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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第4章・トラック野郎と商売繁盛』
36/273

35・トラック野郎、危険地帯に出発

 

 ミレイナのカミングアウトの翌日。朝食を終えて4人でまったりしてると、タマからアナウンスが入った。


 『社長。お客様がいらっしゃいました。個体名『獅子神月詠』です』

 「お、もう来たのか……って、1人か?」

 『はい。トラック周辺を確認……他の勇者反応はありません』

 「ふーん、1人で来たのか」


 とりあえず迎えに行くために立ち上がり、トラック前部にあるドアに向かう。

 

 「あ、ここに案内するから、お茶の準備を頼む」

 「わかりました」


 ミレイナはにっこり笑う。どうやら昨日の事は気にしてないようだ。こっちとしてもあんまりズルズル引き摺って欲しくないし、ミレイナちゃんはやっぱり笑顔で居て欲しいからな。

 俺はドアを開け、キョロキョロしてる勇者少女に声を掛けた。


 「よう、こっちだ」

 「わ、びっくりした。えぇと……詳細を話に」

 「ああ。とりあえず中に入れよ、お茶くらい出すから」

 「は、はい」

 「そういや、なんで1人なんだ?」

 「他のみんなは城で鍛錬してます。誤解してるかも知れませんが、ああ見えて太陽は真面目なんです。魔王を倒すための鍛錬は、毎日欠かしません」

 「ふーん。なんか意外だな」


 俺は勇者少女を中に招き入れ、スリッパを出してやる。今更だがトラック内の居住ルームは土足厳禁だ。これは俺が日本人だからであり、ミレイナたちは最初困惑していた。だがこれだけは譲らなかった。

 勇者少女はトラックの意外な広さにキョロキョロしていた。ふふふ、驚くのはこれからだぜ。


 「さ、どうぞ」

 「はい、失礼し………え、えぇぇぇぇぇっ!? 何これ!?」

 「いらっしゃいませ。どうぞお掛け下さい」

 「お菓子もあるわよー」

 「まずはゆっくりと寛いで下さい」


 居住ルームは広いからな。キッチンにダイニングテーブルと椅子、さらにカーペットが敷かれてソファも設置してある。まさに俺たちの憩いの空間だ。


 「ど、どうなって……」

 「ま、これが俺のチートスキル《デコトラ》だ。トラックを好きに改造できる能力なんだ」

 「ち、チートスキル……す、すごい」

 「そうだ、これはあのバカ勇者には内緒な。こんなの見られたら五月蠅そうだし」

 「確かに……わかりました」

 「じゃ、席にどうぞ。えぇと、月詠……でいいか?」

 「はい」


 俺は月詠を席に案内する。するとミレイナがすかさずお茶を出し、シャイニーがポッキーの箱を差し出す。すると月詠は日本製のポッキーの箱を見て驚いていたが、俺がニンマリと笑うと理解したのか、ポッキーを1本摘まみ、コリコリ食べた。


 「美味しい……まさか、異世界でポッキーを食べれるなんて」

 「ここでなら好きなだけ食わせてやるよ。お土産には渡せないけど」

 「……ありがとうございます。煌星にもあげたかったな……」

 「悪いな」

 「いえ、そんな……と、すみません、お話をしに来たのに」

 


 表情を引き締めた月詠は、詳細を話し始めた。



 **********************



 「まず、玄武王バサルテスの居場所ですが、奴は『ソーコナシ沼地』の最奥に生息してると情報が入りました」

 「そ、底なし沼地? なんだそりゃ?」

 「『ソーコナシ沼地』よ。ふぅん、超危険地帯じゃん」

 

 相変わらず、この世界のネーミングセンスはワケわからん。


 「どうやら、そこに住む危険種や超危険種たちを手懐けて配下にしたり、自身のエサとして食らってるそうです。まだ人間には手を出していないようですが······それも時間の問題でしょう。奴が人間の味を覚えたら、町や集落に大規模な被害が出るのは間違いありません」

 「ま、マジですか? そ、そんなの勝てるのかよ⁉」


 キリエも言ってたけど、先代勇者が魔王を倒すまで40年以上掛かったんだろ? そんなバケモノ集団の四天王の1匹を、召喚されて1年も経ってなさそうな子供が倒せるとは思えない。


 「はい、倒します。先代勇者とは違い聖剣や装備の技術も進歩しています。どんな相手だろうと遅れは取りません」

 

 ま、まあそうだけどよ。確かに技術の進歩をプラスすれば違うのかな。くそ、わからん。


 「コウタさんたちは、ソーコナシ沼地の中程まで送って頂きたいのです。あたしたちを降ろした後は入口まで戻り待機。その後戻ってきたあたしたちを連れて帰還。こんな流れです」

 「なるほどな······」


 俺としては、太陽を煽り1人で突っ込ませ、その隙に女の子を連れてトンズラするという作戦だ。だけど、勝ち目があるなら勇者全員で戦った方がいいのかも。


 「コウタさん······」

 「ミレイナ······?」


 ミレイナが俺の袖を軽く引っ張る。その表情は不安げだ。

 多分、四天王の強さを知ってるからだ。だから不安になってる。


 「大丈夫だ。意外と楽勝かも知れないぞ? ここは任せてみるか」

 「·········はい」


 か細く、消え入りそうな声だった。どうしても不安は消えないらしい。とは言え、仕事を受ける以上はやるしかない。


 「出発は3日後、ルートはお任せします」

 「え、いいのか?」

 「はい。運送屋さんですもんね、配達ルートまで指定するのは変かなって」

 「ははは、そうだな。じゃあ俺たちに任せてくれ」

 「はい。よろしくお願いします」

 

 そう言って月詠は帰った。どうやら城で鍛錬をするらしい。太陽はどうでもいいが、あんなしっかりした子が死ぬところなんて見たくない。四天王を倒せる事を祈ろう。

 

 「確かに、先代勇者とは時代が違うのよね。もしかしたら四天王を倒せちゃうかも」

 「可能性はありますが······私達は勇者と四天王の実力を知りません。どうなるかは予想が尽きませんね」

 「·········」

 「どうしたミレイナ?」

 「······いえ、やっぱり不安で」

 「大丈夫だって。俺たちが四天王と対面することはなさそうだしな」

 


 その考えが甘かったのは、後で身を持って知ることになった。



 ********************



 翌日。長旅になるので準備を入念に済ませる事にする。

 ミレイナたちは買い出しに出掛け、俺はトラックの強化をする。久しぶりにやりますかね。


 「タマ、四天王のデータはあるか?」

 『該当項目なし。魔王関係のデータは不足しています。対象となる生物をスキャンする事で情報を入手可能です』

 「ふーん、じゃあ玄武王とか言う奴をスキャンすれば、魔族に関するデータが入手出来るのか」

 『はい。対象の戦闘能力が不明なので、トラックの車体強化をお薦めします』

 「そうだな。ポイントはかなり稼いだし、いっちょやりますか。トラックのステータスを頼む」

 『畏まりました。項目の増大に伴い、システム画面を整理しました。該当項目を開く場合はフロントガラスをタッチして下さい』

 「フロントガラスをタッチって······タッチパネル方式?」

 

 俺は久しぶりにトラックの強化画面を呼びたした。


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 【機体名】 未定 レベル37

 【運転手ドライバー】 吾妻幸太

 【機体スペック】 《トラックフォーム》

 【武装詳細】

 【車内設備詳細】

 【車体強化詳細】

 【経験値ポイント詳細】

 【ドライブイン詳細】

 【追加装備詳細】


 ○以下項目未開放

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「おお、かなりスッキリしてるな。じゃあ試しに経験値ポイントをタッチ」

 

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 【経験値ポイント】

 ○経験値ポイント《129500》

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 「じゅ、12万⁉ こんなにあったのか⁉」

 『危険種のポイントは平均で1万です。デンジャー山脈で倒した危険種の数は18体です。これまでのポイント消費を計算するとこの数値になります』

 「まぁ結構な買い食いしてたしな······」


 最低でも6万ポイントの買い食いをしたってことだ。シャイニーはポッキーにカフェオレ。ミレイナはポテチとフルーツジュース。キリエはスルメとイカとミルク。俺もお茶だのビールだの飲むし。

  

 「ま、まぁこれからはポイントを気にしつつ買物しよう。車体強化を開いてくれ」

 『畏まりました』


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 【車体強化】

 ○車体強度   レベル15 経験値消費600

 ○タイヤ強度  レベル15 経験値消費600

 ○エンジン出力 レベル10 経験値消費100

 【車体換装詳細】

 【???】


 ○以下項目未開放

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「う〜ん·········取り敢えず、全部のレベルを30くらいまで上げるか」

 『畏まりました』

  

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 【車体強化】

 ○車体強度   レベル30 経験値消費3000

 ○タイヤ強度  レベル30 経験値消費3000

 ○エンジン出力 レベル30 経験値消費3000

 【車体換装詳細】

 【???】


 ○以下項目未開放

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「これだけあれば平気だろうな。どんくらい強いのかは知らんけど」


 これ以上はポイントが勿体無いし、取り敢えずここまでにしておく。そう言えば最近、車内設備の項目をチェックしてなかった。何か役立つ装備はないかな?


 「タマ、車内設備を頼む」

 『畏まりました』


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 

 ○車内設備

 【居住ルーム詳細】

 【ベッドルーム詳細】

 【シャワールーム詳細】

 ○未購入

 【地下ルーム】

 【??????????】

 【??????????】


 ○以下項目未開放

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 「あれ、地下ルーム? なんだこれ」

 『デンジャー山脈でレベルアップ時に開放されました。詳細はお伝えしましたが』

 「そ、そうだっけ?」

 『はい。ちょうどミレイナ様が食事の招集を掛けられた時です』

 「·········ごめん」


 聞いてなかったです。ミレイナちゃんの作るご飯の方が気になったのかも知れない。それは仕方ないよね、うん。


 「えーと、じゃあ地下ルームの詳細を」

 『畏まりました。地下ルームは2万ポイント消費で開放されますが宜しいですか?』

 「う〜ん·········よし、開放‼」

 『畏まりました。地下ルーム開放。項目を表示します』


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 【地下ルーム】

 ○業務用冷蔵庫[12000]

 ○ワインセラー[10000]

 ○戸棚[8000]

 ○収納ケース[800]


 ○以下項目未開放

 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 「こりゃ完全な倉庫だ。でも長旅にはちょうどいいな、業務用冷蔵庫とかデカくていいだろうし」


 ワインセラーとかはいらないな。俺はビール派だし、シャイニーやキリエもそんなに飲まない。ワインが飲みたい時は、1本単位で買えばいいだろう。


 「えーと、業務用冷蔵庫と収納ケースを4つほど買おう」

 『畏まりました·········設置完了』

 「よし」


 取り敢えずこんなところか。後はレベルが上がって項目が増えたら追加していけばいい。ミレイナは業務用冷蔵庫を気に入ってくれるかな。



 少し一服したら、ミレイナたちを迎えに行くか。



 ********************



 地下ルームはダイニングの真横に階段が設置された。ミレイナは業務用冷蔵庫を大いに喜び、買ってきた食材をさっそく地下ルームの冷蔵庫へ入れた。喜んでもらえて俺も嬉しいぜ。

 それから2日後、勇者たちを連れてソーコナシ沼地へ向かう日がやってきた。俺たちは指定された場所へ迎えに行くと、勇者たちは馬車の荷台部分と共に待っていた。どうやらあれをトラックと連結させて行くらしい。


 「ようおっさん、さっそくだけど頼むぜ‼」

 「おう、それとおっさんは止めろ。俺はまだ26だ」

 「そーなのか? なーんかくたびれた感じがするからよ、てっきり30超えてんのかと思ったぜ」

 「ほっとけ、大きなお世話だ」


 俺はトラックをバックさせ、牽引用のワイヤーを使いトラックと荷台を連結させる。

 すると、ゆるふわウェーブの女の子が近付いて来た。たしかこの子は太陽のハーレムその1。


 「お疲れ様ですコウタ様。今日は宜しくお願いしますね」

 「ああ、えーと」

 「煌星きらぼしです、延寿道煌星えんじゅどうきらぼし。長いので煌星きらぼしとお呼び下さい」

 「わかった。よろしくな、煌星きらぼし

 「はい。その······此度は誠に申し訳ありません。太陽くんの我儘でご迷惑をお掛けして······」

 「月詠にも言われたけどもういいって。お前たちも太陽バカの子守で大変だろ? 俺たちにまで気を回す必要はないから、もっと気楽にしてろよ」

 「······お心遣い、痛み入ります」


 なんか堅そうな女の子だな。名前もスゴいし、もしかしたら金持ちのお嬢様なのかも。

 煌星は丁寧に一礼すると、太陽の元へ向かっていく。


 「よし、これでいい」

 「おーし、じゃあ行くぜ‼ 目指すはソーコナシ沼地の魔王四天王だ‼ 待ってろよ玄武王、オレたちが倒してやるぜ‼」

  

 剣を抜いて宣言する太陽バカ

 こんなの相手にしながら進むのかよ。マジで面倒くさいな。



 俺はため息を吐きつつ、運転席へ乗り込んだ。


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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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