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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第16章・トラック野郎と連続タイマンバトル』

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220・トラック野郎、vs守護天龍ヴァルファムート②/手を取り合って

 デコトラカイザーを締め上げたヴァルファムートは、そのまま上昇した。

『社長。敵は姿を変化させる事が可能。便宜的にこの形態を『蛇空態』と名付けます』

「どうでもいい、なんとかしろよっ!!」

 デコトラカイザーは空を飛び、ヒュブリスの町を横断する。

 そして、勇者パーティー達がゼルルシオンとやり合った平原辺りに到着すると、拘束を解いた。

「どわぁぁぁぁっ!?」

 着地、というか墜落。

 車体に凄い負荷と振動が走り、俺の身体もショックを受けた。

「く……」

『さぁ、続きと行こう』

「このヤロ……おぉぉ?」

 すると、またしてもヴァルファムートの肉体が変化した。

 蛇のような身体がボコボコと膨らみ、手足もぶっとくゴリラのようになる。逆に翼はかなり小さくなった。まるでドラゴンの顔を持つゴリラのようだった。

『さぁ来い!! オレを楽しませろ!!』

「この野郎……重機召喚!! ショベルジャケット!!」

 異空間から世界最大級のショベルカーを召喚する。

「重機合神!!」

 ショベルカーが変形、ブルデコトラカイザーとドッキングして合体完了。

 防御力も攻撃力も爆上昇。タマ、これでも勝てないとか言う気か?

「行くぞーーーーーーッ!」

 左手の『バケットアーム』を拳にかぶせ、デコトラカイザー最強のパンチ力を見せつける。

「っだらぁっ!!」

『ハッハァァーーーーーッ!!』

 ショベルジャケットのパンチとヴァルファムートのゴリラパンチが正面衝突。ショベルジャケットの車体がビリビリと揺れる。

『いいぞ、もっとだ、もっと本気を見せろ!!』

「この、ベラベラやかましいっ!!」

 ショベルハングも加え、パンチのラッシュを叩き込む。

 だが、攻撃力はあるが鈍足なショベルジャケットは、次第に押され始めた。

「ぐ、この……」

『オォォォォォォォーーーーーーッ!』

『胸部損壊。右腕部損傷』

「くそ、この……」

『ハッハァァァァァァーーーーーーッ!』

 ヴァルファムートは、傷だらけになりながらラッシュを繰り出す。そしてついにショベルジャケットの右腕が破壊され、肩の付け根から腕が取れてしまった。

『どうしたどうした、楽しませろォォォォーーーーーーッ!』

『危険。危険。危険。危険』

 ショベルジャケットはサンドバッグ状態でゴリラパンチを浴びまくる。

 左腕も破壊され、下半身も揺れる。

『ッダラァァァッ!!』

「うわぁぁぁっ!?」

 ヴァルファムートの振りかぶった一撃は重く、ショベルジャケットが破壊された。

 ブルデコトラカイザーが弾き出され、トラックフォームに戻る。

「く……なら、アイスフォームだ」

 ドラゴンなら寒さに弱いはず。多分。

 冷凍車から華奢なアイスデコトラカイザーに変形し、ブリザードバスターを装備する。

 相手は鈍足ゴリラ、躱せるモンなら……あれ?

「な、また!?」

 ヴァルファムートは、再び身体を変化させていた。

 今度は上半身がスタイリッシュになり、下半身はムッキムキのエス字型に変わる。まるでチーターみたいな下半身だ。

「この、ブリザードバスター発射!!」

 右手のバスターから冷気が発射される。

 だが、すでに視界からヴァルファムートは消えていた。

「な、どこだ」

『ここだ』

「ぐっあっ!?」

 車体が大きく揺れ、アイスデコトラカイザーは転倒した。

 腕力の次は脚力かよ、こいつマジで何でもアリなのか?

『警告。敵反応感知不能。センサーを上回る速度で移動しています』

「くっそ、このヤロ」

 俺は立ち上がり、ブリザードバスターを発射する。ただし今度はデコトラカイザーを中心として、円を描くように発射する。そうすれば必ず捕らえられる。

「発射!!」

 絶対零度のブリザードを弧を描くように放つが、それらしいヤツは捕らえられない。

 というか、一周しても何も捕まらない。

『ここだ』

「まさか、っどわぁぁっ!?」

 車体が激しく振動し、右手のバスターが切断された。

 こいつ、上空からデコトラカイザーの腕を狙って飛びやがった。

「ぐ……」

 再びトラックフォームに戻ってしまう。

 まずい、手を尽くしたけど勝てる気がしない。

「でも、やるしかないんだよな……ドライビングバスター・大剣モード、ハイウェイストライガー・クローモード!!」

 もしかしたら俺は死ぬかも知れない、そんな気がした。




*****《勇者タイヨウ視点》*****




住民はそれぞれの区画にある地下通路から、ヒュブリス大平原地下にある巨大シェルターに移動させた。どうやら魔族の技術力は人間を遥かに凌駕してる。まぁ現代人のオレからすれば大したことないけどね。

 手分けしてオレらは住人を避難させ、できることをやる。

 クリスは負傷者の手当をし、キリエさんはクリスの手伝いをしてる。しかもいつの間にか姉妹の傍にはしろ丸とカイムがいるし。

 月詠、煌星、ウィンク、シャイニーさん、コハクさんは負傷の少ない兵士と青龍王のおっさんと一緒に、外の様子を確認するようだ。このシェルターから大平原に通じてる道があるらしい。

「おじさん、怪我は平気?」

「ああ、問題ない」

 コハクさん、青龍王のおっさんと一緒でなんか嬉しそうだ。

 まさか魔族と一時的に手を組むとは思わなかった。オレサンジョウ王国に帰ったらいろいろ報告しないとな、『魔族や魔王は無害でした、もう戦いの必要はありません』とか。そうすればオレ達の戦いは終了、オレはハーレム作りに専念できる。

 ニヤニヤしてるオレの元に、天魔王が来た。

「勇者、少しいいか」

「ん、なんだよ」

「いや、改めて礼を言わせてくれ。お前達のおかげで住人を避難させられた」

「あー、別にいいよ。ってか敵同士なのに可笑しいな」

「………ふ、そうか? 少なくともオレの考えは変わった。もうお前達を敵として見ることは出来ない」

「奇遇だな。実はオレもだよ。なんか毒気抜かれたってか、魔族もフツーの人間と変わらないなって思う」

「そうか……」

 うーん、なんか魔王ってフレンドリーだ。

 やっぱ外見や称号で人を判断しちゃダメだな。先入観が働き過ぎた。

「帰ったら、魔王はいい人でしたって報告するよ」

「………いや、それはまだ速い。止めておけ」

「は?」

 ゼルルシオンの表情は、一瞬で曇る。

「オレはともかく、残りの六人の魔王には注意しろ。特に『力』を司る魔王ラーズゲインと『壊』を司る魔王イシュメールにはな。あいつらは狡猾で残虐だ、戦いになれば容赦なく人間界に兵を送るだろう」

「な……」

「あいつらはお互いを潰し合ってるから人間などに興味はないが、矛先が迎えば待っているのは確実な支配だ。いいか、決して魔王族は善人ではない。覚えておけ」

「………ああ、その、ありがとう」

「ふ、気にするな」

 そういえば、魔王って七人いるんだっけ……忘れてた。

 ゼルルシオンクラスがあと六人……もっと強くならないと。

 帰ったら、アレクシエル博士に強化アイテムの相談してみよう。




 シャイニー達は、地上の状況を確かめるために兵士を率いてシェルター内を歩いていた。

 メンバーは、シャイニー、コハク、月詠、煌星、ウィンク、太陽、ゼルルシオン、ブラスタヴァン、パイラオフ、グレミオ、ミューレイア、そしてミレイナと数十人の騎士達だ。

 戦士達は、それぞれ会話をしている。

 太陽、グレミオの場合。

「ねぇタイヨウ、まさかこうしてキミと並んで歩くとはね」

「だな。さっきまで戦ってたのにな」

「ふふふ、言っとくけど、ボクとの再戦については別の話だ」

「当たり前田の缶コーヒーだぜ」

「……は?」

 月詠とパイラオフの場合。

「パイラオフ、怪我はいいの?」

「うん、キミの仲間のちっちゃい子供のお陰かな。もーばっちし」

「そう。それならいいわ」

「えへへ……あのさツクヨ、聞いてもいい?」

「何?」

「あのさ、あの巨人を操縦してる人間ってどんな人?」

「コウタさん? あの人は人間界で運送会社の社長をやってるの。それがどうかした?」

「運送会社の社長……人間界かぁ」

「パイラオフ?」

 コハク、ブラスタヴァンの場合。

「おじさん、この戦いが終わったらまた遊びに来るね」

「ああ。いや待て、少し質問してもいいか?」

「なに?」

「お前、人間界ではどのように暮らしている?」

「わたし? わたしはご主人様の会社で働いてるよ。運送会社なの」

「運送会社……なるほど」

「おじさん?」

 ミレイナ、ゼルルシオン、ミューレイアの場合。

「ミレイナ、お前はやはり戻れ」

「いやです。コウタさんが一人で戦ってるんです、私も行きます」

「だが……」

「ちょ、ミレイナ!! 貴女はゼルルシオン兄様のいいつけに逆らうと言うの!?」

「その通りですミューレイア姉様」

「な、この生意気な口を!!」

「まぁ待てミューレイア。ミレイナ、ではオレの傍から離れるなよ」

「はい、ありがとうございます」

「んなぁ!? ちょ、ゼルルシオン兄様!?」

「ミューレイア姉様、私はもう遠慮しませんから。言いたいことはハッキリ言わせて戴きます」

「ななな、この、このミレイナ如きが私に……」

「ミューレイア、落ち着け」

「くぅぅ、ゼルルシオン兄様ぁ……」

 この光景を見ていたグレミオは、ミレイナに近付く。

「ミレイナ姉さん、一体どうしたのさ。まるで別人じゃないか」

「そうかな? 私も強くなっただけよ」

「ふーん……っだだだだっ!?」

「グレミオ、この手は何かな?」

 グレミオの手はミレイナの臀部をサワサワ撫でていたが、ミレイナによって皮膚を摘ままれる。

 ミレイナは、枷から解放されたような清々しさがあった。もう怯えることも無い、才能こそないが普通の少女ミレイナとしての自信を手に入れた。

「グレミオ、私は貴女の姉です。身内に対してそういう事をするのはダメですよ」

「え……あの、ミレイナ姉さん? だよね?」

「返事は?」

「あ、いや、その……はい」

 ミレイナは、初めてグレミオを黙らせた。




 隠し通路を通り、ヒュブリス大平原へ出たミレイナ達を待っていたのは、衝撃の光景だった。

「え……うそ、こ、コウタさん?」

 奇しくも、シェルターの隠し通路出口の目の前に、ヴァルファムートがいた。

 しかも大地には、破壊され四肢をもぎ取られたデコトラカイザーが転がっている。

「こ、コウタ……うそ」

「ご、ご主人様……」

 シャイニーとコハクも青ざめていた。

 最強のデコトラカイザー、どんなモンスターでも倒してきたトラックが、見るも無惨な姿に変わっていた。

 デコトラカイザーは、ピクリとも動かない。

「お、おっさん……」

「コウタさん……」

「おじ様、そんな」

「おにーさん、ウソ……」

「なんて、こと」

 勇者パーティー達も、驚愕していた。

「やはり、神には勝てない……」

「ゼルルシオン兄様、これは一体……」

「これがヴァルファムートの力……」

 ゼルルシオン、グレミオ、ミューレイアも驚いていた。

 そして、ヴァルファムートの存在すら忘れたミレイナが叫んだ。

「コウタさぁぁぁーーーーーーんッ!!」

 それでも、デコトラカイザーは動かなかった。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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