213・トラック野郎、合流
*****《コウタ視点》*****
現在、ミレイナを助手席に乗せて脱出中。さっさと魔界からおさらばしたい。
道順はナビがあるから迷わないけど、実はミレイナを乗せて走るのは久々だからちょっと緊張してる。ちょっと喋ってみようかな。
「あー、その」
「あの、コウタさん」
やべ、被った。
こういうときってかなり気まずい、だって会話無くて喋ろうとしたときってさ、相手も気まずいって思ってるから喋ろうとしてんだよな。行動がモロに被ったってことはミレイナも気まずいって思ってる……ああ、気を遣わせたのか。
「あの、コウタさん」
「ひゃ、ひゃい」
ああ、噛んじまった。
変なことウダウダ考えてるせいだよチクショウ。
「その、お仕事はどうでした? 勇者パーティーの皆さんと一緒にダンジョン……大変でした?」
「え、ああそうだな……けっこう、いやかなりヤバかった。武具の調整終えてすぐにダンジョンに向かったんだけどさ、コハクもダンジョン入りたいとか言い出して、結局入る事になってさ、何故か俺も一緒に入る事になって……しかも途中ではぐれるわ、ロープ登りさせられるわ、災害級危険種は出るわ……さんざんだった。しかもコハクが責任を感じるし」
「コハクッ!!」
「そうコハク、でもコハクのおかげで」
「コウタさんコハクです、コハクが!!」
「え?」
前を見ると、コハクがいた。
なんかエロい格好してる。あれ、さっきまでスターダストで買った格闘家みたいな服だったのに、今はなんかボロボロのスパッツと白い布で胸を押さえてる。
コハクは手を振っていたので目の前で止まると、ミレイナが停車前にドアを開けて飛び出しコハクに飛びついた。
「ミレイナッ!!」
「コハクッ!!」
おお、可愛い女の子同士の熱い抱擁だ。
しかも二人の乳がムニュッとエロく潰れて何ともけしからん。
「ミレイナぁぁぁぁ~~~~ッ!! うぁぁぁぁぁ~~~~ん!!」
「コハク······コハクぅぅぅぅ……」
うーん、二人を見てるといかに俺がゲスい考えなのかわかる。
コハクはミレイナに抱きつき頬をスリスリしてるし、ミレイナも俺に抱きついた以上にコハクをキツーく抱きしめ返してる。なんか俺、消えた方がいいかな。
危険もなさそうだし、俺もトラックから降りる。
するとコハクはミレイナから離れ、俺に向かって抱きついた。
「ご主人様ご主人様、わたし勝ったよぉぉぉ~~~~ッ!!」
「お、おう。その、お疲れさん」
「うぇぇ」
うーん、泣き顔コハク可愛い。
頭を撫でると、コハクの胸の谷間に何か挟まってるのが見えた。いや、エロ目的じゃなく自然と視界に入っただけだからね。
「コハク、それは?」
「ふぇ? ああこれ、わたしが強くなった証」
コハクは、胸の谷間から青と黄色の金属を取り出す。
「ぶっ!?」
「これ、ナックルみたい。鎧を装備して更に変身出来るの」
「ちょ、コハク!! 胸を隠してっ!!」
コハクが胸に手を突っ込んだ拍子に布切れがハラリと落ち、おっぱいが丸見えになった。
しかもコハクは全く気にせず、装飾の施されたナックルダスターの解説をしてる。するとミレイナが慌ててコハクの胸を手で隠した。
「あぅ······ミレイナ、くすぐったい」
「あ、その······と、とにかく車内へ!! 着替えはあるんですか?」
「うん」
「······」
ミレイナは、コハクの胸を鷲掴みしたまま車内へ。
いやはや、ミレイナが帰還しコハクと合流した早々いいモン見せて貰いました。
とりあえず、最初に合流したのはコハクだった。
次に合流したのは月詠だ。
城の入口ホールで警戒してる月詠とバッタリ出会う。
「コウタさん!! それにミレイナさんも!!」
「月詠、無事だったか!!」
「ツクヨさんっ!!」
月詠は特に負傷していない。パイラオフと戦ったはずだけど、怪我もしてなければ疲労も感じられない。
月詠にお礼を言いながら必死に頭を下げてるミレイナを押さえ、俺は質問した。
「白虎王は?」
「倒しました。しばらくはまともに動けないはず、早くみんなと合流して脱出しましょう!!」
「あ、ああ」
こともなげに言うが、相手はプライド地域最強の四天将だぞ。やっぱこいつらかなり強くなってる。
「あたしが先導しますから付いてきて下さい!!」
月詠はそう言って玄関ホールから出た。
俺とミレイナも慌てて乗車して先に進む。ようやく天魔王城から脱出出来たぜ。
「そういえばミレイナ、城には兵士とか護衛とか居なかったみたいだけど」
「はい、どうやらグレミオの指示でヒュブリス大平原にほぼ全ての戦力を向かわせたようで、城の守りは四天将の皆さんだけのようです。噂では、グレミオが手柄を独り占めするためだとか······」
なーるほど。ってことはグレミオの作戦は大失敗。手柄を独り占めどころか、四天将は全滅プラス城を土足でトラックで走られた責任を取らされるなこりゃ。
ちょっと良い気味だけど、ミレイナはどうだろう。
「······グレミオ、小さな頃はよく私の後ろを付いて歩いてたんです。私の髪を引っ張ってじゃれついたり、私がこっそりあげるお菓子を美味しそうに食べたり······でも、十歳を超えた頃から変わってしまって」
『恐らく思春期にありがちな性の目覚めです。周囲の環境や教育で歪んだ性欲を持ってしまったのでしょう』
「タマ、やめろ」
いやマジで何言ってんのこいつ。
確かに、実の姉を性の対象に見るなんて有り得ん。
俺には姉と妹がいるが、性の対象なんて見れたもんじゃない。そんなのは漫画の世界だけ、実際はうっとおしくてしょうがない。
例えば、姉はとにかくうるさかった。
人の部屋には勝手に入るくせに、自分の部屋に入られるとビービー喚き散らす。俺が勝ったCDを勝手に持ち出して部屋で流すわ、俺の買った漫画を先に読むわ、マジで最悪だった。
妹はウザかった。
こいつも勝手に部屋に入りやがるし、俺がバイトして稼いだ金を貸せだの奢れだのやかましい。しかも免許を取ったら足代わりにしやがって、親父のミニバンで学校近くまで送迎させられたのも一度や二度じゃない。
そんな姉妹を性の対象? ふざけんな無理に決まってる。一人暮らしになってどれだけ楽になったか。
たぶん、俺が死んでも何とも感じてないだろう。今では顔もうろ覚えだし、思い出なんて思い出せない。
ま、俺のことはいい。今はここを脱出だ。
城前の橋を渡ると月詠が立ち止まる。
「·········居ない、か」
「どうした?」
「あ、いえ、行きます!!」
月詠の後を追って進むと、市街地へ。
相変わらず誰もいない市街地を爆走すると、正面の大通りから煌星が走ってくるのが見えた。
「煌星っ!!」
「月詠ちゃんっ!!」
おお、美しい光景再び。
女の子同士が抱き合うのってなんでこんなに美しいんだろう。ミレイナも加わり更に華やかな光景に。
よし、これで煌星も合流した。
それから市街地を抜けて町の入口へ到着すると、シャイニー達が集まっていた。
シャイニー、ウィンク、キリエ、クリス、太陽と全員揃ってる。しかもよく見るとシャイニーは女性を担いでいた。もしかしてアレ、ミレイナの姉貴じゃね?
トラックを先導する月詠が合図すると、シャイニー達は駆け寄ってきた。するとミレイナは助手席を飛び出した。
俺もトラックから降りる。
「シャイニーッ!! キリエェッ!!」
「ミレイナっ!! この、心配かけてもうっ!!」
「ミレイナ······よかった、本当によかったです」
三人はガッチリと抱擁してる。やっぱこの光景は美しい
そして、居住ルームから着替えたコハクも現れ、抱き合う三人に向かって飛び付いた。
「わわ、コハク」
「······仲間はずれ、ダメ」
「バカ、そんなことするワケないでしょーが」
「そうですよコハク」
あれれー俺は? 俺も飛び付いていいの?
でもシャイニーに殴り飛ばされそうな気がするよー?
するとミレイナは、改めて全員に向き直り頭を下げた。
「皆さん、本当に、本当にありがとうございます」
俺達は全員、お互いの顔を見合わせ微笑んだ。
やっと全員揃った。大事なミレイナも取り返したぜ。
「ミレイナ、こちらの御方はどうしますか?」
「あ······」
キリエの視線の先に気を失い倒れてる女性、ミレイナの姉ミューレイアがいた。
胸元に血が滲んでるけど、死んでないよな?
「最低限の治療は施しました。仮に起きても魔術は使えませんし、このメンバーが揃ってる中で暴れるとも考えられません。ミレイナ、こちらの方の処遇は如何致しますか?」
「·········」
ミレイナはだんまりだ。
まぁそうだよな、詳しくは知らんけど姉妹仲は良くない······というか、イジメられてたんだよな。
ま、俺の知ってるミレイナならこう言うだろうな。
「きちんと手当して、安全な場所へ」
やっぱりな。ミレイナは誰か相手でも優しいからね。
「······宜しいのですか?」
「······はい」
キリエは微笑を浮かべると、クリスへ視線を向けた。
クリスはミューレイアに杖を向けると、杖の先端から淡い光が灯り、ミューレイアの身体を包み込む。
手当が終わり、ミューレイアの身体を町の入口近くの門に横たえる。これで用事は済んだな。
「さ、帰ろう」
俺はみんなにそう言うと、全員が頷いた。
そして。
『警告。警告。危険。危険。危険』
背中が凍り付いた。
耳に付けたイヤホンから警告音が鳴り響き、停車してあったトラックからも警告音が鳴り響いた。こんなに警告音が鳴るのは玄武王以来だ。
動けなかった。
なんだこれ、震えることすら恐怖で出来ないような。
すると突然、トラックの真下から魔法陣が輝き、何重もの鎖が現れてトラックを拘束した。
「な、んだ、これ」
「······重、い」
「ハァ、ハァ、ハァ······」
「あ、ぁぁ······」
「く、ぅぅ」
勇者パーティーの五人も感じていた。
「ハァ、ハァ······」
「·········これは」
「強い、すっごく、強い」
シャイニーは真っ青、キリエですら冷や汗を流し、コハクはカタカタ震えてる。
その正体に気がついたのは、俺が最初だった。
町の入口の先の大平原に、一人の男が立っていた。
それは、あまりにも美しいプラチナの髪。そして黒いローブを纏った超美青年。年齢は二十代半ばほどだろうか。
真っ直ぐ、俺を見据えていた。
「·········」
「·········」
これが、俺と『天魔王ゼルルシオン』の出会いだった。




