217・デコトラカイザーvs天魔王ゼルルシオン/暴走、そして
デコトラカイザーの頭部、目に当たる部分から赤いレーザーカッターが発射される。
「ミューレイア、下がれっ!!」
ゼルルシオンは鎌を振り回し、レーザーカッターを切り払い、ミューレイアを退避させる。
ミューレイアはゼルルシオンの命令に忠実に従い、ミレイナを突き飛ばして走り出す。
『追尾ミサイル発射』
両肩が開き、ミサイルが発射される。
何発もの巨大ミサイルはミューレイアを追尾する。
「くっ······」
「ミューレイアっ!!」
ミューレイアは防御魔法陣を展開し、ミサイルをガードする。
だが、防御魔法陣に着弾したミサイルは大爆発を起こし、ミューレイアの防御魔法陣はあっさりと砕ける。
「な、なんとか·······え」
『排除します』
ミューレイアの目の前に、デコトラカイザーの爪先が見えた。
気が付いた瞬間、ミューレイアはデコトラカイザーに蹴られて宙を舞う。
その衝撃はトラックの衝突とはワケが違う。ミューレイアの内臓は破裂し、血を吐き出しながらノーバウンドで吹っ飛んだ。
『排除完了』
「貴様ァァァァッ!!」
ゼルルシオンは大鎌を振りデコトラカイザーを両断しようと魔力を込める。
「断て、サディケール!!」
ゼルルシオンの鎌は、デコトラカイザーの首を切断······しなかった。
デコトラカイザーは全く無傷で、ゼルルシオンの鎌に亀裂が入った。
「な······」
『排除します』
「な、くそっ!! ぐがぁぁぁっ!?」
機銃が発射され、ゼルルシオンの鎧を削る。
デコトラカイザーの右手が伸び、ゼルルシオンをガッチリと掴んだ。
『排除します』
「ぐ、ぉぉぉぉっ!?」
ビキビキと音が響く。
デコトラカイザーは、ゼルルシオンの鎧を素手で握り潰そうとしていた。そして鎧の全身に亀裂が入り始める。
デコトラカイザーはゼルルシオンを地面に叩き付けると、そのまま思い切り踏み潰す。何度も何度も踏み潰し、周囲には地震のような揺れが続く。
『排除します』
無機質なタマの声だけが、響いていた。
*****《コウタ視点》*****
う〜ん·····体中が痛い。頭がガンガンするぅ。
ボンヤリとする頭を押さえようと手を動かすが、手も痛い。それに足も腹も痛いし······そうだ、グレミオの野郎にやられたんだ。
ボコボコにされたけど動けなくはない。とりあえず痛む身体を起こして腫れ上がった顔で周囲を見る。
「グレミオ、しっかりしてグレミオ!!」
「み、ミレイナ姉さん······なんで」
「早く止血しないと、くっ」
えーと······なんでグレミオの手足がないの? ダルマ?
ミレイナがスカートやシャツの裾を破いて包帯代わりにして、グレミオの止血をしてる。
「あ······こ、コウタさん!! お願いします、タマさんを止めて下さい!!」
「え? え? た、タマ?······いてて」
事態が飲み込めない俺は、ようやく気が付いた。
地面が振動してる。それも規則正しくズンズンと。
「な、なんだ·········は?」
そこには、赤いデコトラカイザーがいた。
何かを一心不乱に踏み潰してる······おい、まさかあれ。
「た、タマ!? 何してんだお前!?」
タマが踏み潰してるのは、ボロボロのゼルルシオンだった。
鎧は砕け、大鎌もすでに原型を失ってる。ゼルルシオンは殆ど生身に近い状態で、デコトラカイザーの踏み潰しに必死に耐えているように見えた。
「おいタマ、ストップストップ!! 何してんだお前!!」
『お目覚めですか社長。無事で何よりです』
赤いデコトラカイザーは、ようやく動きを止めた。
俺は痛む身体を引きずり、ゼルルシオンの元へ。
「うわ、酷え······」
「う、ぐ······」
ゼルルシオンの手足は折れ曲がり、体中から血が流れていた。
大型トラックと正面衝突してもこうはならないぞ。流石に同情するよ。
『社長、トドメを刺すので離れて下さい』
「アホ、やりすぎだ!! もういい、もう戦いは終わり、俺らの勝利だ!!」
『·········確認しました。生命安全率八十七パーセントまで上昇。生命の危機を脱したと判断。デコトラカイザー・アライブ解除。全権限を運転手に返還します』
するとデコトラカイザーは白く戻り、トラックに変形した。
何がどうなったさっぱり過ぎる。
「コウタさん、グレミオが······ミューレイア姉様が」
「お、落ち着け落ち着け、えーと、そうだクリス!!」
おいおい、なんで必死に助けようとしてるんだよ俺。
というか、形勢逆転どころの話じゃない。動けるのは俺とミレイナだけで、いつの間にかゼルルシオン達も救護の対象になってる。
俺は倒れてるクリスの元へ向かい、申し訳ないが頬をペシペシ叩いて起こした。
「クリス、起きろクリス」
「うぅ〜ん······眠いよぉ」
「あーもう急患だ急患、お前の魔術が必要なの!!」
「えぇ〜······もう魔力カラッポだよぉ」
「あーもう、美味しいお菓子もケーキも何でもやるから起きてくれ!! あ、そうだ」
俺はトラックに戻り眠気覚ましに買った栄養ドリンクを掴みクリスの元へ。瓶の蓋を開けて、クリスの口に中身を注ぎ込んだ。
「飲め、目ぇ覚めるぞ」
「んぶぶ······んぐ? んぶはぁっ!?」
やった、クリスが飛び起きた。
「んぉぉーーーーッ!! 漲ってきたぁぁぁーーーーッ!!」
うーん、なんかドーピングしたような元気さだ。
とにかく、怪我人の治療をしてもらわないと。
「魔力全開っ!! クリス・エレイソン復活っ!!」
「よし、じゃあ治療を頼む。怪我人が居るんだ!!」
「任せてちょーだい、『癒やしの光』!!」
「おぉ〜温かい······って俺じゃない!! いや俺もだけど」
クリスの杖から光が溢れて俺を包み、ボロボロの身体が回復した。
クリスのテンションがおかしい。異世界人に栄養ドリンクってヤバかったのかな。でもキリエはフツーに飲んでたし······まぁ今はいいや。
俺はクリスを連れてグレミオの元へ。
「よし、頼む」
「よーしお任せ······って敵じゃん!!」
「お願いしますクリスさん、グレミオは弟なんです、お願いします!!」
「·········」
ミレイナの必死の懇願に、グレミオは涙した。
クリスはミレイナに押され、治療を始めた。
「コウタさん、ミューレイア姉様をお願いします」
「わ、わかった」
ミレイナ曰く、ミューレイアはデコトラカイザーに蹴り飛ばされたらしい。とりあえず飛ばされた辺りへ行くと······いた。
「うわ、大丈夫かよ」
「あ······ぐ」
そこには、血だらけのミューレイアがいた。
血を吐いたのか、着てる服は血塗れになり顔色も悪い。
「苦しいだろうけど我慢しろよ、治療してやる」
「な、んで······」
「······ミレイナに感謝しろよ」
それだけ言ってミューレイアを担いだ。
あ、こいつ胸がないな。
グレミオとミューレイアの治療を終え、倒れてるゼルルシオンの元へやって来た。
「······二人、は?」
「無事だよ、手当は済んだ」
今は気を失っている。でも怪我は完治したし大丈夫だろう。
俺はクリスに頼み、怪我の治療をしてもらう。
「·········」
「·········」
ミレイナがゼルルシオンの身体を支えてるのに、ゼルルシオンは目を合わせようとしない。変なヤツだな、グレミオやミューレイアの心配はするのに、ミレイナの事は全く関心にない。
不思議と、ゼルルシオンに対する恐怖は無くなっていた。
「·······なぁ、あんたさ、ミレイナの兄貴なんだろ?」
「·······」
「こ、コウタさん?」
「こんな言い方はアレだけどさ、グレミオやミューレイアより、ミレイナの方があんたと似てる気がするよ。それなのにどうしてミレイナの扱いが酷いんだ?」
何故だろう、ゼルルシオンは戦意がない。
なんか萎んでるような、安心してるような、変な感じがする。
「·········」
「え·········」
ゼルルシオンは、ミレイナを真っ直ぐ見た。
そして、目を逸らす。まるで怖い物でも見るかのように。
「·········オレは、お前の兄を名乗る資格はない」
「な······なんで」
なんでだろう、ゼルルシオンは観念したかのように語りだす。
俺とミレイナ、治療中のクリスだけが聞いた。
「オレとお前の母親を殺したのが、オレだからだ」




