229・トラック野郎、再び指導員
「い、てて·········あれ?」
気が付くと、自室のベッドで目を覚ました。
やべ、飲み過ぎたのか······昨夜の記憶があんまりない。
確か、パイとブーさんの歓迎会を開いて、いつものモツ鍋屋で宴会を開いたんだ。それで盛り上がって、シャイニーとパイが飲み比べとかやって、俺も参加して······ああそっか、酔い潰れてブーさんが部屋に運んでくれたんだっけ。
「·········うわ、くせぇ」
汗とモツ鍋のニオイが服に染み付いてる。
一応、今日は休みでフードフェスタ開催と同時に仕事を再開する予定だから問題ない。着替えて服は洗濯しよう。
とりあえず、風呂に入ってさっぱりしたい。今日は勇者パーティーがキャンピングカーを取りに来る予定だし、いかにも二日酔いの姿を見せるのはかっこ悪い。
部屋のカーテンを開けると朝日が眩しかった。どうやら現在時刻は朝の五時くらいらしい。
「風呂入るか······」
俺は着替えを持って風呂場へ向かい、ドアを開けた。
「え······」
「おや社長、おはようございます。早いですね」
「·········」
そこに、全裸のミレイナとキリエがいた。
しかも俺の目が正常に働いているなら、ミレイナとキリエは裸で抱き合ってるように見える。真っ白なキリエの胸がフワフワしたミレイナの胸と合わさり、ムニュッと潰れている。そして俺の登場でキリエがミレイナから離れると、二人の胸が丸見えになった。
「あ、あ、あ、あの、こここ、コウタさん?」
「申し訳ありません、ちょっとじゃれ合ってました」
「·········」
ミレイナは動揺したのかワタワタと手を動かす。すると形のいい胸がぷるぷる揺れ、キリエに至ってはその裸体を隠そうとせず堂々と晒している。
オー、これってまだ夢なのかな?
「よし、風呂に入るか」
俺は微笑を浮かべ脱衣所へ入り、服を脱ぐ。
そして、我に返ったミレイナが叫んだ。
「いやぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
その後、駆け付けたシャイニーに殴られ、俺は気を失った。
気が付くと、俺は上半身裸で脱衣所に転がっていた。
「あれ·········夢だったのか?」
うーん、ミレイナとキリエが居たような気がしたが、気のせいだったのか? とりあえずシャワーを浴びて着替え、リビングへ行く。
「おはよー」
「あ、ご主人おはよー」
「ご主人様、おはよう」
最初に合ったのはパイとコハクだ。二人とも朝なのに汗を掻いてる。するとパイが胸元をパタパタしながら言う。
「コハクとボクとブラスタヴァンの三人で朝の組手をしてたの。これから毎日の日課にしようと思ってね」
「おじさん、わたしを鍛えてくれるって」
「なるほどな、シャイニーは?」
「シャイニー、頭痛いって起きなかった」
「······まぁ、あれだけ呑めばな。パイは平気なのか?」
「ボク、お酒は朝まで残らないタイプなんだ」
そりゃ羨ましい。
すると、パイはコハクの背中を押す。
「ボク達、シャワー浴びてくる。ご主人も一緒にどう?」
「ご主人様、いこう」
素晴らしく魅力的な提案だが俺はもうシャワーを浴びた。というか、そんな事をしたら蒼い誰かに殺される。
「え、遠慮しとく。その、ブーさんは?」
「ああ、あいつは外で水浴びしてる。ムキムキのおっさんが褌一丁で水浴びしてるのなんて見たくないからね、行かない方がいいよ」
「·········わかった」
うおぉ、想像してしまった。
二人を見送りリビングへ向かうと、台所で朝食の支度をするミレイナとキリエ、そしてしろ丸にドッグフードをあげてるシャイニーがいた。
「よしよし、美味しい?」
『うなーお』
今日もしろ丸は可愛いね。ドッグフードをボリボリ食べる姿は朝ながら癒やされるぜ。
「おはようみんな、手伝うか?」
「お、おはようございます、コウタさん」
「おはようございます社長。では、お皿を並べてもらえますか?」
「わかった」
「あ、あのコウタさん······さっきの事ですけど」
「さっき?······ええと、何かあったか?」
「え? ええと」
すると、キリエがミレイナの肩を叩く。
「恐らく、シャイニーのボディブローで記憶を失ってるのでしょう。忘れましょう、ミレイナ」
「は、はい」
「·····ふん!!」
なんだよ、よくわからん。
シャイニーもプリプリしてるし、朝からご機嫌ナナメなのか?
とにかく、腹減ったしメシだメシ。
朝食が終わり、ミレイナの淹れた紅茶を飲みながらまったりしていると、ドアベルが鳴った。
「おーい、来たぜおっさーーんっ!!」
どうやら太陽達だ。まだ朝の七時を過ぎたばかりなのに。
俺は一人で太陽達の元へ行きドアを開けると、勇者パーティーが全員揃っていた。
「おっさんおっさん、もしかしてアレがそうか!?」
「落ち着けよ、まぁそうだけどさ」
「なぁ、あれってキャンピングカーだろ? 報酬はミニバンじゃなかったのかよ?」
「ああ、選べる項目が増えてな、ミニバンよりキャンピングカーの方が旅には便利だろ?」
「おっさん······おっさーーーーーーんっ!!」
「うわっ!?」
太陽の野郎、いきなり抱き付いてきやがった。
すると、頭を抱えた月詠と煌星が太陽を引き剥がす。
「全く、朝っぱらから何してんのよ。申し訳ありませんコウタさん、その、ホントにあんな立派な車を戴いていいんですか?」
「もちろんだ。シートは革張りでカーナビも搭載したから便利だぞ。それで、運転手は誰だ?」
搭乗者本登録をすれば一人しか運転出来ないが、仮登録なら全員が運転出来る。仮登録のままだと本来の能力が使えないらしいけど、勇者パーティーの足替わりだから別にいいだろ。すると月詠が言う。
「とりあえず、全員一通り運転を······ああ、クリス以外で」
「むー、やっぱり納得いかないー」
いや、妥当な判断だ。
見た目小学校高学年のクリスじゃ車の、ましてやキャンピングカーの運転は無理だろ。
「おじ様、わたくし達、しばらくゼニモウケに滞在しますので、運転のご教授をお願い申し上げますわ」
「もちろんだ。ウチには俺もコハクも居るし、運転指導は任せてくれ」
「ありがとうございます、コウタ殿」
煌星もウィンクも興味があるのか、ウキウキしてるように見える。
「じゃあさっそくやるか。誰から行く?」
「当然、オレだぜ!!」
さて、勇者様の運転指導員を務めさせて戴きますかね。
会社の隣にある公園はフードフェスタの露店会場になるので使えなかったので、会社の敷地内で練習する。
ちなみにみんなの予定は、ミレイナはオフィスの掃除、キリエは仕事に必要な買い出しと孤児院の挨拶、シャイニーはハイエースでゴンズ爺さんの武器屋、コハクはブーさんの部屋で裁縫を教わってる。
まず、私服に着替えたキリエがヘルメット片手に現れた。
「あ、キリエ姉ぇ」
「おやクリス、元気そうで何より」
「うん。なにそれ、どこか行くの?」
「ええ、用事がありまして。では社長、行ってきます」
「ああ、気をつけろよ」
キリエはガレージにあるスクーターに跨り、エンジンを掛けて颯爽と走り出した。
勇者パーティーが唖然として見送る。
「スクーター······なんでもアリかよ」
同じように、ハイエースで出ていったシャイニーを見送ると、今度はオフィスの屋根の上からパイが飛び降りて来た。しかも頭の上にしろ丸を乗せている。
「やっぱツクヨか。元気してる?」
「パイラオフ、ふふ、こうして人間界で話すのは変な感じね」
「パイでいいよ、ツクヨ。それよりご主人、ちょっと狩りに行ってくるね」
「狩り?」
「うん。人間界のモンスターと戦ってみたいし、ちょっと強いヤツのニオイもするから、運動がてら狩ってくる」
「······一人で平気なのか?」
「一人じゃないよ、ほら」
『なうなう』
うーん、しろ丸を一人とカウントしていいのかな。
すると月詠がパイの隣に立つ。
「じゃあ、あたしも行くわ。運転は今日じゃなくても出来るしね」
「お、いいね。じゃあツクヨ、一緒に行こう」
「······わかった。じゃあ月詠、パイを頼むぞ」
「はい、任せて下さい」
「にゃふふ〜、じゃあツクヨ、町の外まで競争しよっか?」
パイは跳躍すると、近くの木に飛び移る。
月詠はニヤリと笑うと、パイの隣の木に飛び移った。
「うふふ、よ〜い······ドン!!」
煌星が合図すると、二人のいた木が大きく揺れる。そして二人の姿は消えていた。
「じゃ、おっさん、指導よろしく!!」
ま、いいか。なんか楽しそうだしな。




