180・トラック野郎、超改造
出発は三日後になり、キリエ達は買い出しに出掛けた。
今回も長旅になりそうだし、女性陣はいろいろ準備するらしい。この辺は男には理解できないし、変に突っ込むと地雷になる。
エブリーは五人乗りなので全員は乗れない。なので太陽と月夜とウィンクは歩きで買い物へ向かい、キリエ・コハク・シャイニー・クリス・煌星がエブリーに乗り町へ。俺はやる事があったのでトラックの運転席へ。
もちろん、やることは強化だ。
「タマ、話を聞いてくれるか?」
『なんでしょうか』
「今回、俺はマジだ。ミレイナを救うためならどんな奴とでも戦う」
『心拍数上昇。現在、社長は軽度の興奮状態にあります。今までとは違う精神状態です。理由をお聞きしても宜しいですか』
「ああ。まず、ミレイナが攫われた······これが許せない。今までだったら怖いモンスターや強そうなモンスターの存在がチラつくだけてもビビってた、けど、それは俺個人の危険だったからこそ怖かった。だけど今回は違う、大事な従業員のミレイナのピンチだ······社長として、放っておくわけにはいかない」
俺はビビりだ。今更隠したりしない。
頑強なデコトラカイザーを操作してても怖いし、身に危険が迫ると竦み上がる。だけど、ミレイナが攫われてピンチなのに、怖いだけで何もしなかったら俺は俺が許せない。
もし俺が何もせずミレイナを諦めたら、シャイニーもキリエもコハクも、そんな俺に愛想を尽かすだろう。
今の俺は従業員を抱える会社の社長だ。居なくなった従業員を諦め、別の人材を補充するなんて事はしない。大事な仲間であるミレイナを連れ戻し、いつもと変わらない日常を取り戻す。
「そのためにはタマ、お前の力も必要だ」
『私は社長のサポートです。社長の命尽きるまで命令に従います』
「ああ、何度も言う······今回の俺はマジだ」
まぁ怖いのは怖いけどな。
だからこそ、準備は入念に行う。今まで節約していた経験値を使う時が来た。
「タマ、【車体換装】を開いてくれ」
『畏まりました』
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【車体換装】 レベル83
[トラックフォーム][ユニックフォーム]
[ブルフォーム][クレーン車]
【換装一覧】
[ダンプフォーム][ショベルカー][アイスフォーム]
[??????][??????][??????]
《次期開放・レベル100》
【特殊換装】
[??????]
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「アイスフォーム······もしかして、冷凍車か?」
『肯定。経験値を消費して新たな形態を獲得しますか?』
「ああ。タマ······今の経験値で全部獲得出来るか?」
『可能です』
「じゃあ頼む、全部獲得してくれ」
俺は迷わなかった。
変形は戦闘で大いに役立つ。もし魔王と戦う事になったら、戦術の幅の広さが勝利に繋がるはずだ。
「あれ? この【特殊換装】ってなんだ?」
『社長が特殊条件を満たすことで獲得可能なフォームです。現在条件未達成』
「は? なんだそりゃ?」
『条件を満たすと自動取得されます』
よくわからん、まぁいいや。
「次は……とりあえず、メニュー画面を」
『畏まりました』
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【機体名】デコトラカイザー レベル83
【運転手】吾妻 幸太
【機体スペック】【武装詳細】【車内設備】【車体強化】
【ドライブイン】【追加装備】【従車販売】【カイザーカスタム】
【従車カスタム】【経験値ポイント】
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「よし、【カイザーカスタム】を」
『畏まりました』
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【カイザーカスタム】
[アタックコマンド][ドライビングバスター][各形態コマンド]
【各形態スペック】
[トラックフォーム][ユニックフォーム][ブルフォーム]
[クレーンジャケット][アイスフォーム]
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「まず、ドライビングバスターを」
『畏まりました』
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【ドライビングバスター】
[双剣モード][長槍モード][薙刀モード]
[ハンマーモード][ガトリングモード][大鎌モード]
【獲得済】
○大剣モード ○キャノンモード
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「経験値は足りるか?……全部習得だ」
『畏まりました。パパパパーン。ドライビングバスターの変形モード全習得。ボーナス獲得。デコトラカイザー専用新兵器『ハイウェイストライガー』を獲得しました』
「わぉ、いいね」
『デコトラカイザー専用武器『ハイウェイストライガー』はクローモード・アックスモード・ガンモードに変形するマルチウェポンです。ドライビングバスターと連結合体させることにより必殺技を使用可能です』
「いいねいいね、今回はそーいう兵器がいくらあってもいい。最悪、魔王と戦わなきゃいけないからな」
自分でも興奮してるのがわかる。
やっぱり俺、ミレイナを攫われてけっこう怒ってるかもしれない。
「じゃ、【車体強化】を」
『畏まりました』
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【車体強化】
○車体強度 レベル40 経験値消費4000
○タイヤ強度 レベル40 経験値消費4000
○エンジン出力 レベル40 経験値消費4000
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「そうだな……残りの経験値でどれくらい強化出来る?」
『現在の経験値から逆算すると、レベル一〇〇まで強化可能』
当然だが、俺は迷わなかった。
今このために経験値を貯めていたんだ。
「じゃ、頼む」
『畏まりました』
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【車体強化】
○車体強度 レベル100 経験値消費10000
○タイヤ強度 レベル100 経験値消費10000
○エンジン出力 レベル100 経験値消費10000
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「よし、残り経験値は?」
『表示します』
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【通常ポイント】《3300》
【ポイント貯金】《0》
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「あー、もう殆ど使ったか……よし、改造はここまでだな」
変形のバリエーションは増えたし、車体も以前の倍以上の強度になった。
新しい武器も手に入れたし、ドライビングバスターも強化した。
「よし、あとは俺が上手く使いこなせばいい」
『社長、提案があります』
「お、なんだ?」
『シミュレーションモードを使い、デコトラカイザーの操作技術向上をおすすめします』
「シミュレーション?」
『はい。今までデコトラカイザーで戦闘した敵データを呼び出し、仮想空間で戦闘が可能です。新たに獲得した形態や武器を試すのにいいかと』
「…………おい、そんな便利なのあるなら最初から言えよ」
『社長が説明を放棄したので』
「…………そうだっけ?」
確かに、最近はレベルが上がっても説明が面倒だから聞いてない。
戦闘に消極的なのが災いしたか……くそ、なんかくやしい。
「ま、まぁいい。じゃあシミュレーションをやろう」
『畏まりました。シミュレーションモード起動』
「おぉ?」
なんと、運転席の内装がコックピットに変わった。
いつものコントローラーが現れ、モニターには様々なデータが表示される。
格闘ゲームのような選択画面には様々なフィールドが表示され、その下には今までデコトラカイザーで戦ったモンスターが表示される。
『フィールドを選択し、対戦相手を決めて下さい』
「フィールドはとりあえず荒野で、対戦相手は……よし、玄武王だ」
『畏まりました』
決め終わると、モニターが切り替わる。そして……俺の眼前に、超リアルな玄武王バサルテスが現れた。
「ひ……い、いや、行くぜ!!」
恐怖を押し込み、コントローラーを握る。
大丈夫、今の俺とトラックならこんなヤツは敵じゃ無い。
「来い、ドライビングバスター!!」
こうして、俺の特訓が始まった。