192・トラック野郎、蹂躙
ここから章の終わりまでほとんどバトル展開です。
*****《コウタ視点・コロンゾン大陸》*****
俺は現在、デコトラカイザーで大暴れしていた。
「ドライビングバスター・薙刀モード、ハイウェイストライガー・待機モード!!」
薙刀に変形したドライビングバスターを振り回し、超危険種の群れに斬りかかる。
現在、俺は平原でモンスターの群れと戦っていた。
だだっ広い平原なので目立つ目立つ、戦えば戦うほどモンスターが集まりやがる。
デコトラカイザーを狙うモンスターもいれば、モンスター同士で争ったりしてる。人間同士の争いではあり得ない、まさに野生世界の生存を掛けた戦いになっていた。
ここには善も悪もない、ただ生きるために戦う。喰らうために戦う、己の強さを証明するために戦う。
弱い者は狙われる。だからこそ逃げるわけにはいかない、戦って戦って、生き残る。そのための力ならある。
「おらおらおらおらーーーーッ!!」
薙刀を振り回し、目に見えるモンスターを斬りまくる。
オーガ系モンスターの胴体を切断し、オーク系モンスターの首を切り落とし、フロッグ系モンスターを縦に両断した。
経験値もじゃんじゃん貯まる。もちろん経験値狙いもあるが、今の俺は生きるために戦ってる部分が大きい。
「フォームチェンジ、ブルドーザーっ!!」
『畏まりました』
デコトラカイザーは一度ブルドーザーに変形し、俺はギアを入れてアクセルを全開にする。
バケットを持ち上げてモンスターを蹴散らし、全力で叫んだ。
「デコトラ・フュージョン、ブルフォームっ!!」
『了解。ブルデコトラカイザー変形シークエンス開始』
ブルドーザーが変形、ちょっとチビデブのブルデコトラカイザーに変形した。
「バケットアームっ‼ おりゃりゃりゃーーーーっ!!」
巨大な右手のバケットでモンスターを殴ると、衝撃でミンチになる。
スピードが遅い分、モンスターの攻撃も受けるが構わない。
ひたすら被弾しつつも殴りまくり、俺は怒りの咆哮に見せかけたクラクションを鳴らした。
『ブォッブォーーーーッ!!』
巨大なクラクションはブルデコトラカイザーの怒りの咆哮。
モンスター集団が硬直した隙に、コマンド入力をする。
「必殺!!」
『コマンド入力成功。《スピニングバケット》発動』
ブルデコトラカイザーの下半身がキャタピラモードに変形し、左手にドライビングバスター、右手にバケットアームを展開。上半身が回転、コマのようになった。
「お前らの命、あの世に配達してやるぜーーーっ!!」
コントローラーを操作し、モンスターを薙ぎ払う。
ブルデコトラカイザーに触れたモンスターはミンチになるが、それでも向かってくるモンスターがたくさんいた。もちろんミンチだけどな。
俺は強い、このコロンゾン大陸で最強だ。
「まだいやがる……よし、トラックフォーム変形!! デコトラ・フュージョン!!」
ブルデコトラカイザーからデコトラカイザーへ変形し、高らかに叫ぶ。
「カモンオーライ、ハイエースバズーカ!!」
上空から銀色のハイエースが現れ、デコトラカイザーの周囲をグルグル回る。
「ウェポンシフト!!」
『了解。デコトラウェポンドッキング』
ハイエースが変形し、細長いバズーカのようになった。どことなく面影を残してるし、よく見ればハイエースに見えるな。
そのまま左腕にドッキングし、長いバズーカを構えたデコトラカイザーが完成した。
「デコトラカイザー・ハイエースバズーカ!!……あれ?」
ここで気が付いたが、モニターに残弾数「3」と表示された。
「タマ、これって」
『ハイエースバズーカは弾数制限があります。総弾数三発。一発消費すると復活に二四時間。三発消費後は七二時間使用不可』
「え……そうなの」
『その代わり、威力は保証します』
「なにそれ怖い」
イヤな予感はひしひしと感じたが、試してみないとわからない。
それに、モンスターはまだまだいる。
「よし、ドライビングバスター・ガトリングモード」
右手でガトリングを構え、接近するモンスターを撃ちまくる。
周囲のモンスターは、いつの間にかデコトラカイザーを狙っていた。どうやら最強だって事がバレちまった……結託して俺を潰そうとしてやがる。
「ところがぎっちょん!! 行くぞーーーーーーッ!!」
俺はガトリングを撃ちまくりながら、全力でダッシュして包囲網を抜ける。
すると当然、殆どのモンスターが逃げた俺を追いかける……バカめ。
「タマ、いくぞ!!」
『了解』
一キロほど距離を稼ぎ、振り返ってバズーカを構える。
「来た来た……どんなに強くても、知能はモンスターか」
モニターに表示されてるモンスターの中心に照準を合わせ、アクションボタンを押した。
「アデュー」
ドシュン!! と、巨大なミサイルが発射。
恐るべきスピードで飛び、モンスターの中心へ寸分の狂い無く着弾。
「え」
恐ろしい閃光と、とんでもない轟音。
俺は目を閉じ、顔を手で覆っていた…………そして。
「………………マジか」
そこには、何も無かった。
あるとしたら、直径五〇〇メートルはありそうなクレーターだけだった。
『パンパカパーン。レベルが上がりました。【車内設備】【ドライブイン】が更新されました』
「なんか久々に聞いたな……」
今までは後回しにしてたからな。
車内設備にドライブインか、戦闘用じゃないし、確認は後でいいや。
「タマ、モンスター反応は?」
『索敵中……半径一二キロ圏内にデコトラカイザーを脅かすモンスターは存在しません。ハイエースバズーカの爆発により、周囲のモンスターは消滅しました』
「そっか。ふぅ……じゃあ、少し休めそうな場所を探してくれ。疲れた……」
『畏まりました』
そういえば、朝から戦いっぱなしだ。
太陽達は風呂入ったりゲーセンで遊んでるし、他のみんなものんびりしてるだろう。
『現在位置より西へ二キロの場所に岩場があります。そこにトラックを隠せば数時間は安全と思われます』
「よし、ナビを表示。念のためデコトラカイザーのまま行こう」
アナログスティックを倒し、ゆっくりと前進した。
トラックほどのスピードは出ないが、それでも早い。
「ふぅ……」
『社長』
「ん?」
『社長の精神状態は興奮状態にあります。今までのデータと照合しても、ここまで好戦的ではありませんでした。本来の社長ならば、戦闘を避け安全なルートを選び進むと思われます。わざわざモンスターが多い地域を横断するのは、私の知る社長ではありません。社長の精神状態を変えた要因は、やはりミレイナ様でしょうか?』
おどろいた、タマがこんなに長い質問をするとは。
まぁ確かに、俺らしくないといえばそうだ。
「確かに、ミレイナが攫われてムカついてるし、遠回りして進みたい気持ちもある。だけど、今回はマジでヤバい……お前とデコトラカイザーの力は絶対に必要になるしな。いつまでもビビってられない、それに……デコトラカイザーの弱点はこの俺だ。だから、操縦技術の向上とストレス解消、ポイントの獲得全てをこなす為に、危険なモンスターと戦いながら進もうって決めたんだ」
『なるほど。では興奮状態にあったのは』
「吹っ切れたんだよ」
おかげで、さらに自信が付いた。
超危険種や超々危険種、さらには災害級危険種が相手でももうビビらない。
そうこう言ってるうちに、岩場に到着した。
岩場の影にトラックを停車させ、一息入れる。
「さーて、少し休憩するか」
せっかくだ、居住ルームのみんなと談笑でもするか。