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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第4章・トラック野郎と商売繁盛』
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43・トラック野郎、過去の話を聞く②


 ニナの話が一段落した頃。

 ミレイナの淹れたお茶を飲み干し、食後のデザートにカステラを出した。今はお湯が沸くまでの小休止だ。

「ははは、シャイニーの奴は最初から喧嘩腰だったのか」

「まぁな。十四の小娘とは思えない奴だったよ。最初は小汚い盗賊崩れかと思ったがな」

「あ、あの、ニナさん。シャイニーは宝石を持ってたんですか?」

「ああ。素人の私でも分かったぞ、とても高価な物であるとな」

「ふむ······謎でふね。もぐもぐ」

 キリエはカステラをもぐもぐ食べてる。今更だがキリエはかなりの大食漢だ。あればあるだけ食うし、無いなら無いで文句も言わない。するとお湯が沸いたのか、異世界のヤカンからピーッと笛のような音が聞こえてきた。

 ちなみに、異世界には《魔道具》と呼ばれる道具がある。それは異世界人なら誰もが持つ《魔力》を原動力にした道具で、魔石と呼ばれる特殊な石に魔力を流す事で発火させたり、ランプの中にある魔石に魔力を流し発光させたりと様々な場面で役に立つ道具だ。

 トラックの利便性ばかりに目を取られていたから、この世界ならではの道具に注目しなかったが、これはこれで素晴らしい。まぁ魔力のない俺には一切使えないけどね。

 ミレイナはみんなにお茶のおかわりを注ぎ、紅茶ポットをテーブルの上に置く。

「ではニナさん、続きをお願いします」

 なんかノリノリだねミレイナちゃん。ウキウキしてるのを隠そうともしてない。なんか可愛いな。

「やれやれ······」

 ニナは熱い紅茶を一口啜り、続きを話し始めた。




*****《五年前・ニナ視点》*****




 振り向いた少女は、突如話しかけた私を警戒してる様だった。

「そう警戒するな。私も冒険者なんだ、これから始まるルーキーを応援してやりたいだけで、怪しい者じゃない」

「·········ふーん」

 私をジロジロ見る視線は警戒半分興味半分といった所か。するとその様子を見ていたゴンズが少女に向かって言う。

「安心しな嬢ちゃん。ニーラマーナは『七色の冒険者アルコバレーノ』の一人で、この町を代表する冒険者だ。わしみたいなジジィよりよっぽど役に立つぞ?」

「アルコ、バレーノ?」

「まぁ冒険者の称号みたいな物だ。それよりどうだ、冒険者になるなら装備を見繕ってやる」

 私の中で宝石の事はどうでも良くなっていた。この少女に感じる何かを見定めてみたくなったのだ。

「·········わかった。お願いするわ」

「よし、まずは服からだな。ゴンズ、支払いは私が」

「はぁ⁉ 何よそれ、私は施しを受けるつもりはないわよ‼」

「なら貸しだ。代金はこれから受ける依頼の報酬から支払ってくれ。なに、ルーキーの装備なんて大した値段じゃない」

「いいわよ別に、宝石を換金して払うから」

「それは止めておけ。そんな高価な宝石を換金所に持って行ってみろ、間違いなく監視が付くぞ。お前がどのような方法でそれを手に入れたのかは知らんが、最初に入ったのがこの店で、しかも私に出会ったのは幸運だったな」

「む······こんな石ころがそんなに高いの?」

「ああ。素人の私が見ても分かるくらいだからな」

「その通りじゃ。恐らくエメラルド一つで家一軒買えるじゃろうな」

「ふーん」

 少女はどうでもいいのか、宝石の入った袋を手の上でポンポンと弄ぶ。価値を知らない愚か者か、本当にどうでもいいのかは分からないが、恐らく後者だろう。

「ま、いいや、それならお願いするわ。まずは」

「服だが······シャワーが先だな。臭うぞ」

 少女はボロボロの服装だ。身体を拭くことすらしてないのかかなり臭う。

「ううう、うるさいわね‼ 仕方ないじゃない‼」

「すまんな。ここでは服を合わせて、その後で共同浴場へ行こう」

「ふん、わかったわよ」

 私は少女を連れて店内にある冒険者用の動きやすい服が置いてあるスペースへ向かい、何着か適当に見繕う。下着などは流石に売ってないから後で服屋に行くしかない。

「さて、武器だが」

「剣」

 少女の目は、剣を置いてあるスペースに向いていた。

「······わかった。剣だな」

 深くは聞かず言われた通りにする。見た感じこの少女は細腕だ、あまり長く太い剣は扱えないだろう。

「そうだな······これなんてどうだ?」

 私は七十センチほどのサーベルを手渡した。軽いし長さも丁度いい。ビギナーには扱いやすい武器だと言えるだろう。

「へぇ······」

 少女は剣を手に取り軽く振る。すると満足したのかニヤリと笑った。

「どうだ、それでいいか」

「うん。暫くはこれでいいや」

「よし、次は防具······ん? おい」

「何よ」

 私は少女が持ってるサーベルを見て訝しむ。少女の手にはそれぞれ一本ずつ、つまり二本のサーベルが握られていた。

「何故二本持ってるんだ?」

「はぁ? そんなの決まってるじゃない。一本より二本のが強いからよ。手は二本あるんだし、武器を二本持つのもアリでしょ?」

「·········」

 これは何かを言うべきなのだろうか。だが私は少女の師匠という訳ではない。まぁいい、二刀流の難しさは剣を使う内にわかるだろう。

「ふぅ······では防具だ」

「何よ、そのため息は」

 私は少女の問いをスルーして防具スペースへ。

 剣士なら鎧よりも胸当てなどがいい。双剣士なら盾は必要ないな、動きやすい装備で高い防御力の胸当てを選び、少女に合わせる。

「このブロンズリザードの胸当てがいいだろう。軽くて丈夫だし、値段も安価だ」

「じゃあそれで」

 少女はあっさりと決めた。剣を吊るすベルトや細かい装備などを選ぶ時間のが長かった。やれやれ。

「装備は決まったな。ゴンズ、会計を」

「はいよ」

 コインを支払い、装備一式を布の袋に詰めて貰う。

 私は袋を受け取り少女に手渡した。

「さて、風呂に行くか」

「え、一緒に行くの?」

「さっき言っただろう、共同浴場へ行こうとな」

「別にいいけどさ、冒険者ってみんなお節介なの?」

「さぁな、私はこれから冒険者を目指すルーキーを大事にしたいだけだ」

「ふーん。お人好しなのね」

「そう見えるか?」

「うん。なーんかいい人そう」

 少女は警戒が薄れて来たのか、私に笑顔を向けてくれる。不思議だな······『蒼』の後継者を探してる最中に出会った『蒼』い髪と瞳を持つ少女だからだろうか、普段の私ならここまでしない。それに当初の目的は高価な宝石を持っていたから近付いたんだ。それもどうでもよくなっている。

「ふ、これも何かの縁だ。冒険者登録はしたのか?」

「まだ。この国に来たばかりよ、住む場所すら決まってないわ」

「そうか、なら風呂の次は冒険者ギルドに行くぞ。そこで冒険者登録をすれば、ギルドの管理する冒険者専用宿舎を利用出来る。仮宿として住めるように私が手配しておこう」

「ホントっ⁉」

「ああ、その代わり家賃は頂くし、装備の代金も少しづつ返金して貰うからな」

「もちろん任せてよ‼ 冒険者になって稼ぎまくってやるわ‼」

 少女は拳を突き出してニヤリと笑い、何度かステップを踏んで私の前に出る。そしてクルリと振り返った。

「アタシはシャイニーブルー、よろしくねニーラマーナ‼」

 これが、私とシャイニーブルーの出会いだった。




*****《現在・コウタ視点》*****




「と、ここまでがシャイニーブルーとの出会いだ」

「はぁ〜」

「へぇ〜」

「ふむ、興味深いですね」

 俺たちはニナとシャイニーの出会いを聞いた。たぶん物語ならここまでがプロローグだろう。

「こんな話を人にしたのは初めてだ。少し照れるな」

「いえ、すっごく面白いです‼ 続きをお願いします‼」

「お、落ち着けよミレイナ」

「私も気になりますね、冒険者なりたてのシャイニー······社長は興味がないのですか?」

「·········」

 ぶっちゃけある。

 ニナとシャイニーの出会いから、冒険者として成長するシャイニー、そこから『七色の冒険者アルコバレーノ』として認められて行くまでどんな道を歩んだのか。

「ふむ、あと少しなら話せるが······どうする?」

「お願いします‼」

「お願いします」

 あらら、ミレイナとキリエはノリノリだな。特にミレイナ。

 まぁ俺としても気になるし、断る理由がない。せっかくだし最後まで聞かせて貰おうかな。

「頼む、それからどうなったんだ?」

「風呂に入って装備を整えて、冒険者登録をしたんだ。思えばそこからだったな」

「······何がだ?」

「ふふ、そこからがシャイニーブルーとの長い付き合いの始まりだった」

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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