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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第4章・トラック野郎と商売繁盛』
31/273

30・トラック野郎、休日を満喫


 配送の都合で翌日の配達はゼロ。つまり、久しぶりの休みになった。夕食時にその話をすると、シャイニーが嬉しそうに言う。


 「じゃあさ、みんなで買い物行かない?」

 「いいですね‼ 最近忙しくて『スターダスト』を覗けなくて······それにお洋服や靴、バッグなんかも」

 「私は飲食店が気になりますね。最近オープンした『辛辛飯店』というお店は、たっぷりの香辛料を使った激辛料理を出すお店だそうです。是非とも一度行ってみたいですね」

 「キリエ、お前って辛いの好きなのか?」

 「はい。それはもう」


 というワケで、今日の予定は決まった。

 みんなで買い物してキリエ一押しの激辛料理店で食事をする。ちなみにトラックは使わず歩きで行く。たまには歩かないとね。

  

  

 久しぶりの休日、満喫しますかね。



 ********************

 


 町をトラックで走ることは多かったが、歩くことは初めてかも知れない。何だか景色が違って見えるぜ。


 「まずはスターダスト‼ 新作のアクセサリーを見たいです‼ 次は洋服屋で新しいスカートに帽子に」

 「·········ミレイナ?」

 「あぁ、ミレイナはファッション関係になるとテンションが上がるんだ。気にすんな」

 「なるほど。これは面白········いえ、新しいミレイナを知ることが出来ました」

 「アンタ絶対に楽しんでるわね」


 町の中央付近、最も賑わいを見せてる場所に、俺たちはやって来た。するとミレイナのテンションはマックスになり、この様子を初めて見るキリエは眉を顰めた。


 「ふふ、今日はみんなに似合うお洋服やアクセサリーを選びますね」

 「よろしくねミレイナ。それと、着せ替え人形にだけはしないでね」

 「私は面白いから構いません。シャイニーは可愛いですし、2人で着せ替え人形にしましょうね」

 「はいっ‼」

 「ちょい待てこら」


 うーむ。果たしてシャイニーはミレイナとキリエの魔の手から逃れられるのだろうか。俺は荷物を持ちつつ求められたら答えよう。所詮俺は男、ファッションのことは分かりません。


 「コウタさんには······うん、新しいベルトを買いましょう‼ 作業服でも付けられる丈夫なモノが良いですね」

 「いいかもね。じゃあアクセサリーは?」

 「社長にはアクセサリーより衣服など如何です? 例えば帽子とか」

 「良いですね‼ じゃあさっそく行きましょう‼」

 

 ベルトか。まさか名前にあやかって戦国的なベルトじゃないだろうな。もしそんなベルトだったら、ぜってぇ許さねぇっ‼ なんてな。帽子はいいな、運送屋ではみんな被ってるイメージだ。


 みんなで歩くこと数分。なんか注目されてる事に気がついた。

 その視線は俺ではなく、俺の前を歩く美少女3人だ。ワイワイと楽しそうに歩く3人は誰が見ても美少女。しかもとびきりのだ。ふっふっふ、よーく見るがいい。彼女たちが俺の会社の従業員だ。

 なーんて優越感に浸りながら歩くと、『スターダスト・ゼニモウケ店』に到着した。中は女性だらけ、冒険者やら若い女の子やら、はっきり言って居心地悪い。


 「さぁ、ここからが本番ですよ‼」



 ミレイナちゃん、テンションマックス過ぎるだろ。


  

 ********************



 買い物を終えた俺たちは昼飯を食べに来た。場所はキリエおすすめの激辛料理店『辛辛飯店』だ。いかにも辛そうな感じがいいね。席に案内されて座る。


 「私のおすすめは『マグマリザード』の激辛煮込みです。一口食べたら汗が滝のように流れる様から『狂気の煮込み』と呼ばれてるそうですよ」

 

 キリエは淡々とそんな事を言う。何言ってんのこの子は?

 

 「わ、私、辛いのはちょっと」

 「お、俺はフツーの七味チャーハンで」

 「アタシはマグマリザードの煮込み‼ 面白そーじゃない‼」

 「私もシャイニーと同じで」


 シャイニーはアホなのか?

 まぁ止めない。面白そうだしどんな反応をするか見てみたい。

 それからしばらくすると、件の料理が運ばれて来た。


 「う、うわぁ······」

 「ま、真っ黒です······目が痛い」

 「おぉ、あまりにも辛くしたために黒くなってしまった肉の煮込みですね。うふふ、嬉しいです」

 「お、お、面白いじゃない‼」

 「おいシャイニー、顔色が悪いぞ」

 「シャイニー、無理しないほうが······」

 「うう、うるさいわね。いただきまーすっ‼」

 

 シャイニーはマグマリザードの煮込みをパクリと一口。

 何度か咀嚼すると、にっこり笑った。


 「何よ、美味しいじゃぶぉぶぇぇッ⁉」

 「シャイニーっ⁉」


 シャイニーは盛大に吹き出した。汚ぇっ⁉

 すると舌を真っ赤にしながら泣き出した。


 「ぐぶふぇぇぇーーーッ⁉ みふ、みふぅぅぅーーーっ⁉」

 「お、落ち着けシャイニー‼ それはアツアツのお茶だ‼」

 「ぶっばぁぁぁぁっ⁉」

 「シャイニーっ、水ですっ‼」

 「んぐ、ング······ぶふぇぇぇっ、おぎゃわりっ‼」  

 「どうぞ、氷もあります‼」

 「うぅぅ······」


 ようやく落ち着いたシャイニーは、机に突っ伏して動かない。俺とミレイナは運ばれて来た料理を食べながらシャイニーに言う。


 「シャイニー、なんか食えよ。チャーハン食べるか?」

 「私のマーボー豆腐、いかがですか?」

 「いい······夜まで何も食べない」

 「では、勿体無いので、こちらはいただきますね」

 「え?」


 自分の分を食べ終えたキリエは、シャイニーの残したマグマリザードの煮込みを食べていた。マジかよコイツ。


 「美味しいですが、少し辛さが足りませんね。あと5倍は欲しいところです」



 顔色を変えず食べるキリエに、俺たちは戦慄した。



 ********************

 


 「いやー、今日は楽しかったな」

 「はい‼ 美味しい物を食べて、いっぱいお買い物しました‼」

 「うぅ、まだ舌がヒリヒリするわ······」

 「ふふ、唇がパンパンですね。触っていいですか?」

 「うわわっ⁉ 手を伸ばすなバカ‼」


 あぁ、幸せだな。こんな美少女に囲まれて休日を満喫出来たなんて。俺は生き返ってこんな幸せなことはない。神様どうもありがとう。

 

 「今日はリフレッシュ出来たし、明日からまた頑張ろう」

 「はいっ‼」

 「おっけー」

 「お任せ下さい、社長」


 うん。休日を一緒に過ごした事で、俺たちの結束は強くなった。決してハーレムじゃないぜ? みんなは大切だけどラブじゃなくてライクの気持ちだ。

 会社兼自宅へ戻ると、玄関先に誰かがいた。


 「······げ」

 「あ、ニーラマーナさん」

 「やぁミレイナ。今日は休みだったのか」

 「そーよ、残念だったわね。今日はお休みだから依頼の話はナシー」

 「シャイニー、そんな事を言ってはいけません、不幸の神が貴女に祝福を授けるでしょう」

 「そんなのいらないわよ‼」

 「おい静かにしろって、ところでニナ、何か用事か?」

  

 プライベートなので敬語は使わない。馴れ馴れしいかも知れないけど年下だし、ニナもそれでいいって言ってくれたしな。


 「ああ。依頼をしたい」

 「ギルドの依頼か······」


 ギルドの依頼にはいい思い出がない。凶悪なゴリラのバケモノに襲われたし、もうあんな経験はしたくない。


 「心配するな、危険はない。君たちにはあるモノを運んで欲しいんだ」

 「あるモノ······?」

 「ああ。目的地は『勇者王国オレサンジョウ』だ。そこにいる『勇者』に、ある届け物をして欲しい」

 「ゆ、勇者⁉」

 「そうだ。異世界より召喚された3人の勇者とこの世界の1人の聖女に届け物をして欲しい」

 「·········クリス」

 

 そう言えば、聖女はキリエの妹だっけ。

 でも問題は、何を届けるかだな。正直なところ、異世界から召喚された勇者になんて会いたくない。絶対に同郷のヤツだろうし、召喚されたのは絶対に若い男女だ。男1女2で。


 「勇者ねぇ······それで、どんなヤバいブツなのよ」

 「ああ。産業都市スゲーダロで開発された、最新型の聖剣だ・・・・・・・

 「えっ⁉ せ、聖剣⁉」

 「そうだが? 何かおかしいか?」

 「あ、いや、聖剣って作れるんだ」

 「え?」

 「はぁ?」

 「社長、武器とは造る物では?」

 「ふむ、君も勇者と同じ事を言うのだな」

  

 どうやら俺がおかしいらしい。だってそうだろ、聖剣って神様が作ったとか、王家に代々伝わるとか、選ばれし者しか使えないとか、そんなイメージしかない。


 「と、とにかく、仕事の依頼だな」

 「ああ。長期の依頼になるから早めに知らせておこうと思ってな。スゲーダロから武具が届くまで日数がある。明日からしばらく休業の知らせをしつつ、仕事をしてくれ。その時にギルドの名を出しても構わん」

 「ちょっと‼ 勝手にアンタが決めないでよ‼」

 「ギルドからの依頼だ。報酬は破格だぞ?」

 「むむ······」


 う〜ん、勇者には会いたくないけど、オレサンジョウには行ってみたいな。まぁプチ旅行気分で行ってみるか? 明日から仕事をしつつ、ギルドの依頼があるからしばらく空ける旨を伝えればいいか。


 「わかった。明日また来て正式に依頼をしてくれ」

 「そうか、ではまた明日」


 そう言ってニナは帰って行った。

 

 「勇者王国ですか······」

 「もう、ニーラマーナのヤツ勝手なんだから‼」

 「クリス、久しぶりに会えるかも知れませんね」

 「勇者ねぇ、それに最新型の聖剣と来たもんだ」


 そんなワケで、次の目的地は勇者王国に決まった。

 だけど、俺はまだ気付いていなかった。



 勇者に最新型の聖剣を与える理由なんて、少し考えればわかったのに。


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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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