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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第15章・トラック野郎と重機の魂』
205/273

204・コハクvs青龍王ブラスタヴァン①/姪とおじさん

 天魔王城の橋を越え、ついにやって来た。

 見た目は巨大な城。千葉にある某テーマパークの城に見えなくもないが、こちらの城は見た目が黒く暗黒な雰囲気を漂わせてる。

「よし、入口は広い、トラックで進めそうだ」

「敵はわたしに任せて、ご主人様」

「ああ、頼むぞコハク」

 ここで気になった事が一つ。

「·········それにしても、誰も居ないのか?」 

 橋を越えて城の入口に来たのに、兵士はおろか猫の子一匹居やしない。それに何か······寒気がするような、某バイオゲームの洋館に踏み込んだような、異質な何かを感じる。

「······ご主人様、ここ誰もいないよ」

「うーん、戦力は殆ど平原に連れて来たらしいけど、ここまで静かなのはおかしいな。タマ、この城をスキャンして調べてくれ」

『畏まりました。スキャン開始·········完了。魔族反応あり。数カ所の部屋に集まっている模様。推測ですが避難をしてる可能性あり』

「避難······じゃあ、ここまで俺達が踏み込んでくるって予想はしてたのか」

『肯定。社長、ミレイナ様の反応あり。ミレイナ様の位置までのルートを表示します』

「来たか!!」

 フロントガラスには、城の詳細な地図とミレイナの位置までのルートが記されていた。

「よし、急ぐぞコハク、ミレイナを探して連れて行こう」

「·········」

「コハク?」

 コハクは、城をジッと見つめたまま動かなかった。

 何度か声を掛けると、ようやく反応した。

「ご主人様、強いのがいる」

「え」

 コハクの言葉は、すぐに現実となった。




 少し気は引けたがトラックで城内へ。

 天井も高く道幅も広くて助かった。生身なら完全武装しても不安だからな。俺にとっての最強装備はやはりトラックだ。

 それにしても敵が誰もいない。隠れてるのはわかったけど、兵士くらいは出てくると思ったんだが。

 敵もいないのでナビを頼りにゆっくり進み、大きな扉の前に到着した。

「ここは······ダンスホールか」

「·········」

 パーティー会場にトラックで進むヤツなんて、この世界だけじゃなく地球規模でも俺だけだろうな。

「コハク、行くぞ、ドアを開けてくれ」

「うん」

 コハクが観音開きのドアを開け、トラックはダンスホールへ。

「げ······」

「·········」

 そこに、一人の『おとこ』がいた。

 道着のような服を着て、こちらに背中向けて立っている。

 背中越しでも圧倒的なオーラを感じる。こいつ、かなり強い。

 するとコハクが一歩前に出た。

「やっぱり······おじさん」

「久しいな、コハクよ」

 おじさんとやらはゆっくりと振り返る。

 ガチムチの肉体に頭から伸びるツノ、顔は厳つく年齢は三十代くらいだろうか。魔族の見た目では年齢は測れないらしいから定かではない。

「おじさんって······」

「ヴラスタヴァンおじさん、お父さんの弟なの」

 つまり、青龍王。

 そういえば以前、コハクのおじさんに青龍王が居るって言ってたっけ。あの時はスルーしたからすっかり忘れてた。

「行方不明と聞いていたが、まさか人間界にいたとはな。お前がコロンゾン大陸を抜けたとは、少し驚いたぞ」

「強いモンスターを避けながら進んだの。そしたらついた」

「そうか······やはりお前の嗅覚は常軌を逸してる。嗅覚に特化した魔虎族以上だ」

 あれ、なんだろう······青龍王さん、なんか嬉しそう。

 するとコハクは前に出て、青龍王に言う。

「おじさん、わたし······ミレイナを助けたいの、どいて」

「······悪いがそれは出来ない。オレの任務は魔神器の回収と侵入者の撃退、いくらお前でも通す訳にはいかん」

「おじさん······」

 コハクは悲しそうに俯く。たぶんだけど、コハクはこの青龍王が好きなんだ。血の繋がりのある縁者だし、叔父と姪の関係だしな。

「コハク、お前の事も報告は入ってる。人間に買われたらしいな」

「うん。ご主人様、わたしを助けてくれた。だからお返しする」

「そうか。全く、面倒な事だ」

「おじさん?」

 すると青龍王は一瞬でコハクの前に移動。

 驚愕し腕をクロスしたコハクの腕を掻い潜り、強烈なボディブローを叩き込んだ。

 コハクの身体がその場で持ち上がり、腹を押さえて悶絶する。

「ぐ、えぇはっ!? げぼっ!!」

「立て、お仕置きだ」

「え······げほっ」

 青龍王はコハクの髪を掴んで無理矢理立たせると、再びボディに強烈な拳を叩き込む。

 俺は突然の事で動けなかった。

「全く、何が『ご主人様』だ。仮にも兄者の娘であり、兄弟達を全員叩きのめしたお前が、なぜこのような弱い人間に尻尾を振る。それに少しは強くなったと思ったが、この程度の速度に反応出来んとは······」

「あ、がはっ······うげっ!?」

 青龍王は表情を変えずにコハクを殴る。

 ボディだけじゃなく、顔や胸や手足も遠慮なく殴る。

 コハクは抵抗しようと藻掻くが、髪だけじゃなく頭も割れそうなくらいガッチリ掴まれ抵抗出来ない。

「や、やめ······やめろ!!」

 俺は【機銃】を展開し、青龍王に狙いを定め発射した。狙いはコハクを拘束してる手。

「······ふん」

 青龍王は、弾丸を避けすらしなかった。

 手や腕、頭に弾丸は命中する。しかし弾丸はひしゃげ、地面にパラパラと落ちる。

「そうか、お前がコハクを······」

「ひっ」

 弾丸は頭に命中したのに、傷一つ付いてない。

 それどころか、マジで怒らせてしまったようだ。ヤバいヤバい、メッチャ怖いんですけど。

 青龍王はコハクを投げ捨て、ズンズンとトラックの真正面へ。

「や、ヤバいヤバい、こいつはヤバい!! タマ、機銃!!」

 俺はガンコンを構え撃ちまくる。

 もう狙いは全身、殺らなきゃ殺られる。

「く、来るな、撃つぞ!!」

「·········」

 俺は心底恐怖し、青龍王に向けて機銃を乱射した。

 弾丸のシャワーは青龍王の身体に浴びせられるが、青龍王はそれらを無視してズンズン迫って来た。

「コハクは弱くなった。弱い人間め、コハクを堕落させた罪は重い······」

「ちょ、嘘だろおい!?」

 機銃が効かない。というか怖い。 

 青龍王は拳をギリギリと握り、トラックへ向けて思い切り振りかぶる。

「ひっ」

 俺はガンコンを捨て、両手で頭を抱えた。




 次の瞬間、爆発するような衝撃が···············あれ?

 ガタガタ震える俺は、ゆっくりと目を開け······驚いた。

「こ、コハクッ!?」

 コハクがトラックの前に立ち、構えを取っていた。

 青龍王はコハクの寸前で拳を止め、ゆっくりと下ろす。

「ご主人様に手を出すなら、おじさんでも許さない」

 コハクのオッドアイが、青い瞳と黄色い瞳がギラギラ光る。

「ほう、いい目をしてる。兄者と······あの女そっくりだ」

「······あの、女?」

「ああ、お前の母親だ。お前を生んでお前を捨てた最低な女だ」

「······」

 コハクは青龍王を睨み、青龍王はその瞳を受け入れる。

 な、なんかヤバい。今までで一番ヤバいかも。

「ご主人様、ミレイナのところへ。わたし、おじさんと『お話』する」

「え······」

 やっぱりこうなるのね。

 俺はゆっくりとバックし、コハクと青龍王の脇をすり抜けようとしたが······青龍王は、もう俺に興味ないようだった。

「コハク、気をつけろよ」

「うん」

 俺は二人をすり抜け、ミレイナの元へ向かった。




*****《コハク視点》*****




 コハクとブラスタヴァンは正面から睨み合う。

「おじさん、お母さんの事を知ってるんだよね」

「ああ」

「わたし、お母さんの事を知りたい。旅に出た理由も、お父さんより強くなってお母さんの事を聞くためだったから」

「そうか······なら、どうする?」

「おじさん、今までは全然教えてくれなかったのに、さっき言った······『お前を生んでお前を捨てた最低な女』って。初めてお母さんに繋がるヒントをくれた」

「······」

「おじさん、わたしはいつまでも子供じゃない。わたしが前に進むためにも、お母さんの事やお父さんがわたしを嫌う理由が知りたい、だからおじさん、教えてもらうよ」

「ほう、どうやってだ?」

「もちろん、力ずくで」

 コハクは『破龍拳グラムガイン』を装備し、構えを取る。

 魔族としての力だけではない、コウタから貰った人間の力を拳に乗せる。

「わたしが勝ったら、教えて」

「······いいだろう」

 ブラスタヴァンは獰猛な笑みを浮かべる。

 知らない人が見れば恐ろしい顔だが、コハクはそう感じなかった。

 まるで、子の成長に喜ぶ親のような笑みに見えた。

「いくよっ!!」

「来いっ!!」

 二人の拳が、同時にぶつかった。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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