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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第14章・トラック野郎と怒りの決意』
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181・トラック野郎、ハイスコア

 シミュレーションで特訓をしていると、買い物へ出掛けた太陽達が帰ってきた。トラックの時計を見るともう夕方近い、そういえばかなり腹減った。

 シミュレーションを中断し、みんなを出迎える。

「よぉおっさん、買い物は済んだぜ」

「コンビニ商品ばかりじゃ身体に悪いですからね。新鮮な野菜やお肉を買ってきたので、冷蔵庫へ入れますね」

 太陽と月詠が大量の食材や肉を運んで来た。待てよ、せっかくだし試してみるか?

 俺はイヤホンに手を当て、タマに確認する。

「タマ、冷凍車の荷台に入れても問題ないか?」

『肯定。ただし食材をとりだす場合は冷凍車になる必要があります』

 十分だ。冷蔵庫よりも広いし、肉や野菜を保存しておくなら冷凍車がピッタリだ。

 俺は大量の荷物を運ぶみんなと一緒に、ガレージへ向かう。

「タマ、冷凍車に変形」

『畏まりました』

 銀色のボディのトラックが、純白のボディの冷凍車へ変わる。

 デザインこそトラックに酷似してる。だが冷凍車は広く内側は銀色に輝いている。電源を入れてないから冷えてないが、スイッチを入れればマイナス三〇度まで冷えるようだ。

 運転席はトラックと変わらない。強いて言えば荷台の温度管理をするパネルが搭載されたくらいだ。

「よし、ここに積んでくれ。ここに入れておけば冷えたまま置いておける」

「れ、冷凍車ですか」

「おっさん、オレらよりチートくせぇな」

「おじ様、さすがですわね」

 日本人の三人は驚いていたが、異世界組はよくわかっていない。まぁあとでゆっくり説明するか。

 ひょんな事から冷凍車を手に入れたが、こいつは今後も大いに役立つだろう。それにダンプもショベルカーもクレーン車もあるし、運送業だけじゃなくて工事現場でも活躍出来そうだ。やらんけどな。

 ちなみに、冷凍車に食材を入れたままトラックフォームに戻っても、食材は冷凍されたままなので安心だ。

「社長、みなさん、食事の支度をしますので、しばしお待ち下さい」

「あ、あたしも手伝います」

「僭越ながら、わたくしも」

 食事はキリエ、月詠、煌星が担当する。

「じゃあアタシは食事前にシャワーで汗を流そうかしらね」

「わたしも一緒に入る」

 シャイニーは風呂掃除がてら入浴、そしてコハクはしろ丸を小脇に抱え、一緒に入るようだ。

「じゃ、オレらはどうする? メシも風呂掃除も人数多いと邪魔になるしな」

「では、武具の手入れと旅支度をしましょう。買い出した物を整理するのはどうでしょうか?」

「あ、私も手伝うー」

 太陽、ウィンク、クリスは武器の手入れと旅支度。

『さーて、ワイはこのビールと焼き鳥で一杯やりましょ。うひひ、人間の作るビールは美味いでんなぁ』

 カイムには缶ビールと焼き鳥をあげた。するとこの世界にはない缶ビールに興奮し涙を流して礼を言った。まぁカイムは放っておくか。今更だけど鳥肉って共食いじゃないよね?

 さて、俺はどうするかね?




 結局、俺は食事の手伝いをした。

 皿を並べたりコップに麦茶を注いだり、ありきたりな仕事だ。

 そして風呂上がりのシャイニーとコハクが出てきた辺りで夕食となった。ちなみにシャイニーとコハクは髪を下ろしてるので雰囲気が違う。しかも湯上がり姿プラス薄着のシャツとパンツ姿なので色っぽい。コラコラ太陽、気持ちはわかるがガン見するなよ、うひひ。

「ご主人様、どうしたの?」

「見ちゃダメよコハク、男どもから不埒な視線を感じるわ」

 すんません、ごめんなさい。

 でもよ、責任はお前らにもあるぞ? だって色っぽいからね。

 夕食と後片付けが終わり、交代で風呂に入った。

 あとは寝るだけだが、俺は運転席に戻る。

「社長、どちらへ? 何かあるのですか?」

「ああ、今日中に玄武王をノーダメージで倒すからよ」

「はぁ? 何言ってんのアンタ?」

 キリエとシャイニーが首を傾げるが、俺はサムズアップで答える。すると足元には風呂に入って更にフワフワのしろ丸がいた。

『なうなう、なうなうー』

「よし、お前も来るか?」

『うなーお』

 俺はしろ丸を抱えると、運転席へ向かった。

 俺の夜は、まだ終わらないぜ。




 それから出発までの二日、デコトラカイザーの操縦シミュレーションに時間を費やした。

 これまでに戦った超危険種や玄武王、オセロトルやフレーズヴェルグといった強敵を相手に、俺の操縦で倒す。

 ぶっちゃけ、倒す事は出来るが被弾がハンパない。

 そこで工夫したのが、ドライビングバスターとハイウェイストライガーのコンボだ。

 今やドライビングバスターの凡庸性は変形するよりも効率がいい。近中遠距離全てに対応したナイスウェポン、何で俺は今までこれを使わなかったのだろう、マジで力押しのアホじゃねーか。

 そして、新たな変形である『ダンプデコトラカイザー』と『アイスデコトラカイザー』、そしてブルフォームの強化形態である『ブルデコトラカイザー・ショベルジャケット』の強さも理解出来た。

 だからこそ、今だからこそ言える。

「俺、最強かも」

 戦闘以外でトラックは仕事道具くらいにしか考えていなかった。あと、楽しく便利な不思議空間ってとこか。

 だからこそ、戦闘に経験値を振り強化したトラックは最強だった。トラックの武装よりもデコトラカイザーに経験値を全部使ったのは大正解だな。 

 そして明日にはコロンゾン大陸へ向けて出発するが、俺はトラックの運転席でシミュレーションを行っていた。

「よし、いける·······っ、よし!!」

 現在、玄武王との模擬戦闘中。

 俺はコントローラーを巧みに動かし、デコトラカイザーを操っていた。

 こいつの行動パターンは殆ど解析した。さらに現在ノーダメージ······いける。

「よし······よしっ!!」

 ドライビングバスターを振りかぶり、玄武王を両断した。

 ホイッスルが鳴り響き戦闘終了の音楽が流れ、モニターは通常の景色に切り替わる。

『玄武王ノーダメージ討伐。スコア更新』

「うおっしゃぁぁぁっ!!」

 シミュレーションを初めて三日、やっと玄武王をノーダメージで倒せた。

『おめでとうございます。玄武王バサルテス・ノーダメージクリア達成。シミュレーションレベルハードが開放されました』

「レベルハード?」

『レベルハードは敵モンスターのスペックが従来の五倍になります。ノーダメージクリアでさらなるレベルが開放されます』

「·········あのさ、疑問に思ったけど、これってシミュレーションなんだよな? なんかハイスコアとかレベルとか、ゲームしてる気分になるんだけど」

 画面の右上にはスコアが表示され、倒したタイムや食らったダメージなんかも表示されてる。まるで格闘ゲームをやってるようだ。

『格闘型シミュレーションゲームです』

「やっぱそうかい······まぁいいけどよ」

 こいつ、認めやがった。

 まぁいい。俺の操縦技術も上がってるし、文句はない。

 全てはミレイナを助けるためだ、なんだっていい。




 翌日、この日はコロンゾン大陸へ向けて出発する日だ。

 朝食を終えて一息付いていると、ドアベルが鳴った。

「はいよー」

 いつもは真っ先にミレイナが出るが、ここは俺が出る。

 するとそこに居たのは、赤毛の小さな少女だった。

「あれ、アレクシエルじゃないか。どうした?」

「今日から工事に入るから」

「ああ、お前のラボか······今日!? 早くね!?」

「とにかく広ければいいし、こだわりはないわ。重要なのは設備で建物じゃないしね。それと、今日が出発でしょ?」

 アレクシエルの背後から、リーンベルさんが現れる。

「アレクシエル博士がお見送りに行くと言いましたので、こうして挨拶に伺いました」

「ちょ、んなわけないでしょ!? その、ラボの敷地の下見のついでよ!! へんな勘違いすんなっ!!」

「いっでぇっ!? 蹴るなこいつ!!」

「んぎゃっ!?」

 俺はアレクシエルの頭をガシガシと撫でる。

 全く、ホントにへんなヤツだな。

「触んなこのヘンタイ!! 全く、乙女の髪に気安くおっさんが·······とにかく、あんたにはまだまだ用事があるんだから、さっさと行って帰ってきなさいよ、いいわね」

「はいはい、わーったよ」

「ふん······そ、それと、その、気を付けなさいね」

「·········」

 なんだコイツ、ツンデレか?

 顔を赤くして腕を組みそっぽ向く姿に、思わず可愛いと思ってしまった。

「なるべく早く帰ってくるよ、フードフェスタも近いし、それに、お前やリーンベルさんに、ミレイナを紹介したいしな」

「ん、まぁ待ってるわ。それと、勇者パーティーの奴らに言っておいて、武具が壊れたら直してあげるってね」

 そう言って、アレクシエルは去って行った。

 リーンベルさんはお辞儀をすると、その後を追う。

「······やれやれ」

 きっと、アレクシエルなりの激励なんだろうな。

 俺はその後ろ姿が見えなくなるまで見送り、二階へ戻って行った。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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