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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
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172・蒼き姉妹の二重奏④/氷と水、姉妹の決着

新年あけましておめでとうございます。

今年もトラック野郎を宜しくお願いします!

 ウィンクは、兜の中で驚愕の表情をしていた。

「あり得ない、そんなバカな……」

 そもそも勇者の武具とは世界最高の魔導技術者である『ルーミナス』と呼ばれる者にしか作れない、世界最強の武具だ。現在の『ルーミナス』は産業都市スゲーダロにいるアレクシエル・ブレン・ルーミナスただ一人なのは間違いない。

 歴代の『ルーミナス』が作った武具は破壊されたり、行方不明になったり、その所在は殆どわかっていない。ウィンクが確認出来たのは6つだけであり、現在は勇者王国オレサンジョウに保管してある。

 今、ウィンクや太陽達が使っているのは、スゲーダロで作られた最新型武具。

 オレサンジョウ王国にある武具では太陽達のスペックを引き出すことが出来ず、新たに作られた事は間違いない。

「でも、あれは……」

 目の前に居るシャイニーブルーは、紛れもなく勇者の武具を纏っている。

 そんなはずが無い、そもそも、ウィンクがゴンズに渡したのは『素材』なのだ。出来上がった双剣を見ても、勇者の武具だなんて考えもしなかった。

「まさか、あの武器屋の店主……」

 ゴンズと呼ばれた武器職人、彼はルーミナスと関係がある。

 でなければおかしい、あり得ない。

「ったく、まーた小難しいこと考えてるんでしょ? アタシも気になるけどぜーんぶあと、今は戦いに集中しなさい」

「あ、その……」

「じゃないと、負けるわよ?」

「ッ!!」

 水の砲撃のお返しか、氷の塊が飛んできた。

 どうやらあの武具は、氷を自在に操れるようだ。

「はっ!!」

 ウィンクは、水を纏わせた槍で氷を砕く。

 思考とは裏腹に、身体はしっかりと動く。

「さ、やるわよ」

「……はい!!」

 ウィンクは、全ての思考を戦いへと切り替えた。




 この状況を見ていたニナ達は驚いていた。

「驚いたな、まさかシャイニーブルーの武器が勇者の武具だったとは」

「あれを作ったのはゴンズ武器屋の店主でしたね? 彼は何者なのですか?」

「………普通の武器職人のはずだ。少なくとも私はそう思ってる」

「………本人に確認するしかない、ですね」

 キリエは黙り、ニナも黙る。

 だがミレイナは、初めて会った時からゴンズに何かを感じていた。

「………」

 どこか懐かしいような、温かい何かを。




 シャイニーは、態度にこそ出さなかったが歓喜していた。

 まさか、勇者の武具を身に纏い戦えるとは思っていなかった。それに、噂で聞いた勇者の武具は、使い手を選ぶらしく、才能がある者でも使いこなすのは難しいと言われている。

 だが、シャイニーは特に不調を感じてるワケでもなく、問題なく武具を使用している。

 身に纏った瞬間、武具の特性も理解した。まるで自分のために存在してるかのような力を持った武具だ。

「これなら、コハクとも渡り合えるわね」

 兜の内側で微笑み、目の前のウィンクに集中する。

 水龍ブルードラゴンを模した青い鎧を纏う実妹は、短期決戦で決めるようだ。

「提案があります」

「なに?」

「お互い、最強の力を纏っている。ならば……それぞれ最強の一撃で決着を」

「………いいわね、シンプルなのは好きよ」

 この状態で打ち合っても決着が付くとは思えない。

 なら、それぞれ最強の一撃を持って雌雄を決する。

 シャイニーとウィンクはお互いに距離を取ると、残った魔力を全集中させた。

「海流槍ネプチューンよ、青く煌めけ、津波の如く荒れ狂え」

「親愛双剣ナルキッス&セイレーンよ、蒼き世界を作れ、氷世界の覇者となれ」

 ウィンクを中心に水の竜巻が作られ、竜巻は巨大で細長い海竜となる。

 シャイニーの鎧の背中に氷の羽が形成され周囲が凍り付く。そしてシャイニーの身体が浮き上がると、蒼い雪が吹雪き、雪が氷の翼を持つ白鳥へと変わる。

「きゃぁぁぁぁっ!!」

「く、これは不味いな……っ!!」

 暴風と吹雪が周囲を巻き込み、ミレイナ達を巻き込んだ。

 だが、ミレイナ達の前に出たキリエが魔術障壁を展開する。

「私の後ろへ」

「あ、ありがとうございます、キリエ」

「スマン、どうも防御魔術は苦手でな」

 シャイニーとウィンクは、ミレイナ達の存在を忘れている。

 二人の中心が境界となり、水と氷がぶつかり合う。

 そして、お互いの最強技が激突した。

「我が一撃は海竜の叫び!! 『リヴァイアサン・ハウリング』!!」

「氷結世界の蒼き鳥!! 『クリスタル・ブランシュネージュ』!!」

 海竜と氷の白鳥が激突。あり得ない轟音が響く。

 海竜と白鳥は拮抗しているように見えた。

 お互いの魔力を技に送り、その勢いは増しているように見えた……が。

「ぐ、ぅぅぅ……」

 ウィンクの魔力量は並より上程度、これほど大規模な技はそう長く持たない。

 だが、シャイニーの白鳥の勢いはまるで落ちない、それどころか勢いが増している。

「だらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「い、ぎぁぁぁ……ッ!!」

 白鳥が海竜を包み込み、徐々にその身体を氷結させていく。

 ビキビキと海竜が氷の彫像になり、ついに砕け散った。

「いあぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!」

 白鳥はそのままウィンクに突っ込み、その身体を大きく弾き飛ばす。

 あまりにも大きな衝撃で、ウィンクはそのまま気を失った。

「アタシの勝ちっ!!」

 シャイニーは、高らかに勝利宣言をした。




 ウィンクが眼を覚ますと、ミレイナに膝枕されていた。

 顔を冷たいハンカチで拭かれ、とても気持ち良い目覚めだ。

「う……」

「あ、気が付きましたね、ウィンクちゃん」

 ウィンクが起きた場所は、ピクニックで使うようなシートの上だった。

 ミレイナだけでなく、キリエやニナ、もちろんシャイニーも座っている。

「起きたわね。身体は平気?」

「は、はい」

「では、食事にしましょうか」

 キリエはどこからか巨大なバスケットを取り出すとシートの上に広げる。中身はおにぎりやサンドイッチ、唐揚げやウィンナーが詰まっていた。ちなみにウィンナーはコンビニで買った商品だ。

「ウィンク、食べられるか?」

「えぇと」

 すると、ウィンクのお腹が鳴る。

 ウィンクは顔を真っ赤にすると、その場は笑いに包まれた。

「あーお腹減った、ミレイナ、お茶ちょーだい」

「はい、ただいま」

 紙コップに持参したポットのお茶を注ぎ、全員に配ると、食事が始まった。

 シャイニーはおにぎりをパクつき、キリエやミレイナはサンドイッチを頬張り、ニナはウィンナーをポリポリ食べる。

「ほら、アンタも食べなさいよ」

「は、はい……その、いただきます」

 魔力を使い果たしお腹も減っていたので、ウィンクは遠慮無く食べる。

 しばし食事に没頭すると、ウィンクはシャイニーに言う。

「完敗でした。最後の技、とてつもない魔力でした……やはり、貴女は強い」

「まぁね。でもあれ、アタシの魔力だけじゃないのよ。どうやら剣そのものから魔力が発生してたみたい……たぶん、これの元になった災害級危険種の魔力だと思うわ」

「え……それって、海蛇サーペンソティアの?」

「たぶんね」

 唐揚げを頬張りながら、シャイニーは適当に答えた。

 だが、それはウィンクには見過ごせない答えだ。

「まさか、加工した龍核から魔力を……そんな事、アレクシエル博士も実現していない技術ですよ?」

「アタシにはムズい事はわかんない、まぁいいモン貰ったし、ヒマな時にでもゴンズに聞くわ」

 楽天的な発言に驚くウィンクだが、シャイニーがこういう性格だと思うと不思議と笑いがこみ上げた。

 すると、お茶を啜っていたニナが聞く。

「ウィンク、シャイニーブルーの強さは理解出来たか?」

「はい、私に足りない物は理解出来ました。あとは手に入れるだけです……勇者タイヨウ殿の元で」

「そうか、それならいい……よかったな」

「はい!!」

 ウィンクに足りない物、それはシャイニーのような愚直さ。

 真っ直ぐ突き進む強い心、そしてバカさ。

 たまには考えるのを止め、バカみたいに突っ走るのもいい。

 今更だがシャイニーはタイヨウに似てる……ウィンクはそう思った。

「あ、あの」

「ん?」

 ウィンクは、真っ直ぐシャイニーを見た。

 蒼い髪と瞳、どことなく母親に似ている少女。父親似と言われた自分とはあまり似ていない気もするが、それでも血の繋がった姉の顔。

「あ、ありがとうございました………あ、姉上」

「……あ、いや、あはは、ま、まぁね、お姉ちゃんだし!!」

 こうして、蒼い姉妹は剣と槍で語り合い、真の姉妹となった。

外伝に『特別編・トラック野郎とお正月』を更新しました。よかったら視てください!

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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