4・トラック野郎、トラックを強化する
「さ、乗った乗った」
「えっと······」
「そっか、ここをこうやって開けるんだ」
俺は助手席のドアを開け、ミレイナを乗せる。俺も運転席に乗り込み、シートベルトを装着した。
「ミレイナ、シートベルトを付けて」
「し、しーと?」
「これ、この紐を引っ張って、そう、そこの穴に」
「か、身体を固定するんですね」
まぁ事故を起こすつもりはないけど、念の為ね。
『はじめましてミレイナ様。私は《デコトラ》に付随する神工知能『カスタマイズサポート』です。以後お見知り置きを』
「ふぁっ⁉ え⁉ えぇっ⁉」
「落ち着けって。ええと、このトラックの声だと思えばいいさ」
「と、とらっく? ええと、この乗り物ですよね?」
「ああ」
ミレイナはトラックの中をキョロキョロ見てる。まぁ珍しいのは間違いないだろうな。
『マスター。[車体強化]の説明を聞きますか?』
「そうだな、頼むわ」
『畏まりました。[車体強化]はこのトラックの強度や速度、積載量などを強化する事が出来ます。レベルが上がればトラックそのものを別の車種にする事も可能です』
「別の車種⁉ 例えば?」
『はい。現在のレベルは4。レベル20で最初の車種項目が開放されます。その時にいくつかの選択肢が現れますので、お好きな車種へ換装する事が可能です。もちろん基本の『トラックフォーム』はそのまま残ります』
うーむ、なんか児童アニメに出てくるロボットみたいな感覚なのか? まぁ便利だからいいけどな。
ミレイナはポカンとしたままだ。どうやら意味がわからないらしい。
『それでは、現在のステータスを表示します』
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[機体名] 未定 レベル4
[運転手] 吾妻幸太
[機体スペック]
○最大速度 140km/h
○最大積載量 3.5t
[武装]
○[機銃][小型ミサイル][マキビシ][高周波ブレード]
[フックショット][ベアリング弾][電磁ウィップ]
[車内設備]
○[ルーフ][後部スペース][オーディオ]
[車体強化]
○なし
○経験値ポイント・[211]
○以下項目未開放
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「お、ポイントが増えてる。もしかしてファイターゴブリンのポイントか?」
『はい。ポイントを消費して整備を行いますか?』
「そうだな······じゃあ[車体強化]を」
『畏まりました』
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○経験値ポイント・[211]
[車体強化]
○車体強度 レベル1 経験値消費10
○タイヤ強度 レベル1 経験値消費10
○エンジン出力 レベル1 経験値消費10
[車体換装]
○未開放
[???]
○未開放
以下項目未開放
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「······なぁ、このハテナってなんだ?」
『現在未開放です。詳細はお伝え出来ません』
「ふーん、まぁいいや。じゃあとりあえず······」
俺は70ポイントを消費して3つの項目を強化した。エンジン出力はそんなに必要ないし、まずは安全第一だ。
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○経験値ポイント・[141]
[車体強化]
○車体強度 レベル3 経験値消費30
○タイヤ強度 レベル3 経験値消費30
○エンジン出力 レベル2 経験値消費20
[車体換装]
○未開放
[???]
○未開放
以下項目未開放
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「よーし、次は車内設備を頼むわ」
『畏まりました』
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○経験値ポイント・[141]
○設備一覧○
座布団・2ポイント
オーディオ・済
トイレルーム・50ポイント
居住ルーム・180ポイント
シャワールーム・200ポイント
ベッドルーム・500ポイント
以下項目未開放
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うーん、居住ルームは気になるけど、やっぱトイレかな。
ミレイナも居るし外でするのは恥ずかしい。それにミレイナもするだろうしね。おっとセクハラか。
「じゃあトイレルームを設置してくれ。後はまたポイントが貯まったら使うよ」
『畏まりました······設置完了』
「お、おお⁉」
「きゃあっ⁉」
すると、トラックが突然振動した。
後ろを振り向くと、後部スペースが消失し奥行きがかなり広くなった。普通に立って歩けるくらい広い。
しかもキャンピングカーみたいな出入口が両サイドに設置され、外からも出入り出来るようになってる。そして運転席の後ろにドアの付いた入口が出来た。
「こ、これって······」
俺はシートベルトを外し、外の入口から中へ入る。そして運転席の後ろのドアを開けた。
「おぉ、水洗トイレじゃねーか⁉ 見ろよミレイナさん、トイレだぜ‼」
「と、トイレですか? えっと、どうしていきなり······?」
「ま、まぁ気にしない。とにかくこれでトイレ問題は解決だ。ミレイナさんも遠慮なく使ってくれ」
「は、はい」
俺は運転席に戻り、一応確認した。
「あのさ、その······」
『流れた排泄物は、トラック内で分解します。水などは空気中の水分を取り込み濾過して使用しますので、ご安心を』
「何も聞いてないけどな‼ ご親切にどうも‼」
この野郎、どうオブラートに包んで聞こうか迷ってた質問を、あっさりと羞恥なく答えやがった。
「あ、それとトラックの燃料ってどうなってんだ?」
『燃料は空気です。空気を車体に取り込んでエネルギーにしています。つまり無限エネルギーです』
「とんでもねぇな······」
どうりで燃料ゲージがずっと満タンなワケだ。ありがたすぎて涙が出そうだぜ。
「よし。こんなところかな。ポイントを貯めて次は居住ルームを設置しようぜ」
「は、はい。お願いします」
ミレイナはよくわかってないみたいだな。まぁ、居住ルームを設置したら喜んでくれるだろう。どんな顔をするか楽しみだぜ。
「よーし。じゃあ『カスタマイズサポート』よ、『シンフォニアの花』の位置を特定してくれ」
『畏まりました·········特定完了。『シンフォニアの花』は現在地から東へ11キロ、ゴブリンの巣の近くで発見しました』
「ゴブリンの巣?」
『はい。ゴブリンの巣は洞窟になっていて、その洞窟の頂上に『シンフォニアの花』は咲いています』
「そ、そんな所に······見つからないはずですね」
「よーし、ポイントも稼げそうだし、ちゃっちゃと行こうぜ」
俺とミレイナを乗せ、俺はトラックを走らせた。