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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第18章・トラック野郎とフードフェスタ』

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266・太陽のハーレム

 聞きたいことが山ほどある。

 ミレイナはサクヤの正体を知らないのか首を傾げ、とりあえずお茶をと言ってお湯を沸かしに出ていった。

 俺はサクヤに質問する。

「あの、なんでバイトを?」

「心配無用、こう見えても接客は得意じゃ。実家は甘味処を経営しておってな、女中の経験はある」

 いやそうじゃなくて。

 すると、リーンベルさんが補足説明してくれた。

「冒険者ギルドでアルバイトを依頼したところ、コノハナサクヤ様が是非にと言うので採用しました。お給料につきましては」

「あー、給料はこっちで持つから心配しないで下さい」

 たぶん、リーンベルさんのことだから自分の給料からとか言いそうだ。営業はお任せでも経営者は俺だからな、お金で心配はかけたくない。

 何かを言おうとするリーンベルさんを遮り、俺はサクヤに質問した。

「ところで、『七色の冒険者アルコバレーノ』とあろう者が、バイトなんかしていいのかよ?」

「うむ。『七色の冒険者アルコバレーノ』であろうと冒険者に変わりない。それに同じ『色持ち』としての頼みであり依頼じゃ、無下にはできん」

 つまり、リーンベルさんが『紫』ってのは知ってんのね。

 うーん、ホントにそれだけなのかな。

「こ、こほん。り、リーンベル殿。その、女中とあろう者が店の商品を知らぬというのは恥ずべきこと。ど、どのような甘味があるのか教えてくれぬかの? も、もちろん代金は支払う」

 一気に挙動不審な動きになるサクヤ。もう俺にもわかった。

 リーンベルさんは温かい視線で頷く······ははーん、リーンベルさん、サクヤが甘党だって知ってるんだな?

「営業は明後日からですが、ブーさんが試作の商品をいくつか作っています。それと、接客用の衣装もありますので合わせましょう。微調整が必要となりますのでね」

「む、衣装か。あいわかった。それが終わったら······」

「ええ、美味しい紅茶とスイーツをご馳走······いえ、試食していただきますね」

「うむ、かたじけない‼」

 サクヤは上機嫌で頭を下げ、リーンベルさんとオフィスから出ていった。

 うーん、これからどうなるんだろうな。




*****《勇者タイヨウ視点》*****




 フードバトルの結果発表も終わり、イベントは終了した。

 一位は『デーリシャスバニラ』というソフトクリームだった。テイクアウトが売りのソフトクリームで、確かにいろんな人がソフトクリームを食べながら歩いていたのを覚えてる。まさか異世界でソフトクリームを見れるとは思わなかった。

 ヴァージニアはイベント終了と同時に、厳重な護衛と共に宿へ帰った。ゼニモウケでの予定は全て終わったし、あとは帰るだけだろうな。

 オレたちも、そろそろオレサンジョウ王国へ帰らなくちゃいけない。たぶん、勇者にしか解決できないモンスターの討伐依頼とかが他国から入ってるはず。それにエカテリーナにも土産話をしてやりたい。

 もう、ヴァージニアには会えないかもな。

 現在、オレたちは宿でミーティングをしていた。

「はぁ〜、楽しかったねぇタイヨウ」

「おう、サイコーに盛り上がったな」

 クリスがオレの腕にじゃれつきながら言う。このこの、可愛いヤツめ。

「いい息抜きになったわ。みんな、明日は最終日だけど、羽目を外さないで。明日の予定はオレサンジョウ王国へ帰還するための買い出しと、コウタさんたちへ挨拶、そしてキャンピングカーを受け取りに行くわよ」

「「「はい、先生」」」

「誰が先生よっ‼」

 オレ、煌星、クリスがシンクロした瞬間だった。ウィンクは苦笑を浮かべている。

 すると、部屋のドアが静かにノックされた。

「はーい」

 煌星がやんわりした声で返事をし、ドアを開ける。

「邪魔をする。勇者タイヨウはいるか?」

「あ、確か······ヴァージニアの護衛さん?」

 確かメイとか言ったな、怪我したって聞いたけど。とりあえずオレが対応する。

 するとメイさんはいきなりオレに頭を下げた。

「遅くなってすまないが礼を言わせてくれ。ヴァージニアを守ってくれて感謝する」

「あ、いや······その、頭を上げて下さい。別にそんな」

「そしてこれまでの無礼を許してくれ。勇者タイヨウ殿」

「えと、その、はい」

 うーん、なんかやりにくい。普通にしてくれ普通に。

 とりあえず頭を上げてもらい、用件を聞く。

「我々は明日、ゼニモウケを発つ。その前にどうしてもヴァージニアが礼を言いたいらしい。突然で申し訳ないが、これから時間をもらえないだろうか」

 オレは思わずみんなの方を振り向く。するとみんな頷いてくれた。

「行きます、時間ならありますから、ヴァージニアに会わせて下さい‼」

 きっとこれが最後のチャンス。オレの気持ちをぶつけよう。




 メイさんと一緒にヴァージニアが泊まってる宿へ来た。

「ここからは一人で行け。部屋は最上階だ」

「あ、はい」

 許可が出たので宿の中へ入ろうとしたら、メイさんがいきなりオレの肩を掴んで振り向かせ、自分の顔を超接近させてきた……ちょ、近い近い、いい匂い!!

「…………感謝はしている。だが不埒なマネをすれば」

「ししし、しませんですっ!!」

 くっそ怖い。オレがヴァージニアを襲うとでも思ってんのか。

 メイさんはオレから手を離す。

 怖いので、オレは駆け足で宿の中へ。そして最上階の特別室のドアをノックした。

「……ヴァージニア?」

「あ、来てくれたんだタイヨウッ!!」

「お……おう」

 ノックと同時にドアが開き、ヴァージニアが出迎えてくれた。

 ってか……ヴァージニア、風呂上がりなのか。寝間着姿だし、身体のラインが丸わかり。やっべぇ……こうして見るとめっちゃいい身体してる。同い年なのに月詠以上で煌星と同レベルってトコか。

「入って入って、お茶煎れるね」

「お、おお、失礼します」

 部屋の中へ入りソファへ。そしてヴァージニアが煎れた紅茶を飲む。

 美味い……ってか緊張して味がよくわからん。

「あのね、今日呼んだのは、改めてちゃんとお礼が言いたかったの」

「お礼?」

「うん。助けてくれたお礼」

 ああ、あのトリケラ野郎のことか。

 確かに助けたけれど、忘れて欲しいことでもある。だってヴァージニアの前でポロリしちゃったし……うぅ、やっぱ恥ずかしい。女の子に見られたことが恥ずかしい!!

「私、明日には『自然王国ネイチュラル』に帰っちゃうから……だから、ちゃんとお礼が言いたくて」

「ははは、そんなの気にすんなよ。その……助けられたのはオレもだし、おっさんやアレクシエル博士が来なかったらもっとやばかったし」

「それでも、タイヨウにお礼が言いたかったの……」

「っ!!」

 ヴァージニアは立ち上がり、オレの隣に座る。

 女の子の甘い匂い、風呂上がりの香りがオレの理性を壊していく。

「タイヨウ、私……」

「ヴァー、ジニア……」

 心臓が高鳴る。ヴァージニアから目が離せない。

 顔が近付いていく……唇が、ほんの数センチ先に……ああ。

「ん……」

 重なった。

 柔らかく、そしてほんの僅かに濡れている。ソフト&ウェット。

 オレの手はヴァージニアの胸を触ろうと伸びる……。

『太陽』『太陽くん』『タイヨーッ』『タイヨウ殿』『タイヨウ』

 そして、月詠、煌星、クリス、ウィンク、エカテリーナの顔が浮かび、びくっと弾けた。

 ダメだ、みんなを裏切れない。オレの初めてはここじゃない。

「……タイヨウ?」

「悪いヴァージニア、オレってビビりのヘタレ野郎だ」

 オレはヴァージニアから離れ、彼女の両肩に手を添える。

「ヴァージニア、オレは……キミが好きだ。このゼニモウケを一緒に回って、キミに心底惚れた。くるくる回る表情に、子供っぽくケーキを頬張る可愛いところ、全部好きだ」

「あ……」

「ヴァージニア、オレは……キミが好きだ。でも、他にも好きで、将来を誓い合った少女たちがいる。それでもキミが大好きだ!!」

 我ながらとんでもない告白だ。でも、好きな気持ちに嘘はないし、これがオレの正直な気持ちだ。

「ヴァージニア、オレの妻として、将来を共に歩んでくれ」

 言った。オレの気持ちを全てぶつけた。

 どんな結果になろうと悔いはない。失望されて部屋からたたき出されても、護衛の傭兵を呼ばれても、オレは全てを受け入れる。

 するとヴァージニアは、クスリと微笑んだ。

「ふふ、タイヨウってすごい欲張りなんだね」

「当然だろ、なんてったってオレは勇者だからな」

「そうだね……」

 ヴァージニアは、もう一度オレにキスをした。

 そして。

「私も、タイヨウが好きです。私を……お嫁さんにして下さい」

「……はい!!」

「ふふ、待ってるから、全部終わったら迎えに来てね?」

「ああ、必ず迎えに行く」

 オレはヴァージニアを抱きしめる。ヴァージニアも、それに答えてくれる。

 このぬくもりを胸に刻もう。ヴァージニアは故郷に帰る、でもいつか必ず迎えにいく。


 こうして、オレのフードフェスタは終わった。

 ヴァージニアと出会い、一緒に町を周り、一緒に戦った。

 そしてヴァージニアは、オレの告白を受けてくれた。

 オレの嫁として、ハーレムの一員になった。

 へへへ、オレのハーレム……順調だぜ!!

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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