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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第5章・トラック野郎と蒼い世界』
45/273

45・トラック野郎、子供達と遊ぶ

 俺とシャイニーはトラックの座席に座り、配送先の確認をしていた。

 ニナとシャイニーの過去話を聞いていたおかげで、午後の配達が遅くなってしまった。だが今回はそんなに気にしていない。

「午後は一軒だけだな」

「え、なんで? 荷物いっぱいあるじゃん」

「これ全部一軒の配達なんだよ。どうやら孤児院へのプレゼントみたいだな」

「へぇ、場所は······『ハズーレの町』ね。意外と近いじゃん」

「ああ。これまで何回か配達したけど、孤児院は初めてだな。それにプレゼントってどういう事だろう?」

『質問に対する回答をします』

 タマ曰く次の理由からだ。ちょっとわかりにくい話だから俺の言葉でアレンジすると、ゼニモウケ内にある孤児の支援団体が、半年に一度プレゼントを送る。今までは馬車を数台使い送っていたが、費用も馬鹿にならないため、今回は俺たちに依頼があったと言う事だ。つまり馬車数台よりトラック一台のが安いって事かな。

 異世界には孤児院が結構ある。このゼニモウケ内にもいくつかあるみたいだし、今回向かうハズーレの孤児院もそこそこの規模みたいだ。家庭の事情で子供を育てられず孤児院に預けたり、親に捨てられて浮浪者となった子供を保護したりとケースは様々だ。

 なのでゼニモウケ商人組合······じゃなくて商人ギルドは、孤児院や孤児に対する支援機構を作った。まぁ要は商会にお願いしてカンパを募ってる。それで孤児院を建設したりお菓子やプレゼントを配ったり、学校に行かせたりして教育を行ってるようだ。

 一部の商会から反対意見なども出たらしいが、概ねは協力的だった。理由はいろいろある、例えば子供たちを放置すれば窃盗等の犯罪を起こすし、そんな子供が成長すれば厄介な盗賊となる。それよりは子供たちを引き取り教育を施せば、商会の従業員として雇う事が出来ると言う考えだ。大した商魂だよな、先の先まで見て先行投資してる。と······こんな感じ。

『以上。町の商人達から集めた情報です』

「なるほどな。まぁ思惑があるんだろうけど、結果的にはいい事なんだろうな」

「そうね。それにしてもタマ、いつの間にそんな情報を?」

『情報も武器の一つだからです』

「大したモンだよお前は」

 そう言えば、忙しくてアップグレードを確認してなかった。移動しながら確認しておくかな。




 ハズーレの町までまだ距離がある。俺はトラックの追加された項目を閲覧しようと思った。

「タマ、そういえば新しい項目が増えたんだよな」

『はい。新項目【カイザーカスタム】の説明を聞きますか?』

「うん、それだけで理解出来たわ。とりあえず頼む」

『畏まりました。【カイザーカスタム】はデコトラカイザーの戦闘スキルを獲得する項目です。現在のスキルを表示しますか?』

「た、頼む」

『畏まりました。現在の操作方法はコントローラータイプ。コマンド方式を表示します』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【デコトラカイザー】レベル四十

【スキルコマンド】

 ○パンチ[赤] ○キック[緑] ○ジャンプ[黄] ○武装[青]

 ○ショートアッパー[↓↘→赤] ○ラッシュパンチ[赤連打]

【特殊武装】

 ○『ドライビングバスター』

【特殊形態】

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「今度は格闘ゲームかよ······」

「何よこの矢印は。デコトラカイザーってあの巨人のことでしょ?」

『現在のデコトラカイザーは《トラックフォーム》のみ変形可能。ポイントを使い新たな形態を獲得する事が可能です。デコトラカイザーの新たなコマンドスキルを入手しますか?』

「い、いや、とりあえず置いとく。どうせ変形する機会はなさそうだし。それと新たな形態ってフォームチェンジか?」

『はい。【特殊形態】項目を閲覧しますか?』

「あ、ああ」

『畏まりました』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【特殊形態】

 ○ユニックデコトラカイザー[150000]

 ○以下未開放

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「そっか、ユニック車しか変形出来ないもんな。そういえばレベル四十になったけど、新たな形態を獲得出来るんだよな?」

『はい。【車体換装】項目を開きますか?』

「よろしく」

『畏まりました』


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【車体換装】

[トラックフォーム]標準設定

[ユニックフォーム]

【換装一覧】

[ダンプフォーム][ブルフォーム][??????]

[??????][??????][??????]

[??????][??????][??????]

《次期開放・レベル六十》

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「ブル······ブルドーザーか」

「なにそれ?」

「工事現場とかで役立つ車だよ。まぁ運送会社には必要ないだろうな」

 冷凍車だったら迷わず購入したんだけどな。まぁとりあえず保留しておくかな。室内設備もとりあえず保留しておこう。トラックを充実させ過ぎると自宅のありがたみが薄れるからな。

「そういえば、経験値ポイントはどのくらいある?」

『はい。現在の現在ポイントは《四十五万ポイント》です』

「はぁ⁉ なんでそんな······あ、玄武王か‼」

『はい。玄武王バサルテスの経験値ポイントは《三十万ポイント》です』

 確か玄武王を倒す前に十五万くらいのポイントが残ってたはず。それなら納得出来るな、暫くはポイントに困らなそうだ。

「まぁこんなもんか。フォームチェンジもとりあえずいいや」

『畏まりました』

 会話しながらでも運転は続いてる。おかげでもう間もなくハズーレの町に到着だ。

「さて、そろそろ到着だな」

「うん。子供達みんな、喜ぶといいわね」

「そうだな」

 トラックは、ハズーレの町に到着した。




 ハズーレの町はゼニモウケとは比べるまでもなく小さいが、村よりは栄えてる。飲食店もそこそこあるし、冒険者ギルドもある。何回か来てるから、トラックを見ても住人は驚かなかった。

「えーと、孤児院は······」

『ルート案内開始します』

 何も言ってないのに流石です。タマも立派な会社員だな。

「仕事が終わったら真っ直ぐ帰ろう。トラックの洗車をしたいしな」

「そうね。タマもキレイにしてあげなきゃ」

 トラックは三日に一度洗車をするように心掛けている。それ以外で汚れても洗車するけどな。トラックは会社の看板だし、キレイにするのは当たり前だ。

 ナビの案内で道を進み、ハズーレの孤児院に到着した。

 町の規模にしては大きな建物だ。横長の平屋で庭はかなり広い。手作りの遊具も設置されてる。鉄棒やモンスターを模した椅子が設置されてるけど、ちょっと趣味が悪いな。

 トラックを孤児院の入口に停車させ、俺とシャイニーは車から降りる。

「誰も居ないわね」

「······どうやら授業中みたいだな」

 孤児院は教室みたいな作りの部屋で、中では子供達が勉強をしてるのが見えた。年代もバラバラで、五歳くらいの子も居れば中学生くらいの子も居る。

 教室は机と椅子ではなく座卓で、横長の机に座り黒板の字をノートに板書してるのが見えた。みんな真面目に勉強してるな。

「おやおや運送屋さん、来てくれたんですね」

「あ、挨拶が遅れて申し訳ありません。アガツマ運送です」

 出て来たのは初老の女性だ。雰囲気からして園長先生だろうな。

「いえいえ、よく来てくれました。さっそく運んでもらっていいですかね」

「はい。場所はどちらへ」

「授業が間もなく終わりますんで、教室にお願いしますね」

「わかりました」

 話が終わると同時にベルが鳴る。どうやら授業が終わったようだ。

「よし、運ぶぞ」

「了解」

 園長先生は教室へ入って行く。どうやらプレゼントが届いたから、そのまま大人しく座ってろ的な話をしてるみたいだな。孤児達のワッと喜ぶ声が聞こえてきた。

 トラックのリヤドアを開けて常備してある折りたたみ式台車を降ろし、その上にプレゼントを乗せる。

 プレゼントは布の袋もあれば木箱や剥き出しのぬいぐるみなんてのもある。細長い包みは形状からして剣のおもちゃだろうか。

 そこそこ量があったが、台車一台と手持ちで全部運べそうだな。

 俺が台車を押してシャイニーが手持ちで荷物を運び、孤児院の教室へ入って行く。すると子供達の喜びの悲鳴が聞こえてきた。

「おい見ろよ、すげぇいっぱいあるぞ‼」

「かわいいお人形さんだぁ、わたしあれが欲しい」

「おれは剣が欲しい‼」

「わたし、新しいお洋服が欲しいな」

 うーん、大騒ぎだ。どうやって配るんだろう?

 すると授業をしていた先生と園長先生が何かを話している。

「さて、今回はどうします?」

「そうですねぇ······前みたいに小さな子供からだと、大きな子がずっと最後になりますし。かと言って大きな子からだと、小さな子が泣きますしねぇ······」

「やはり小さい子から好きなのを配るしか······」

 ありゃりゃ、どうやら小さい子を優先して配ってるらしい。まぁ間違ってはいないけど、大きな子には不満が残るだろうな。

 台車の上にプレゼントが載せられているから帰るに帰れない。だったらここは一つ、俺がアイデアを出してやるか。

「あの、ちょっといいですか」

「あぁ申し訳ないですね、すぐにプレゼントを退かします」

「いえその、大きなお世話かも知れませんが、プレゼントを公平に配る方法があるんですけど」

「え?」

 俺は園長先生と先生、シャイニーにその方法を話す。すると園長先生と先生は頷き、シャイニーは面白いのかニヤリと笑う。

「面白そうですね。これなら公平です」

「確かに······」

「じゃ、司会は頼むぞシャイニー」

「いいわよ、やってやろうじゃん」

 子供の数は約五十。俺と園長先生と先生は準備をするために一度教室を出た。準備は簡単だし十分も掛からない。その間にシャイニーは子供たちに説明をしてもらう。

 ま、たまにはこんなのもいいだろう。




「さーてみんな、もう一度ルールを説明するわね‼」

 場所を移動して子供たちと庭へ出る。シャイニーの声はよく響く。子供達もこの遊びにワクワクしてる様だった。

 ちなみに園長先生たちは孤児院の中で待機してる。

「ルールは簡単よ。この小さな袋には番号の書かれた紙が入ってるの。これを孤児院の中にばら撒くから、一人一つ回収して教室に戻って来ること。中は絶対に開けちゃダメよ、いいわね‼」

「「「「はーい‼」」」」

 これは俺が子供の頃よくやらされた宝拾いだ。これなら平等だし、自分の運で掴み取った物だから文句も言えない。自分の物だから交換するのも自由だしな。

 この世界にはくじ引きと言う遊びが無いみたいだ。プレゼントに番号を貼り付けて、番号が書かれた紙をばら撒いて同じ番号のプレゼントを貰えるって説明したら、先生達は驚いてた。

 俺と先生達は廊下や床の上にくじの入った袋を撒き、簡単に見つかるように隠した。これなら小さな子供でも見つけられるだろうな。

「いい、一人一つよ‼ これを守れない子は居ないわね?」

「「「「はーい‼」」」」

「よし、それじゃあ怪我しないようにね。みんなの袋はあるから喧嘩もしないように、見つけたら教室に戻って待機すること‼ いいわね‼」

 子供たちはワクワクしっぱなしだ。気持ちは既に孤児院の中の袋に向いている。俺も宝拾いの時はワクワクしてたな、説明なんて最後は聞いてなかった。

「それじゃあ、よーい······スタートっ‼」

 子供たちは、勢い良く孤児院の中へ駆け出した。なんか微笑ましいね。孤児院の中からはドタバタ騒ぐ声が聞こえるし、やって良かったイベントだ。

「······あれ」

 一人だけ、ポツンと立ってる女の子がいた。フード付きのパーカーを着て顔しか見えない。

 シャイニーは笑顔で少女に近付き、フードの頭をポンポン撫でた。

「どうしたの? ほら、行きなさい」

「·········いい」

「もう、天気もいいんだから、こんなの脱ぎなさいよ」

 シャイニーは少女のフードに手を掛けて外す。

「え」

 するとシャイニーの表情が固まった。流石に俺も驚いた。

「お、おいシャイニー······」

「貴女、まさか······」

「·········」

 少女の髪と瞳は、とても綺麗な『蒼』だった。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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