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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第4章・トラック野郎と商売繁盛』
41/273

41・トラック野郎、浮かれる

第二部となります。

このお話から書き方を変えます。読みにくかったらすみません。


 魔王四天王との戦いから一週間。『アガツマ運送会社』は通常営業に戻っていた。

 お客様が会社に荷物を持ち込み、複写の記入用紙を記入して料金を支払う。そして荷物を預かり俺とシャイニーが運搬するシステムだ。

 もちろんトラックはロボットに変形はしない。はっきり言って俺には不要な機能だ。平穏なスローライフに変形機能はいらない。

 今日も朝の受付を終わらせ、今日配達の荷物を積み込む前の確認をキリエとしてる。

「今日の荷物はゲヘヘ地区とイイネ地区です。よろしくお願いします」

「ああ任せろ。行くぞシャイニー」

「おっけー。積み込むわよ」

 俺とシャイニーがトラックに荷物を積み込み、キリエは事務所に戻る。

 ミレイナはカウンターで受付を担当してる。これから持ち込まれる荷物は、近隣の町以外は後日配達となる。近隣の町の配達を午後にしたのは正解だったな。

 今日の午前中の配達は五十件。営業再開してから徐々に増えて来た。どうやら町の人も待っていたらしく、営業再開と同時に依頼が殺到した。こんなにも求められてるのが嬉しいとはね。

「はぁ……今日も忙しいわね」

「だな。魔王四天王との戦いがウソみたいだ」

「まぁこれがアタシたちの日常よ。アンタが言った通り、アタシ達は勇者じゃないもんね。こうやって労働してお金を貰うのがフツーなのよ」

「わかってるよ。もう魔王だの四天王だの関わるのはゴメンだ」

 何度も言ったが俺はトラック運転手だ。戦いなんてゴメンだし、仕事をしながらのんびりスローライフを満喫したい。この世界に転生して戦いに巻き込まれるなんてまっぴらだ。

 すると倉庫と事務所を繋ぐドアが開かれ、プラチナブロンドヘアを一纏めにした仕事スタイルの少女ミレイナが、笑顔で俺たちの傍に来た。

「社長、シャイニー、今日のお昼は海鮮チャーハンにしますね」

「おぉマジで!? やったぜ!!」

「アタシの大好物!! さっすがミレイナ!!」

「はい。だって今日は特別な日ですから」

「ああ、そうだな」

「待ちに待った、ね」

 そう、今日は俺たちにとって……社会人にとって特別な日。

 俺もシャイニーもミレイナも、多分キリエもウキウキしてる。

「ミレイナ、今日の夜は豪勢にしようぜ」

「はい。わかりました」

「お、さっすが社長は太っ腹ねぇ~」

「むふふ、今日くらいはいいだろ」

 めでたい日はお祝いしなきゃな。これは日本も異世界も共通だと思う。もちろん俺の奢りだ、社長たるもの、社員に奢るくらいはしないといけない。

 そう。今日は待ちに待った給料日だ。




 給料計算は、タマとキリエが担当してる。

 ポイントで買ったお菓子やジュース代金は給料天引きで引かれ、残った金額が支払われる。タマはちゃんと全員分のポイント消費を計算してるらしいから安心だ。

 俺とシャイニーは配達をしながら話していた。

「初任給と言ってもだいぶ買い食いしたしなぁ」

「う······そ、それを言われるとね」

 甘えがあるといけないので、社員共通としてポイントは差っ引く。現代の美味しいお菓子が食べ放題となるとポイントがいくらあっても足りない。それに本来ならこの世界ではあり得ないお菓子だ。

「仕事が終わったら給与式をやろう。その後はレストランで食事だな」

「給与式?」

「ああ、俺のいた会社ではあったんだ。仕事終わりに社員を集めて、みんなの前で給料を渡すんだ」

「ふーん。なんか面倒くさいわね。フツーに手渡しじゃダメなの?」

「いや······いいと思うけど」

「じゃあそれでいいじゃん」

「·········」

 俺の居た会社では、社長がみんなの前で給料を渡す。その時に「これからも宜しくね」的な激励をしたり、社員が揃って社訓を読み上げたりした。面倒くさいし貰うモン貰ったらさっさと帰りたい気持ちはあったが、何故かその儀式が待ち遠しかったのを覚えてる。

「いや、給与式はやる」

「そう? まぁいいけどさ」

 何となく、寂しい気持ちがあったからかも知れない。

 何だかんだで社長から頑張れと言われるとやる気になったもんだ。だからミレイナ達も頑張って欲しい。名ばかり社長だけど、この会社の社長として声を掛けたい気持ちはある。

『社長。次の配送先に到着します』 

「おう。頼むぞシャイニー」

「はーい。次は······」

 シャイニーは配送先リストをペラペラ捲り確認した。




 午前中の配達が終わり、俺とシャイニーは会社へ戻って来た。

 ミレイナのあったかご飯を食べた後は周辺地域の配達だ。件数も徐々に増えつつあるから忙しい。まぁ個人の荷物が殆どだからすぐに終わる。

 最近は他の商人や会社の荷物運搬なんかも頼まれるようになったが、トラックが一台しか無い上に個人の配達が忙しくて受ける事が出来なかった。残念だけどね。

「た〜だいま〜っ‼·········げ」

「ただいま。お、ニナ」

「邪魔してるぞ。社長、シャイニーブルー」

 会社のカウンターに乗り出すように、冒険者ギルド長のニーラマーナことニナが、ミレイナとキリエと喋っていた。

「あ、社長、シャイニー。すぐお昼にしますね」

「頼む。良かったらニナもどうだ? 今日はミレイナ特製の海鮮チャーハンだぞ」

「ほう、それは美味そうだな。ご相伴に預かるとしよう」

「はーい。ふふ、ニナさんとお昼って初めてです」

「私も手伝いますよミレイナ」

「お願いしますね、キリエ」

 うーん、これこそ日常の風景だ。しかも美女に美少女たちと一緒にランチを食べるなんて。

「ちょーっと待った‼ アタシは許可してない‼ 何でニーラマーナが当たり前のようにご飯を一緒に食べるのよ‼」

 シャイニーが何故か俺に噛み付いた。ホントにニナのこと嫌いなんだな。

「はぁ······シャイニーブルー、私は社長の許可を得て食事を貰うんだ。ヒラのお前が文句を付ける筋合いはない」

「うぐぐ。その、ギルド長がギルドをほったらかして、運送会社で食事なんてしていいの⁉」

「ああ、午前中の仕事は終わらせた。今はこうして町の見回りを兼ねた昼食休憩だ。問題はない」

「だ、だったら町のカフェにでも行きなさいよ‼ なんでわざわざここに来るのよ‼」

「決まってる、護衛を兼ねた見回りだからだ。お前は社長の護衛に付いてるからいいが、ミレイナやキリエの護衛は誰が付く? こんな可愛らしい少女二人、誘拐されればあっという間に奴隷落ちだぞ」

「そ、それは······」

 うーん、こりゃシャイニーの負けだな。

 俺としてもニナの存在はありがたい。『七色の冒険者アルコバレーノ』の一人が立ち寄ってくれるだけでミレイナ達は安全だ。『警察官立ち寄り』みたいな看板でも作ろうか。『冒険者ギルド長立ち寄り』みたいな。

「じゃあいい‼ アタシは部屋で食べるから‼」

「お、おいシャイニー」

 シャイニーはキッチンへ消えていった。

 するとニナはため息を吐き、俺に向かってぼやく。

「だいぶ嫌われてるようだ。まぁ仕方ないがな······」

 ニナは悲しそうに微笑んだ。




 シャイニーブルーとニーラマーナ。

 二人の関係は冒険者と冒険者ギルド長という事だけではない。きっと俺たちも知らない何かがあるんだろうな。

 俺は海鮮チャーハンを食べながらそんな事を思った。

 ニナに聞けば答えてくれるんだろうけど、わざわざ二人の過去をほじくり返してまで知りたいとは思わない。だってそれはプライバシーだし、仕事には関係ない。

「ニナ。貴女とシャイニーはどのような関係なのですか?」

「ぶふっ」

 そう思った矢先のキリエだよ。

 既に海鮮チャーハンを完食して食後のお茶を啜ってる。完全に暇つぶしみたいな、食後の娯楽の一つみたいな感じで聞いてるな。

「何だ、興味があるのか?」

「はい。私やミレイナの事は話しましたが、シャイニーの過去は不明なのです。家族構成や出身地など、本人も話しませんので」

「わ、私も気になります」

 あらら、ミレイナも知りたいのか。まぁそうだよな。

 ちなみにミレイナが魔族というのは俺たちだけの秘密だ。言っても信じて貰えないだろうし、どう見てもミレイナは普通の人間にしか見えないけどね。

「うーむ、家族や出身地の話は知らんが、私と出会った頃の話ならしてやれるぞ。聞きたいか?」

 と、ここでニナの視線は俺に。

 まぁ話してくれるなら聞いておいてもいいかもな。別にシャイニーの過去がどうであれ、この会社の社員ということに変わりないし。

「じゃあせっかくだし、頼むわ」

 ニナは軽く頷くと、お茶を一口啜り唇を湿らせる。

「シャイニーブルーと出会ったのは五年前、アイツが十四歳の頃だった」

 俺は、何故かドキドキしていた。

今回から1日おきに更新します。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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