを繋ぐ参道です。モリバッカを経由しないとウツクシーには到達出来ません。つまりアルル様をウツクシーに送り届けるのは、このままですと七ヶ月後になります』

「え。あ、そういえばコピ商会の社長も言ってたな、モリバッカへ続く参道に土砂崩れが起きたって」

 つまり、七ヶ月後じゃないとアルルをウツクシーに連れて行けない。こりゃ参ったな、他の道で行くしかないか。

『そこで、《ブルフォーム》を習得し、参道の復旧作業に手を貸す事を提案します』

「え、他のルートじゃなくて? それに土砂崩れの復旧作業なんて、ブルドーザーでやる仕事じゃないだろ? 除雪作業とかならともかく」

『その通りですが、このトラックの特殊形態であるブルドーザーは普通のブルドーザーではありません。パワー、スピード共に規格外なので、除雪作業の要領で作業を行う事が可能です』

「うーん、他のルートはないのか?」

『整備されている街道では《ウスグレー参道》のみです。更に、ここで冒険者ギルドに恩を売る事で、後の会社経営のプラスになると判断しました。是非ご検討下さい』

「なるほど······」

「ニーラマーナに恩を売る、か······むふふ、面白いじゃない」

 シャイニーは既にやる気だ。やる気の方向性は間違ってるような気がするけど。

「とりあえず、帰ってミレイナ達と相談してだな」

「そうね。それにアルルを七ヶ月も待たせられないし、アタシは手伝うのは賛成だけどね」

「······そうだな」

 多分、ミレイナやキリエも賛成するだろうな。こりゃ大変な仕事になりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ