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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第18章・トラック野郎とフードフェスタ』

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252/273

250・トラック野郎、休日③

 さて、ゴンズ爺さんの店を出たはいいが、行く場所はない。

 そういえば、ゼニモウケでの交友関係ってかなり狭い。ゴンズ爺さんにニナ、それとモツ鍋屋の親父さんに、近所の取引業者くらいだ。取引業者に至っては、俺よりキリエのが付き合いがある。

『なーう、なうなう』

「はいはい、まだ帰らないから安心しろよ」

 抱えたしろ丸が起き、なうなうと鳴く。さて、このままブラブラするかな。しろ丸を抱えたままじゃ大人の店にも入れないし。

 現在位置はチューオー区の外れ。適当に歩いてるが、ゼニモウケの中心なだけにまだまだ栄えている。

『なう······なうなうなうなうっ‼』

「っと、どうした?······お? あれは」

 いきなりしろ丸が吠えたので驚いた。

 短い足をパタパタさせて暴れるので抱きしめて大人しくさせると、視線の先にあるオープンテラスの喫茶店が目に入る。

「あれって、ミレイナたちか?」

『うなーう』

「お前、よく見つけたなぁ」

 イギリスとかにありそうなオシャレな喫茶店だ。ミレイナたちはパラソルの下で紅茶とケーキを嗜み、何やら楽しそうにお喋りしてる。足元にはスターダストの袋がいくつもあり、楽しい買い物の後のティータイムなのは明白だ。

 それぞれの私服も美しい。

 ミレイナは清楚なロングスカートにフワッとしたカーディガンを着こなし、美しいプラチナロングをシュシュで緩く纏めてる。

 キリエは黒っぽいロングワンピースに着こなし、長い白髪をそのまま流し、どこぞの令嬢みたいな大人っぽい雰囲気を出している。

 パイはカジュアルで露出の多いヘソ出しシャツにショートパンツとレギンスという、二人とは対象的な若者ファッション。おしとやかというよりは元気いっぱいのパイにはよく似合ってる。

 あのパラソルの下だけ、世界が違っていた。それくらいあの三人は美少女だった。現に、周りの冒険者らしき男衆がチラチラ様子を伺ってる。ミレイナやキリエだけなら心配だが、パイがいるから安心だ。

 俺とミレイナたちの位置はかなり離れてる。人も多いし、俺が近付かないと気付かれないだろうと思っていた。

「ん······ご主人?」

 パイが、俺としろ丸に気が付いた。

 けっこうな距離なのにバッチリと目が合い、パイはブンブンと手を振っている。ミレイナとキリエもキョロキョロするので、俺はしろ丸を掲げながら近付いた。そして距離が五メートルほどになり、オープンテラスの柵の手前に到着した。

「パイ、よくわかったな」

「ふふん、ご主人の匂いがしたからね。しろ丸もボクの匂いに気が付いたでしょ?」

『なうっ‼』

 なるほど、しろ丸が鳴いたのはパイの匂いを感じたからか。というか匂いにしてもかなり距離があるが。

 すると、ミレイナがオープンテラスの柵越しに聞く。

「コウタさんとしろ丸もお買い物ですか?」

「まぁな。しろ丸の散歩ついでに、町を見て周ってたんだ。勇者パーティーやニナにも会ったぞ」

 すると、キリエも会話に参加する。

「なるほど。では社長、これからの予定は?」

「うーん、特にないな。ブラブラして買い食いして、満足したら帰ろうと思ってたからな。せっかくの休みだし、町に満足したら、次はパチンコで満足したい」

「じゃあご主人も一緒に遊ぼうよ、ボクはご主人がいれば嬉しいな」

 その提案も悪くないが、さすがに無理だ。

「悪いな、ミレイナとキリエはスクーターだし、歩きじゃ付いて行けないよ」

「じゃあボクが背負っていくよ」

「······遠慮しとく」

 ミレイナとキリエはスクーター、パイは走って付いていくようだ。ここに俺が混ざれば大幅なスピードダウン、というか担いで行かれるなんてかっこ悪い。

 ミレイナとキリエもそう思ってたのか、俺を引き留めようとはしなかった。

「たまには、女の子同士で楽しく過ごせよ。じゃあな」

「はい、ではコウタさん、また」

「お疲れさまです、社長」

「まー仕方ないか、またねご主人っ‼」

 ミレイナたちと別れ、俺は再び歩き出す。




 完全に、予想外の再会だった。

「ぎゃーっはっはっは‼ 酒がウメェぜっ‼」

 とあるビアガーデンの側を通り過ぎたとき、そんな声が聞こえてきた。なんか聞き覚えある声だなと思い声の主を見ると、その姿を見て懐かしくも驚いた。

 髪は真っ赤で、顎髭と一体化してるからライオンの鬣のように見える。そして赤いジーンズにロングブーツにタンクトップを着込んだ、軍人みたいな男だ。しかも筋肉がハンパなく盛り上がり、力を込めればタンクトップなんて簡単に弾けそうだった。

 剥き出しの二の腕や胸は傷だらけで、左のおでこから右頬にかけて三本の引っ掻き傷が走ってる。

 久しぶりに会ったこいつは、『赤』の『七色の冒険者アルコバレーノ』である『赤い鉄拳ブレイズナックルタイタンレッド』だ。たしか愛称はタイタン。

 タイタンは、十人が座れる円卓を独り占めし、酒と大量の料理、そして十人の美女をはべらせて酒を楽しんでいた。

 美女はキャバクラにでもいそうな、化粧をしてドレスを着た女ばかりで、声の主である男にせっせとサービスをしてる。しかもウットリとした表情で。

「ほーれほれ、チップだとっとけ!!」

「「「きゃあーっ、タイタン様ステキーっ‼」」」

 うわぁ······タイタンのやつ、美女の胸の谷間に札束をねじ込んだよ。どこのセレブだっての。

 一度話しただけで顔見知りではないし、さっさと通り過ぎようとしたときだった。

 タイタンと、目が合ってしまった。

「んん? オメェどこかで······あ、そうだ!! シャイニーブルーが護衛してた野郎だな!?」

 バレました。頭悪そうなくせに、俺のこと覚えてたのかよ。

 



 逃げることもできなくなり、俺はビアガーデンに入る。ちくしょう、帰ってパチンコでもしようとおもってたのに。

 仕方なくタイタンの席に座ると、しろ丸は膝上で寝てしまった。

「ここで会ったのも何かの縁だ、飲め飲め!!」

「い、いただきます」

 しろ丸を膝に抱え、タイタンの対面で俺はエールのジョッキを渡される。飲まないと殴られそうだし、ここは飲もう。

 タイタンは美女に囲まれながら、骨付き肉を豪快に齧る。

「聞いたぜ? シャイニーブルーが冒険者辞めて、オメーのところで働いてるんだってな。カッカッカ、ポメランチェが知ったら大騒ぎだろうぜ」

「は、はい。シャイニーはその、ウチの従業員で」

 ってか、ポメランチェって誰だろう。あんまり深くツッコめないから聞き流しておくか。

「新しい『蒼』はニーラマーナとか言ってたな。いやぁ実に嬉しいぜ、シャイニーブルーはいい女だが、まだ青臭ぇガキだからな。ニーラマーナみてぇに脂の乗った女は実にいい!! 元『藍』のアインディーネもいい女だったがよ、あいつは冒険者を永久追放されちまうし、強くていい女が復帰したのは実に嬉しいぜ!!」 

「は、はぁ······」

 というか、タイタンは何をしにここに来たんだ? 骨付きを齧り、エールのグビグビ飲む姿は、俺から見ると恐怖以外の何者でもない。というかさっさと帰りたい。

「あ、あの······」

「ん、ああわかってるわかってる。オレがここに来た理由だろう!?」

 ちげーよ。誰も聞いてねぇし。

 タイタンは勝手にベラベラと喋りだした。

「聞いて驚け、実は新しい『藍』をニーラマーナに預けに来たんだよ!! アインディーネの後任として、空席だった『藍』の冒険者の座を見事に勝ち取った期待の新鋭!! 最初はオレんとこで預かってたんだけど、どーも育成が苦手でなぁ、そこでそういうのが得意そうなニーラマーナに預けようと思って連れて来たんだよ!! だけどニーラマーナは忙しいとかで会えねーし、とりあえず酒でも飲んで待ってるワケだ!!」

 こいつの性格からして、アポとか取ってないんだろうな。届けた書類もナナメ読みしてぶん投げるくらいだし。

「そうだ兄ちゃん、運送屋なら依頼を受けてくれや。そこにいるガキをニーラマーナに運んでくれや。報酬は払うからよ」

「え?」

 すると、タイタンの後ろ、美女の影から一人の少女が現れた。

 俺と同じ黒い髪と瞳で、ストレートのロングヘアをポニーテールにして、簪を刺している。服装はスリットの入った藍色の着物を着て、腰に長い剣······日本刀を差していた。

「コイツはコノハナサクヤ、長げーからサクヤでいいぜ。ちなみに持ってる剣は伝説の《勇者武具ヒーローレガリア》の一つ、『逢魔我時おうまがとき』だ。スゲーだろ?」

 ええと、勇者の武具なら毎日見ています、とはいえない。

 すると、少女は俺にペコリと頭を下げた。

「お初にお目にかかる、我輩はコノハナサクヤじゃ、サクヤと呼んでくれ」

「あ、どうも、コウタです」

 礼儀正しい少女だった。タイタンのヤツ、ビアガーデンにこんな女の子連れて美女はべらせて酒飲んでたのかよ。

「えーと、まず報酬の一〇〇万コイン!! んでウチの副ギルド長が書いたニーラマーナ宛の書状だ!! コイツを渡せばいいからよ。じゃーあとは頼んたぜ!! オレはホテルでた〜っぷりと汗を流すからよ、がーっはっはっは!!」

 円卓の上に、札束とギルドの印が押された書状の筒を置き、タイタンは去った·········美女を連れて。

 そして、残されたのは俺とサクヤ、そして俺の膝で眠るしろ丸。

「あー······よし、ギルドに行くか」

「うむ、よろしく頼むのじゃ」

 しろ丸を抱えてビアガーデンを出ると、サクヤは俺の隣を歩く。チラチラとしろ丸を見てるのは間違いない。

「ほら、触るか?」

「······うむ、これも一興じゃのう」

『うなーお』

「ひっ!?」

「あ、起きたか。ほら」

「······」

 サクヤはおっかなびっくりとしろ丸を抱くと、すぐに顔をほころばせた。

 さて、しろ丸をサクヤに任せてギルドへ行くか。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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