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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
167/273

166・トラック野郎、しろ丸のお陰で楽々です

*****《コウタ視点・98階層》*****




 しろ丸、あんたスゲーよ。

 そう言いたくなるほどこの階層は楽勝だった。

『ご主人、次の階層でメシにしよう。ここで食えそうな獲物と薪を調達する。調理は任せたぞ』

「え、調理って……ここのモンスターで?」

『ああ。ニオイでわかった、ここには美味い肉がいる』

 ちなみに98階層は『毒の森』

 紫の樹木、ボコボコ沸騰したビリジアンの沼、瘴気と呼ぶに相応しい薄紫の霧が充満する恐ろしいフィールドだった。

 ちなみに、この霧を吸い込むと人間は数時間で死ぬらしい。死を免れるためにはここのボスモンスターを倒し、その血液を体内に取り込まなきゃならんのだと。

 あ、俺は平気。だってしろ丸が身体全体を風で覆ってるから。

『ご主人、最下層にいる災害級とやらは強いのか?』

「たぶんな。お前と同じ魔王側近の眷属だし。確か、朱雀王だったかな……会った事あるのか?」

『一度だけな。基本的にパイラオフ様は放任主義だったから、朱雀王アルマーチェ殿に我等を自慢してからは好きにさせていた。そもそも我とオセロトルを眷属にした理由が、アルマーチェ殿が自身の眷属を自慢した事に腹を立ててとの事だからな』

「なにその理由。子供かよ」

『かもな。だが、我やオセロトルは出会った瞬間に勝ち目が無い事を悟った。それくらい強い』

「うわー……」

 よし、俺の『絶対に出会いたくないリスト』に入れておこう。

 あれ、ちょっと待て………このまま下を目指すって事は。

「な、なぁ、このダンジョンって最下層は一〇〇か?」

『恐らくな。ダンジョンとは切りの良い数字の階層である場合が多い。一〇、二〇、五〇、一〇〇……現在確認されている最高階層が一〇〇だ。このダンジョンも恐らくそうだろう』

「詳しいな。って、このまま下を目指したら災害級とブチ当たるぞ!? 太陽達と合流してからの方が」

『ムリだ。ダンジョンは基本、階段を見つければ強制的に次の階層に飛ばされる。お宝部屋やセーブ部屋といった特殊な部屋で無いかぎりな』

「じゃ、じゃあ、メシなんて食ってる場合じゃ」

『恐らく次の階層は中ボス部屋だ。特に仕掛けの無い一部屋だけのはず、そこでなら休憩できる』

「ど、どうやって」

『まぁ任せておけ』

 ここの階層のボスは、『ヴェノムバイソン』と呼ばれる巨大なバケモノ牛だった。

 現れるなり雄叫びを上げ突進するが、しろ丸の放った鎌鼬に首を切り裂かれ、勢いよく血が噴出する。

『血抜き完了。あとはご主人に任せる』

「………」

 敵は超危険種のはずなのに、ただのエサとしか見ていない。

 恐ろしく強い、これが災害級危険種の強さであり『臥狼ヴァルナガンド』の真の強さ。あのフカフカバレーボールのしろ丸と同一とは思えんな。

 しろ丸は鎌鼬で近くの丸太を細かく切り薪代わりにする。

 俺はその辺の蔦で薪をまとめて担ぎ、しろ丸はヴェノムバイソンを咥えた。

「じゃ、行くか」

『うむ』

 目の前にある階段を、俺としろ丸は降りていく。




 99階層はしろ丸の言った通り、半円形のそこそこ広い部屋だった。

 足を踏み入れると魔方陣が輝き、奥に見える最下層への道が結界で覆われる。

 しろ丸は咥えながら引きずっていたヴェノムバイソンを床に置く。俺はしろ丸の背中に乗ったまま聞いた。

「ど、どうするんだ? モンスターが」

『まぁ見ていろ』

 魔方陣が集まり、モンスターが現れる。

 そいつは筋骨隆々で背中に翼が生え、デコトラカイザー並に大きな怪物だった。

『ほう、ドラゴンタイタンか。ちょうどいい』

「あ、わわ……」

 バケモノの巨人にビビっていると、しろ丸は全く恐れず言う。

『ご主人、コイツを倒せば最下層への道が開かれる』

「え、ああ……」 

『ガォォォォォォォォォッ!!』

 ドラゴンタイタンは雄叫びを上げ、しろ丸目掛けて突っ込んできた。

 だが、しろ丸は一歩も動かない。

『それならば簡単だ』

『ガァァァァッ!!』

 ブワッと風が舞う。

 そして、実にあっさりと終わった。

『倒さなければ、道が開かれる事は無い……つまり、コイツを倒さなければいい』

 ドラゴンタイタンの四肢が斬り落とされ、全身に風の弾丸が突き刺さる。

 ダルマとなったドラゴンタイタンは地面を転がり、俺としろ丸の前で止まった。

『血管を潰すように四肢を切り裂いた。これなら動くことも死ぬ事も無い、一日程度なら問題ないだろう。ではご主人、さっそく食事にしてくれ』

「…………………うん」

 しろ丸が風を使いドラゴンタイタンを端に押しやる姿を眺めながら、俺は無意識に頷いた。

 ああ、憐れなりドラゴンタイタン。




 ドラゴンタイタンは気を失ってる。というか恐ろしいからなるべく視線を送らないようにしよう。

 まずは、ヴェノムバイソンの内臓を取り出さないと。うぅ、グロいなぁ······俺、モツ鍋は好きだけど生のモツは苦手なのよ。医者になった友人は慣れればなんて事ないとか言うけど、無理なモンは無理。

 腰に装備したナイフを抜き、意を決してバイソンの腹を縦に割った。

「うっぷ、おえぇぇぇ······」

 内臓がドチャッと零れ落ち、腹の中から吐きそうなほど気持ち悪いニオイがムワッと溢れた。

『やれやれ、だらしないぞご主人』

「う、うるさい······手伝ってくれよ」

 寝そべってるしろ丸は欠伸をすると、俺の周りに風を起こし、零れ落ちた内臓を風で包むと、そのままドラゴンタイタンの傍へ送った。

『これでいいか?』

「あ、ああ、さんきゅ」

 一人じゃ無理なので、しろ丸に手伝ってもらう。

 ドラゴンタイタンから切り落とした四肢の骨を使い櫓を組み、バイソンのお尻からドラゴンの骨を突き刺す。

「へへへ、牛の丸焼きだ」

『ほぉ、面白いな』

 サバイバルキットに入ってたファイアスターターで薪に火を着けると、紫のグロテスクな薪は勢いよく燃えた。

 骨の櫓にバイソンを上げ、じっくりと焼き上げる。

「おぉ、漫画で出てくる丸焼きだな」

『なんだ、それは?』

 焼き上がるまでしろ丸と他愛ない話をしながら待つこと一時間。香ばしい肉の香りが充満する。 

『そろそろいいのではないか?』

「そうだな、あとヨダレを何とかしろ」

 俺はナイフで一部を切り取り、残りはしろ丸へ。 

 今回の功労者だし、豪勢な食事を食べてもらう。

「へへへ、まさかこんな形で実現するとは······マンガ肉」

 一キロ以上はありそうなマンガ肉を片手に、カバンから塩コショウを取り出して振りかける。もちろんしろ丸のバイソンにも。

「じゃ、いただきまーす」

 早速ガブリ、うーん美味い。

 少し筋は残ってるけど気にならない、というか肉汁がすげぇ。

『ガフッガフッ、グルルル······ブハァッ、美味い!! さすがはご主人だ』

「お、おう······」

 しろ丸のヤツ、頭から豪快に食ってる。しかも硬そうな角や頭蓋骨を噛み砕いてるし、脳みそもすでに完食していた。こりゃ骨も残らないね。

 マンガ肉を完食すると、疲れからか眠くなってきた。

「ふぁ······」

『ご主人、今日は休むといい。明日は決戦だぞ』

「やっぱ戦う気かよ······くそ、俺達は勇者じゃないぞ」

『ははは、勇者か。フガァァァ······我も少し寝る。ご主人、我の身体を使っていいぞ』

「あいよ、おお······フカフカだ」

 しろ丸に寄り添うと、すぐに眠くなる。

 今日は疲れた、ロープ上りにバイソンの解体······明日は災害級とのバトル(しろ丸が)かよ。ダンジョンはストレス解消の付き添いだったのに、なんでこんな事になったのかね。

 ツイてねぇなぁホント·········おやすみ。




*****《勇者タイヨウ視点・67階層》*****




 おっさんの行方は未だ不明、ダンジョン内を満遍なく探してるが、それらしい痕跡すら見つからない。

 このまま最下層まで進み、災害級を倒した後に地上へ戻り、何食わぬ顔でおっさんが待ってれば一番いいパターンなんだけれどな。

 この階層はセーブ部屋と言われ、モンスターは出てこない部屋だ。今日はここで野営をする。

 食事の支度をし、みんなで食べながら今日の反省をすると、コハクさんは目に見えて落ち込んでいた。

「はぁ······おかわり」

「は、はい」

 煌星におかわりを要求して俯く。

 しろ丸がいるとはいえ、心配なのは変わらない。

「コハクさん、明日はきっと見つかるよ」

「·········うん。おかわり」

 オレの慰めもおかわりと同列のようだ。

 でも、おっさんが生きているのは間違いない。なんとなくだがそんな気がする。

 明日こそ、おっさんを見つけよう。




*****《アレクシエル視点》*****




「リーンベル、もっと飛ばしなさい、早くあのおっさん達に追いつくの!!」

「これが限界速度です。私の魔力ではあと数時間も走れないでしょう」

「うむむ······」

 アレクシエルとリーンベルは、アレクシエルの開発した『魔導車』に乗ってダンジョンへ向かっていた。

 スゲーダロを出発しようとしたら、使える馬車が無かったのと、学園の教授達に止められ足止めされたからである。

 そこでアレクシエルは、低燃費の魔力で長く走行出来るように改良した新型魔導車を持ち出し、逃げるようにスゲーダロを出てきたのであった。

「あぁもう気になるわねあの乗り物。こんなちっぽけな魔導車なんて目じゃないくらい、信じられない技術が使われているわ」

 アレクシエルだからこそわかった。

 ゼニモウケの人々や低レベルな技術者では理解出来ない領域。スゲーダロの技術では、あの巨体を走らせる事すら不可能だ。それを一般人のおっさんが苦もなく操縦していた。

 それだけじゃない、部品の一つ一つが洗練されていた。

 例えば車輪。馬車のような木輪ではない、かと言ってこの魔導車のように、走行の負担を考え木輪と金属を融合させた車輪でもない。全く未知の柔らかく反発する材質で出来ていた。

「気になる、早く調べたい······」

 爪を噛み想いを馳せる。

 ダンジョンを攻略したあとは、どの道スゲーダロへ帰ってくる。だから焦らなくても調べる機会はあるだろう。

 だが、アレクシエルは我慢出来なかった。

 一刻も早くトラックに触れたかった。

「リーンベル、急いで!!」

「はい、お任せ下さい」

 何度目かの『急いで』を聞き、リーンベルは苦笑した。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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