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異世界の配達屋さん~世界最強のトラック野郎~  作者: さとう
『第13章・トラック野郎と恐怖のダンジョン』
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165・トラック野郎、危機一髪

*****《コウタ視点・96階層》*****




 この階層は、どう見ても断崖絶壁だ。

 俺の後ろにある石門はただの石壁になり、申し訳程度の地面、そして断崖絶壁だ。

「いや違う、こいつは浮島だ。ど、どうなってんだ?」

 断崖絶壁の下は真っ暗な闇で、落ちればどうなるか考えるまでもない。四方は何も無い、本当にただの浮島だ。マジかよ、これどうすりゃいいんだ?

 浮島は畳六枚ほどの広さで、石の壁があるだけ、地面は芝生、そして四方は断崖絶壁。

「あ、これ詰んだ………ん?」

『なうなう、なうなう』

 しろ丸が浮島の一角に向けて吠え、その場で器用にジャンプしてる。

「どうした?」

『なうー』

 しろ丸が見つめた先にある物を見て、俺は愕然とした。

「ま、まさか……これを進めって?」

 俺の居る浮島からワイヤーが伸びている。

 そのワイヤーの先である上空に、もう一つ浮島があった。

「じょ、冗談……だろ?」

『なおーん』

 しろ丸が、俺の足下をグルグル回る。

 まるで、早く進めと言ってるようだった。

「む、ムリだ、絶対ムリだ!!」

『なうーっ』

 しろ丸が責めるようにグルグル回るが、無理なモンは無理だ。

 怖すぎるし、落ちたら死ぬ。こんなロープ伝って上を目指すなんてムーリムリ。マジで死にます、はい。

「こ、ここで太陽達を待とう。俺みたいな一般人が行けるわけ」

 と言った瞬間、浮島に亀裂が入った。

「へ……」

 ピシピシと、俺の居る浮島に亀裂が入る。

 なにこれ夢? まさか、ここで死ぬのか?

「ウソだろマジで勘弁してくれ……」

 俺は泣きそうになりながら急ぎワイヤーロープを掴む。しろ丸は器用に俺の背中に張り付くと、次の瞬間、浮島が砕け散った。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 斜めに伸びていたワイヤーがターザンのように揺れ、浮島の真下で止まる。

 ちなみに本気の絶叫だ。人生でこんなに叫んだことは無い。

 頼れるのは己のみ、そんな状況はマジで初めてだ。

「うぁ、うぁぁぁ……」

 リアルな死の恐怖。

 落ちれば死ぬ、下は真っ暗な闇、ダンジョン内なのにどうしてこんな空間が?

『なう、なうなうなうっ!』

「あ、ああ……そうだよな」

 逆を言えば、落ちなければ死なない。

 登り切れば、たぶん次の階層だ。

「やるよ、やってやるよ!!」

 俺はやけくそ気味にワイヤーを登り始めた。




 ま、そう上手くは行かないのが人生だ。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 グローブのおかげで手が滑る事は無いが、疲れてきた。

 とはいえ休む場所なんてないし、途中で止まっても体力を持って行かれるだけ。

 目測だが、頂上まで五〇メートルくらいあるのかな……やばい、考えたら腕が動かなくなる。

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょぉぉぉ………」

『なうぅ、なぅぅ』

 肩にぶら下がるしろ丸を気にする余裕もない。

 俺は何をやってるんだろう、こんな得体の知れないダンジョンでロープにぶら下がり、命綱もナシにひたすら登ってる。落ちたら死ぬ、地獄のアスレチックだ。

「ミレイナ、シャイニー、キリエ……」

 なんだろう、あの三人に猛烈に会いたい。

 ミレイナを抱きしめたい、シャイニーを抱きしめてキスしたい、キリエのおっぱい揉みたい、ミレイナのハダカを見たい、シャイニーとハダカでベッドに入りたい、キリエと………。

『なうなうなうっ!』

「あ、はっ……」

 ヤバい、思考がおかしい。

 エロい事を考えていたら、結構な距離を登った。

 そうか、これが「お下劣は力なり」ってヤツか。そうだよ、あんな可愛い従業員達と一緒に居て、エロいハプニングが殆ど起きない。最後に見たのはトラックの隠しカメラで見たミレイナとシャイニーの入浴シーンだ。いや違う、キリエと全裸遭遇もあった、キリエのヤツはハダカを隠さないからな、上も下も丸見えで……ああそうだ、つい最近はコハクの身体も見たっけ。風呂から逃げたしろ丸を捕まえるために、素っ裸でオレの前に出て来たんだ。胸も大きかったし腰のくびれも美しかった……あ、そーいえばスゲーダロで月詠達のハダカも見たなぁ。太陽の野郎にコハクのハダカを見られたのは許せんが、俺も月詠達のハダカを見たしおあいこだ。月詠はスレンダーでまだ子供っぽいが、全くないワケじゃない。煌星はミレイナ以上キリエ未満って感じで、クリスはまぁ……小学校高学年くらいかな。ははは、これからの成長に期待。

『なうなうなうっ、なうなうなうっ!』

「ん、どうし………お、おお、ゴールだ!!」

 いつの間にか、頂上一メートルまで登っていた。

 崖に手を掛けて登り切ると、俺はそのまま地面に横になる。

『なぅぅ、なぅぅ』

「ははは……やった」

 しろ丸が俺の頬をペロペロ舐める。

 ミレイナ、シャイニー、キリエ、コハク、ありがとうございます。

 月詠、煌星、クリスもありがとう。みんなのエロい姿を想像したら登り切る事が出来ました。

 浮島には、下へ降りる階段があった。

「よし、こんな危ない場所に居たくないし、さっさと行こう」

 俺は疲れていたが立ち上がり、階段を目指す。

「…………あ」

 疲れていたが、下は元気だった。




 元気だったのは、ほんの一瞬だった。

 次の階層に降りた途端、俺の下半身は縮み上がった。

「ひっ……」

『…………』

 そこは、広大な砂漠だった。

 暑さもさることながら、とんでもなく巨大なバケモノが砂漠を闊歩していた。

 デコトラカイザーに匹敵する巨人、後で知ったが『デモンゴーレム』という超危険種が、一〇や二〇で利かないくらいズンズン砂漠を歩いてる。他にも巨大なサソリやトカゲがたくさん居た。

 デモンゴーレムの一匹が、逃げるトカゲを捕まえ、そのまま口の中へ放り込んだ。

「…………」

 終わった。

 あまりの衝撃で動けない。それにこの砂漠はスナダラケ砂漠みたいな地形で、身体を隠す遮蔽物がまるでない、つまり………俺の姿は丸見えだ。いつのまにか階段は消えていた。

「げ、や、やば……」

『フシュルルルルルルル……』

 巨大トカゲと目が合った。

 トカゲは迷わず俺に向かってくる。ちくしょう、死んでたまるか!!

「ここ、この……」

 カービン銃なんて効きやしないだろうが、牽制にはなる。

 だが、引き金を引いても動かない……あ、安全装置外し忘れた。

「あ」

 目の前に、トカゲ。

 大きな口を開けて。




『下等生物が、ご主人を喰らうと言うのか?』




 そう聞こえた瞬間、トカゲは切り刻まれ肉片となった。

「え……」

 肉片と共に風が舞い、返り血を浴びる事は無かった。

 呆然としていると、足下から声が聞こえる。

『この程度の雑魚、我の相手にもならん。ご主人よ、下の階層を目指すのならさっさと行こう。ここは暑くて適わん』

 足下を見ると、小さくてフカフカのしろ丸が俺を見上げていた。

 ハスキーなダークボイスが聞こえたが、まさか……。

『ああ、この姿じゃご主人を乗せられんな』

 すると、しろ丸の身体がモコモコと膨張する。

 バレーボールがトラック並の大きさに変わり、巨大な白狼に変化する。

『この姿では初めましてだな、ご主人』

「し、しろ丸、なのか?」

『見てわからんか?』

「うん」

 即答した。だってしろ丸の姿の欠片もない。

 しろ丸は俺に顔を寄せてきた………ああ、撫でろって?

『ご主人、ご主人の事は我が守る。さぁ乗れ』

「え、あ、はい」

 俺は言われた通り、しろ丸の首元あたりに乗った。

 これ、めっちゃフカフカしてる。間違いない、しろ丸だ。

『デモンゴーレムにデザートスコーピオン、ランドリザードにサンドウルフ……はぁ、雑魚ばかりか不味い連中ばかりでエサにもならんな。スンスン………ふむ、階段はあっちか』

 結論、しろ丸は最強だった。

 モンスターを蹂躙し、俺が振り落とされない程度の速度で階段を目指した。

 向かってきたデモンゴーレムは鎌鼬でバラバラの肉片になり、ランドリザードとかいうトカゲは威嚇したら一目散に逃げ出した。そりゃそうだよ、しろ丸は最強の『六王獣』の一体で、災害級危険種なんだから。

 こうして、97階層は二〇分で攻略した。

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お読みいただき有難うございます!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
新作です!
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