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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第3章・トラック野郎と初めての依頼』
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24・トラック野郎、怪しいヤツに出会う


 『スターダスト』は、女性に人気のアクセサリーショップで、アクセサリー以外にも服や小物、化粧品など数多くの商品を扱ってる女性のための施設だ。

 建物は町のほぼ中央に位置し、その大きさはまるで巨大ビル。どうやらショップ以外にも飲食店などが複数入ってるようだ。すげぇ。


 「確かにスゴいけど、俺としてはこっちもスゴいと思う……」

 「まぁね。この都市の顔でもあるからね」

 「わぁぁ……『スターダスト』の本店、その向かい側に……」


 そう、『スターダスト』の向かい側には、この都市のシンボルでもある大聖堂が建っていた。しかもメッチャクチャ大きい。これはあれだ、世界遺産のサグラダファミリアみたいな感じだ。

 どうやって建築したのかスッゴく気になる。宗教には興味ないけど、この大聖堂は見る価値があると思う。買い物が終わったら是非行こう。


 「でもまずは」

 「はい!! 行きましょうシャイニー、コウタさん!!」

 「ちょ、待ちなさいよミレイナーっ!!」



 走り出したミレイナを、俺たちは追いかけた。



 **********************



 お店の入口で、俺は2人にお金を渡した。


 「ミレイナ、シャイニー、お小遣いな」

 「え⁉ いいの⁉」

 「これって、準備金ですよね?」

 「ああ。殆ど使わなかったし、初仕事だからパーっとな。今回は特別だ」

 「わぉ、やるじゃん社長」

 「じゅ、十万コインも」

 「今回だけな。次からは自分の給料から出してくれよ」


 ちなみに、経理はタマの担当だ。 

 よく考えたらミレイナは俺の秘書兼お茶汲み係になってる。まだお金の入りがないから経理の仕事はやってない。

 一応、これから入るお金の収支をリスト化したり、経費の計算なんかもして貰う予定だ。

 この世界にはレシートなんてない。領収書は書いてもらえばあるみたいだけどな。この出金項目は『ミレイナ・シャイニーお小遣い』とでも記載しておこう。


 「コウタさんコウタさん、私アクセサリーが見たいです‼ コウタさん選んで下さい‼」

 「お、俺が⁉」

 「あ、じゃあアタシも‼ ほら行くわよ‼」

 「ちょ、シャイニー⁉」

 「ズルいですシャイニーっ、私もっ‼」

 「おぉぉっ⁉」


 まさか、まさかの腕組みですっ‼

 しかも両腕。美少女2人が俺の両腕をガッチリ組んで離しません‼ まさか齢26にしてモテ期が来たと言うのか⁉ おのれ許せん、成敗、成敗じゃ‼

 

 「········なに泣いてんよアンタ」



 ヤバい、感動すぎて泣いてたようだ。



 ********************



 スターダスト本店は、現代日本にあるような商業ビルみたいだった。お客さんは半数以上が女性、男性は荷物持ちが大半だろう。冒険者グループの女性たちが仲間を引っ張り買い物してる光景が嫌でも目につく。


 「まぁ女の子の冒険者なんてオシャレするヒマないもんね。ここはオシャレじゃなくて装備としても有効なアクセサリーが売ってるから、いろいろ楽しめるのよ」

 「コウタさん見てください、どうですかコレ‼」

 「そうだなぁ、ミレイナにはもっと大人しい······コレ、どうかな」

 「わぁ、キレイなネックレス······」

 「モンスターの中には火を吐いたり雷を吐いたりするヤツもいるからね。それぞれ属性防御の加護が籠められたアクセサリーは必須よ。もちろん高価だけどね」

 「ミレイナ、スーツを着るときは髪を上げるだろ? その時に首元でこのネックレスがキラリと光る······いいね」

 「そ、そうでしょうか······照れますね」

 「それと、イヤリングも合わせたらどうだ? この白いヤツ」

 「これはエピル貝の真珠ですね。人工飼育が可能で、安価な真珠ですけどキレイですね」

 「アタシの鎧はハイミスリル製で、水と氷属性を無効化する効果があるのよ。これはアタシが1人で討伐した危険種、『ミスリルリザード』の外殻を加工して作った一級品よ············まぁ赤ちゃんだったけどね」

 「コウタさん、宝石に詳しいんですね」

 「いや、昔の話だけど、宝石店で清掃のバイトしてたんだ。その時の先輩に教えて貰ったんだよ」

 「へぇ〜、ばいと? ですか」

 「ちょっと‼ アタシの話を聞きなさいよ‼」

 

 比較的安価な宝石が並ぶスペースで、俺たちは商品を見ていた。ミレイナは興奮して首をキョロキョロしてる。

 シャイニーがウンチクを垂れてるのを軽くシカトしてたのがバレたようだ。だって話長いし装備とか興味ないもん。

 

 「悪い悪い、シャイニーに似合うのは······このブレスレットなんてどうだ?」

 「どれどれ······へえー、いいじゃん。ブルーライト石のブレスレットかぁ」

 「わぁ〜、シャイニーにはやっぱり蒼が似合いますね‼」

 「うん。すっごくキレイだ」  

 「あ、あんまり褒めないでよ······ハズいから」


 うっわ、顔赤くしてそっぽ向くシャイニー可愛い。

 うん。普段の小生意気な感じからのデレはスゴい破壊力だ。これはミレイナちゃんには真似出来ない、シャイニーだけの武器だね。俺は何を言ってんだ?


 「じゃあ、次はコウタさんですね」

 「そーね、社長に似合うアクセサリーを選びましょ」

 

 

 こうして、俺たちは買い物を楽しんだ。



 ********************

 


 買い物を終え、荷物をトラックに下ろして次の場所へ。


 「大聖堂かぁ······デカイな」


 大聖堂の馬車を停めるスペースにトラックを停車させて降り、俺たちは大聖堂を見上げる。するとシャイニーが近くの女性から何かを貰って戻ってきた。


 「見て見て、パンフレット貰った」

 「どれどれ。へぇ、『エレイソン大聖堂』って言うのか」

 「え〜っと、『聖女クリスが信託を授かった聖堂である。聖女クリスは神から賜りし癒やしの奇跡の使い手で、触れるもの全てを救い癒やす』って書いてあります」

 「聖女ねぇ······」

 「えっと、今は居ないみたいです。『現在は、かの地より現れし勇者と共に、厄災の王である魔王討伐へ向かった』って」

 「······かの地?」

 「はい。パンフレットにはそう書いてあります」


 かの地ねぇ。こう言うテンプレだと、異世界から召喚された勇者ってオチだけどな。しかも若くてイケメン、パーティーを女の子で固めたハーレムを形成し、魔王退治の暁には王としてみんなを娶ります‼ 的な。


 「爆ぜろ‼」

 「きゃっ」

 「わわっ⁉ な、何よいきなり」

 「す、すまん。つい心の叫びが」



 俺もそう変わらない······のか?



 ********************

 


 大聖堂内は広く、装飾なんかもスゴかった。

 ボキャブラリーが貧困なせいで感想が出てこない。わかったのは、柱一本から凝った装飾が施されていると言うことくらいかな。この世界のステンドグラスやら高級そうな壺とか、落として割ったらいくら取られるんだろうか。


 「す、すげぇ」

 「この『エレイソン大聖堂』は、建築に何百年も掛かったようです。正確な日数は不明みたいです」

 「そりゃ納得だわ······」


 従業員、というのはおかしいが、シスターらしき女性たちが出入りしてる。初めて見たけどみんな美人だな。

 3人で壁画を眺めていると、後ろから女性の声が聞こえてきた。


 「貴方は、神を信じますか?」

 「へ? おわっ⁉」


 振り向くと、そこにはシスターがいた。

 ここのシスターたちは黒い修道服を着てるのに、この人は白い修道服を着てる。顔は美少女で柔らかな微笑を称え、頭巾から覗く髪の毛は真っ白だった。瞳はエメラルドのような緑で、なんか人形みたいで少し驚いた。


 「貴方は、神を信じますか?」

 「は、はい? 神ですか?」

 「はい。貴方は主に愛されています。貴方を包む祝福のオーラが何よりの証」

 「は·········はぁ」


 ヤバい。関わっちゃマズいタイプだ。

 何だよオーラって。俺は念を使う能力者じゃねーぞ。


 「何よアンタ。真っ白いシスターなんて珍しいわね」

 「······おぉ神よ、この蒼き少女に祝福を」

 「はぁ?」

 「貴女は神に·········ぷっ」

 

 シスターはシャイニーを見て吹き出した。なんかバカにしたような笑いだ。


 「な、ちょっと何よ‼ アンタ今笑ったでしょ‼」

 「いえいえ、神の祝福は誰にでも届きます。祈りを捧げればハッピーになれますよ?」

 「なんで疑問系なのよ‼ アタシは神なんか信じちゃいないからね‼ 幸せは自分の手で掴むモンでしょーが‼」

 「そうですね。がんばって下さい」

 「こ、このやろーっ‼ ケンカ売ってんの⁉」

 「しゃ、シャイニー、落ち着いて下さい」

 「貴女は······神に愛されてますね」

 「へ? わ、私ですか?」

 「はい。貴女は神に愛されてます······ちょっと下心のあるエロい神に」

 「え」

 「貴女の日常の仕草にエロさを感じる神の祝福です。美しいブロンドヘアを持ち上げた時のうなじとか、いつもは髪を流してるのに仕事中は纏めて見せる姿とか」

 「······え、エロい?」


 この女、出来る。

 ミレイナのふとしたエロさに気が付くのは俺だけと思ったが、まさかこんなシスターに見破られるとはな。じゃなくて。


 「あ、あの〜、何かご用で?」

 「おっと失礼。貴方のオーラに惹かれてつい。失礼ですが、貴方はどちらの出身でしょうか?」

 「え、ええと、ゼニモウケですけど」

 「ゼニモウケ······ふむ。オレサンジョウではなかったですか、残念」

 「ちょっと、意味不明なことばっか言わないでよね。用が済んだならあっち行きなさいよ」

 「申し遅れました。私はキリエ。この大聖堂のシスターである、キリエ・エレイソンと申します」

 「ど、どうも。俺はコウタです」

 「ちょっと‼ 無視すんなっ‼」

 「しゃ、シャイニー、落ち着いて下さい」


 キリエと名乗ったシスターは頭を下げ、俺をじっと見つめる。

 

 「貴方の雰囲気は、かの勇者に似てますね。黒髪に黒い瞳······ですが、貴方の方が神に愛されている」

 「はぁ」

 「勇者ですか? 勇者って、伝説の?」

 「そうです。つい最近現れた、異世界より召喚されし勇者です。彼ら彼女らは貴方と同じ愛されし者で、仲間を求めてこの地へやって参りました。そして私の妹のクリスを連れて、再び旅立ったのです」 

 「クリスって、聖女クリス?」

 「はい。私はクリスの姉です」

 「·········」 

 「コウタさん?」


 俺は途中まで聞いて頭を抱えた。

 この人、今なんて言ったんだ?



 異世界より召喚されし勇者だって? そんなのに関わるのは絶対にゴメンだからな‼


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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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