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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第18章・トラック野郎とフードフェスタ』

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267・フードフェスタ、終幕

*****《コウタ視点》*****


 


 今夜はみんなで焼き肉です!!  

 仕事を終え、俺・ミレイナ・シャイニー・キリエ・コハク・パイ・ブーさん・アレクシエル・リーンベルさんとサクヤの総勢一〇人は、チューオー区にある高級食べ放題焼き肉店に向かっていた。 

「本当に、吾輩も一緒で構わぬのか?」

「いいって、遠慮するな。明後日から一緒に働くんだし、歓迎会も含めてな」

 サクヤは最初は遠慮していたが、シャイニーの押しで同行することになった。シャイニーの強さを認めたからこそ言う事を聞いてくれたのかも。

『なうなうー』

「しろ丸、お店では大人しくしてね」

『うなー』

 ちなみに、ミレイナの持ってる大きな肩掛けカバンにはしろ丸が入ってる。動物NGなのはわかってるが、どうしても一匹で留守番させるのが忍びなかったからだ。まぁキレイにしてるから雑菌などない。もしバレたら出禁だろうけど、しろ丸を残すくらいならそれでもいい。

 そして、チューオー区でも高級な焼き肉店『ミート・フェスティバル』にやって来た。

 建物は三階建ての、全面ガラス張りだ。高級店みたいな雰囲気を感じる。

 とりあえず俺が先頭だったので、入口のドアを開けて最初に店内へ。

「いらっしゃいませ。ようこそ『ミート・フェスティバル』へ」

「予約していたアガツマ運送会社です」

「ありがとうございます。ではお席へご案内いたします」

 店員とキリエの流れるようなやりとり。

 席は一階奥の横長のテーブルで、三・四・三席に分かれた埋め込み式のコンロだった。サクヤが追加で入っても問題なく入れる。しかも大人数だったからか、仕切りが入れられて周りからシャットアウトされてる。これならしろ丸をこっそり出してもバレないかも。

「じゃ、席順は……」

 とりあえず、俺が独断と偏見で決めたぜ。

 まず端っこ三席はパイ、ブーさん、キリエ。

 真ん中四席は俺、サクヤ、シャイニー、コハク。

 最後の三席はミレイナ、アレクシエル、リーンベルさんだ。

 大食いのパイ、シャイニー、コハクを分散させたナイスな采配だ。ちなみにしろ丸はミレイナの太ももの上でなうなう鳴いてる。

「じゃ、飲み物と肉を注文するか」

 一人一万コインで食べ放題。ドリンクも飲み放題だ。

 俺はもちろんキンキンに冷えたエールを注文し、他のみんなも好きなドリンクを注文した。肉はロースを中心に女性陣に任せた。

 ドリンクと肉が運ばれ、コンロに火が灯る。ちなみにこの埋め込み式コンロは一般家庭にあるコンロとそう変わりない。『火』の魔石が敷き詰められ、そこに魔力を流して発火させ、上に乗せられた網を加熱する仕組みだ。

 おっと、そんなことより乾杯だ。毎回のことだが俺が音頭を取る。

「えー、では新しいファンシー喫茶の成功と新しい従業員のサクヤを歓迎しまして……乾杯!!」

「「「「「「「「「乾杯ッ!!」」」」」」」」

 さーて、肉だ肉!!




 ではでは、さっそくお肉ちゃんを網の上に。

「わぁ、ご主人様ご主人様、お肉お肉」

「ははは、こらコハク、落ち着け落ち着け」

「そーよ。ほら野菜でも食べなさい」

「や、お肉」

 シャイニーが差し出した野菜にそっぽ向くコハク。シャイニーの眉がピクピク動いたがなんとか押さえた。

 サクヤは、静かに冷茶を飲んでいる。

「サクヤ、肉は好きか?」

「うむ。好き嫌いはない」

 網の上では上ロースがジュージュー焼ける音がする。コハクがそれをじっと見つめ、シャイニーは生野菜をつまみにエールを煽っていた。

「そろそろだな······ほらサクヤ、焼けたぞ」

「かたじけない。ではいただきます······」

 サクヤは、上品な箸使いで肉を口の中へ。うーん、いい教育を受けたみたいだ。

「うむ·········素晴らしい。絶品だ」

「ご主人様ご主人様、わたしもわたしも‼」

 サクヤを見て我慢できなくなったコハクが俺の腕に肉まんを押し付けてきた。気持ちいいですぅ。

 俺は追加の肉とキノコを乗せ、焼けた肉をコハクの取皿へ乗せ、残りを俺とシャイニーの皿へ乗せた。

「お、さんきゅーコウタ」

「ああ、ってかペース早いぞシャイニー、また酔い潰れるぞ」

「へーきへーき。潰れたらアンタにおぶってもらうからさ」

「いやそれ平気じゃねーだろ······」

 よし、酔い潰れたらブーさんに任せよう。

 ミレイナたちの席をチラリと覗く。

「はいしろ丸、あーん」

『なーう』

 ミレイナは、焼けた肉をしろ丸にあげてた。ミレイナの太ももの上はさぞかし柔らかいだろう。さらに焼きたてジューシーな肉もあるし、しろ丸も嬉しそうだ。

「リーンベル、お肉」

「はい、アレクシエル博士」

「あむ········うん、よく焼けてる。次はもう少しレアで」

 アレクシエルのヤツ、リーンベルさんにひたすら焼かせて食ってやがる。少しはリーンベルさんを気遣えっての。

 そこにミレイナも参戦し、二人がかりでアレクシエルを接待していた。こりゃグループ分けミスったかな、アレクシエルはブーさんやシャイニーと組ませれば、甘えることはなかったかも。

「ほら、あんたたちも食べなさいよ。このキノコ焼くと美味しいわよ」

「まぁ、ありがとうございます、アレクシエル博士」

「ふふ、でも、ちゃーんとお野菜食べないとダメですよ?」

「ぐっ······」

 うん、やっぱ間違えてない。アメとムチを使い分けてアレクシエルに野菜を食わせてる。

 そして反対側の席を見る。

「······焼けたぞ」

「お、さんきゅーブラスタヴァン、ほらキリエも」

「ありがとうございます、ブーさん」

 うーん、穏やかだ。ブーさんが肉を焼き、キリエとパイがせっせと食べてる。キリエも気を遣って肉を焼き、その肉をブーさんが食べてる。

 キリエはワインをちびちび飲み、ブーさんは米酒、パイはカクテルを飲み楽しんでいた。この席が一番大当たりかもな。

 さて、俺もいっぱい肉を食べよう。




 それから、みんなで楽しく焼き肉を食べた。

 時間にして一時間、ペースも早かったしお腹いっぱいだ。ちなみに食べ放題の時間はテーブルに設置された砂時計で計測してる。目算だが、あと数分で終わりになる。

「さて、そろそろ帰るか」

「そうですね、しろ丸も寝ちゃいましたし」

 お腹いっぱいになったしろ丸は眠ってしまい、ミレイナが静かにカバンに戻す。

 砂時計の砂も全て落ち、焼き肉食べ放題は終了した。

「さ~て、少し酔ったから夜風に当たりながら帰ろう」

 俺がそう言うと、みんな頷いた。

 外に出ると、夜とは思えないほど明るい。現在時刻は七時を越えたあたりかな、フードフェスタももう終わりだし、最後の最後まで祭りを楽しもうとしてるんだろう。

「うぅ~……」

「ほらシャイニー、ちゃんと歩いて下さい」

「キリエぇ~、おぶってぇ~」

「イヤです。ブーさん、お願い出来ますか?」

「わかった」

 キリエにしなだれかかるシャイニーを、ブーさんが担ぐ。

 すると、サクヤが俺の前に出て頭を下げた。

「コウタ殿、今日は馳走になった。感謝する」

「いいって、それより、明日は……」

「ああ、開店前日の打ち合わせだろう。わかっている」

「うん、じゃあ明日もよろしくな」

「うむ。吾輩はギルドの宿舎に泊まっているのでここで失礼する」

 そう言って、サクヤは去って行った。

 うーん、クールな少女だ。和服といい腰に下げた日本刀といい、後ろ姿は武士にしか見えない。

「ご主人様ご主人、ジュース買っていい?」

「ん……ああ、いいぞ」

 コハクが露店に売ってるフルーツジュースを欲しがったので、ポケットの小銭入れから数枚のコインを出して渡す。

「ふぅ……」

 空は満点の星空。地上は露店や飲食店の光。

 フードフェスタは明日で終わり………ちょい淋しいな。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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