29・トラック野郎、久し振りの飲酒
ギルドの解体場にメタルコングを降ろし、報酬を受け取った。
この頃にはシャイニーも復活し、お腹が空いたとだらけてる。まぁマッドコングの襲来があったし、あれだけ暴れればハラも減るだろうな。それに俺としてもシャイニーの強さが確認出来た。
「今日のメシは何だと思う?」
「ふっふっふ……実はミレイナに聞いといたのよ。今日は肉鍋よ!!」
「マジで!?」
ミレイナの肉鍋……じゅるり。
ヤバいな。ポイントでビールを買っておこう。1人暮らしの時も鍋なんてやったことがない、実家に帰ったときもやらなかったのに、料理上手のミレイナが作る肉鍋なんて食ったら……ぐふふ。
「よし、急いで帰ろう!!」
「もち!!」
今日の仕事はおしまい。
俺の会社はクリーンだ。残業なんて絶対しない。時刻は多分6時くらい……いいね、帰ったらご飯だ。ミレイナのことだし準備はしてる。
ちなみに会社は5時で閉める。その後事務所とロビーを掃除して、ミレイナは夕飯の支度、キリエは明日の配達の確認をする。
確認と言っても預かった荷物は20件もない。すぐに終わる。キリエはミレイナの手伝いをしてるはずだ。
トラックの変形にジェット機がない事を悔やみつつ、事務所へと帰宅した。
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「ただいまー」
「たっだいまーっ!!」
シャイニーと俺が事務所に帰ると1階は既に暗かった。だが、フワリと肉のニオイがする。俺とシャイニーは思わず顔を見合わせ、2階の居住スペースへ上がる。
「お帰りなさい、コウタさん、シャイニー」
「お帰りなさい、コウタ様、シャイニー」
私服に着替えたミレイナとキリエが、共同スペースであるダイニングで夕飯の支度をしていた。
ミレイナはピンクのエプロンに、プラチナブロンドヘアをピンクのシュシュで纏めている。キリエはシンプルな黒いエプロンで、サラサラの白髪をミレイナと色違いのシュシュでポニーテールにしていた。家庭的な2人の姿に、俺は感動した。
「さぁ2人とも、手洗いうがいをして着替えて下さい。間もなく食事の用意が調います」
「わかった」
「いいニオイ~」
俺とシャイニーは言われたとおり着替え、再びダイニングへ。
シャイニーは普段着にクセっぽく長い蒼髪を青いシュシュで括っていた。
「あれ? もしかして」
「ふっふ~、さすがのコウタでも気が付いたわね」
「前にキリエの買い物をした時、みんなでおそろいのシュシュを買ったんです」
「ちなみにエプロンも買いました………まぁ、シャイニーは使う機会がなさそうですが」
「うっさいわね!! あ、あるに決まってんでしょ!!」
「ほう、それなら明日の夕食はシャイニーにお任せしましょう。明日は集落の配達も少ないですし、夕方前には帰って来れると思いますので」
「………」
シャイニーが黙り込んじまった。ミレイナも困ったように微笑みながら、ちゃんと助け船を出した。
「あ、あの、シャイニー、私も手伝いますから」
「むむむ……」
「シャイニー、貴女は冒険者だったのでしょう? 冒険者は野外で寝泊まりもする事が多く、簡単な煮炊きは誰でも出来ると聞いたのですが」
「あ、アタシはその……携帯食を囓ってたから」
「ほう、なるほど」
「い、いいでしょ別に!! 携帯食美味しいもん、ドライフルーツ美味しいもん!!」
「お、落ち着けよ。それより、メシにしようぜ」
鍋も良い感じに煮えてきた。
ミレイナの了解をもらい、俺は鍋の蓋を外す。
「うぉっほ~っ!!」
「わぁ~っ!!」
「うん、良い感じです」
「さすがミレイナですね」
グツグツと良い感じで煮えてる。タップリの肉にちゃんと野菜も添えられてる。
「これはポッチャリオークの肉です。煮込むと柔らかくていい味が出る、お鍋にぴったりのお肉なんですよ」
「ポッチャリオークって、高級肉じゃない!!」
「はい。私がミレイナにおねだりして買いました」
「キリエがかよ。元シスターなのにずいぶん欲望に弱いな」
「いえ、これは神の啓示なのです。頑張った自分にご褒美をあげよ、と」
「お前は一人暮らしのOLか」
とまぁ、お喋りはここまでにしていただきます。
タレはない。スープに味が出てるので肉と野菜とスープを取り皿に盛る。ちなみにミレイナちゃんがやってくれました。ホント嫁に欲しいわこの子。でも17歳だし……まだ早いよね。
さっそく肉をパクリ…………うん、美味い。マジで美味い。人生で食べた鍋の中でも最上級の旨さだ。鍋をつつく手は止まらない。俺はもう1つ、ドライブインで買った缶ビールを開ける。
「こっちも………っぷは、っくは……ははは、はっはっは」
ヤベぇ、美味すぎて涙が出てきた。幸せだと笑いが出てくるんだな。俺は酒に強い方だし、缶ビール2~3本じゃ酔わない。だけど気分が良くなってきた。
「あーっ、アタシも飲みたいっ!!」
「いやお前未成年だろ? これは大人の味だ」
『警告。この世界の成人年齢は18歳です。よってシャイニーブルー様は飲酒が可能』
「なぬ? っていうかイヤホン付けたまんまだった。よーしシャイニー、お前も飲め!!」
「やたっ!! じゃあアタシもいただきまーすっ!!」
「キリエ、お前は?」
「酒は神の血……もちろんいただきます」
「モノはいいようだな、ほれ」
ミレイナちゃんは残念だけどジュースで。酔っ払ったミレイナちゃんも見てみたいけどね。さすがにヤバいから自重します。ゴメンね。
「み、みなさん、明日も仕事があるのでほどほどに……」
「だーいじょうぶよミレイナぁ~……うぃっく」
「そう、神は存在するのです。この世界を造りし大いなる神。神は私たちを見守り、私たちは神を崇める……ああ素晴らしき人生……」
う~ん、やっぱ酔っ払ってる? シャイニーはミレイナにじゃれつき、キリエは意味不明な言葉を繰り返して祈りを捧げてる。俺もちょっぴり気分が良くなってきた。
「あ~……気持ち良くなってきた」
「こ、コウタさんまで……きゃあっ!?」
「うへへ、ミレイナちゃんは可愛いねぇ~……もみもみ」
「しゃ、シャイニー、胸……ダメぇっ……!!」
「うっへっへ。よいではないかよいではないかぁ~」
「ああ神よ、我に救いを……」
「うぅ~……久々で酔った……」
なんか意識がボンヤリしてきた。酒を飲んだのも久し振りだったし、酔いが回るのがだいぶ早い……なんか眠い。
「………ぐぅ」
「あ、コウタさん、助け」
「み~れ~い~な~」
最後に見たのは、シャイニーがミレイナの胸を揉んでる姿だった。
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「……………あれ?」
気が付くと自室のベッドの上だった。
着替えもしてないし風呂も入っていない。頭が少しズキズキする……多分、軽い二日酔いかな。後で栄養ドリンクをポイントで買おう。
取りあえず着替えてダイニングルームへ。するとそこには朝食の支度をするミレイナの姿があった。
「おはようミレイナ」
「おはようございますコウタさん」
「……えっと、昨日は」
「昨日は?」
「え、えっと……」
なんかミレイナちゃんが怖いです。にっこり笑ってるけど黒いオーラを纏ってるような。さすがに分かった。昨日は後片付けも全部ミレイナにやらせちゃったみたいだし、俺たちをベッドに運んだのもミレイナだろう。
「も、申し訳ありませんでした」
「……お酒、しばらく禁止です」
「はい。わかりました」
「よろしい。ではもうちょっと待って下さいね。すぐにご飯が出来ますから」
「ああ、わかった」
ミレイナは笑って調理を再開する。どうやら俺たちのために胃に優しいお粥を作ってるようだ。この気遣いレベルは聖人クラスだろ。誰もマネ出来ないぜ?
俺は一度自室に戻り、着替えを持って風呂場へ向かう。せめて軽くシャワーでも浴びてニオイを消さないとな。
そう思い、俺は風呂場のドアを開けた。
「え?」
「は?」
そこに居たのは、全裸のキリエだった。
シャワーを浴びたのか、白い肌には赤みが差している。長い白髪は纏められており、俺の視線は美しい裸体に釘付けだった。
胸はやはりデカい。ミレイナより大きく形も美しい。先端だけが桃色でぷっくりしてる。
腰のくびれや下半身の細さも素晴らしく、一流モデル顔負けのスタイルだ。これは素晴らしい。
「あの、そんなに見られると恥ずかしいのですが」
「そ、そうか……スマン」
まったく裸体を隠そうとせず、堂々と全てを晒す。恥ずかしがってるとは思えないし、顔色も普通のままだ。って、見てる場合じゃないだろ俺!!
慌ててドアを閉め、俺は再び自室へ戻ってきた。
参った。朝から元気すぎるだろマイサンよ。