5・トラック野郎、武装を試す
「ふんふ~ん♪」
「あ、あの……コウタさん、この音は……?」
「ああ、これはラジオって言って、有名人の他愛ないお喋りとか、音楽が聴けるんだ。面白いだろ?」
「そ、そうですね……なんか、かっこいい音楽が流れてます」
まぁそうだろうな。今流してるのは今週のヒットチャートだし、国民的アイドルグループの5人組の最新曲だ。正直俺は興味ないけど、日本の音楽ってだけで嬉しいのは何でだろうね。
『マスター、400メートル前方にゴブリンを確認。轢き殺しますか?』
「お前今度轢き殺すとか言ったらマジで怒るからな!! っつーか武装があるのにワザと聞いてんだろ!?」
『いえ、数は4体なので、武装を展開するよりこのまま轢き………突進した方が早いと思いまして』
「……まぁそうだけどよ。あ、せっかくだし他の武装を試すか」
『畏まりました。武装を選択して下さい』
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【武装一覧】
○[機銃]
○[小型ミサイル]
○[マキビシ]
○[高周波ブレード]
○[フックショット]
○[ベアリング弾]
○[電磁ウィップ]
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「今更だが…………物騒すぎる」
恐ろしいラインナップに頭を抱えていると、ミレイナが興味深そうにフロントガラスをのぞき込んでいた。
「あの、みさいるって何ですか?」
「ああ、ミサイルって言うのは………あれ? 字が読めるのか?」
「はい。きじゅう、こがたみさいる、まきびし……」
おいおい、この世界には漢字とカタカナが普及してるのか。こりゃありがたい情報だ。
『視覚翻訳機能が搭載されてますので、画面を見た種族の方に適した文字が浮かぶようになっています』
「……そーいうことか」
「?」
ミレイナは首をチョコンとかしげてる。
うーん、なんか可愛いな。そういえばミレイナっていくつなんだろう。おっぱいの大きさから見て高校生くらいとは思うけど。
「なぁ、ミレイナっていくつなんだ?」
「私ですか? 私は17歳です」
お、おおぅ。バリバリのJKじゃんか。こんな可愛い子JKのおっぱいを堪能できたとは、この異世界も捨てたモンじゃねーな………思考が完全にオッサンだな。まだ26だってのに。
そんなこと言ってる間に、モンスターの姿が見えた。
「コウタさん、ゴブリンです!! あれは一般的なグリーンゴブリンですね、戦闘能力はそれほど高くありませんが、集団で現れるのでなかなか厄介なモンスターなんです」
「さすが冒険者。じゃあ……[高周波ブレード]展開!!」
「畏まりました。[高周波ブレード]展開します」
するとトラック後部、左右のバンボディの真下から、2メートルほどの金属の刃が展開した。
「な、なんだ……?」
「剣……でしょうか?」
俺とミレイナはバックミラーでその様子を見ていると、突然ブレードから「ビィィィィィン!!」と強烈な振動音が響いてきた。もうわかった、こりゃ直接ぶつからないと使えない。
『マスター、このままゴブリンの群れに突進して下さい。轢き殺すも切り刻むも自由です』
「お前マジで黙ってろ!! 武装変更。え~っと、[ベアリング弾]!!」
『畏まりました。[ベアリング弾]展開』
フロントのボンネットが開くのが見えた。どうやらそこが発射口らしい。
小型ミサイルなんて目に見えてるし、電磁ウィップもどうせ近接装備だろう、マキビシやフックショットは目の前の敵に使うような武器じゃなさそうだし。ここは安パイの弾丸系でいこう。
『ギャアーッ!! ギャッギャッ!!』
『ギャウウ、ギャアァァ』
あ、気付かれた。そりゃ高周波ブレードがあんな大きい音を出せばバレる。距離は80メートルってとこか。
『マスター、ベアリング弾の射程は30メートルです。あと50メートルの接近を推奨します』
「わかった、行くぞミレイナ!!」
「は、はいっ!!」
俺はサードギアからトップギアに入れ、アクセルを踏み込む。時速は40キロに上がり、ゴブリンとの距離はあっという間に縮まる。
「カスタマイズサポートっ!! ベアリング弾発射!!」
『了解。発射します』
ドパンッ!! とハデな音が響き、4匹のゴブリンは肉片になった。
弾速が早すぎて金属の弾なんて全然見えない。いつの間にか発射され、ゴブリンと周囲の木々を巻き込んで飛んで行った。
「す、すっげ……」
「な、何がなんだか……」
俺もミレイナも驚いてる。というか武装がヤバすぎる。正直、小型ミサイルを選択しなくてよかった。
『パンパカパーン、レベルが上がりました。[拳銃]が開放されました』
「は? 拳銃?」
『はい。説明を聞きますか?』
「あ、ああ」
『それでは、ダッシュボードを開けて下さい』
「あん? ダッシュボード? ミレイナちょっと…………おい、なんだこれ」
ミレイナに断ってダッシュボードに手を伸ばす……すると、ダッシュボードの中には、黒光りする拳銃が入っていた。もちろん俺はこんな物騒な物を持ってるワケがない。
『緊急用装備です。名称デザートイーグル。弾数9発、マグナム弾を使用します』
「いや、なんで? トラック関係ないじゃん」
『トラックや自動車のダッシュボードの中には、拳銃が入っている物では?』
「どこの常識だ!! そんなの映画の世界……いや、俺は日本人だしそんな常識知るか!!」
『そうですか。ですが拳銃も立派な武装ですので、携帯をオススメします』
「……………まぁ、カッコいいしもらっとく」
マジモンのチャカをハジける機会なんてない。いろいろ言ったけど貰っておく。
「はぁ、ともかくゴブリンは退治した。さっさと先に進もう」
「はい。あの……このカスたま、さぽーとさん? って、何者なんですか?」
「う~ん、俺にもわからん。っていうか呼びにくいな……」
「はい。えっと、かすたま……」
「カスタマイズサポートな」
「はい。じゃあ、タマさんって呼ぶのはどうでしょうか。なんか可愛いと思いません?」
「タマ………ぶふふっ、いいなそれ。よーし、今日からお前は『タマ』だ。いいかタマ?」
『タマ………畏まりました。今日から私の名前は神工知能『カスタマイズサポート』から『タマ』に改名します。ミレイナ様、ありがとうございます』
「いえ、うふふっ」
「ははは、ミレイナさん、センスあるわ」
「そうですか? あの……ミレイナでいいです。コウタさん」
「そうか? じゃあミレイナ」
「はい。コウタさん」
心の中じゃずっとミレイナって呼んでたしな。こっちのがしっくりくるぜ。
「さーて、行くか。ミレイナ、タマ」
「はい。お願いします」
『畏まりました。ゴブリンの巣は現在地から東へ4キロです。それと、ゴブリンの巣から金属反応を感知しました』
「金属反応?」
『はい。詳細は現時点で不明です。接近すれば詳細が判明します。推測ですが、財宝の類かと』
財宝ねぇ……まぁ、目的は『シンフォニアの花』だからな。気にはしておこう。
早くしないと日も暮れるし、さっさと行って『商業王国ゼニモウケ』に向かおう。
ゴブリンの巣に向けて、再びアクセルを踏み込んだ。