21・トラック野郎、出発
すみません、最後の方また下品かも。
翌朝。俺たち3人は冒険者ギルドへ到着した。
ニナからオーマイゴッド冒険者ギルドへの書状を受け取りに来たんだが、シャイニーは中へ入ろうとはしなかった。
「アタシは待ってるから、さっさと行ってきなさいよ」
「わかった。すぐ戻るからな」
まぁ、クビになって一週間もしないのに、元の職場に顔を出すなんてしたくない。その気持ちはよくわかるぜ。俺だってクビになったバイト先に私物を取りに行くの嫌だったしな。
ギルド内に入ると、すぐにニナが出迎えてくれた。
「来たか。まさか昨日の今日で来るとは思わなかったぞ」
「早くお届け、安く安心のお届けがモットーですので」
それっぽく言うが運送屋のモットーってそんなモンだろ?
ギルド長直々の依頼だし、ここでお得意様になって貰えれば後々助かるかもしれないし。
俺とミレイナは奥の応接間に案内された。
「······シャイニーブルーは?」
「トラックで待ってます」
「そうか。ヤツが居るなら道中は安全だな。性格はともかく、腕前だけは恐ろしくいいからな」
「はぁ」
俺にとってのシャイニーは、毒を喰らってゲロと血を吐いてたイメージが強い。しかもウンコも漏らしてたし。戦いはトラックの武装があるし、シャイニーは生身で出歩く時の護衛の意味合いが強いんだよな。
「さて、これが書状だ。これをオーマイゴッド冒険者ギルドのギルド長に渡してくれ。それとこれが前金だ」
「確かに、お預かりします」
「頼んだぞ」
卒業証書の筒みたいな入れ物の書状と、前金の100万が包んであるハンカチを受け取る。
いよいよ初仕事と思うと少し緊張するな。
俺とミレイナはギルドを出てトラックへ戻る。
「おかえり。それが書状?」
「ああ············開けるなよ」
「開けないわよ。さすがにそこまで堕ちてないわ」
「あの、私はお昼の支度とお掃除をしてますね」
「よろしくな、ミレイナ」
ミレイナちゃんは主婦みたいになってる。そんな姿も可愛いぜ‼
俺たちは全員、作業着を着てる。背中には『アガツマ運送会社』とプリントされたオーダーメイド品だ。
俺たちの初仕事は、ここから始まった。
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「ちょっと待った‼ で、デンジャー山脈ですって⁉」
「何だよ急に」
「そ、それはこっちのセリフよ‼ デンジャー山脈は危険レベルSSの場所よ⁉ モンスターの凶悪さに、一度登って帰ってきた者はいないと言われた魔境の1つ······そんな場所を通って行く気⁉」
「············」
何それ、初耳なんですけど。
元冒険者のシャイニーがここまで言うんだ、相当なレベルでヤバい場所なのは確定。いくらトラックを強化しても進みたいとは思わない。というか急に行く気が失せた。
「おいタマ、どういうことだ?」
『問題ありません。武装オート設定。モンスターを感知後自動迎撃。以上の設定でデンジャー山脈のモンスターを討伐しつつ進みます』
「·········ホントに大丈夫なのか?」
『はい。経験値とポイントを稼ぎつつ進むルートで最適なのがこのルートです』
確かにそうなんだろうけど、怖いのは怖い。
タマを信用してるけど、それと恐怖は全くの別物だ。
「ま、まぁ······信じるよ。ミサイル使って吹っ飛ばせ」
『畏まりました』
「ちょ、アンタ······マジで⁉」
デンジャー山脈まで約3日。そこからデンジャー山脈を進み、オーマイゴッドに到着は一週間後の予定だ。本来なら一月は掛かるルートだが、トラックなら一週間で行ける。
まずは、デンジャー山脈を目指して進もう。
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日も沈みトラックのライトを点けて走っていた。
トラック運転手舐めんなよ? 夜道は慣れてるし遅い時間なんて何のその。でも俺の会社はブラックじゃないので夜勤はありません。
「今日はこのへんにしとこう。メシだメシ」
「そーね。ふぁぁ、お腹減ったわ」
「お前ポッキー食ってただけじゃん······」
そう言いつつ、トラックを街道脇の木の下に停車させエンジンを止める。エンジンを切っても居住ルームやシャワールームの電気や水は使える。
「今日のご飯は初仕事でもありますし、少し豪華にしてみました」
「おぉ〜っ‼ さっすがミレイナだぜ‼」
「ふわぁ〜、おいしそ〜」
テーブルには焼きたてのチキンが盛られていた。やっぱりオーブン買って正解だぜ。ミレイナに操作を教えるとすぐにモノにするから楽でいい。デンジャー山脈でポイント稼いだらフライヤーも入れよう。
「そんじゃいただきまーす」
「いただきます」
「いっただっきま〜すっ‼」
こうして3人で食べる食事も慣れたもんだ。
ミレイナの料理は美味いし、シャイニーはやかましいけど面白いし、会社っていうか家族みたいな感じがする。
「ねぇミレイナ、オーマイゴッドって確か『スターダスト』の本店があるのよ。仕事が終わったら一緒に行きましょ」
「ほ、ホントですか⁉ 行きます行きます‼」
「スターダスト? なんだそりゃ」
「知らないんですか⁉ 『スターダスト』は女性冒険者たちが身に付けるアクセサリー専門店で、この世界の町の殆どに支店が存在する大企業です‼」
「そ、そうなの?」
ミレイナちゃん怖い······そういえばこの子、流行に敏感だったわ。
「本店の規模は支店の数倍だし、新作も数多く並ぶから、礼拝や大聖堂以外の目玉スポットでもあるのよね」
「はい‼ スターダストのためだけにオーマイゴッドへ向かう女性冒険者も居るくらいの人気店なんです‼ あぁ、盲点でした······ふふ、楽しみです」
「·········」
なんか女の子同士で盛り上がってるし、俺は黙ってテレビでも見よう。そういえばテレビ付けたことなかったな。何だかんだで忙しかったし、メシは会社の中だったし。
俺はソファに移動し、リモコンを取り電源を入れる。するとやってたのは宝石の特集番組だった。
『見て下さいこの輝き······これがイエローダイヤモンドと呼ばれる宝石です。美しいですね〜』
「えぇっ⁉」
「ウソっ⁉ 何これっ⁉」
「うおっ⁉」
突然の音と映像に、ミレイナとシャイニーが振り向き驚く。
そういえばテレビなんて無いもんな。すっかり忘れてたぜ。
「ななな、何よこれ‼······キレイ」
「わぁ〜······イエロー、ダイヤモンド? ヘンな箱だなって思いましたけど、中身はどうなってるんでしょうか?」
「待て待て、箱の中身はない。これは······ええと、映像だ。この世界の物じゃない」
「はぁ? じゃあこの中の人は何よ。小さな人なんて初めて見たわ」
「私もです。でも、キレイですね······」
ミレイナは宝石特集に釘付けだ。宝石みたいにキラキラしてるよ。シャイニーも俺の隣でテレビを見始めたし、チャンネルを変えるのも悪い気がしてきた。
それから15分ほどテレビを見て、宝石特集は終わった。それと同時にテレビを消す。そろそろいい時間だし、風呂入って寝よう。
「先に風呂入っていいぞ、俺はタマと喋ってるから」
「おっけ。じゃあミレイナ、一緒に入ろ」
「え、で、でも」
「いいからいいから」
そう言って2人はシャワールームへ。
やっぱ女子2人だといいね。女の子同士でシャワールームに行くなんて光景、漫画の世界だけかと思ってた。
さて、暇つぶしにタマの所に行くか。
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タマとトラックについての機能を確認したりして時間を潰す。
ちなみに俺の寝室は運転席真上のルーフ。拡張したベッドルームはシャイニーに譲った。それくらいの気遣いは出来るぜ。
それと、何となーく聞いてみた。
「なぁタマ、なんか面白い機能はないか?」
『面白い機能。とは?』
「なんかこう······びっくりするようなトラックの機能だよ」
『検索中·········検索完了。社長の求める機能該当アリ。これまでの社長の言動や行動から導き出された機能が見つかりました。表示しますか?』
「お、なんだそりゃ、面白そうだ。頼むぜ」
『畏まりました』
すると、フロントガラスに映像が表示された。
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『ミレイナ、今度はアタシが背中流したげる。ほらほら』
『あ、ありがとうございます、シャイニー』
『············むむ、やっぱデカいわね。ほれほれ、もーみもみ』
『きゃあっ⁉ シャイニー······っあんっ⁉』
『ほーれほーれ、先っぽがかた〜くなって来たわよ〜』
『いゃぁ、んん······』
『·········な、なーんてね。大丈夫?』
『·········』
『そ、そんなに怒らないで······ひゃわぁっ⁉』
『許しませんっ‼ このこのっ‼』
『ちょちょ、胸は弱いんだってっ⁉ あぅんっ⁉』
『お返しですっ‼』
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「·····························」
コレハナンダロウ。
ミレイナトシャイニーガオフロ?
『如何でしょうか。現在録画中』
「でかした‼ じゃなくて何だよコレは⁉」
『車内カメラに記録させている入浴です。社長はミレイナ様とシャイニーブルー様の裸体に興味深々というデータが出ましたので』
「んだよそれ⁉···············まぁ否定出来ないけど」
『はい。社長が望むのでしたらこれからも録画を続けますが』
「全部廃棄しろ‼」
『畏まりました·········本当に宜しいですか?』
「うるせぇっ‼ 何で確認するんだよ⁉ 今までしたことなかっただろうが‼」
悲しきかな漢のシンボル。そそり立つはチョモランマ。
くそ、このままだとメルトダウンする‼ 急いで冷却せねば‼
ちくしょう······ミレイナのおっぱい、シャイニーのちっぱい············ふぅ。
『お疲れ様です』
「フロントガラス叩き割るぞ⁉」
くそ、めちゃくちゃ疲れた······何だよコレ。