19・トラック野郎、会社を作る
申し訳ありません。
第二章は20話と以前書きましたが、この19話まででした。
明日投稿する予定でしたが、ちょっと用事があって明日の投稿が出来ないので、連続で投稿します。
翌日。
商人ギルドで紹介して貰った建築会社の人が、俺たちの土地に派遣されて来た。トラックの中に案内するワケにもいかず、取り敢えず外で挨拶するという、何とも言えない光景だ。
「初めまして。私は『タテモノ建築』の設計士カティと申します。今回は私どもの会社に建築依頼を出して頂き、誠にありがとうございます」
「ど、どうも。コウタと申します。よろしくお願いします」
タテモノ建築って。まんまやん。
まぁ異世界の会社の名前なんてどうでもいい。問題は腕前だ。
って言うかこの設計士さん、女性なんだ。
「それではさっそく······ここでは話がしにくいですね、良ければ近くのカフェへ。費用はこちらで出させて頂きます」
「はい、わかりました」
ちなみにミレイナとシャイニーはお買い物。女の子2人でショッピングなんて羨ましい。俺が付いて行くと荷物持ちさせられるパターンだね。それも良いけど。
昨夜の内に、事務所に関する希望は聞いておいた。
まぁ、それぞれの個室と風呂は欲しいってことくらい。後は良く分からないのでお任せするって。だけど俺だって良くわからん。事務所スペースと応接間、トラック用ガレージと荷物置き場、それと来客用スペースがあればいいのかな。
とりあえず、プロの話を聞きながら考えるか。
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カフェで紅茶を飲みつつ商談へ。
俺の希望を言うとあっさりと頷き、持って来た紙にサラサラと下書きをする。しかもめっちゃ上手い。流石プロですな。
「この町に事務所を構えたいというお客様は大勢いらっしゃるので」
「なるほど······」
納得。そりゃそうか。この町は商業王国だし、文化の発信地だもんな。商売するにはもってこいの場所だ。
その後、細かい確認や予算の話をした。ちなみに予算は5000万。支払いは現金一括でと言ったら驚いていた。
「あの〜、足りますかね」
「はい。予算内でやらせて頂きます。お任せ下さい」
プロが言うと安心するね。しかもギルドの紹介だから信頼できる。さらに今日中に設計を済ませ、明日図面を見せてくれると言う。仕事早すぎだろ、助かるけど。
そして翌日。
詳細な図面を見せて貰い俺は納得した。やっぱプロだわ。
二階の間取りやガレージなんかもイメージ通りで、俺たちの希望通りの事務所が出来そうだ。マジで楽しみだ。
「施工日数は30日を予定。明日からさっそく作業に移ります」
「そ、そんなに早いんですか⁉」
普通家を建てるのに一月は早すぎる。それこそ何十人も居ないと。
「我が社の売りは早い建築、安心の耐久性です。お客様にはお急ぎの方も居ますので、24時間休まず建築をします」
「は、はぁ」
おいおい、ブラック企業じゃないだろうな。
建築過程をタマにスキャンしてもらって、不安な部分は俺が指摘するか。まぁ素人の俺の話なんて聞いてくれないかもしれんが、こういう場合は別だ。
さらに翌日。
馬車に沢山の資材を乗せて、俺たちの土地に作業員がやってきた。良くわからんがガタイもいいしプロっぼい。トラックは邪魔になるので敷地の隅っこに移動させた。
「タマ、あの木材······安心出来るか?」
『スキャン開始·········完了。あれはカタの木と呼ばれる木材です。柔軟性や耐久性に優れ、家屋建築でよく使われる木材です。特に問題はありません』
イヤホン越しのタマの確認で、とりあえず安心する。とりあえず材料については安心出来そうだ。
お次は俺たちの買い物だ。仕事に必要な物を買い揃えよう。そのため事前にシャイニーとミレイナに町を回ってもらい、家具屋や制服を作るための服屋、その他諸々をリサーチして貰っていた。
「まずは家具屋から回りましょ。トラックの寝室も良いけど、自宅の家具がないとね」
「はい。たくさん行くお店がありますので、楽しみです」
「ああ。やっとトラックがトラックらしく使えるな」
俺たちの会社作りは、順調に進んでる。
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まずは家具を購入した。
ベッドに机に椅子などの個人の部屋の物と、ソファやテーブル、仕事用デスクなど会社関係の物。それら全てをトラックの荷台に入れておく。
お次は制服。俺は前の会社で着てた作業着の上下に、社長らしくスーツみたいな一張羅を何着か仕立ててもらった。
ミレイナも同じく作業着の上下に、社長秘書らしいパリッとしたスーツ上下。ちなみにスカートは俺の希望でミニスカートにした。これだけは譲らん‼
シャイニーも作業着の上下。スーツはまぁ······いいや。必要な時で。
「わぁ、可愛いです。でもちょっとスカートが······」
「いやいや、俺のいた会社ではそのくらいの長さだったんだよ。似合ってるぜミレイナ」
「ちょっと‼ アタシはなんでアンタと同じ服なのよ‼」
「そりゃヒラだからな下はスカートだからいいだろ?」
「ふざけんなっ‼」
こうして着々と準備を進め、開業までいろいろ動く。
余りに繁盛するのもイヤだし、宣伝は一度だけする。その内容は、トラックをデコトラ化して、ボディに会社名を塗装して町を一周するという物だった。
敷地内の隅っこ。俺は運転席でタマに聞く。
「タマ、ボディに塗装は出来るか?」
『可能です。【追加装備】項目の塗装欄に、自由塗装の項目があります。そこを選択して下さい』
「よし。ついでに内装もイジるか、追加装備を出してくれ」
『畏まりました』
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○経験値ポイント・[21080]
【追加装備】~パーツリスト~
○外装パーツ
・フロントデッキ(種類選択)
・サイドミラー(種類選択)
・バイザー(種類選択)
・フロントバンパー(種類選択)
・電飾(種類選択)
○塗装
・動物(種類選択)
・植物(種類選択)
・風景調(種類選択)
・歌舞伎 (種類選択)
・神仏(種類選択)
・自由塗装
○内装
・シートカバー(種類選択)
・ダッシュボード(種類選択)
・室内灯(種類選択)
・カーテン(種類選択)
・座布団(種類選択)
・ハンドルカバー(種類選択)
以下項目未解放
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「う〜ん、結構ポイント使ったなぁ······」
主にお菓子とかお菓子とかジュースとか。
シャイニーのポッキーおねだりに負けたり、ミレイナちゃんの可愛いポテチおねだりに負けたり。なんだかんだで2人は可愛いからつい許しちゃうんだよなぁ。
まぁいいや。とにかく自由塗装だ。実はミレイナから字を習ったから、文章を書くことくらいは出来るんだよね。
「······ついでに内装もイジるか。座席とかって増やせるか?」
『変更出来るのはカバーのみです。座席そのものを増やす事は出来ません』
「あちゃー、残念。じゃあ3人で乗るのはムリか」
『現時点では不可能です。しかし、レベルが上がれば車体換装を行い乗車数が多い車種を選択することは可能です』
「じゃあまだ先か。仕方ないな。とりあえず室内灯を」
『畏まりました』
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[室内灯]
・シャンデリア
・提灯
・レインボーライト
・ガラスシーリングライト
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「えぇ〜······何だよシャンデリアって、邪魔じゃねーのかよ? あれ、ポイントは消費しないのか?」
『はい。追加装備に関してはポイント消費がございません』
「そりゃありがたい············のか?」
『追加装備は《デコトラ》の真髄ですので』
「そ、そうか」
まぁ俺から言うことはない。室内灯はそのままで、シートを革のシートに変えて座布団も新しくしておいた。あとは車体に宣伝の広告文章を書くだけだ。ちなみにこんな感じ。
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【アガツマ運送会社】
どこよりも安く、どこよりも早くお届けします‼
重たい荷物から軽い荷物まで、大きさは選びません‼
[お問い合わせ]
ゼニモウケ王国ヒナビタ公園敷地内・事務所まで
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無難な感じかな。
まぁ料金云々はここには書かない。とりあえず来てもらってから要相談かな。ちなみに遊具も何もない公園の名はヒナビタ公園。まんま鄙びた公園だ。ふざけんな。
これでゆっくりゼニモウケを一周する。これで宣伝は完了だ。
積極的な宣伝はしない。忙しいのはヤだし、異世界に来てまで残業なんかしたくないしね。
建物が完成して商売を始めたらトラックで宣伝しよう。
こうして、全ての準備を終えて1ヶ月が経過した。
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「おぉ······」
「これが······」
「へぇ、イケてんじゃん」
ホントに1ヶ月で出来ちゃったよ。
2階建ての家に、大きなガレージ。なんと建築会社の人たちが家具の運び出しもやってくれた。どうやらサービスらしい。
一階は事務所。デスクもあるし俺専用の社長机とリクライニングチェアもある。
二階は住居で、個人の部屋と居間、風呂も立派な物が付いている。
「コウタ様。如何でしょうか」
「あ、カティさん。どうもこうも······スゴいっすね」
「気に入られたようで。それでは最後にこちらを門に」
「あ、これは」
カティさんは、『アガツマ運送会社』と書かれた看板を俺に手渡した。どうやら最後の看板取り付けを俺にやらせてくれるらしい。何か感慨深いね。
「おーし。じゃあさっそく」
みんなが見守る中で、俺は門に看板を打ち付ける。
「出来た······」
「お疲れ様です、コウタ様」
「わぁ〜······」
「いいわね······」
『アガツマ運送会社』の看板は、漢字とカタカナで小さく書かれ、その下には大きくこの世界の文字で書かれている。元の世界を忘れないという意思表示でもある。するとカティさんは一礼すると帰って行った。
「よーし‼ 今夜はお祝いだ、ミレイナ、ご馳走を頼むぜ‼」
「はいっ‼ お任せ下さいっ‼」
「あ、アタシはポッキー食べたいっ‼」
「おういいぜ、今日は食べ放題だっ‼」
ついに会社と自宅が完成した。
これからはこのゼニモウケを拠点にして仕事をしながら暮らして行くことになるだろう。
運送会社として、トラックを運転して荷物を届ける。俺が社長でミレイナが秘書、シャイニーはヒラ。
俺の新しい生活は、ようやく始まった。
第二章完